著者
閻 美芳
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.176-193, 2017

<p>中国は, 法律も道徳も人間関係に還元されてしまう「差序格局」が優越する社会といわれてきた. ところが, 実際に中国の民衆生活に降り立ってみると, 「差序格局」のほかにも, 「理 (礼)」などの社会規範も併存している様子がみえてくる. そこで本稿では, 山東省の一農村の日常生活を分析するなかから, これまでの中国研究が注目してきた「差序格局」構造をもつ社会において, 実際に中国の一般民衆がどのようなプロセスを経て行為の正当性基準 (根拠) を探り出し, 自らもそれに従っていくのか, そのメカニズムを考察した.</p><p>考察の結果, 民衆の公平感覚を担保する「情」に心を向かわせ, 「下からの公」を生成するのは, 「体情」であることが明らかとなった. 体情の「体」とは, その人と身を重ね合わせ, その人の身になって行動することを意味する. また「情」とは, 窮地に立たされた弱者にこころを寄せて, 思いやることをさしている. 中国の人びとは, この動詞形の「体情」(情ヲ体スル) を介して, あくまでも人間の情に忠実な, その場に必要とされる「下からの公」を, そのつど見出していた. 「体情」に焦点を当てることで, 中国社会をより立体的に理解できるだけではなく, 相手の「情」がわかることを前提とする中国の一般民衆のもつ人間観・社会観の提示につながるだろう.</p>
著者
堀内 正昭
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.71, no.604, pp.191-196, 2006
被引用文献数
1

The purpose of this paper is to clarify all the processes of plans from the first design (European style), the second one (semi-European style) of the Diet Building until the building was finished as a temporary construction, the plan of which was discovered in 2004 in Chiba. The first plan of the Diet Building was designed by Paul Kohler, who worked at the architectural firm Ende & Bockmann in Berlin; the provisional Diet Building was completed by Adolf Stegmuller at the same firm and Shigenori Yoshii. Though the scale of the provisional Diet Building was reduced sharply and the construction was changed to wood from brick, with regard to the room arrangement both of the plans were very similar; accordingly, the idea of the first plan designed by Kohler, who had to retire because of his illness before completion, still existed.
著者
山中 浩司
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.150-165, 2012-06-30 (Released:2013-11-22)
参考文献数
61
被引用文献数
2
著者
坂井田 節 塩谷 栗夫 田中 稔治
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.44-49, 1987-01-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
16
被引用文献数
8 8

木酢液を主成分とする製剤が鶏の産卵成績や卵質におよぼす影響について検討した。本製剤は,広葉樹の樹皮や木片を乾留して得られる液体を精製したものに,コンフリーやセルラーゼ系酵素を添加し,この液体を4倍量の軟質炭素末に吸着させたものである。この製剤を1.5~2.0%飼料添加して産卵鶏に投与したところ,実験-1では産卵率が対照区より2.9%上回り,実験-2においては4.1~4.4%上回り,統計的にも1%水準で有意差を生じた。飼料要求率については,実験-1において対照区より0.06下回り,実験-2においては0.17~0.18下回り,統計的にも1%水準で有意な改善傾向が見られた。卵殼強度については,対照区2.84,投与区3.09となり,投与区が1%水準で有意に高い値を示した。卵白高,卵黄高,ハウユニットについては,当日卵では区間に差を生じなかったが,貯卵期間が長くなるのに伴って投与区のほうが高い値で推移する傾向を示した。このため区間および区×貯卵期間の相互作用項は1%水準で有意であった。これらの実験結果から本製剤の投与は,産卵成績や卵質について改善効果のあることが示唆された。
著者
張 善俊 盛 磊
出版者
The Institute of Image Electronics Engineers of Japan
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.208-216, 2011-01-25

理想的な投票技術では,匿名性,大規模実施の可能性,開票スピードと正確性が要求される.電子投票はコンピュータ技術の進歩で次世代の投票の形として期待されている.電子投票を選挙参加者に受け入れてもらうためには,投票の秘匿性の維持と開票作業が厳正に行われていることを参加者に納得させることが重要である.本稿は,使い捨てのコードブックに選挙用紙画像を利用して,秘密鍵および選挙情報の交換手段を提供し,再検証可能な投票暗号化方法を提案した.本稿では,RSAおよびMD5のアルゴリズムを利用して選挙管理機構と投票者のブラインド署名と秘密鍵の交換を選挙画像の電子透かし技術で実現し,本提案手法の有効性とロバスト性を実験によって示した.
著者
関 あゆみ
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.54-58, 2009 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15

アルファベット言語圏においては発達性読字障害の主たる原因は音韻認識・処理障害であると考えられ、機能的MRIなどの脳機能画像研究により、音韻処理に関わる左頭頂側頭部と文字形態認識に関わる左下後頭側頭回の活動不良が共通する所見として報告されている。この2つの領域の読みの習熟に伴う変化や言語による違いが注目されており、縦断的な機能的MRI研究や言語間比較研究が開始されている。 日本語においても仮名の習得に困難を認めた発達性ディスレクシア児では音韻認識障害が認められた。さらに仮名の母音比較課題を用いた機能的MRI研究では、日本語の発達性ディスレクシア児にも同様の障害メカニズムが存在することが示唆された。
著者
志賀 大輝 三原 鉄也 永森 光晴 杉本 重雄 Daiki Shiga Tetsuya Mihara Mitsuharu Nagamori Shigeo Sugimoto
雑誌
人工知能学会研究会資料
巻号頁・発行日
vol.47, no.17, pp.1-9, 2019-03-10

マンガを主題に基づいて検索するためには、その主題に関する情報が提供されている必要がある。そのために、電子書籍ストア等ではマンガに主題語を付与しているが、その多くはシンプルなテキストによるキーワードであり、それが表す意味に基づいた検索を行えない。この問題は主題語の語彙を構築することで解決することができるが、膨大な数のマンガの主題の差異を表現できる大規模な語彙の拡充や整備にかかるコストは大きい。本研究では、マンガの主題検索のための主題語彙の構築を目的とし、その拡充と整備を支援する。そのために、拡充が必要な箇所の発見のための主題語彙とマンガの結びつけと、Web上の情報資源を利用した、拡充する語の候補の取得を行った。
著者
五嶋 良郎
出版者
横浜市立大学医学会
雑誌
横浜医学 = Yokohama Medical Journal (ISSN:03727726)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.35-44, 2016-01-31

脳は数千億個のニューロンとその₁₀倍もの数に上るグリア細胞,血管などから構成されており,その機能は神経細胞のネットワークとそこで行われる神経伝達によって支えられている.一方,神経変性疾患をはじめとする様々な神経疾患を対象とする治療薬は,神経伝達に関わる抗うつ薬,抗精神病薬,睡眠薬,抗てんかん薬など,多彩な神経機能からみれば,極めて限られている.私達は神経伝達に加え,神経回路形成や細胞極性という細胞機能に及ぼす薬物開発の可能性を模索してきた.その1つが軸索輸送である.本総説では,我々が1997年以来,取り組んで来たセマフォリン3 A がひ,き起す軸索輸送と神経回路形成の役割を軸に,神経変性疾患研究の今後の展望を試みたい.
著者
井浦 伊知郎
出版者
日本ギリシア語ギリシア文学会
雑誌
プロピレア (ISSN:09157425)
巻号頁・発行日
no.9, pp.16-27, 1997

Unter den albanischen Sprachresten in Griechenland (Arvanitika oder das Arvanitische) findet man einerseits zahlreiche lexikalische Entlehnungen aus dem Neugriechishen, andererseits relativ fest erhaltene syntaktische Eigentümlichkeiten des Albanischen. Bedingt durch die geographische und kulturelle Absonderung von Albanien sind sowohl phonologische wie morphologische Formen des Mittelalters erhalten geblieben, die heute in der albanischen Schriftsprache nicht mehr vorkommen. Dieser Aufsatz behandelt diese Eigentümlichkeiten des Arvanitischen, insbesondere bei den Bildungen der Verba und Verbalphrasen im Nordostattikoböotischen (eine typische arvanitische Mundart in dem Gebiet, das die Dörfer der Arvaniten im nordöstlichen Teil der Eparchia Attika, z. B. Markopulo bzw. Avlon, umfaßt; NOAB), im Vergleich mit dem Neugriechischen und der albanischen Schriftsprache. Albanische Präverbien sind im Arvanitischen erhalten. Dazu macht die Entlehnung neugriechischer Präverbien noch mannigfaltigere Wortbildungen bei den arvanitischen Verba möglich. Es ist mit größter Wahrscheinlichkeit anzunehmen, daß die Produktivität der Wortbildungen bei den arvanitischen Verba mit neugriechischen Präverbien sich nach der Produktivität der neugriechischen Ausdrücke richtet. In der arvanitischen Futurform kommt, mit Ausnahme noch einiger älterer Texte, die albanische Partikel ta nicht vor, die zur Bildung des Futur-Konditionals in der Schriftsprache nötig ist. Andererseits erscheinen andere Partikeln mit Futurform, die mit der Futurform der Schriftsprache nicht zusammengesetzt werden können. Bei arvanitischen Verbalphrasen mit der "schwachen" Form des Personalpronomens tritt oft die "starke" Form des Personalpronomens mit der Präposition nda an die Stelle der "schwachen" Form. Diese syntaktischen Abweichungen von der albanischen Schriftsprache sind wahrscheinlich unter den sprachlichen Einflüssen des Neugriechischen entstanden.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ヘルスケア : 医療・介護の経営情報 (ISSN:18815707)
巻号頁・発行日
no.302, pp.41-49, 2014-12

訪問介護は、在宅中重度者への支援推進と、サービスの質の向上という改定の基本方針に従い、加算を中心に見直す。介護福祉士の配置割合や勤続年数などを評価する「特定事業所加算」を拡充。人員基準を上回る常勤のサービス提供責任者(サ責)を配置…
著者
小比賀 聡 笠原 勇矢
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.148, no.2, pp.100-104, 2016 (Released:2016-08-01)
参考文献数
21

核酸医薬は現在新たな創薬手法として注目を集めている.特に,標的遺伝子のmRNAに相補的な配列をもつオリゴヌクレオチドを用いて,その遺伝子の発現を抑制するアンチセンス法の研究開発は広く進められており,現在では数多くの医薬候補が臨床試験に進んでいる.アンチセンス核酸の特徴の一つには,標的遺伝子の配列情報があれば誰しも容易に設計できるという点があげられるが,その有効性を最大限に引き出すためには配列のデザインが非常に重要である.しかし,これまでのところ明確なデザイン戦略は知られておらず,試行錯誤に頼るところが大きい.本稿では,これまでの知見や我々独自の経験から,アンチセンス核酸の配列デザインの基本的な考え方や留意すべきポイントをまとめた.
出版者
巻号頁・発行日
vol.288 讃岐国高松城図,