著者
吉野 智生 山田(加藤) 智子 石田 守雄 長 雄一 遠藤 大二 浅川 満彦
出版者
北海道獣医師会
雑誌
北海道獣医師会雑誌 = Journal of the Hokkaido Veterinary Medical Association (ISSN:00183385)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.238-241, 2010-06

2005年から2010年にかけ、苫小牧市および別海町で発見されたオオハクチョウ3例について、酪農学園大学野生動物医学センターで剖検を行った。3例とも栄養状態は良好であり、外傷や外貌の汚れは認めなかった。内部所見としては暗赤色流動性の血液、心臓周辺を主とした各臓器および血管の鬱血、口腔および気管粘膜の溢血点、水・唾液などの液状成分により著しく膨化した食パンによる喉頭部閉塞が共通所見として認められた。喉頭閉塞では神経系の反射的心停止が知られることから、このような現象も今回の死因の一部と推察された。
著者
小林 朋子 鳥居 春己 川渕 貴子 辻 正義 谷山 弘行 遠藤 大二 板垣 匡 浅川 満彦
出版者
奈良教育大学自然環境教育センター
雑誌
奈良教育大学自然環境教育センター紀要 (ISSN:21887187)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-8, 2011-03-01

2005年と2006年に奈良公園およびその周辺地域に生息する天然記念物ニホンジカ(Cervus nippn,以後,シカとする)における,人獣共通寄生虫の感染状況,感染個体の栄養状態に関する調査を実施した.奈良公園内のシカ15頭の第四胃から結腸までの消化管内寄生蠕虫検査では,日本の他地域に生息するシカから得られた寄生虫と同属種が検出された.また,奈良公園内において40頭のシカの排泄直後に採取した糞における吸虫卵調査では,87.5%の個体から肝蛭卵が検出された.また,14頭のシカの剖検において肝蛭の虫体が見つかった8頭の病理学的検査と寄生状況の調査では,肝臓表面に赤紫の小斑点あるいは蛇行状の病巣などが観察され,割面では胆管の拡張,壁の肥厚がみられた.得られた肝蛭のNADH脱水素酵素サブユニット遺伝子(ND1)およびチトクロームcオキシダーゼサブユニットI遺伝子(COⅠ)の配列はFasciola hepaticaと97%(ND1)と99%(COⅠ)一致し,F.giganticaと95%(ND1)と100%(COⅠ)一致した.1976年の調査でも奈良公園の肝蛭による汚染が指摘されていたが,シカ個体数が約300頭増加した今日も大幅な寄生率の変化はなく高度な汚染が維持されていることが明らかとなった.シカから排泄された肝蛭虫卵はメタセルカリアとなり,ヒトや家畜への感染源になり得ることをふまえて,早急に充分な対策を講じる必要があろう.
著者
吉川 泰弘 稲葉 睦 浅井 史敏 尾崎 博 遠藤 大二 澁谷 泉 山下 和人 北川 均 新井 敏郎 高井 伸二 杉山 誠 上地 正実 鎌田 寛
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

わが国の全16獣医系大学における参加型実習に入る段階の学生の質を全国一定水準に確保することを目的とし、知識を評価するCBT (Computer-Based Testing)と技能と態度を評価するOSCE (Objective Structured Clinical Examination)の二つからなる獣医学共用試験について、CBT問題作成システム、問題精選システム、問題出題システム、評価システムを開発し、平成25年と26年に渡り、16大学を対象としてCBTトライアルを実施した。同時に、OSCE試験の態度と技能を確認する医療面接試験並びに実地試験を開発した。
著者
若松 小百合 中村 美里 松代 真琳 角川 雅俊 嶋本 良則 遠藤 大二 郡山 尚紀
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.71-80, 2020-06-23 (Released:2020-08-24)
参考文献数
16

海棲哺乳類の排泄物は海洋環境において重要な栄養源となっているが,飼育下の海棲哺乳類はその水質によって健康を損なう可能性がある。本研究ではその水質に着目し,細菌の群集解析を行うことで,それぞれの動物種の飼育水の細菌学的特徴を明らかにすると共に感染症を引き起こす原因菌のスクリーニングを行うことを目的とした。おたる水族館で飼育されている鰭脚類と鯨類を含む計10の飼育水と元の海水について次世代シークエンサにて細菌の塩基配列を調べ,細菌の群集解析を行った。その結果,飼育水の特徴としては,Proteobacteria,Bacteroidetes,Firmicutesが元海水と共通して見られたが,FusobacteriaおよびOD1・GNO2といった培養不能細菌門は飼育水に特徴的であった。各動物の飼育水細菌叢は鯨類や鰭脚類においてそれぞれ特徴的であったが,鰭脚類においてワモンアザラシは他との類似性が低かった。飼育水には環境中に存在する日和見菌がわずかに見つかったが,伝染性細菌やその他公衆衛生上特に注意すべき細菌は認められなかった。今後,他の水族館の飼育水についても調べることで,より理想的な海棲哺乳類の飼育環境づくりに繋がることが期待される。
著者
吉野 智生 山田(加藤) 智子 石田 守雄 長 雄一 遠藤 大二 浅川 満彦
出版者
北海道獣医師会
雑誌
北海道獣医師会雑誌 = Journal of the Hokkaido Veterinary Medical Association (ISSN:00183385)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.238-241, 2010-06

2005年から2010年にかけ、苫小牧市および別海町で発見されたオオハクチョウ3例について、酪農学園大学野生動物医学センターで剖検を行った。3例とも栄養状態は良好であり、外傷や外貌の汚れは認めなかった。内部所見としては暗赤色流動性の血液、心臓周辺を主とした各臓器および血管の鬱血、口腔および気管粘膜の溢血点、水・唾液などの液状成分により著しく膨化した食パンによる喉頭部閉塞が共通所見として認められた。喉頭閉塞では神経系の反射的心停止が知られることから、このような現象も今回の死因の一部と推察された。
著者
林 正信 市川 友香子 荒井 惣一郎 遠藤 大二 奥井 登代
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.969-971, 1998-08-25
参考文献数
26

トポイソメラーゼII阻害剤のエリプチシンによって生存率が37%に減少する用量, D_37値はLECとWKAHラットの細胞で各々1.2と2.2μMで, LECはWKAHラット細胞よりも約1.8倍高感受性であった.LECとWKAHラット細胞核抽出液におけるトポイソメラーゼII活性は両者に有意差は見られず, LECラット細胞のエリプチシン高感受性はトポイソメラーゼII活性レベルとは関連していないことが示唆された.
著者
遠藤 大二 及川 伸 泉 賢一
出版者
酪農学園大学
雑誌
酪農学園大学紀要 自然科学編 (ISSN:0388001X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.41-49, 2006-10

一般的に、牛群や個体の管理は牛群検定(乳検)データの統計的解析に基づいて実施されている。季節変動、乳量の個体変動、乳脂肪分、体細胞数などの乳検データをグラフ化するためのアプリケーションソフトが開発された。ソフトはインタラクティブに二次元の散布図を構成する乳検データを選択できるようにデザインされた。データベースアプリケーション(マイクロソフトアクセス)の使用により、参照データ等による修正や乳検とは独立に採取されたデータとも連携した分析が可能になった。分析事例として、2005年12月15日の検査においては、1産目の牛群に比べて2産目以降の牛群で体細胞数の変動が高かったことが示された。このアプリケーションソフトは大学内の乳生産および疾病研究者に、1)乳検データを分析する際の効率を高め、2)研究者独自のデータと生産性の関係分析をより効果的に行うことを可能にし、3)学内の研究協力を推進するという点で、利益をもたらすことが期待される。本論文では、アプリケーションソフトの構築と利用画面について述べる。
著者
佐藤 文昭 見上 彪 林 正信 喜田 宏 桑原 幹典 小沼 操 遠藤 大二 児玉 洋 久保 周一郎
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1987

本研究の主眼は有用な動物用リコンビナント多価ワクチンの作出に必要な基磯実験の実施にある。リコンビナント多価ワクチンはベ-スとなるベクタ-ウイルスとワクチンの決定抗原遺伝子を結合することにより作出される。ベクタ-ウイルスとしてはマレック病ウイルス(MDV)と鶏痘ウイルスに着目し、それらのチミジンキナ-ゼ遺伝子中に挿入部位を設定した。また同時に、MDVの感染から発病の過程に関る種々の抗原遺伝子の解折とクロ-ニングを行った。すなわち、ワクシニアウイルスをベ-スとしてNDVのHN蛋白遺伝子を組み込んだリコンビナントワクシニアウイルスを作出し、NDV感染防御におけるHN蛋白に対する免疫応答が感染防御に重要な役割を果たすことを明かにした。加えて、インフルエンザウイルスおよびニュ-カッスル病ウイルスの感染防御に関る抗原遺伝子の解折により、抗原遺伝子群の変異を検討した。続けて上記のウイルスベクタ-に外来遺伝子を組み込み、リコンビナント多価ワクチン実用化への可能性を検討した。すなわち、ニュ-カッスル病ウイルス(NDV)のヘマグルチニンーノイラミニダ-ゼ蛋白(HN蛋白)とマレック病ウイルスのA抗原の遺伝子をバキュロウイルスベクタ-に組み込み、生物活性と抗原性をほぼ完全に保持した蛋白を得ることができ、ワクチンとしての使用に有望な結果を得た。MDVの単純ヘルペスウイルス(HSV)のB糖蛋白類以蛋白遺伝子をバキュロウイルスベクタ-へ組み込み、高純度の蛋白を得た。さらに、本研究では、将来非常に有用なワクチンを作出するための基磯的な知見とリコンビナント多価ワクチンの実用化を近年中に可能にする実験結果も含むといえる。これらの有用な知見により、本研究は初期の目的を達成したばかりではなく、リコンビナントワクチン実用化への次の目標である野外試験による効用の証明のためにも一助となったといえる。
著者
寺岡 宏樹 上野 直人 遠藤 大二
出版者
酪農学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1)ツメガエルの約4万クローンのcDNAについてマクロアレイを行った。2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p- dioxin(TCDD)は受精後27時間胚で1クローンの増加、5クローンの減少、7日胚で41クローンの増加、12日胚で14クローンの増加、42クローンの減少を起こした。しかし、cytochrome P450 1A(CYP1A6,7)を除いて、ノーザンブロット法で増減が一致したクローンを見つけることができなかった。2)ノーザンブロット法により、Ah受容体は受精後初日から既に弱いが発現し、7日で顕著な増加がみられた。AHRの発現はTCDD暴露で影響されなかったが、CYP1A6,7の他、CYP1Bでは顕著な誘導が受精後2日からTCDD濃度依存性に観察された。この他、Arntやグルタチオン転移酵素の発現はTCDDに影響されなかった。3)以上の結果から、初期発生においてTCDDであきらかな誘導を受けるCYP1AについてTCDD感受性の高いゼブラフィッシュで役割を検討した。モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド(AHR2-MO)を用いて、ゼブラフィッシュで報告される二種のAh受容体の一つ(AHR2)の翻訳を阻止したところ、体幹の血流遅延・浮腫、下顎の成長阻害および中脳背側部の局所循環障害とアポトーシスなどこれまで知られている主なTCDD毒性が顕著に阻害された。AHR2-MOは毒性とともに、CYP1A誘導を阻害したので、CYP1Aに対するモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド(CYP1A-MO)を処置したところ、上述のTCDDによる毒性が抑制された。4)最近、TCDDがヒト由来培養肝細胞で、炎症や各病態で誘導されるプロスタグランジン合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ2(COX2)が誘導されることが報告された。COX2阻害剤は同時暴露した場合TCDDによる中脳静脈の血流遅延とアポトーシスを顕著に回復させた。COX2に対するモルフォリノアンチセンスオリゴ処置は低濃度TCDDによる血流遅延とアポトーシスをほぼ完全に消失させた。48〜50hpf胚の頚動脈と思われる部分にCOX2 mRNAの強い発現が観察できた。TCDD処置はCOX2発現に全く影響しなかった。5)我々はこれまで、ソニックヘッジホッグ(shh)が下顎にも発現し、TCDD暴露により顕著に減少した。AHR2-MOはTCDDによるshh発現の低下と下顎の低形成を阻止した。TCDDは下顎原基のptc1と2の発現には影響を与えなかった。以上より、TCDDによる毒性発現機構にAHR2、CYP1A、COX2、Shhの各分子が関与することが示唆された。
著者
大和 修 遠藤 大二 国枝 哲夫 竹花 一成 山中 正二 落合 謙爾 内田 和幸 長谷川 大輔 松木 直章 中市 統三 板本 和仁
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

多数の新規および既知の動物遺伝病(特に、ライソゾーム蓄積病)について、診断・スクリーニング法を開発した。また、その一部の犬疾患(GM1ガングリオシドーシスおよび神経セロイドリポフスチン症)については、予防法を確立・実践し、発症個体が出現しない程度にまで国内キャリア頻度を低下させることに成功した。さらに、猫のGM2ガングリオシドーシスに対しては、抗炎症療法を試行し、本治療が延命効果を有する可能性を示唆した。一方、次の研究に継続発展する新規の動物遺伝病を数件同定した。