著者
和田 侑也 田中 一晶 中西 英之
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2013-HCI-154, no.8, pp.1-8, 2013-07-29

ロボットハンドを用いて遠隔地間で擬似的に握手を行う遠隔握手は,通常のビデオチャットよりもソーシャルテレプレゼンスを強化することがわかった.遠隔握手の方法として,会話相手とロボットハンドの繋がりを持たせる方法,会話相手の手の動きとロボットハンドの動きの同期を見せる方法,ユーザがロボットハンドを操作する方法が考えられる.本研究では,これらの方法がソーシャルテレプレゼンスにどのような影響を与えるかを,被験者実験を通して検証した.
著者
池田 俊明 杵崎 のり子
出版者
奈良学園大学
雑誌
奈良学園大学紀要 = Bulletin of Naragakuen University (ISSN:2188918X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-12, 2016-09-30

我が国においては、以前より、児童生徒の学習意欲および自己評価の低迷が指摘され、いわゆる「やる気のなさ」が問題視されている。しかし、筆者が複数の小学校で行った児童からの聞き取り結果を、古典的動機づけ理論および近年の無意識研究の成果に照らして鑑みると、彼らの状況は「やる気はある、しかし取り組めない」と評価する方が妥当であると考えられる。そこで、無意識主の行動決定モデルのもと、意識、無意識両方に働きかけ、児童らが既に持っている学習意欲を抑え込まれた状態から解放し、行動へと繋がりやすくすることを目的に、学習ゲーム体験を軸とした一連のワークショップをデザインし、これを「やる気解放指向アプローチ」と名付けた。このアプローチを児童(小学4、5年生140人)に試みた結果、アンケートにおいて82.9%の児童に勉強観・自己評価の前向きな変化が見られ、48.6%の児童が、以前よりも勉強を頑張れるようになったと回答した。これらの結果は、やる気解放指向アプローチの有効性、およびその実施のためのツールとしての学習ゲームの有用性を示唆している。
著者
伊藤 牧子
出版者
国立音楽大学
雑誌
研究紀要 = Kunitachi College of Music journal (ISSN:02885492)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.1-6, 2021-03-31

ピアノは、日本企業の独特の技術革新による低価格化や、音楽教室などの市場開拓を契機とし、日本国内に広く普及した。国内のピアノの生産台数は1980年をピークに世界第一位となり、その後減少しているものの、今までの総生産台数は約1000万台に達する。その結果、ピアノ演奏技術の習得者が増加し、日本の音楽文化に大きな影響を与えた。しかし、昨今、子どもの成長や進学と共に使われなくなって放置され、楽器としての機能を十分発揮できない「休眠ピアノ」が増えている。本来ピアノは新旧によらず、定期的なメンテナンスによってその能力は引き出され、長期の使用が可能である。よって技術的観点から、休眠ピアノのような古いピアノに修理などのメンテナンスを丁寧に実施し、再利用することを提案する。自然素材で作られたピアノを再利用することは、家庭の歴史を刻むことに加え、環境問題にも有効であり、ピアノ文化を発展させていくことにもつながると考える。
著者
渡邊 信夫 Nobuo Watanabe
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of the University of the Air (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.151-168, 2001-03-31

この研究は,北奥州に位置する八戸藩を対象として,八戸城下町と大坂との間に都市間海運が展開したことを論証しようとするものである.近世における都市間海運は,菱垣廻船,樽廻船による海上輸送を主とする大坂・江戸間海運を典型とする.先に,江戸・仙台間の海上輸送を担った石巻穀船の運行形態,積荷などを分析し,両地間に都市間海運の展開がみられることを論証した.本稿は同じ東廻海運における八戸と江戸,八戸と大坂間の海運においても都市間海運の展開がみられることを論証し,合わせて近世海運の特性を明らかにしょうとするものである. 文政2年,八戸藩は江戸・大坂方面に移出される国産品の専売制を実施した.その担当機関として城下に国産方を設置し,藩役人のほか城下町の有力商人をその業務にあたらせ,国産品の大坂交易に乗り出した.その結果,八戸港出入津の廻船は国産方を相手とする交易となり,さらに,藩は八戸・大坂聞の国産品の移出船を藩の雇船とし定期的な海上輸送を確保した.藩は,文化11年中大坂に「大坂御国産支配元」という大坂・八戸間の交易を担当する流通機関を設置した.藩は,支配元に就任した大坂商人柳屋又八との間に「諸国規定」を締結した.この約定は,輸送船を藩の雇船とし,支配元が雇船の調達,八戸・大坂間における国産品の海上輸送,大坂での販売を一手に請負うことを基本とするものであった.幕府の御城米,藩の蔵米輸送の場合と同じく,雇船の採用,空船条項もあるが,空船確認は雇船調達地でなく,八戸港で積み出す時点での混載の有無の確認であった.空船確認が幕藩より弱いのはまだ雇船調達を大坂に依存しなければならなかった事情の反映であった.幕末期にいたると,藩の手船を主体とする大坂交易となる.しかも,八戸藩は複数のルートによる大坂交易を行なうようになり,大坂での御船調達依存も弱まり,藩の海運支配が強化されるのである.
著者
岩月 真也 Shinya Iwatsuki
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.104, pp.89-108, 2013-03-20

本稿では,日教組対策として勤務評定を推し進めた勤評実施側から見た愛媛勤評闘争を描き,日教組対策としての勤務評定の意味を検討した。勤評実施側は教組側からの激しい抵抗に遭いながらも,自民党,県教委,地教委,PTA,県民等との連携を図りながら勤務実施を展開した。しかし,日教組対策としての勤務評定であったために,勤評実施側にとっては現場教師が死角となった。それゆえ,現場教師からの正当性が不足した勤務評定は形骸化せざるを得なかった。
著者
坂本 知弥 佐々木 良一 甲斐 俊文
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC)
巻号頁・発行日
vol.2011-CSEC-52, no.5, pp.1-7, 2011-03-03

近年,インターネットの普及により,IPv4 アドレスの枯渇が懸念されている.その為,IPv6 の導入が進められており,IPv6 が導入された場合,IP アドレス数の大幅な増加だけでなく,様々な利点が期待されている.しかし,その利点を逆手に取った攻撃手法も同時に発見されており,迅速な対応が求められている.そのような攻撃手法の 1 つがアドレス自動割り当て時における,ルータへのなりすましによる不正 RA (Router Advertisement) 攻撃である.既存対策としてはネットワーク機器やルータへの機能実装による対策が提案されているが,実現性や有効性の問題により,現実的ではない.そこで,本研究では実験を通じて不正 RA 攻撃がどの程度容易に実現出来るかを示すとともに,PC 側でフィルタリングを行う簡易で効率的な手法の提案と評価を行う.
著者
櫛崎 翔太 田内 康 水上 嘉樹
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2018-HCI-177, no.31, pp.1-4, 2018-03-09

歩容識別は歩行動作に基づき人物識別を行う技術である.本研究では,推定姿勢に基づいたモデルベース歩容識別手法を提案する.提案手法は,姿勢推定のためのニューラルネットワーク,推定姿勢の整形処理部,歩容識別のためのニューラルネットワークの 3 つから構成されている.姿勢推定のためのニューラルネットワークは動画像から人物の姿勢を推定するためのものであり,Cao らによる OpenPose を採用している.姿勢整形処理部では,推定姿勢に含まれる脚関節の左右ラベリングの修正,推定できなかった関節座標の補間,身長に基づいた関節座標の正規化が行われる.歩容識別のためのニューラルネットワークでは,整形姿勢を入力として人物識別を行う.基礎的な実験を行い,姿勢整形処理の有効性,および,歩容識別ニューラルネットワークの構成方法について検討する.
著者
滝澤 修 山村 明弘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.320-323, 2004-01-15

視覚復号型秘密分散法の考え方を自然言語テキストに適用した新しい秘密分散法を提案する.提案手法は,日本語テキストを対象とし,複数枚の分散テキスト(share text)を重ね合わせて,上層から下層に読んでいくと,その文字列の中に秘密テキスト(secret text)が現れるようにするものである.重ね合わせて得られた文字列の中から秘密テキストを抽出する際には,意味を持たないフレーズが1文字の形態素の連鎖になる割合が多い性質を利用して,形態素解析器を使用する.
著者
猪熊 壽 福中 守人 松山 雄喜 寒川 彰久 古林 与志安
出版者
北海道獣医師会
雑誌
北海道獣医師会雑誌 = Journal of the Hokkaido Veterinary Medical Association (ISSN:00183385)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.2-4, 2012

肺炎治療の病歴を持つ2カ月齢黒毛和種雄子牛に、元気食欲不振および黒色硬固便排出症状が出現し、その後起立不能、低体温、苦悶等のショック症状が認められた。症状と検査所見から腹膜炎を疑い、抗生剤投与、輸液等の治療を継続したところショック状態からは脱却したが、一般状態は改善されなかった。病理解剖により瀰漫性の線維素性腹膜炎を伴う穿孔性第四胃潰瘍が確認された。
著者
上條 諒貴
出版者
北九州市立大学法学会
雑誌
北九州市立大学法政論集 (ISSN:13472631)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1・2合併号, pp.1-44, 2021-10

本稿では、議院内閣制において政府の政策が失敗したことから生じるコストの違いが、有権者に対する政府(首相)のアカウンタビリティにどのように影響するかを、政治家のみが首相の能力の高低を知っており、有権者はわからないという非対称情報を仮定した数理モデルを用いて検討する。
著者
大釜 信政
出版者
ヒューマンケア研究学会
雑誌
ヒューマンケア研究学会誌 = Journal of Japanese Society of Human Caring Research (ISSN:21872813)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.37-46, 2017-09-30

本研究の目的は,高度実践看護師による訪問診療サービスに関して,在宅療養支援診療所・病院の医師の認識を明らかにすることである.医師100 名に対して,高度実践看護師との提携 を想定した場合,その看護師がもつ裁量範囲や診療にまつわる責任所在等に関する無記名自記式質問票を配布した.有効回答数は56 になった.選択肢回答の結果から,高度実践看護師の裁量範囲に関する認識において有意な偏りが認められた.自由回答からは,【高度実践看護師が行う訪問診療サービスへの賛否】【高度実践看護師に求める裁量範囲】【責任の所在】【高度実践看護師と提携するうえでの環境】【制度に対する要望】の概念を抽出した.両回答を考察した結果,高度実践看護師と医師が同じ医療機関内に所属したうえでスムースかつタイムリーなコミュニケーションを図りながら,高度実践看護師が手順書に基づいて質の高い訪問診療サービスを担うことへの期待感が示唆された.