著者
石山 育朗 鈴木 政登 佐藤 誠 中村 泰輔
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.55-69, 2006-11-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
33
被引用文献数
3

健康な20~42歳の男性9名を対象に, チューインガム咀嚼は交感神経系と副交感神経系のいずれをより亢進させるのかを明らかにするため, ガム咀嚼時の循環系(心拍数, 血圧, 心拍パワースペクトル), 唾液成分, 脳波(α ・β 波)を指標として検討した.実験には2種類の硬さ(soft, hard)のテアニン含有ガム(RX)と, ガムベースのみの対照ガム(C)を用い, 成分の影響等を比較した.RX, Cガム咀噛時ともに心拍数, 血圧の増加と唾液分泌量が増加し, 指尖容積脈波波高(WH)は低下した.唾液分泌量, 唾液総蛋白, 唾液α アミラーゼ濃度および電解質濃度は, RXガム咀嚼時に著しく増加した.Cガム咀嚼時には分泌型免疫グロブリンA(slgA)濃度と心拍パワースペクトル低周波/高周波成分比(LF/HF)が低下したが, RXガム咀嚼時には変化が認められなかった.コルチゾール濃度の変化はみられなかった.また, Cガム咀嚼時の脳波α 波の抑制が顕著にみられた.これらの結果から, ガムの味の有無に関わらずガム咀嚼中は交感神経系活動の亢進が顕著となるが, 口腔内では副交感神経系を同時亢進させ, 味付きガム(RX)の唾液分泌への影響は顕著であった.両ガムとも咀嚼終了によって循環系から推定する副交感神経系反応は顕著になるが, 唾液中sIgAと脳波α波の増減から推定したリラックス効果は, 咀噛刺激よりもリラックス成分の影響によると推察された.
著者
中村 一基 NAKAMURA Kazumoto
出版者
岩手大学語文学会
雑誌
岩大語文 (ISSN:09191127)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-7, 1994-01-01

菅原道真(菅相公)の左遷が何故起こったのか。『北野天神縁起』では宇多上皇と醍醐天皇とが政を道真一人に任せる事を密議、道真はその事を左大臣時平への憚りから辞退したが、時平はその事を漏れ聞いて無実の事を讒奏、その結果の左遷であるという。宇多上皇の道真への信任の厚さが、時平に危機感を感じさせ讒奏という行為に及ばせ、その讒奏に醍醐天皇が惑わされた結果の道真の不幸であるという。道真は『北野天神縁起』においては全くの犠牲者として描かれている。このような左遷をめぐる理解は、中世においては、北畠親房の「或時上皇の御在所朱雀院に行幸、猶右相にまかせらるべしと云さだめありて、すでに召仰たまひけるを、右相かたくのがれ申されてやみぬ。其事世にもれけるにや、左相いきどをりをふくみ、さまざま讒をまうけて、つゐにかたぶけたてまつりしことこそあさましけれ。し(『神皇正統記』醍醐天皇条)と同じ視点である。そして、讒奏に惑わされ道真を左遷した醍醐天皇について「此君の御一失と申伝はべり」(同前)とその過ちを認める。ただ、親房は「此君ぞ十四にてうけつぎ給て、摂政もなく御みづから政をしらせましましける。猶御幼年の故にや、左相の讒にもまよはせ拾けむ。聖も賢も一失はあるべきにこそ。」(同前)と幼さ故の醍醐天皇の未熟さを擁護することで、道真左遷の罪を首謀者時平に限定する。近世に入って、林鷺峰が「天皇ノ弟ヲ齊世親王卜云。菅丞相ノ婿ナリ。故ニサキニ宇多ノ譲位ヲヲサへトドメラレケルハ。齊世ヲ太子二立ントタクミナリト。時平奏聞セラレケルトナン。天皇今年十七ナレバ。其実否ノ沙汰モナカリケルカ。時平代々ノ執政ニテ。威強テ専二執行ヒケルトキコへシ。」(『日本王代一覧』醍醐天皇条)と、その讒奏の内容が皇位継承に関わった事を明確にした。この事を裏付けるのが、醍醐天皇の道真左連の宣命である。そこには、道真が「欲行廃立。離間父子之慈。淑皮兄弟之愛。」(『政事要略』巻廿二 年中行事八月上〈北野天神会〉)と、醍醐天皇を廃して齊世親王を立てようとしたとあり、その事が罪状の中心となっている。新井白石の『読史余諭』に『神皇正統記』『日本王代一覧』が引用され、伊藤梅宇の「左大臣時平おもへらく、われ摂家の身として微賤の凡人と相ならんで国政をとり、却っておされたる事を恨みて光卿定国などと謀りて、当今の齊世親王は菅丞相の聟となればこれを帝位につけ申さんと謀れる由を讒奏し給ふ。」(『見聞談叢』巻之一、四 菅原道真)、また安積澹泊の「讒を信じて姦を容れ、大いに主徳を累はせしは、啻に道真の不幸なるのみならず、抑々亦、帝の不幸なり。」(原漠文。『大日本史列伝賛藪』巻三上、菅原道真伝の賛)と時平(及びその一派)の讒奏が道真の不幸を招いたという認識に変化はない。その認識は、秋成が愛読した禅僧日初の『日本春秋』の「貶右大臣菅原道真為太宰権帥〈二十五日〉、先是上朝覲朱雀院、法皇謂上日、道真年高才賢挙国之所望也、宜任用、乃召道真宣其旨、時平聞之大忌、於是竊與源光、藤原菅根等屢讃之、方是時、時平妹穏子為皇妃、上皇落飾之後嬖於本朝、又菅根淵子入内承寵、是以内外讒行、道真為其女婿齊世親王謀廃立云、上不察虚実卒黜道真。」(延喜元年正月条)においても同じである。秋成以前、道真左遷に関わる歴史認識に大きな差異は見えない。しかし、『春雨物語』「海賊」に現れた「菅相公論」【注(1)】は、道真の寵臣性を際立たせ、左遷の原因を道真自身に求めるなど、宣命の「右大臣菅原朝臣寒門与利俄尓大臣上収拾利。而不知止足之分。有専権之心。以佞諂之情欺惑前上皇之御意。」(『政事要略』巻廿二)に通じ合う視点を持ち、それまでの道真諭とは異なる。本稿では、その意味を、秋成の不遇薄命説との関わりから論じてみたい。
著者
佐伯 純弥 長谷川 聡 中村 雅俊 中尾 彩佳 庄司 真 藤田 康介 簗瀬 康 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1293, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】陸上競技者において再発を繰り返すスポーツ障害の一つに,ランニングによって脛骨後内側縁に疼痛を生じる,シンスプリントがある。発症の原因として,下腿の筋の伸張ストレスの関与が疑われており,下腿の筋硬度が発症に影響を与える可能性があるが,どの組織が発症に関係するか一致した見解が得られていない。そのため,より効果的なシンスプリントの予防および治療法を確立させるためには,シンスプリントと下腿各筋の筋硬度の関係を検討し,どの筋が発症に関与するのかを明らかにする必要がある。しかしながら,シンスプリントに罹患している脚の筋硬度は疼痛による筋スパズムの影響を受ける可能性があるため,これらの関係を横断的に検討するためには,既往の有無での比較が必要である。そこで今回,筋硬度を表す指標として,せん断波エラストグラフィーを用いて下腿各筋の弾性率を算出し,シンスプリント既往脚と非既往脚で比較することで,シンスプリントと関連する筋を明らかにし,再発予防プログラム立案の一助とすることを目的とした。【方法】大学男子陸上中・長距離選手14名28脚(シンスプリント両側既往者6名,片側既往者1名,非既往者7名)を対象とした。対象者の群分けにおいて,片側既往者の既往脚を既往群,非既往脚を非既往群にそれぞれ分類したところ,シンスプリント既往群13脚,非既往群15脚であった。なお,本研究におけるシンスプリント既往の基準は,①過去にランニングによって脛骨内側が痛んだことがある,②その際に圧痛があった,③痛みの範囲が5 cm以上あった,④医師から疲労骨折の診断を受けなかった,⑤現在下腿に痛みがないこととした。筋弾性率の測定には超音波診断装置(Supersonic Imagine社)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,腓腹筋内側頭,腓腹筋外側頭,ヒラメ筋,腓骨筋群,前脛骨筋,長母趾屈筋,長趾屈筋,および後脛骨筋の弾性率を測定した。測定肢位は非荷重位,足関節底背屈中間位とした。統計解析には対応のないt検定を用い,各筋の弾性率を2群間で比較した。【結果】シンスプリント既往群は非既往群と比較して,後脛骨筋の弾性率が有意に高値を示した。他の筋においては両群で有意差が認められなかった。【結論】大学陸上中・長距離選手のシンスプリント既往脚では,非既往脚と比較して,後脛骨筋の筋硬度が高いことが明らかとなった。本結果から,後脛骨筋の柔軟性を獲得し,運動による下腿の筋膜および骨膜への伸張ストレスを軽減することでシンスプリントの予防に繋がることが示唆された。
著者
中村安太郎 編
出版者
温故堂
巻号頁・発行日
vol.第1集, 1890
著者
中村 好男
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.525-531,a1, 1992

中国では, 1980年代後半より農村企業の発展に伴う農業労働力の流出や, 政府による農業生産基盤投資の減少などの影響を受けて食糧生産が停滞気味となった。こうした情勢の中で, 中国当局による稲・麦の単収増加を図った「トン糧田」建設構想が打ち立てられた。トン糧田とは, 1ムー (0.066ha) 当り1tの食糧を生産できる水田のことをいうが, そのためには水利改良が絶対的な条件となる。そこで本稿では, トン糧田建設に係わる中国当局での取組みや, 技術, 管理などの課題について, 用水不足地帯である三河平原徐州市と, 排水不良地帯である太湖地区常州市の例を取り上げ紹介した。
著者
中村 義一
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要. A, 人文・社会 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.243-261, 1997-03

ターナーの晩年の始まりは1836年であると,時に考えられることがある。それは,彼のもっともよく知られた作品,例えば『戦艦テメレール号』のような作品の幾つかを生み出した,60歳代の新しい時期の始まりでもあった。他方,ターナーの晩年は1831年のような早い時期からとみられる場合がある。それは二つの補足書を次の年に付けた,6月10日付の彼の最初の遺言書作成の年である。そしてそれはまた,この画家の周知のマーゲイトでの二重生活が始まった時期でもある。われわれは老いた芸術家の晩年につくられた作品のスタイルは,ついに衰え始めた彼の健康のように,質的に衰弱すると考えがちである。しかし晩年の芸術家の芸術は,かならずLも肉体的衰えに左右されるものとはかぎらない。最晩年のターナーの作品に関して,このような事柄を,本論は考察するものである。It is sometimes considered that 1836 marked the commencement of Turner's late period and it has also been suggested this new era in his sixties opened with the production of some of his most popular works, for example, 'The Fighting Temeraire'. On the other hand, it has been suggested his late period can be dated as early as 1831; the year of his first will dated 10 June which was amended by two codicils in 1832. It was at this time the artist began his famed double life at Margate. We are apt to think that the style of an aged artist's work,produced in his later years, declines in quality as his health at last began to fall. It is, however, arguable that the art produced by an artist in his later years is not always affected by any physical condition due to ill health. In this paper I would like to consider these matters as it relates to the last works by Turner.
著者
中村 幸雄 吉村 泰典 玉樹 有告 山田 春彦 飯塚 理八 鈴木 正彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.2157-2164, 1987-12-01
被引用文献数
1

Polycystic Ovary Syndrome (PCO) 9例に対し,Luteinizing Hormone Reieasing Hormone analogue(LHRHa,Buserelin)を900μg/day点鼻投与,human menopausal gonadotropin (hMG) を90分毎に律動的に皮下投与し (LHRHa+hMG法),hMG単独の律動的皮下投与法 (bMG法) と比較した.LHRHa+hMG法は,12周期全周期排卵し,2例妊娠 (1例単胎女児出産,1例流産),1例Ovarian Hyperstimulation Syndrome (OHSS) 発生した.hMG法は26周期中22周期排卵,妊娠0,OHSS 5 例であった.排卵迄のhMG使用量はLHRHa+hMG法 : M±SE : 1,700±203IU,hMG法 : 2,344±223IUでLHRHa+hMG法が有意に少なかった.LHRHa+hMG法では,LHRHa投与後LH,Fonicle Stimulating Hormone (FSH),LH/FSH比,Estradiolは有意に低下し,hMG投与後LHはさらに低下,FSHは上昇傾向を示した.hMG法では,hMG投与後,LH,FSH,LH/FSH比は有意に低下するが,LH/FSH比の低下の割合は少ない.以上,LHRHa+hMG法は,hMG法に対しLH,LH/FSH比を低下せしめ,hMG便用量少なく,排卵率高く,OHSS発生率の少ない排卵誘発法といえる.
著者
中村 顕 平林 佳 田之倉 優
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.182-187, 2017-08-31 (Released:2017-08-31)
参考文献数
23

Microgravity environment has been used to obtain high-quality crystals. Strong magnetic force produced by a superconducting magnet can cancel out the gravity force, enabling construction of quasi-microgravity environment on earth. We developed a protein crystallization system which is composed of a superconducting magnet for the magnetic force-based quasi-microgravity and an inverted periscope for in situ observation of crystal growth. Crystals grown in the system showed improved and homogeneous quality.
著者
長濵 裕太郎 中村 滋延
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.17, pp.1-4, 2013-12-16

ゲーム音楽は,使用される場面に相応しい楽曲か否かが重要となるが,「場面に相応しい楽曲が有するべき音楽的特徴」 は未だにまとめられていない.そこで本研究では,一定の歴史と人気があるゲームシリーズの音楽を場面ごとに分類し,共通する音楽的特徴を 「場面に相応しい音楽が有するべき特徴」 として抽出した.その抽出結果をもとに,原曲データと場面名を入力することで,入力された場面に相応しい楽曲となるよう原曲データの各種音楽的要素の値を変更して出力する自動編曲ソフトウェア 《SYGMA》 を制作した.It is important for video game music to be appropriate to a game scene; however, features that appropriate game music should possess are typically poorly organized. This study classifies music used in popular games according to game scenes, and determines the common features that the game music should have for a scene. Accordingly, <<SYGMA>>, automatic arrangement software, is developed, which changes input music data into more appropriate music for a particular scene.
著者
寺田 勝彦 藤田 修平 田端 洋貴 脇野 昌司 井上 美里 中前 あぐり 小尾 充月季 辻本 晴俊 中村 雄作
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ac0400-Ac0400, 2012

【目的】 脊髄小脳変性症(Spino-cerebellar degeneration:SCD)の立位・歩行障害の改善には,体幹の前後動揺,体幹・四肢の運動失調によるバランス障害,脊柱のアライメント異常による歩行のCentral pattern generator(CPG)の不活性化に対応した多面的アプローチ(the multidimensional approach:MDA)が必要である.今回,SCDの立位・歩行障害へのMDAの有効性について検討した.【対象および方法】 当院の神経内科でSCDと診断され,磁気刺激治療とリハビリテーション目的に神経内科病棟に入院した40例である.無作為に,従来群(the conventional approach group:CAG)20例(MSA;5例,SCA6;12例,SCA3;3例),多面的アプローチ群(MDAG)20例(MSA;8例,SCA6;8例,SCA3例;ACA16;1例)に分別した.CAGでは,座位・四這位・膝立ち・立位・片脚立位でのバランス練習,立ち上がり練習,協調性練習,筋力増強練習,歩行練習を行なった.MDAGでは,皮神経を含む全身の神経モビライゼーションと神経走行上への皮膚刺激,側臥位・長座位・立位・タンデム肢位での脊柱起立筋膜の伸張・短縮による脊柱アライメントの調整,四這位・膝立ち.立位およびバランスパッド上での閉眼閉脚立位・閉眼タンデム肢位での身体動揺を制御したバランス練習,歩行練習を行なった. 施行時間は両群共に40分/回,施行回数は10回とした.評価指標はアプローチ前後の30秒間の開眼閉脚・閉眼閉脚・10m自立歩行可能者数,10m歩行テスト(歩行スピード,ケイデンス),BBS,ICARSの姿勢および歩行項目,VASの100mm指標を歩行時の転倒恐怖指数とし,両群の有効性を比較検討した.統計分析はSPSS for windowsを用い,有意水準はp<.05とした.【説明と同意】 本研究に際して,事前に患者様には研究の趣旨,内容および調査結果の取り扱い等を説明し同意を得た.【結果】 CAGの開眼閉脚の可能者数は13例(65%)から14例(70%)(p<.33), 閉眼閉脚は7例(35%)から9例(45%)(p<.16),10m自立歩行は14例(70%)から14例(70%)(p<1.00)と有意差は認められなかった.MDAGでは,開眼閉脚が14例(70%)から20例(100%)(p<.01),閉眼閉脚が6例(30%)から14例(70%)(p<.002),10m自立歩行が12例(60%)から20例(100%)(p<.002)と有意に改善した.CAGの歩行スピード(m/s.)は,0.56±0.24から0.69±0.28(p<.116),ケイデンス(steps/m.)は101.4±20.2から109.8±13.3(p<.405)と有意差は認められなかった.MDAGの歩行スピードでは,0.69±0.21から0.85±0.28(p<.000),ケイデンスは110.6±13.6から126.6±22.4(p<.049)と有意に改善した.CAGのBBS(点)は33.2±14.6から37.4±14.0(p<.01),ICARS(点)は17.2±7.9から15.4±8.5(p<.000)と有意に改善した.MDAGのBBSでは,30.0±9.1から40.9±6.8(p<.000),ICARSは16.1±4.9から9.4±3.0(p<.000)へと有意に改善した.CAGのVAS(mm)は55.7±28.1から46.3±29.0(p<.014)と有意に改善した.MDAGのVASでは72.4±21.6から31.4±19.4(p<.000)へと有意に改善した.また両群で有意に改善したBBS・ICARS・VASの改善率(%;アプローチ後数値/アプローチ前数値×100)は,CAGでは順に,15.2±17.3,15.0±18.0,22.1±44.3,MDAGでは33.1±17.3,43.7±9.9,59.2±21.7と,それぞれにp<.03,p<.001,p<.002と,MDAGの方が有意な改善度合いを示した.【考察】 今回の結果から,磁気治療との相乗効果もあるが,MDAGでは全ての評価指標で有意に改善し,BBS・ICARS・VASでの改善率もCAGよりも有意に大きく,立位・歩行障害の改善に有な方法であることが示唆された.その理由として,SCDでは体幹の前後動揺,体幹・四肢の運動失調による求心性情報と遠心性出力の過多で皮神経・末梢神経が緊張し,感覚情報の減少や歪みと筋トーンの異常が生じる.皮神経を含む神経モビライゼーションで,皮膚変形刺激に応答する機械受容器と筋紡錘・関節からのより正確な感覚情報と筋トーンの改善が得られた.また神経走行上の皮膚刺激で末梢神経や表皮に存在するTransient receptor potential受容体からの感覚情報の活用とにより,立位・歩行時のバランス機能が向上したといえる.その結果,歩行時の転倒恐怖心が軽減し,下オリーブ核から登上繊維を経て小脳に入力される過剰な複雑スパイクが調整され小脳の長期抑制が改善された事,脊柱アライメント,特に腰椎前彎の獲得により歩行のCPGが発動され,MDAGの全症例の10m自立歩行の獲得に繋がったといえる.【理学療法研究としての意義】 SCDの立位・歩行障害の改善には確立された方法がなく,従来の方法に固執しているのが現状である.今回のMDAにより,小脳・脳幹・脊髄の細胞が徐々に破壊・消失するSCDでも立位・歩行障害の改善に繋がったことは,他の多くの中枢疾患にも活用し得るものと考える.
著者
飯島 静男 大河原 恵子 大崎 小夜子 神沢 憲治 木崎 喜雄 久保 誠二 黒岩 繁 篠原 婦美江 関口 孝 高橋 武夫 田島 順子 玉田 淳子 角田 寛子 中村 庄八 服部 幸雄 武藤 斉 村山 昭夫 矢島 博 高島 和美 田中 淳子 萩原 哲 堀沢 勝
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.13, pp.251-260, 1976-12-30
被引用文献数
1

The Green tuff formations are widely distributed in the southern Joetsu district, and are divided into two groups, namely the Sarugakyo group and the Minakami group. The former overlies the latter unconformably. The area studied is surrounded by the River Akaya-gawa, the River Sukawa-gawa and the River Nishi-kawa, of which the latter two are the tributaries of the former. In this area the Sarugakyo group and the welded tuff formation with some related intrusive bodies are extensive. The Sarugakyo group is overlain unconformably by the welded tuff formation, and is divided, in descending order, into the following formations: Daido formation, Kassezawa formation, Hara formation, Akaya formation. The relation between each formation of the Sarugakyo group, generally, is conformable, but partial unconformity can be observed between the Hara formation and the Kassezawa formation. The structure of the Sarugakyo group is generally monoclinic with a NWW-SEE strike and low-angle dips toward SE. The Sarugakyo group is considered, from fossils, to belong to the middle Miocene. Some intrusive bodies, such as the Izumi-yama andesite, the Kasse andesite, the Amami-yama andesite, porphyrite and quartz diorite, are found in this area.
著者
山下 克也 津曲 恭一 尾田 一貴 小園 亜希 田中 亮子 中村 光与子
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.141-147, 2017-05-25 (Released:2017-07-05)
参考文献数
10

現在日本では異なる抗原由来の2種類のB型肝炎ワクチンが市販されている.通常1回のシリーズ(6か月間に3回接種)では同じ製品が使用されるが,1シリーズ中に異なる抗原由来のB型肝炎ワクチンを接種した場合の抗体獲得について検討された報告は少ない.今回,1シリーズ中に異なる抗原由来のB型肝炎ワクチンを接種した場合の抗体獲得について検討した.過去にB型肝炎ワクチン未接種であり,HBs抗体陰性が確認された被験者で,3回目を異なる抗原由来のB型肝炎ワクチンを接種した群を対象群(A群),3回全て同じB型肝炎ワクチンを接種した群をコントロール群(B群)とした.ワクチンの投与は皮下注で行い,HBsAb定量およびHBsAb定性は採血で測定し,10.00 COI以上をHBsAb陽性と判定した.有害事象は3回接種後の副反応を調査票で収集し,CTCAE Ver.4.0にて評価した.A群は9名,B群は7名であり,両群ともに全例で抗体獲得が確認された.有害事象はA群で3件,B群で1件認められたが,いずれもGrade 1であった.A,B群合わせた副反応の内訳は注射部位の疼痛3件,皮膚硬結1件であり,重篤な副反応を呈した症例はなかった.今回認められた有害事象はいずれもワクチンに共通した副反応であると考えられ,1シリーズ中に異なる抗原由来のB型肝炎ワクチンを接種しても良好な抗体獲得が得られる可能性が示唆された.
著者
中村 遼 岡田 昌彰
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究論文集 (ISSN:13459597)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.375-380, 2008

本研究では, 参加者のWEB上の記述という形でデータ取得が可能な野外音楽イベント「FUJI ROCK FESTIVAL」を研究対象とし, 参加者による周辺環境の解釈形態, 風景発見の実体を分析・把握し, 環境の外的特徴の発見促進媒体あるいはその意味探求への誘発装置としての野外イベントの実用性を提示した. その結果, 主目的がライブ鑑賞である野外イベントであっても, 人が自然環境と交わることにより, 風景が副次的に発見されること, 時間帯や天候により変化する風景が体感されやすいこと, ならびにライブ鑑賞時においては周辺の自然環境や会場の設えをもライブと関連させ, 演出の一要素として読み替えを行っていることがわかった.
著者
中村 豊 佐藤 勉
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学研究発表会講演論文集 (ISSN:18848435)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.225-228, 2001

1999年-2000年にかけて、メキシコシティにおいて地盤や被災程度が異なる地域の地盤および構造物の常時微動を比較的稠密に計測し、卓越振動数や地震動増幅倍率、被災しやすさ等を調査した。メキシコシティは、1985年ミチョアカン地震で大きな被害を受けている。調査の結果、地盤の卓越振動数Fgや地盤の被災しやすさ指標Kg値は、丘陵部、遷移部、堆積部の地盤区分や1985年を含む過去の地震被害状況と調和的な変化を示すことが確認された。また建物に関しては、1985年の地震後の調査結果と比較した。<BR>本研究では、発生が恐れられている地震に備えて的確な耐震診断技術を確立することを目指している。