著者
小川 順子
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.73-92, 2006-10-31

本論の目的は、美空ひばりが銀幕で果たした役割を考察することによって、チャンバラ映画と大衆演劇の密接な関係を確認することである。戦後一九五〇年代から六〇年代にかけて、日本映画は黄金期を迎える。当時は週替わり二本立て興行が行われており、組み合わせとして、現代劇映画と時代劇映画をセットにするケースが多かった。そのように大量生産されたチャンバラ映画を中心とした時代劇映画のほとんどは、大衆娯楽映画として位置づけられ、連続上映することから「プログラム・ピクチャア」とも呼ばれている。映画産業を支え、発展させ、もっとも観客を動員したこれらの映画群を考察することには意義があると考える。そして、これらの映画群で重要なのが「スター」であった。そのようなスターの果たした役割を看過することはできないであろう。本論では、戦後のスターとして、あるいは戦後に光り輝いた女優として活躍した一人であるにもかかわらず、「映画スター」としての側面をほとんど語られることがない「美空ひばり」に焦点を当てた。そして、彼女によってどのように演劇と映画の関係が象徴されたのかを検証することを試みた。
著者
川田 文子
出版者
中央大学商学研究会
雑誌
商学論纂 (ISSN:02867702)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5・6, pp.63-102, 2017-03-01
著者
山本 卓
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Language and Literature (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-31, 2011-09-01

ダダイズム、そしてシュルレアリスムの詩人として出発したルイ・アラゴンはいわゆる「アラゴン事件」の後にシュルレアリスムの陣営を追われ、長い曲折を経てレアリスムの小説家として生まれ変わる。その後、長らく「現実世界」の連作や『レ・コミュニスト』の作家として社会主義レアリスムの立場に立つ人間だと見なされてきた。そのアラゴンが晩年になって発表した『死刑執行』(1965)や『ブランシュまたは忘却』(1967)は批評家たちや読者たちから一種の驚きをもって迎えられた。そこには明らかにシュルレアリスム的な手法への「先祖返り」が認められたからだ。この時期に書かれた自伝的なエッセイ『私は書くことを決して覚えようとしなかった、または冒頭の一句』(1969)はアラゴンにおける言葉の誕生の秘密を明らかにしようという優れて生成論的なテクストであり、アラゴンの後期小説を読み解く上でも数多くの示唆を与えてくれる作品なのだ。
著者
山本 修平 倉島 健 松林 達史 戸田 浩之
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.1472-1479, 2019-06-26

ドライブレコーダで記録された交通事故やそれに近い危険な運転状況に関する映像やセンサデータは,ドライバーの安全運転教育や法人車両の運行管理サービスに利用される有益な情報である.このようなドライブレコーダのデータは,車に急な挙動の変化があったことがトリガーとなり記録されるが,段差を乗り越えた際の衝撃等で危険運転ではないデータも数多く記録され混在している.また危険運転を含むとしても,多様なデータが存在するため,内容に応じて類型化されることが望ましい.本論文では,ドライブレコーダデータに対して,危険運転の発生対象ラベルの自動推定のタスクに取り組む.著者らはこれまでも同様のタスクに取り組んできたが,本論文では特に,異なる環境で記録されるデータに対しても頑健な推定を実現するため,前方映像に対して物体検出技術を適用して得られる物体検出結果に着目する.深層学習に基づく既存手法によって物体検出結果を特徴ベクトルに変換するにあたり,本論文では 2 つの拡張点を提案する.1 つ目は物体検出結果から得られる境界領域をもとに,物体の重要度を考慮できる特徴量を算出する.2 つ目はその特徴量に基づいて重要物体を優先的に選出し,危険度の高い物体の取りこぼしの可能性を低くする.実際のドライブレコーダデータを用いた評価実験の結果,2 つの拡張点を用いた提案手法が,既存手法に比べて高い推定性能を示すことを明らかにした.
著者
小林 俊一
出版者
学校法人松商学園松本大学
雑誌
教育総合研究 = Research and Studies in Education (ISSN:24336114)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.13-29, 2020-11-30

日本では公的医療保険制度のために国が薬価を定めて、2年ごとに改定している。その薬価改定の 特徴を抽出するため、1101種類の医薬品の薬価の過去20年間における10回の改定の変動倍率の分布を 調べた。さらに、薬価の価格帯ごとの変動倍率も分析した。その結果、薬価の変動倍率は最近20年間 で0.9倍から1.03倍までの間に集中していることがわかった。また、改定ごとの変動倍率の分布は一様 ではないこともわかった。薬価の価格帯ごとの変化倍率も、その分布は価格帯ごとに形状が異なるこ とがわかった。
著者
田中 結香
出版者
日本福祉大学大学院
雑誌
日本福祉大学大学院福祉社会開発研究 = The Study of Social Well-Being and Development, Nihon Fukushi University Graduate schools (ISSN:21874417)
巻号頁・発行日
no.14, pp.25-34, 2019-03-20

【目的】 医療ソーシャルワーカー(以下,MSW)には,医療現場に勤務する福祉専門職として多職種連携強化のための重要な役割が求められている.医療環境の変化に対応する中で,様々な業務上の不安を抱え仕事を続けている.本研究は,MSW支援のあり方を検討する基礎資料として, メンタリングとスーパービジョンに焦点を当てて,MSW自身の業務不安解消に向けた精神的支援に関するMSWの認識を明らかにし,その対応方法を検討することを目的とした.【方法】 MSWが在籍するA県内の病院のうち6病院を無作為に選び,そこに勤務するMSW6人を対象とした。経験年数を考慮し3人1組とした2グループに分け,フォーカス・グループ・インタビューを実施した.【結果】 自己研鑽のための研修の機会や,いつでも相談できる職場環境が必要であり,スーパービジョンに対する期待も高かった.しかし,スーパーバイザーへ相談するには精神的なハードルが高く,スーパーバイザーとスーパーバイジーとの関係性に課題があることも明らかとなった.【結論】 MSWの業務不安はスーパービジョンにより対応することを前提に、メンタリングによる補完が重要である。特に、MSWの精神的支援には,気軽に相談できるメンターの存在も重要であることが明らかとなった.職場にMSW複数人配置するなど働きやすい職場環境を構築するとともに,自身のメンターを見つけ出し,メンタリングを受けられる体制整備も重要と考えられた.
著者
山田 裕一 宮崎 康支
出版者
松本短期大学
雑誌
松本短期大学研究紀要 (ISSN:09107746)
巻号頁・発行日
no.32, pp.49-60, 2022-03

幼児教育・保育者向け指南本(いわゆる「ハウツー本」)のテクスト分析を通して、障害児教育・保育における環境づくり、言葉がけ、そして人間関係についての射程を明らかにした。一般の幼稚園・保育園において障害児や医療的ケア児等の受入を一般化しようという社会的潮流と、それに伴う制度的変遷などを受け、保育所・幼稚園の保育者においては障害児保育等に関する学習やスキル向上の必要性に駆られている。研修以外の有力な学習方法の選択肢として指南本があり、その分析を通して伝達されうるメッセージを検討した。特に国が示すあるべき保育のあり方や障害者権利条約および障害者差別解消法施行に伴う、障害の社会モデルの考え方がどのように反映されているのかについて、2冊各2版の指南本において環境づくり・言葉がけ・人間関係に関する論点について分析・検討した。その結果、指南本における指導の射程として保育の多様性や子どもの理解、そしてユニバーサルデザイン等の理念を掲げて伝達されていた。一方で、個別の言語・図像表現と全体的な内容が子どもの医学的・個人的理解に傾斜しているように読み取れた。これはイラストや図を用い、わかりやすさや手に取りやすさを重視した指南本の限界である可能性がある。今後の研究課題としては、こうした指南本に幼児教育・保育の政策がどのようにして言語・図像において表現され、それが如何にして読者に解釈されうるか、また指南本では伝わりにくい子どもの多様性を大切にする保育のあり方や社会モデルの哲学・理念をどう伝えていくかという点になる。(著者抄録)
著者
児玉 望
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.231-222, 1996-03-31

筆者は十五年間、ドラヴィダ語学を学んできた。そこでドラヴィダ言語学の立場から、大野説を検討した結果、次のような問題点が明らかとなった。
著者
森内 安子 Yasuko Moriuchi
出版者
神戸女子短期大学
雑誌
神戸女子短期大学紀要論攷 = The Ronko (ISSN:09193650)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.27-33, 2012-03-01

果実に含まれているタンパク質分解酵素の活性法として,授業時間内に酵素を分離精製しないで測定できる方法を検討した結果,基質にカゼインを用いたペーパーディスク法か有効であることがわかった。 パインアップル,キウィフルーツの2種類の果実のタンパク質分解酵素の活性は,ゼラチンのゲル化方法の結果からゲル化に要する時間に差はあるものの,キウィフルーツのほうが早くゲル化した。これは,パインアップルは水分量が多いので粘性が低くなり,その酵素が動きやすくなったためではないかと考えられた。しかし,果汁の上澄み液を酵素試料に用いたペーパーディスク法の結果から,果汁の粘性にかかわらずパインアップルはキウィフルーツよりタンパク質分解酵素の活性が高いことが明らかとなった。