著者
鈴木 豪
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.327-339, 2016
被引用文献数
2

本研究は, 小学校高学年生を対象とし(5年生269名, 6年生123名), 3種類(A, B, C)の算数記述型課題の回答内容と学習観(意味理解志向学習観と暗記再生志向学習観)との関連を検討した。分析の結果, 暗記再生志向学習観の得点が高いほど, (1) 調査課題Aで, 外れ値があるときに外れ値を含んだ平均をそのまま用いる回答である確率が高かった。暗記再生志向学習観が, 課題中の目立つ特徴をそのまま適用しようとする傾向と関連することが明らかとなった。また, 意味理解思考学習観の得点が高いほど, (1) 調査課題Bで, 省略されたグラフについて, 具体的な数値を述べて判断すべきであることに着目する回答, (2) 調査課題Cで, 印刷された図形と現実を現実場面と対応させ, 図を回転させるといった工夫のある回答である確率が高かった。課題文中の内容が現実場面でどのような意味を持つかを考慮する傾向と意味理解志向学習観とが関連することが示唆された。また, 暗記再生志向学習観の得点が高いほど, 調査課題Cで無答である確率が高く, 暗記再生志向学習観が無答と関連する可能性も一部示唆された。
著者
外山 美樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.317-326, 2016
被引用文献数
10

本研究の目的は, 楽観性と悲観性を独立に測定できる"子ども用楽観・悲観性尺度"を新たに作成し, それらの信頼性・妥当性を検討することであった。研究1より, "楽観性"と"悲観性"の下位尺度から構成される子ども用楽観・悲観性尺度10項目が作成された。また, 子ども用楽観・悲観性尺度の信頼性(内的一貫性と時間的安定性)と妥当性の一部(構造的な側面の証拠, 外的な側面の証拠)が確認された。さらに, 研究2より, 何らかのストレスフルな出来事を経験した後に, 楽観性が高い子どもはサポート希求や問題解決といった接近型のコーピング方略を用いる傾向が強く, そうしたコーピング方略を媒介して, 学校適応につながりやすいことが示された。一方で, 悲観性が高い子どもは行動的回避といった回避型のコーピング方略を用いる傾向が強く, そうしたコーピング方略を媒介して, 学校不適応や精神的不健康につながりやすことが示された。本研究の結果より, 楽観性と悲観性とでは独自の役割を担っていることが明らかになった。
著者
三和 秀平 外山 美樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.307-316, 2016
被引用文献数
7

本研究では, 新任教師265名を対象に, 教科指導学習動機と教職における自己有能感および健康状態との関連について, 小学校教師と中学校教師および高等学校教師(以下, 中高教師)において検討した。まず, 小学校教師と中高教師の各変数の得点を比較したところ, "内発的動機づけ", "教材解釈・教材開発"は中高教師の方が小学校教師よりも高いことが示された。次に, 教科指導学習動機と教職における自己有能感および健康状態との関連について, "教科指導学習動機→授業力の自己認知→子どもの授業態度→教職における自己有能感および健康状態"の仮説モデルに従い検討した。その結果, 小学校教師と中高教師ともに"内発的動機づけ", "子ども志向"が, また中高教師のみにおいて"熟達志向"が授業力の自己認知や子どもの注視・傾聴の態度を媒介して, 教職における自己有能感および健康状態とポジティブな関連があることが示された。このことから, 教師の学びにおいて, 興味や関心に基づいた動機づけや, 子どもに対して価値を認めた動機づけをもつことが有効であることが明らかになった。さらに, 中高教師においては自己の熟達を目指して学ぶことも重要であることも示された。
著者
解良 優基 中谷 素之
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.285-295, 2016
被引用文献数
7

本研究は, 課題価値概念におけるポジティブな価値とコストが学習行動に及ぼす影響について, それぞれの主効果に加えて交互作用効果がみられる可能性について検討した。4年制大学の大学生と短大生計434名を対象に, 心理学の授業について課題価値評定および持続性の欠如について測定した。重回帰分析の結果, 努力コストにおいてのみポジティブな価値とコストの交互作用効果が有意であった。単純傾斜の検定を行った結果, 努力コストを高く認知している者にとって, ポジティブな価値の認知はより強い影響をもつことが明らかとなった。また, 機会コスト, 心理コストについては, それぞれポジティブな価値とコストの主効果のみが有意であり, ポジティブな価値は学習の持続性に正の影響を, コストは負の影響を及ぼしていた。興味価値・実践的利用価値の2つのポジティブな価値の間では概ね共通した結果がみられ, 学習者のもつポジティブな価値のみでなく, コスト認知についても考慮する必要性が示唆された。
著者
林 昌樹 勝浦 一雄
出版者
埼玉医科大学
雑誌
埼玉医科大学進学課程紀要 (ISSN:0287377X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-5, 2000-03-31

Feynmanが初めて量子コンピュータのアイデアを発表したのは15年前のことである。このアイデアはその後いろいろな分野の理論家によって議論されてきたが, 実現が大変難しく, 理論家の思考実験の域をでていなかった。ところが最近量子コンピュータの基本となる量子ゲートが実験室で実証されてからにわかに注目を浴びるようになった。本稿では量子コンピュータの基本的な原理と現状について紹介する。
著者
当山 清善 金城 清郎 Toyama Seizen Kinjo Seiro 琉球農業試験場
出版者
沖縄農業研究会
雑誌
沖縄農業 (ISSN:13441477)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.38-41, 1963-12

パインアップルの夏実及び冬実の糖及び酸の含量と罐詰糖度との関係を明らかにし、これが罐詰の品質に及ぼす影響等を検討した。1.果実の品質に最も関与する糖及び酸の含量は収穫時期等により異なるのでこれに応じた製造加工を行う必要がある。2.罐詰製品の品質の均一化を図るためには糖度と酸度のバランス、即ち糖酸比を品質管理の指標とすることが妥当である。3.夏実及び冬実罐詰における糖酸比を比較した場合両者に著しい差異があり、これを是正するためには冬実の酸度を調節する必要がある。4.現行罐詰糖度規格においては夏実及び冬実罐詰の砂糖所要量の差が著しい。
著者
須藤 邦彦
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.268-277, 2008-06

本研究では,1名の自閉性障害児を対象に,困難な状況にある他者を援助する行動を獲得させ,援助行動を生起させるための様々な弁別刺激の効果を検討した。ここでは,援助行動を生起させるための弁別刺激を,(1)相手から援助を要求される言語刺激(言語刺激条件),(2)相手の物品の不足という状況刺激(状況刺激条件),(3)相手から援助を要求される言語刺激と観察反応を自発させる刺激(複合刺激条件),という3点で統制した。その結果,言語刺激条件や状況刺激条件のみならず,複合刺激条件においても標的行動が生起し,それが維持・般化した。このことから,自閉性障害児が,言語刺激や状況刺激のような手がかりだけでなく,観察反応を自発させる刺激のような援助者自身に属する手がかりを援助行動の弁別刺激として利用できる可能性が示唆された。また,これらの刺激を複合して,より高次な援助行動を生起させることができることも推察された。
著者
稲垣 滋子 土井 眞美 仲矢 信介
出版者
群馬大学
雑誌
群馬大学留学生センター論集 (ISSN:13461605)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.15-37, 2003-03-03

ロシア語圏における日本語教育で現在必要とされている事柄を知り、かつそれに基づいた支援内容及び支援方法を検討することを目的に、本年度9月に現地調査をおこなった。調査はモスクワ市、アルマトゥイ市、ウラジオストク市の3都市で実施し、7大学9学部の日本語教育関係者と面談をおこなった。これらの都市における日本語教育は従来、歴史的経緯から、また、ロシア語が通用する国であるという理由から「ロシア語圏における日本語教育」としてひとくくりにして扱われることが多かった。しかしながら、今回の調査の結果、地域によって、さらには機関によって、学習者の学習動機や日本語使用環境に相違があり、そのため、教師の考える日本語教育に対する理念や教育目的、教育方法も大きく異なっていることが確認できた。今後は、今回の調査結果を参考に、それぞれの地域や機関の相違点を考慮に入れた支援環境整備に関して分析と検討を重ねていきたい。
著者
黒掘 利夫 竹内 望
出版者
社団法人日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.35, no.391, pp.441-445, 1986-04-15
被引用文献数
1

An investigation of stable laser action at room temperature using the F_2 Centers of LiF : Mg crystals is presented. A remarkable reduction in fading of the output signal intensity has been achieved by adjusting the Mg impurity level to an appropriate quantity and by optimizing F_2 Center concentration. It is found that magnesium ions in LiF crystals play a role for suppressing the fading of laser action due to the two-step photoionization process. It is also found that the fading strongly depends on intracavity power and temperature.
著者
川崎 雅史 堀 秀行 佐佐木 綱
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集
巻号頁・発行日
vol.1993, no.458, pp.121-127, 1993

本研究は, 日本の伝統的な空間に現れる陰影の意匠性を把握するための一つの方法として, 谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」に表現された陰影とその演出のしくみを景観論的に整理したものである. はじめに, 景観論的な視点を設定するために陰影の基本構成と基本類型の定義を行い,「陰翳礼讃」に表現された陰影の典型を抽出した. さらに, 抽出された陰影の構成要素ごとに美的な演出方法についての考察を行った.
著者
時永 祥三 譚 康融
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.267, pp.31-33, 2007-10-12

近年、提案された粒子フィルター(モンテカルロフィルター)は、航空管制や、車両追跡など、多くの分野で応用されている。その特徴としては、ノイズの分布は正規に限定されず、いろなタイプのノイズに対応できるという点である。本報告は、粒子フィルターにおいて、仮にノイズの分布が分らない場合において、遺伝的アルゴリズムを用いて、そのノイズの分布を推定する手法を提案し、特に、混合分布を用いたノイズの分布の推定の手法について報告する。