著者
中村 桂子
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.13-24, 2016 (Released:2017-02-28)
参考文献数
11

物が二重に見えるという訴えを持つ患者は臨床的によく遭遇する。麻痺性斜視や甲状腺眼症、急性内斜視、skew deviation、輻湊不全など原因はさまざまで検査、診断、治療方法に苦慮することも多い。症状の変化など経過を見ながら、患者の不自由さに早急に対応する必要があり、近年、対症療法としてプリズム療法の報告が多く見られる。今回、筆者が経験したプリズム処方の自験例を紹介しながら、疾患ごとの検査のポイントについて検討した。 プリズム療法が適応となる頻度は疾患によりかなり差がある。最も良い適応疾患は、むき眼位による偏位量の変化が少ないskew deviationであるが、それでも実際に処方率は46.2%に留まり、次いで外転神経麻痺33.3%、滑車神経麻痺32.7%の順であった。 また、プリズム処方例の中で装用を症状が改善して中止できた割合は、外転神経麻痺や滑車神経麻痺例において3ヵ月で約3~4割、6ヵ月で約5割程度であった。 甲状腺眼症のようにプリズム療法の適応になりにくい疾患でも、 Quality Of Vision (QOV)を向上させるために処方する場合もある。またプリズム療法で複視が解消できる疾患は限られているため、遮蔽法を選択せざるを得ない場合もある。その場合は、遮蔽膜での全面遮蔽や部分遮蔽、OCLUA®(オクルア®)のような遮蔽用のレンズも開発されており、これらを使用することで少しでも苦痛をやわらげる配慮が必要である。
著者
永井 秀利 中村 貞吾 野村 浩郷
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.690, pp.25-32, 2003-02-28
参考文献数
16

我々は,マイクで拾えない程度の微発声または無発声で発声された発話の内容を認識し,これを計算機への自然言語入力として用いることを研究している.人が発声を行う場合,実際には声に出さなかったとしても,声を出した場合に類似した筋肉の活動が生じると思われる.そこで我々は,それを表面筋電位から捉えることにより,発話内容を認識することを目指している.本稿では,日本語の5母音の認識に活用するために,表面筋電測定位置として口裂周辺の4個所を選定した.その表面筋電波形を計測して分析を行った結果,この4個所でも母音認識の手がかりがかなり得られることや,声の強弱などの発声時の特徴も波形に反映されていることが確認できた.
著者
中村 勝範
出版者
慶應義塾大学
雑誌
法學研究 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.1-32, 1994

論説一、問題の所在二、変現出没的東京朝日新聞と吉野作造三、皇室讃美の吉野のクロポトキン論四、安全圏からの学問・研究自由論五、結語
著者
関澤 偲温 中村 尚 小坂 優
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

Variability of convective activity over the Maritime Continent (MC) influences climatic condition over East Asia via atmospheric teleconnections, through which SST variability such as ENSO is considered to provide seasonal predictability. In boreal winter, interannual variability of convection is centered around Indonesia and northern Australia, representing significant variability in the Australian summer monsoon (AUSM). Through an analysis of observational data, we show that interannual variability of austral summertime precipitation over northern Australia is hardly driven by tropical SST variability and is dominated by the internal variability of AUSM. Our analysis suggests that anomalously active AUSM sustains itself by inducing anomalous low-level westerlies over the eastern Indian Ocean and enhancing surface evaporation and moisture inflow into northern Australia. Anomalous AUSM activity is associated with distinct wavetrain pattern from the MC toward the extratropical North Pacific with dipolar pressure anomalies resembling the Western Pacific pattern. This teleconnection modulates the East Asian winter monsoon and exerts a significant impact on wintertime temperature and precipitation especially in Japan and Korea. This study reveals that interannual variability of the AUSM, which is unforced locally or remotely by tropical SST variability, substantially limits seasonal predictability in wintertime East Asia.
著者
中村 克行 趙 卉菁 柴崎 亮介 坂本 圭司 大鋸 朋生 鈴川 尚毅
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.1143-1152, 2005-07-01
被引用文献数
22

本論文では, 複数のレーザレンジスキャナを用いた歩行者トラッキングの方法, 及び駅での検証実験について述べる.提案手法は, ネットワークを利用して複数のレーザスキャナを同期させ, 得られた足断面のレンジデータから歩行者トラッキングを行う.トラッキングアルゴリズムは次の機能で構成される: レンジデータのクラスタリングによる足候補の検出, 足候補のグルーピングによる歩行者候補の検出, 歩行者候補の動きベクトル検出, 歩行モデルに基づく拡張カルマンフィルタによる既存軌跡の延長処理.提案手法を東京都内の駅構内コンコースに適用した結果, 最大で約150人を同時にトラッキングすることができた.トラッキング精度は, 通勤ラッシュ時において8割を超えた.広範囲における高密度の群集計測への応用が期待される.
著者
新井 裕幸 倍味 繁 田原 俊介 伊藤 晋介 中原 夕子 守本 亘孝 小林 伸好 板野 泰弘 山口 高史 丹羽 一夫 関 二郎 志垣 隆通 中村 和市
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.144, no.3, pp.126-132, 2014 (Released:2014-09-10)
参考文献数
2
被引用文献数
1

医薬品の研究開発において,動物試験は新薬候補物質のヒトでの安全性および有効性を予測するために非常に重要なものである.また,3Rs(Replacement,Reduction,Refinement)の観点からも,より効率的に新薬候補物質の評価を行うことが必要である.このような理由から,疾患モデル動物には高い精度,再現性,ヒトへの外挿性を有することが求められている.日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 基礎研究部会では,これまでの医薬品開発に貢献した疾患モデル動物について把握するとともに,今後の疾患モデル動物の開発に資することを目的として,加盟企業を対象にアンケート調査を行った.調査票では,これまでに新薬の開発等で使用した疾患モデル動物,使用によって得られた成果,使用の際に苦労した点および当該疾患モデル動物について改善されるべき点を尋ねた.さらに,今後期待される疾患モデルに関して意見を求めた.アンケートの回答は62 社中31 社から得られた.その結果,これまでに様々な疾患を対象とした医薬品の開発に多様な疾患モデル動物が使用されており,その多くの事例で疾患モデル動物の使用によって目的とする疾患に対する新薬候補物質の有効性が確認されていた.すなわち,新薬開発における疾患モデル動物の有用性と意義が改めて示された.使用の際に苦労した点としては,試験方法の至適条件の設定や疾患モデル動物作製の困難さ等に関する意見が多かった.各疾患モデル動物の改良すべき点としては,動物福祉の観点から動物に与えるストレスレベルのさらなる軽減,ヒトの病態や発症機序への類似性,薬効のヒトへの外挿性,ばらつきの程度,データの精度・再現性,モデル作製に要する手術等の高度な技術を必要としない簡便性が挙げられた.将来的な期待としては,ヒトの病態をより正確に反映した,外挿性の高いモデルの開発を期待するとの意見が多かった.本稿では,これらの調査結果の詳細を報告するとともに,動物試験および疾患モデル動物の役割,ならびに今後の展望について考察を加えた.
著者
中村 好一 飯沼 一宇 岡 英次 二瓶 健次
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.316-320, 2003-07-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
13

わが国における亜急性硬化性全脳炎 (SSPE) の疫学像を明らかにする目的で, 臨床調査個人票の解析を行った. 患者の重複を除外して, 125人 (男: 66人, 女: 59人) の臨床調査個人票を集めることができた. SSPE発病時の年齢分布は5~14歳にピークがみられた. 麻疹の罹患は109例で時期が明らかにされており, 80%以上が2歳未満で罹患していた. 麻疹罹患からSSPE発病までの期間の分布は5年から10年の問に集中していた. 平均は8.8年 (標準偏差=4.3年), 中央値は7.8年, 最短は2月, 最長は23.6年であった.
著者
中村 勝範
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法學研究 : 法律・政治・社会 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.41-74, 1992-01

十時嚴周教授退職記念号一、問題の所在二、東京砲兵工廠同盟罷業小史(大正八年) 1、小石川労働会結成 2、同盟罷業 (I) 3、同盟罷業 (II) 4、検挙三、結語
著者
上原 沙織 石黒 宏美 初谷 周子 大橋 恵美 尾山 真理 土屋 康雄 中村 和利 Uehara Saori Ishiguro Hiromi Hatsugai Shuko Ohashi Emi Oyama Mari Tsuchiya Yasuo Nakamura Kazutoshi
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.123, no.6, pp.311-317, 2009-06

紫外線は, 様々な皮膚症状や眼症状, 免疫機能低下などの健康影響を引き起こすことが示されている. これらの健康影響を防止するためには, 紫外線環境を正しく把握する必要がある. そこで, 2008年10月22日, ハワイ, ワイキキビーチにおいて, 日照地点と目陰地点の紫外線強度の日内変動, 及び各種商品による紫外線カット率を調べた. 日照地点の直射方向, 水平方向, 日陰地点の垂直方向, 水平方向, 地面方向からの紫外線は12時に最高値を示し, 日照地点の垂直方向, 地面方向は15時に最高値を示した. すべての方向で山型のグラフを示すことが明らかとなった. 各種商品の紫外線カット率は, 縁Tシャツ, 日傘, 日焼け止めクリーム, 雨傘はほぼ90%を示したが, 白Tシャツは68%程度であることが示された. 日照地点では9時から15時の間はUV indexが3以上を示したことから, 日焼け止めクリーム, 濃い色のTシャツ, 日傘, 雨傘などの有効な紫外線対策が必要であると考えられた. 今後, 紫外線の影響を防止する観点から, 日焼け止めクリームの紫外線カット率の経時変化などについて焦点を当てて調査する必要があると考える.
著者
中村 周作
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100039, 2017 (Released:2017-05-03)

発表者は,宮崎・熊本・大分を事例として,地域的に好まれる酒の分布圏(飲酒嗜好圏)の析出を試みてきた。今回対象とする佐賀県域を含む北部九州は,従来清酒文化圏として,わが国の大半の地域と共通する飲酒嗜好地域であったところに数次の焼酎ブームで焼酎嗜好が広がり今日に至る。したがって,本研究によって,地域独自の状況把握と同時に,日本におけるおおよその飲酒嗜好とその変容を見通すことができる。本稿の目的は,①地域ごとの飲酒嗜好とその変容を把握すること,②佐賀県域の地域的飲酒嗜好圏の析出を試みる。その上で③わが国の清酒文化圏の飲酒嗜好とその変容について展望する。研究方法として,『福岡国税局統計書』中のデータ分析と,より詳細なデータ,および関係者の声を聞くために,県内全域で57件の小売酒販店に対する聴き取りアンケート調査を実施した。佐賀県は,九州北西部,福岡県と長崎県に挟まれる位置にある。県の面積2440.7km2は,全47都道府県中41位,人口83.3万人も41位,世帯数29.4万も43位の小規模県である。なお,当県内には,税務署管轄区が5(鳥栖地区,佐賀地区,唐津地区,伊万里地区,武雄地区)あり,以下この地域区分により,論を進める。 佐賀県域における飲酒嗜好は,東接する福岡県から波及するブームの影響を強く受けてきた。清酒は,消費の減少が著しい。ただし,これはいわゆる普通酒(大量生産酒)の減少が著しいためであり,特定名称酒は近年好調,佐賀酒ブームが起こっている。単式蒸留しょうちゅうは,消費量が増加し,いわゆる焼酎ブーム末期の2007年にピークとなったが,その後漸減傾向にあり,特定銘柄が生き残っている。連続式蒸留しょうちゅう消費は,漸減を続けてきた。1980~年のチューハイブームと2004年以降の焼酎ブーム時に消費が微増して現在に至る。地区別に飲酒嗜好の特徴をみると,鳥栖地区は,単式蒸留しょうちゅう(特にイモとムギ)の流入と,連続式蒸留しょうちゅうの強さもあって,清酒消費が幾分減じている。佐賀地区は,伝統的に清酒嗜好の強い地区であるが,中で多久は,旧炭鉱地として焼酎消費嗜好が根強い。唐津地区も,清酒嗜好が強いが,ムギ焼酎の消費割合が5地区中で最も高い。伊万里地区は,清酒・イモ消費嗜好が拮抗するが,連続式蒸留しょうちゅうの消費割合も鳥栖地区と並んで高い。武雄地区も,清酒消費の強い地区である。特に強いのが鹿島・嬉野,白石であり,県内有数の清酒産地が,そのまま消費中心となっている。一方で,地域別にみていくと,温泉観光地である武雄市はイモ焼酎の割合が高いし,大町町や江北町でムギ焼酎,江北町や太良町で連続式蒸留しょうちゅう嗜好が強いのは,それが県の縁辺部に残っている例である佐賀県域における飲酒嗜好圏を分類すると,Ⅰ「清酒嗜好卓越型」:伝統の系譜を引き,清酒の生産-消費が直結する地域である。Ⅱ「単式蒸留イモしょうちゅう・清酒嗜好拮抗型」:鳥栖市は,九州の東西南北の飲酒文化が交差する地域であり,伝統的な清酒嗜好に加えていち早く南九州のイモ焼酎のシェアが拡大した。多久市は,かつての炭鉱地で根強い焼酎嗜好がみられる。Ⅲ「清酒・単式蒸留イモしょうちゅう・単式蒸留ムギしょうちゅう・連続式蒸留しょうちゅう嗜好拮抗型」:この型は,県の縁辺部に位置する三養基・神埼地区は,福岡方面から入ってきた焼酎ブームの最も大きな影響を受けた地域であり,同時に連続式蒸留しょうちゅう嗜好も根強い。太良町は,伝統的な清酒嗜好に加えて,福岡方面からの観光客の流入が大きく,観光客の嗜好もあってイモ,ムギ嗜好がみとめられる他,伝統的に連続式蒸留しょうちゅうの強い地域である。
著者
庭野 ますみ 渡辺 はる香 古山 明子 板垣 史則 中村 純人 佐島 毅
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】障がいのある子どもをもつ親の研究はこれまで母親のショック反応,母親のもつ現実のストレスなどネガティブな側面に焦点をあてたものが多い。しかし日々の臨床現場で接する母親の中には家族や周囲からの理解と支援を得ながら子どもをたくましく育てている母親も存在する。ストレスフルな状況を体験してもそこから立ち直りを導く心理的特性をレジリエンスというが,本邦ではダウン症,発達障害の子どもをもつ母親の報告が存在するのみで,我が国の肢体不自由児の約半数を占める脳性麻痺の子どもをもつ母親のレジリエンスの報告はほとんどない。そこで,脳性麻痺の子どもをもつ母親のレジリエンスの実態を調査することを目的とした。【方法】対象は当院で理学療法を施行している脳性麻痺の子どもをもつ母親61名で,方法は無記名自記式質問紙法を施行した。調査項目は1.子どもの属性:年齢,性別,出生順位,粗大運動機能分類システム:Gross Motor Function Classification System(以下GMFCS),コミュニケーション能力,Barthel Index(以下BI),障害者手帳の等級 2.母親の属性:年齢,世帯構成,世帯収入,就労状況,告知のこと,育児中「力」になった・あるいは心の支えと感じた出会いやサポートの存在,家族のサポートに対する満足感 3:子育てレジリエンス尺度 4:育児負担感指標 5:精神的健康度日本版GHQ-12項目短縮版とした。レジリエンスに関連する要因を明らかにするために,統計解析として,記述統計の他,従属変数を子育レジリエンス尺度,説明変数を単変量解析にて関連性の見られた変数とした重回帰分析(強制投入法)を行った。有意水準は5%未満とした。【結果】子どもは3歳から46歳までの男性35名,女性24名でGMFCSがIVとVレベルの子どもが72%,BIが0点であるものが40%,身体障害者手帳1級を所持しているものが68%と重症の子どもが多い実態が明らかになった。母親の平均年齢は48.3±10.7歳(26~75歳)であった。母親の85%が夫婦と子どもの世帯であるが,そのほとんどが育児中に「力」になった出会いやサポートがあったと答えた。レジリエンスは母親の年齢,世帯収入,子どもの年齢,GMFCSとは関連がなかったが,重回帰分析の結果,家族のサポートに対する満足感(β値0.435)育児負担感指標(β値-0.507)精神的健康度日本版GHQ-12項目短縮版(β値0.627)が抽出された(調整済R二乗0.660)。【結論】脳性麻痺の子どもをもつ母親のレジリエンスは,家族のサポートに満足か否かという事と,育児負担感,精神的健康度と関連があった。レジリエンスは育児負担感の低減と精神的健康度の増進を促すことで高められる(尾野,2011)と示唆した先行研究と同様な結果が脳性麻痺の子どもをもつ母親においても認められた。