著者
安倍 正博
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.2, pp.305-313, 2015-02-10 (Released:2016-02-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)は,意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance:MGUS)より進展し,発症する.骨髄腫細胞内で起こるゲノム不安定性や遺伝子プロモーターのメチル化などのepigeneticな制御の異常により特定の遺伝子が活性化あるいは不活性化し,骨髄腫は多段階の発癌ステップにより進行する.また,このような骨髄腫細胞自身の細胞遺伝学的な異常に加え,本症に特徴的な病態の形成や腫瘍進展・治療耐性の獲得に骨髄腫細胞と骨髄内のみならず,骨外の微小環境との間の複雑な細胞間相互作用が注目されている.近年,MMの進展に関する分子病態の解明や新規薬剤の登場により,治療パラダイムが大きく変貌している.
著者
Yasuko KAWAHATA Etsuo GENDA Hidehiko KOGUCH Koki UCHIYAMA Akira ISHII
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
International Journal of Affective Engineering (ISSN:21875413)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.89-94, 2014 (Released:2014-01-31)
参考文献数
20
被引用文献数
4 10

A mathematical model for the hit phenomenon in entertainment within a society is presented as a stochastic process of interactions of human dynamics. The model uses only the time distribution of advertisement budget as an input, and word-of-mouth (WOM) represented by posts on social network systems is used as data to compare with the calculated results. The unit of time is a day. The calculations for the Japanese motion picture market based on to the mathematical model agree very well with the actual residue distribution in time. The model is applied also to weekly TV drama. We show that prediction is possible in appearance to the number of news and TV and stage with regard reputation of stage actors in Japan in this paper.
著者
平野 悠一郎 鹿又 秀聡 石崎 涼子 天野 智将
出版者
一般財団法人 林業経済研究所
雑誌
林業経済 (ISSN:03888614)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.2-18, 2016 (Released:2016-09-15)
参考文献数
49
被引用文献数
3

近年の日本における林業用苗木の生産をめぐっては、①苗木の「量」と「質」の安定確保(人工林の主伐・再造林への対応、花粉症対策苗木の生産要請等)、②再造林の「低コスト化」への寄与(コンテナ苗活用による一貫作業システムの導入、苗木の効率的な生産・流通体制の確立)、③蓄積された多様な生業・知識・技術(在来知)としての苗木生産の維持という3 つの期待が存在した。北信越地方を主対象とした実地調査からは、これらの期待が個々に実際の苗木生産供給の方向性を規定している一方で、それぞれを効果的に結びつける枠組みは整っておらず、苗木の需給調整の機能不全、コンテナ苗・優良苗の生産コスト高、苗木生産者の減少による在来知の喪失加速といった問題が表面化し、結果として苗木供給のリスクが増大している現状が明らかとなった。
著者
小張 祐介 林田 健太郎
出版者
メジカルビュー社
巻号頁・発行日
pp.1165-1171, 2020-12-09

経カテーテル大動脈弁留置術(transcatheter aortic valve implantation:TAVI)は,これまで複数の無作為化比較試験において,短期から中期において外科的大動脈弁置換術(surgical aortic valve replacement:SAVR)と比較して良好な臨床成績を収めており,外科手術リスクにかかわらず,より低リスク患者,またより若年者への適応が拡大している。2020年3月に発表された,日本循環器学会「2020年改訂版弁膜症治療のガイドライン」でも,gatekeeperとしての外科手術リスクスコアは削除され,75歳以下はSAVR,80歳以上はTAVIを第一に検討することが明記された。一方で,これまで周術期リスクが高く外科的治療を受けられずにいた高齢患者に対するTAVIの適応については,これまでにも多くの議論がなされているが,明確な基準はない。先述のガイドラインでも,超高齢者,寝たきりや認知症患者への安易な介入は慎むべきとされており,弁膜症チームにおける慎重な検討が必要である。わが国は世界中を見渡しても平均寿命が高い水準にあり,今後,より高齢な患者に対するTAVIが広がっていくと考えられる。本稿では,高齢者の適応についてこれまでに明らかになっていること,また今後の展望について詳述する。
著者
佐々木 健 駒形 祐輔 勝又 英明
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.81, no.720, pp.323-331, 2016 (Released:2016-02-28)
参考文献数
25
被引用文献数
1 4

The following discoveries were made about the factors affecting the usage period of main halls. 1. The factors contributed to the previous main hall being used for a short period were natural disaster at Edo Period. 2. Priests wish to continue using current main halls for the period of similar tendency as the ideal period of use. 3. The future planned periods of use of main halls seem to be affected by structural issues such as aging of materials. 4. There is a trend of the future estimated period of use being longer when previous main halls were used long. 5. Newly established temples with main halls of non-wooden construction are used for a short period.
著者
三重野 卓
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
no.4, pp.81-102, 1991
被引用文献数
1

現在、「生活の質」の在り方が問われているが、そのための生活様式は、断片化されている。ここでは、「生活」を総体として把握するために、その生活空間を「日常性空間」、「非日常性空間」として把握し、その相互浸透の状態を論理的に定式化することにしたい。<BR>もちろん、日常性空間とは、「生活の場」、「労働の場」をいみし、個人の生活経験、生活史の集積した「場」である。それに対して、非日常性空間は、様々に考えられるが、「遊びの場」とすると、自由、解放の機能を担うものである。そして、両空間を明らかにするためには、人びとの演技、リズム、表現、さらには、共感、共振、共生、共鳴などの「共」現象、想像力の在り方が問題になる。<BR>確かに、近代社会は、非日常性を軽視することによって成り立っているとしても、実際には、日常性と非日常性の交差するところに、個人の復活の可能性があろう。労働も遊戯も、リズム性、社会的欲求、それによる共同性という点では、共通している。また、日常性空間に氾濫する情報は、日常性をパッケージしているが、それととともに、その意味作用は、われわれを非日常性へと誘う。このように「共」現象というとき、情報と人間の共生、情報の意味との共振も必要になる。さらに、個々人、日常性空間の深層―表層という視点も望まれ、その間の循環、深層と非日常性の関係の把握は、「生活の質」のために不可欠になろう。
著者
辻 幸恵
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.933-941, 2014

<p><tt>「ゆるキャラ」は地域の特産物や歴史を多くの人々にアピールするためにつくられている.本報告ではどの「ゆるキャラ」が大学生に人気があるのかを中心に調査を実施した.その結果,特に大学生たちの認知が高かった「ゆるキャラ」はひこにゃんとくまモンであった.彼らは大学生たちの好感度も高かった.ひこにゃんは大学生たちからはかわいいそして親しみやすいので人気があった.くまモンはさらに多くの理由から人気があった.かわいいと親しみやすいの他に,いやされる,わかりやすい,ほほえましい,愛嬌があるという理由があった.かわいいと感じる要因は,基調の色が白や黄色であること,丸いこと,動物のモチーフであることなどであった.キャラクターグッズは男子よりも女子の方が所持が多かった.このことから「ゆるキャラ」は女子の目線で作成された方が良いと考え</tt><tt>る. </tt></p>
著者
簡 月真
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.61-76, 2006-04-01 (Released:2017-07-28)

本稿では,台湾でリンガフランカとして用いられている日本語を対象に,一人称代名詞の運用の実態およびその変容のメカニズムの究明を試みる。台湾高年層による日本語自然談話に日本語一人称代名詞のほかに閩南(びんなん)語一人称代名詞の使用が観察された。これは,日本語一人称代名詞の形式面と運用面の複雑さを回避するために,形式と運用規則が単純でかつ優勢言語である閩南語一人称代名詞が採用された,いわゆる単純化の結果である。ドメイン間の切換えから,閩南語一人称代名詞は台湾高年層のin-group形式の役割を果たしていることがわかる。ただし,日本語能力の低いインフォーマントの場合,日本語一人称代名詞への切換えはない。ドメインおよびインフォーマントの日本語能力に応じた使用の連続体から,閩南語の一人称代名詞は連体修飾語の場合に現れやすい傾向があること,言語構造面の単純化と連動して言語行動面においても単純化が漸次的に進行しつつあることが指摘できる。独自の体系を持つ台湾日本語は,日本語の変容のあり方を探るための貴重な例となっている。
著者
簡 月真
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.31-47, 2018-12-01 (Released:2019-06-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本稿では,台湾で使われている宜蘭クレオールの人称代名詞について,東岳村で得たデータをもとに,体系を記述し,その変化のプロセスを明らかにした。宜蘭クレオールの人称代名詞は基本的に上層言語の日本語の形式に由来するが,その多くはくだけた形式由来であり,植民地の社会的構造を反映していることが推測される。数の区別はあるが,自立形式と拘束形式の区別や格,スタイルによる区別はない。一人称に包括的複数と除外的複数の区別があり,それは基層言語のアタヤル語の用法を受け継いていると考えられる。また,一人称単数形の属格および与格には傍層言語の閩南語の形式が取り込まれていること,接尾辞-taciが複数マーカーとして規則的に用いられていること,短縮形が多くみられることが指摘できる。なお,世代間の変異から,人称代名詞の変化のプロセスを突き止めることができた。
著者
鈴木 雅貴
出版者
日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
雑誌
現代ファイナンス (ISSN:24334464)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.1-25, 2019-10-31 (Released:2019-10-31)
参考文献数
86

本論文では,株式バブルの識別に関するファイナンス研究の最新動向を展望する.株式バブルは実体経済に多大な影響を及ぼしうるものの,そのメカニズムについていまだ解明されていない部分が多い.その一因は,株式の基礎的価値(ファンダメンタルズ)の推定が難しい点にある.そこで,本論文ではまずファイナンス研究の領域で長年用いられてきた株式ファンダメンタルズの推定手法を概観し,その応用上の問題点を整理する.一方,株式関連デリバティブ価格や近年登場した株式配当先物の価格には,将来の株式配当に関する情報が多く含まれていることが最新の研究によって明らかにされている.そこで,本論文では株式配当先物価格を用いた株式ファンダメンタルズの推定手法を提案する.株式配当先物価格には,長期配当に関する投資家の(リスク調整済み)期待が瞬時に反映されるため,これを有効活用することによって,従来手法よりも即時性が高くかつ客観的な株式ファンダメンタルズの推定値を得ることが可能となる.また論文後半では,当該手法から算出される株式バブル変数を用いて,株式バブルの発生メカニズムに関する定量的な分析を行う.
著者
對馬 育夫 小越 眞佐司 山下 洋正 原田 一郎
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.23-28, 2013 (Released:2013-01-10)
参考文献数
7
被引用文献数
8 8

福島第一原子力発電所事故に伴い飛散した放射性物質が,東北·関東を中心とする多くの下水処理施設において検出されている。本研究では,放射性物質により下水汚泥が高濃度に汚染されるメカニズムを解明するため,関東・東北地方の4箇所の下水処理場を対象に,流入状況の調査および各処理過程における放射性核種分析を行った。さらに,放射性物質を含む下水汚泥の埋立処分のための知見を得るため,下水汚泥焼却灰及び溶融スラグについて,溶出試験を行い,放射性セシウムの溶出特性を調査した。その結果,下水処理場内に流入した放射性物質は主に反応槽内において保持されていること,大部分の放射性物質が浮遊物とともに汚泥側に移行していることが示された。また,溶出試験において,本試験に供した12検体のうち9検体については,溶出液の放射性物質は検出限界値以下であり,残り3検体については,溶出率が0.5-2.7%と極めて小さかった。
著者
伊藤 マモル 小坂 博信 上岡 尚代 泉 重樹 和田 武真 藤野 大樹
出版者
法政大学体育・スポーツ研究センター
雑誌
法政大学体育・スポーツ研究センター紀要 = 法政大学体育・スポーツ研究センター紀要 (ISSN:21862842)
巻号頁・発行日
no.31, pp.13-23, 2013-03-31

本研究ではスポーツ選手の敏捷性を向上させるための手段を模索する観点から、シューズ内の滑りを抑制したソックス (Technical Grip Socks:以下、TS)の着用が敏捷性能力に及ぼす効果を検証した。被験者は大学体育会に所属するフェンシング選手男女12人、バスケットボール選手男女33人であった。測定項目は、反復横跳び、マルシェ・ロンペ、ステップ50、サークルドリブル、垂直跳びであった。TSと比較したソックスは市販のスポーツソックス (以下、NS)であった。測定はインターバル3分で4回実施し、TSとNSを1回ごとに履き替えさせた。その結果、TSの着用は、敏捷性を向上させ、疲労感が高まっている時であっても、敏捷性を低下させない可能性が示唆された。また、TSが有するトリプルサポート機能は足部に生じる傷害を予防する可能性が示唆された。しかし、TSの効果をより明確にするならば、被験者の条件設定や被験者が使用しているスポーツシューズを詳細に調べるとともに、サーフェイスおよび被験者のアライメントや足裏の接地状態などの特徴に関しても検討する必要性を認めた。