著者
中央水産新聞社 編
出版者
中央水産新聞社
巻号頁・発行日
vol.昭和16年度版, 1940
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日文研 = Nichibunken (ISSN:09150889)
巻号頁・発行日
vol.65, 2020-09-30
著者
鍋山 航
出版者
学習院大学大学院
巻号頁・発行日
2019-03-09

1000人に1人の割合で生ずる先天性難聴は、遺伝的な原因が全体の約半数を占めており、難聴に関連する遺伝子はおよそ100種類が知られている。聴覚を司る内耳の蝸牛は非常に複雑な構造で、種々のタンパク質が役割分担をして聴覚受容を担っているが、これらの遺伝子に変異があることで難聴となる。遺伝性難聴の分類は、難聴以外の随伴症状の有無により症候群性難聴と非症候群性難聴に分けられる。両者に共通している原因遺伝子としてPendred症候群(PDS)の原因遺伝子SLC26A4が挙げられる。PDSでは難聴以外にその随伴症状として、甲状腺腫と内耳奇形が報告されており、一方の非症候群性難聴にもSLC26A4遺伝子の異常が共通してみられる。加えて、SLC26A4の遺伝子異常にともなう随伴症状は進行性である。このようなことから、SLC26A4の遺伝子変異を治療や創薬研究の目標とすることは、優先的であり、有効であると考えられる。SLC26A4からつくられるPendrinは、アミノ酸780個からなる膜貫通型タンパクで、主に内耳に発現し、塩化物イオン、重炭酸イオンなどの陰イオンとヨードの輸送を行っている。細胞内において変異型Pendrinは、正常なPendrinが小胞体で発現した後に細胞膜へと移行するのに対して小胞体に蓄積し、本来あるべき細胞膜へ移行することができない。このため、内耳コルチ器内のラセン隆起および外ラセン溝細胞においては陰イオンの輸送が障害され、水管拡大の症状をともない難聴を示す。そこでこれを改善する試みとして先行研究が行われ、古くから鎮痛作用として知られているサリチル酸が、変異型Pendrinに対しての分子シャペロン活性を示し、変異型Pendrinを小胞体から細胞膜へ移行させ再活性化することが明らかにされた。本研究では、サリチル酸による変異型Pendrinの細胞内局在変化に着目し、変異型Pendrinを恒常的に発現するStable細胞の確立、網羅的画像解析による迅速な薬剤スクリーニング法の開発を行い、サリチル酸とその類縁体から有効な細胞膜移行活性を有する化合物の探索を行った。 第二章では、変異型Pendrin(P123S)恒常発現(Stable)細胞を樹立した。先行研究によりSLC26A4遺伝子の変異のうち主要な10種類のミスセンスの変異型Pendrinの作製と、ミスフォールドからの薬剤によるレスキューが報告されている。10種類の変異型Pendrinを遺伝子導入したHEK293細胞に対するサリチル酸の分子シャペロン活性が調べられており、サリチル酸応答性を示す有用な4種類(P123S、M147V、S657N、H723R)の変異型Pendrin遺伝子が特定されている。ここで行われた一過性(Transient)の遺伝子導入と解析の場合、1)細胞播種、2)遺伝子導入、3)薬剤添加、4)免疫染色、5)細胞内局在変化 の過程を必要とし、実験ごとの遺伝子導入と遺伝子導入効率の安定性、化合物多数を用いた迅速なスクリーニングには課題があった。そこで本研究では、変異型Pendrin(P123S)を恒常的(Stable)に発現する細胞の樹立を検討した。具体的には、遺伝子導入後のHEK293細胞はネオマイシン耐性である性質を利用し、G-418 Sulfate存在下で10日間連続培養後、その生え抜きを選抜した。Pendrin発現とサリチル酸応答性を確認した後、これらを96well培養プレートで1細胞/1wellに限界希釈し、シングルコロニー由来の単クローンを得た。得られた単クローン細胞を再度、Pendrin発現・サリチル酸応答性の確認後、細胞のクローニング操作を合計2回行った。このようにして、野生型Pendrin発現細胞(Wt)と変異型Pendrin(P123S)発現細胞(PH1-1H1)を得たことで、遺伝子導入の段階を省くことが可能となり、第三章のMorphology解析に有用な細胞株であると判断した。第三章ではCellInsightTMを用いて細胞のMorphology解析のためのパラメーターを検討した。 変異型Pendrin(P123S)は細胞質に集積し、野生型Pendrin(Wt)は細胞膜に局在する。一方、10 mMサリチル酸を加えることで改善し、Pendrinの細胞膜局在が上昇し細胞質局在は減少する。この局在変化について、従来の手法では、免疫染色の後共焦点レーザー顕微鏡にて得られた画像を画像解析ソフトFluoViewTMで取込し、細胞膜・細胞質の蛍光強度を無作為に100ポイント測定して評価していた。本研究では96well培養プレートを用いた迅速な薬剤スクリーニングを目的にこれを改良した。細胞イメージアナライザーCellInsightTMによる計測は、96well内を100フィールドに区分し、各フィールド内最大100個細胞を検出し、全細胞のタンパク質局在を網羅的に解析し蛍光強度を測定できる。そこで解析プログラムMorphology V4の解析パラメーターの検討を行った。複数の検討より、細胞の外周を解析の基準であるCh1とし、核をCh2とした。そしてCh1から内側へ5 pixel幅を細胞質Ch3(Cytoplasm:C)とし、Ch1から内側2 pixel幅を細胞膜(Plasma Membrane:M)Ch4とした。次にPH1-1H1細胞に対してサリチル酸による変異型Pendrin移行活性を評価した結果、Ch4(M)の上昇はみられなかったものの、サリチル酸濃度依存的Ch3(C)の減少を確認することができた。(Ch4は、細胞外周の微小な凹凸や輪郭の正確なトレースが困難で、また、背景の黒色領域も合わせて検出したため、正確な細胞膜の蛍光強度が検出できなかった。) このことから、スクリーニングの基準を、Ch3(C)蛍光強度の減少として決定し、第四章のサリチル酸類縁体の移行活性スクリーニングに用いた。第四章では、サリチル酸類縁体による変異型Pendrin移行活性スクリーニングと候補化合物の探索を行った。サリチル酸とその類縁体は、96well培養プレート中PH1-1H1細胞に12時間添加し、免疫染色の後、第三章で確立したCellInsightTMによるMorphology V4でCh3を基準にスクリーニングした。その結果、化合物の濃度依存的にCh3(C)減少を示す6つの候補化合物を発見した。さらに、FluoViewTMによる詳細な蛍光強度の測定をし、細胞膜(Plasma Membrane:M) / 細胞質(Cytoplasm:C) = M/C比を調べた結果、サリチル酸は10 mMでM/C比が1.0であるのに比べ、M/C比が0.3 mMで1.5、0.1 mMで0.9を示す化合物(2-aminophenyl)methanolを見い出した(化合物番号8)。すなわち、化合物8はサリチル酸に対して活性がおよそ100倍高いことを示した。さらに、薬剤を培地から取り除いた後24時間までの細胞内薬剤持続性効果を検討した結果、サリチル酸は薬剤除去後6時間で効果が失われたのに対して、化合物8は12時間後まで効果が持続した。以上より、化合物8は変異型Pendrinに対して細胞膜移行活性を有する候補化合物であることが示唆された。本研究の結論1.限界希釈法による細胞のクローニングで、野生型Pendrin発現細胞(Wt)と変異型Pendrin(P123S)発現細胞(PH1-1H1)を得た。Wt細胞はG-418 Sulfate 存在下で恒常的に野生型Pendrinを発現し、細胞膜局在を示した。PH1-1H1細胞はG-418 Sulfate 存在下で恒常的に変異型Pendrinを発現し、細胞質に局在を示した。これに10 mMサリチル酸を12時間添加することで細胞膜局在を示した。得られたPH1-1H1細胞は、サリチル酸類縁体を用いた変異型Pendrin移行活性スクリーニングに有用な細胞である。2.CellInsightTMによるMorphology解析パラメーターの条件検討を行った。細胞外周を解析の基準であるCh1とし、Ch1より内側2 pixelから7 pixelの5 pixel幅を細胞質Ch3(Cytoplasm:C)として設定することで、サリチル酸濃度依存的なCh3(C)の減少が確認できた。すなわち、化合物濃度依存的なCh3(C)の減少に着目することで、96 well培養プレートを用いた迅速かつ網羅的な、変異型Pendrin移行活性スクリーニングが可能となった。3.変異型Pendrin移行活性スクリーニングより6つの有効な候補化合物を発見した。中でも化合物8 ((2-aminophenyl)methanol)はサリチル酸に対して細胞膜移行活性が100倍高く、加えて細胞内薬剤持続的効果も長く12時間を示した。すなわち、化合物8は変異型Pendrinの細胞膜移行活性を有する有用な候補化合物であることが示唆された。
著者
金野 秀敏
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.498-505, 2013-11-01 (Released:2013-11-01)
参考文献数
31

複雑系のモデル化や数理解析の進展と応用への期待がもたれて久しい。しかし,複雑系研究の現状や今後の可能性は適切に語られていない。本報では,複雑系数理モデルが「現実の問題を解くことがどの程度可能であると考えられるのか」を現実のシステムの実測と数理モデルとの対比を通して論ずる。まず,「複雑系の数理モデル」とは,現実のシステムをありのまま詳細を再現するものではないことを述べる。次に,複雑系数理モデルのベイズの定理に根ざしたいくつかの成功実例や,巷(ちまた)で話題になっているビッグデータ解析の諸問題との関連性にも言及する。さらに,今後の複雑系の数理モデルの可能性に言及する。
著者
野口 康彦
出版者
山梨英和学院 山梨英和大学
雑誌
山梨英和大学紀要 (ISSN:1348575X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.105-113, 2009

本稿の目的は、大学生におけるデートDVと共依存の関係性について検討するものである。デートDVにおいては、共依存傾向の高い人ほど、その中でも特に女性は、DV被害に遭う可能性が高いのではないのだろうかと考えた。ある私立大学の福祉系学科の大学生に対して質問紙による調査を行い、61名の有効回答を得た。結果として、共依存傾向の高い人ほど、デートのときにパートナーからDVを受けている傾向があることがわかった。さらに、男女別で分けた場合、女性の方がパートナーから暴力的な言動や行為を受けやすいことが明らかになった。
著者
鈴木 直恵 香川 幸子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.155-162, 2015-02-20 (Released:2017-11-28)
参考文献数
8

本研究の目的は,若年層女子の脚部の露出意識に着目し,脚部に関する意識や靴下に求められるデザイン性および靴下がファッションにおいて重要な位置を占める理由を明らかにすることである.アンケート調査結果から,ファッションスタイルはカジュアル系が約半数を占め,おしゃれへの関心度も非常に高いことが分かった.3割以上が日常的にミニスカートを着用し,自分の脚部の露出に関しては8割近くが気にしておらず,異性が脚部を見てもなんら抵抗も持たないことが分かった.ただ,下着が見えることには抵抗があり,また,靴下は安価であるため,コーディネートやイメージ作りが簡便に行うことができ,ファッションにおいて重要なアイテムであると認識していることが明らかになった.
著者
恩田 匠
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.306-317, 2015 (Released:2018-04-23)
参考文献数
7
被引用文献数
2

フランス北部,ベルギーとの国境に近いシャンパーニュ地方は,寒冷な気候でワインブドウが完熟するには厳しい条件だが,逆にその条件を活かしたシャンパンは世界のスパークリングワインをリードしている。このシャンパン造りを支えるブドウの栽培方法は,厳しい自然環境のなかで先人たちの努力と試行錯誤の積み重ねによって見出されたものと言えるだろう。シャンパン醸造について研修・情報収集をされた筆者に,この地方のブドウ栽培の概要とシャンパンの品質と名声を維持するために設けられている種々のルールについて解説していただいた。
著者
森 一平
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.89, pp.5-25, 2011-12-30 (Released:2012-12-03)
参考文献数
30

本稿は,「知っている」ということがいかなることであるのか,このことを,それが成立するための条件を問うことで,明らかにしようとするものである。この条件とは,「知っている」という記述が,状況において適切なものであるための条件である。本稿ではこの条件を,相互行為の組織のされ方のなかに見出していく。 本稿ではこの問いをとりわけ,IRE 連鎖に着目することで解いていく。IRE 連鎖は,「知識の確認」のために用いられることが知られており,そのときそれは,「知っている」ということを前景化する装置になる。この場合,IRE 連鎖の成立条件を問うことが,「知っている」ということの成立条件を問うことと重なるのである。 本稿では,「概念分析としての相互行為分析」という方針のもとで,相互行為が分析される。概念分析とは表現同士の結びつき方の分析であり,相互行為の分析も,行為の記述表現同士の結びつき方を明らかにすることによって検討することができる。この点で,概念分析と相互行為分析の方針は一致することになる。 相互行為の分析を通して明らかになるのは,「知っている」ということが,「知らない」ことの可能性を条件として,初めて成立する現象であるということである。「知らない」ことの可能性は,さまざまな実践的課題に導かれながら,多様なあり方で現出することで,「知っている」という言語ゲームを多重的に構成している。
著者
新藤 充
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第44回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S17-5, 2017 (Released:2018-03-29)

インドネシアでかつて生産されていた発酵食品、テンペボンクレックは時として重篤な食中毒事故を引き起こした。ボンクレキン酸(BKA)はBurkholderia Cocovenenansからその原因毒素として単離、構造決定された小分子である。BKAはミトコンドリアの膜タンパク質であるアデニンヌクレオチド輸送担体(ANT)に強く結合し、その機能を阻害することでATPの放出を抑制することが知られている。近年、BKAがミトコンドリア内膜の透過性遷移を阻害し細胞死を抑制することも報告され、バイオツールとして重要な化合物となっている。しかしバクテリアからの生産量が少なく、純粋なBKAの供給量がきわめて少ないことから、詳細な生物作用に関しては断片的な報告しかなされていない。そこで我々はBKAの効率的かつ実践的な新規合成法を検討し、3つのフラグメントを各々合成し最終段階で結合させる収束型全合成に成功した。この合成BKAを用いて細胞死抑制活性に関する細胞試験の実験系を確立し、さらにこの合成法を基盤として構造活性相関研究を行い、3つのカルボン酸が炭素鎖の適切な位置に配置されていることが生物活性発現に重要であることを明らかにした。しかしこの全合成法は効率的とはいえ30工程強を要することから、大量供給には工程数の削減が必須である。そこで化学構造の単純化を考え、半分以下の工程数で合成でき十分な活性を示す誘導体を合成することに成功した。安価で大量合成可能なANT阻害剤の開発の可能性が拓かれたと考えている。これら合成BKAを分子生物学者へ供与することにより、PPARγの選択的活性化作用やWarburg効果によるがん細胞特異的な細胞障害作用などBKAの生物活性に関する興味深い新知見も得られている。本シンポジウムでは有機合成屋がこういった毒性学に関わっている姿をご紹介したい。