著者
松田 祐典
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.117-123, 2021-04-15

私は2010年から産科麻酔の世界に足を踏み込み,多くの時間を周産期診療に投じてきた。本稿の依頼を受けてすぐに,そこで得られた多数の奇異な臨床経験から,読者諸氏にどれが最も教訓となるかと,私のログブックを紐解いた。 産褥搬送でヘモグロビン1.9g/dL,ヘマトクリット6%で,大動脈遮断バルーンを挿入して救命した症例か? それともEisenmenger症候群の分娩管理で,硬膜外麻酔と循環制御に難渋した症例か? はたまた,明らかな気道確保困難が予測されたHELLP症候群妊婦で,気道超音波を併用して全身麻酔をかけた症例か? しかし,これらはすべてなんだかんだで巧みにマネジメントできた経験であり,このような英雄譚から学べることは案外少ない。 そこで,私は再度ログブックを見直した。所々ハイライトされている症例が目に飛び込んできたが,なかなか自身の日常臨床を大きく変えた症例はみつからなかった。あきらめかけていたその時,とっておきの一例に惹きつけられた。本症例は臨床的のみならず,私の個人的な印象に残った症例である。この“物語”を通じて,読者に産科麻酔の奥深さが伝われば幸いである。
著者
吉津 宜英
出版者
駒澤大学
雑誌
駒沢大学仏教学部研究紀要 (ISSN:04523628)
巻号頁・発行日
no.30, pp.141-161, 1972-03
著者
青栁 寿弥 竹内 登美子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.2_151-2_161, 2017-06-20 (Released:2017-08-30)
参考文献数
20

病院で働く看護師が抱く認知症患者の対応困難な現状を踏まえ,本研究は,一般病院で働く看護師を対象として,教育内容の質が確保された「認知症高齢者のコミュニケーション法」のe-learning教材を開発することを目的とした。開発した教材は,動画やアニメーションを取り入れて臨場感を高めたこと,および実践に活かせるよう事例展開を組み込み,よくある誤り事例から考えさせる内容で構成し,教材と受講者とのインタラクティブ性を確保した点に特徴がある。看護師15名を対象として,開発した教材による学習効果を検討した結果,教材学習前より学習後の目標達成度伸び率が有意に上昇した(p< .05)。また,教材学習後の自由記述を質的帰納的分析した結果,「患者の隠れた思いに気づく」や「患者とのかかわりで得られた成功体験」等のカテゴリーが得られた。以上より,本研究における e-learning教材の質が保証された。
著者
須永 将史
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.117-132, 2016-02-01 (Released:2020-06-20)
参考文献数
37

本論文では、日本におけるgenderの使用の歴史的解明を試みる。日本でgenderが使用されるようになってきた 三十年という期間の間に、どのような使用の変遷を経て、現在の用法へたどり着いたのか、その筋道を明らかにする。 具体的には、上記の二つの特徴、すなわちどのようにセックス/ジェンダーが成立したか、そしてどのように genderは、「ジェンダー」として複数の用法をになわされるようになってきたか、という問いに焦点をしぼって分析を進める。扱う文献の領域はフェミニズム、ジェンダー論にとどまらず、genderが初めて使用された性科学や、genderの普及に貢献した人文社会思想などの領域も含める。 第一節では、一九七〇年代と八〇年代のフェミニズム・女性学におけるgenderの使用を検討する。ここではsexとgenderがどのように翻訳されたのかを問題とする。 第二節では、八〇年代前期のIvan Illichの思想とその流入がもたらしたエコフェミ論争を検討し、それがもたらした片仮名表記の「ジェンダー」の普及を考察する。当時流行したIllichやIllich派と言われる論者たちのgenderを、「社会においてあるべき男女の関係性」と定義していたことを指摘する。 第三節では、八〇年代後期の日本初の性科学の確立を試みた黒柳俊恭のgenderの用法を検討する。同時に、「個人が自分の性別をどう感じるか」という黒柳のgenderの定義が、gender概念の創始者であるJohn MoneyよりもRobert Stollerのそれに近いものであることを指摘する。
著者
京都大学政治学研究会
出版者
京都大学法学会
雑誌
法学論叢 (ISSN:03872866)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.74-85, 1960-06
著者
青木 慶
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.22-35, 2019-09-27 (Released:2019-09-27)
参考文献数
34

本稿の目的は,企業とユーザーの価値共創のさらなる発展に向けて,ユーザーの参画およびアイデア共有を促す,有効なインセンティブを明らかにすることである。Appleが運営する教育者のユーザーコミュニティを事例研究の対象とし,17名のコミュニティメンバーにインタビュー調査を行った。その結果,単なるユーザーではなく,有用なイノベーションを行う可能性の高い「リードユーザー」を組織化することで,コミュニティ自体が有効なインセンティブとして機能しうることが示された。Appleではコミュニティメンバーに外発的・内発的なアプローチを行い,コミュニティにおける活動を活性化し,ユーザーと「教育の革新」という社会的な価値を共創していることが明らかになった。
著者
岩橋 成寿 田中 義規 福土 審 本郷 道夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.459-466, 2002-07-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
18
被引用文献数
3

自覚されたストレスレベルを測定するPerceived Stness Scale(PSS)を翻訳・改変して日本語版自覚ストレス調査票(Japanese Perceived Stress Scale;JPSS)の開発を試み,一般成入群351名と心療内科患者群65名を対象に,信頼性と妥当性を検討した.α信頼性係数は両群でそれぞれ0.82と0.89であった.JPSS得点の平均値は,患者群において一般成人群に比し有意に高値であった.両群においてJPSS得点と社会再適応スケール(Social Readjustment Rating Scale;SRRS)得点はそれぞれ正の相関を示し,相関係数は患者群で有意に高い値を示した.患者群において,JPSSはSRRSに比べ,精神的自覚症および抑うつ性尺度とより強い相関を示した.JPSSはPSSと同等の信頼性と妥当性を有し,本邦において自覚ストレスを測定する有用なツールになり得ることが示唆された.

2 0 0 0 OA 玉塵抄

出版者
巻号頁・発行日
vol.[6], 1597
著者
安田 知子 牧門 武善
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.E0343-E0343, 2008

【目的】近年競技の低年齢化が進むと同時にスポーツ傷害への認識も高まっている。最近では心臓震盪に対する予防策として胸部保護パッドの着用が呼びかけられているが、普及率は高くはない。今回、胸部保護パッド着用による競技能力の低下への不安が普及率低迷の一因ではないかと仮定し、競技能力について検討したので考察を加え報告する。<BR>【方法】対象は、沖縄県内の少年野球チームで指導者が胸部保護パッドの着用に関心を持っている2チーム44名とした。学年は1~6年生、身長137.3±10.6(115~160)cm、体重32.4±8.8(19~55)kgであった。競技能力の計測は、遠投とベースランニング(23×4塁間)とし、ミズノ社製胸部保護パッドを使用して、着用時と非着用時にそれぞれ1回、ランダムに実施した。統計処理は、JSTATを用いstudentのt検定を行った。<BR>【結果】遠投では、胸部保護パッドの着用時の投球距離は38.5±10.8(最高63.6、最低14.3)m、非着用時は38.8±10.3(最高58.0、最低16.4)mであり、両者間に有意な差は見られなかった。ベースランニングは、着用時の計測時間は19.70±1.8(最高16.00、最低23.68)秒であり、非着用時は20.1±2.1(最高16.34、最低24.32)秒であり、両者間に有意な差が見られた。<BR>【考察】心臓震盪は、2007年は10月末現在全国で4件(内3件が野球)発生し、2件が命を落としている。日本高等学校野球連盟は、「中学生の練習参加に対する安全対策」通知文の中でも胸部保護パッドの積極的な着用を呼びかけている。沖縄県理学療法士会では、沖縄県高校野球連盟が主催する大会の本部医務活動を支援しているが、平成19年度秋季大会において胸部保護パッドを使用しているチームはなく、少なくとも沖縄県内においては普及率が低い。今回、競技能力の低下への懸念が胸部保護パッドの普及率が低い原因と仮定し検討を行った。遠投距離では、胸部保護パッドの着用と非着用に有意な差はなく、投球に与える影響はないものと考えられた。ベースランニングでは、着用時と非着用時の計測時間に有意な差は見られたものの、その差は0.6±0.4秒であり、同様に総力に与える影響は少ないものと考えられた。今回行った投球動作およびランニング動作に、選手自身は使用感の問題は訴えなかった。さらに、バッティング時や試合時着用の使用感にも選手からの競技時に問題となる指摘はなかった。今回、実際に使用することで、指導者らはバッティング時に使用される脛当てや肘当てと同様に習慣化により競技時に問題を与えないという印象を持ったとしている。今回の結果から胸部保護パッドは少なくとも協議に支障を与えるものではなく、むしろ子供たちの安全に寄与するという面においては着用が望ましいものと考えられ、普及していくことが望ましいものと考える。<BR>

2 0 0 0 OA 露和兵要辞典

著者
小島泰次郎 等著
出版者
丸善
巻号頁・発行日
1906