著者
山田 洋一 堀本 ゆかり 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.589-595, 2013 (Released:2013-11-09)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

〔目的〕理学療法非熟達者の視線を測定することで,動作探査能力を分析し技能指標の手がかりを模索する.〔対象と方法〕対象は養成校4年生12名.腱板断裂術後の肩挙上を投影し,プロフィール告知前後の停留点の測定と,「疾患名」「注目点」「注目点の変化」「動作分析の注目点」を回答させ視線特性を検討した.〔結果〕疾患名の正答者は1名で,告知前後の停留回数は肩関節・肩甲骨周囲・肘部で有意な差があった.注目点は,全員が肩関節,肩甲骨周囲を注目していると回答し,計測による結果と一致していた. 告知後,視点ポイントが変化したと回答した者は,停留点が絞られ,停留回数は減少していた.〔結語〕非熟練者にとって容易な課題を提示することで,視線は分析に必要なポイントに視点をコントロールでき,情報収集が可能になると考える.
著者
佐藤 仁 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.233-237, 2006 (Released:2006-09-22)
参考文献数
22
被引用文献数
3 2

一側(右)上肢PNF屈曲-外転-外旋パターンの開始,中間,終了肢位で,徒手による等尺性抵抗運動を施し,対角線上の左下肢にかかる力について検討した。被検者は右利き健常男性14名(平均20歳)。右上肢同パターンへの抵抗運動で左下肢にかかる力は,上肢開始肢位4.04±2.40 kgf,中間肢位9.01±3.00 kgf,終了肢位6.10±4.09 kgfであった。左下肢にかかる力は,上肢中間肢位への抵抗運動が,開始肢位および終了肢位に比して有意に高値を示した(p<0.05)。左下肢伸展方向の最大筋力に対する割合は,右上肢開始肢位28.8%,中間肢位61.2%,終了肢位43.7%であった。一側上肢への等尺性抵抗運動で,体幹や下肢へ運動が拡がり,力学的な反応で反対側下肢の筋活動が向上すると解釈した。
著者
一場 友実 解良 武士 島本 隆司 糸数 昌文 丸山 仁司 大久保 隆男
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.195-198, 2002 (Released:2002-08-21)
参考文献数
11
被引用文献数
5 2

抵抗負荷による呼吸筋トレーニング器具を用い健常成人男性7名を対象に,負荷量を変化させて呼吸筋活動を検討した。最大口腔内圧とその時の筋電活動,最大随意収縮時の筋電活動そして5段階の吸気・呼気抵抗負荷時の口腔内圧とその時の筋電活動を記録した。測定筋は吸気補助筋群(胸鎖乳突筋,僧帽筋),呼気筋群(外腹斜筋,腹直筋)である。筋電活動レベルの評価には,最大随意収縮時の筋電活動に対する百分率を用いた。結果として吸気・呼気口腔内圧と負荷量の間には,直線的な関係が認められた。また筋電活動と負荷量を二要因とする二元配置の分散分析の結果は有意な主効果が認められたが,その筋の活動は各筋群間によって差が認められた。吸気負荷では胸鎖乳突筋の筋電活動が最も高値を示し,全ての筋において筋の活動は負荷量増加に伴い直線的に増加した。呼気負荷では外腹斜筋の筋電活動が低負荷から高値を示したが,その他の筋は負荷量増加によっても著明な活動は呈さなかった。
著者
生方 瞳 丸山 仁司 霍 明 黄 秋晨
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.301-305, 2014-08-20 (Released:2017-06-27)
被引用文献数
3

【目的】本研究は,超音波画像診断装置を用いて健常成人の多裂筋横断面積を測定し,男女差に影響を及ぼす因子をあきらかにし,多裂筋横断面積の男女差を補正する方法を検証することを目的とした。【方法】対象は腰痛の既往のない健常若年者63名(男性30名,女性33名)とし,超音波画像診断装置を用い腰部多裂筋横断面積を測定した。【結果】多裂筋横断面積は,男性が女性より有意に高い値を示した。しかし,多裂筋横断面積を身長および体重で除した値では,男女間に有意差は認められなかった。横断面積は身長および体重,BMIと有意な相関を示し,重回帰分析(ステップワイズ法)では,体重のみが採択された。【結論】体格に依存しない多裂筋横断面積を求めるためには,体重で除する必要があることが示唆された。さらに,多裂筋横断面積体重比は,男女差の影響が少ない筋横断面積の指標として有用であることが示唆された。
著者
山田 洋一 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.385-389, 2012 (Released:2012-09-07)
参考文献数
3
被引用文献数
4 2

〔目的〕理学療法士の育成課題を抽出するため,理学療法士の自己認識を分析した.〔対象と方法〕静岡県内の医療施設に勤務する理学療法士67名とした.「自己認識質問紙」を用い調査を行い,解析した.〔結果〕「一人前」に到達するまでの年数は平均9.98±4.24年であった.「治療技術」と「学術」の重要度では,経験年数が低いほど「治療技術」の修得を必要と感じている者が多く,自身の達成度や組織の満足度に課題のあることが示された.〔結語〕臨床における業務の中心は,患者と向き合い,理学療法を通して,医学的側面から患者の社会適応性を高めることである理学療法士としての現在の自分の達成度が30.6±19.0%という状況をみると,組織や個人の需要に応じた職業支援に加え,自身のキャリア向上に向けたプログラムの開発が望まれる.
著者
斎藤 昭彦 丸山 仁司 新井 正一 橋本 光康 金場 敏憲 岩谷 力
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学紀要 (ISSN:13424661)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.35-43, 1998-12-25

この研究の目的は,MR画像から1)生体の大腿四頭筋全体あるいは個々の筋の各高位における筋断面積および筋容積を求め,臨床応用のための基礎データを提供すること,2)最大筋断面積や筋容積と,等運動性筋トルクとの関係性を検討し,最大断面積,筋容積といった筋形態学的情報から等運動性筋トルクの推定の可能性を探求することであった.健常大学生20名のMR画像から右大腿四頭筋の筋断面積および筋容積を求めた結果,大腿四頭筋の最大筋断面積は43±12.7cm^2,筋容積は1055±353cm^3であり,最大筋断面積と筋容積との間には相関係数0.981の高い相関が認められた.また,最大筋断面積,筋容積と,等運動性筋トルクとの間にも高い相関が認められ,MR画像からの形態学的情報である大腿四頭筋の最大筋断面積および筋容積から等運動性筋トルクの推定が可能であった.
著者
右田 正澄 丸山 仁司 山本 澄子
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.138-142, 2020-04-01 (Released:2021-04-15)
参考文献数
16

脳卒中患者の短下肢装具装着に着目して,装具の種類と身体機能が装着時間に影響しているのかを明らかにするために本研究を実施した.生活期の脳卒中患者19名に対して,Shoe Horn Braceと継手付短下肢装具,Gait Solution Design (GSD)の3種類の短下肢装具を用いて装着時間を測定した.利き手による影響を確認後,Brunnstrom Recovery Stageごとに各装具の装着時間を算出した結果,継手付短下肢装具が最も装着時間が短く,装具の足関節の可動性の有無と下腿ベルトの位置が装着時間に影響していることが示唆された.GSDは装着のために時間を要し,使用する際は装着指導も必要であった.
著者
千葉 哲也 堀本 ゆかり 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.803-806, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
6

〔目的〕厚生労働省は2015年より50人以上の規模である事業所にメンタルヘルスチェックを義務付けした.当院は外部委託し年 2回実施している.近年管理者間に連携不足を感じ2018年12月の集団分析で管理者と一般職員に分類したところ,管理者の健康リスク値が高値であった.健康リスク値の改善を目的にDonabedianの考えに基づき構造改革を行った.〔対象と方法〕リハビリテーション科44人に対し介入前後の健康リスク値等を比較した.〔結果〕健康リスク値の改善はみられなかったが,離職率は改善した.管理者への対策が一般職員の離職予防の一助になったと考える.〔結語〕多くの施設でメンタルヘルスチェックを活用し,組織分析を行い組織運営改善の一助となることを希望する.
著者
石坂 勇人 水嶋 優太 阿久津 瑞季 秋山 純和 千田 雅之 久保 晃 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.461-467, 2016 (Released:2016-07-06)
参考文献数
17

〔目的〕肺癌切除術前後の6分間歩行試験(6MWT)の変化と歩行距離を規定する因子を明らかにすることを目的とした.〔対象〕肺癌切除術を施行した57名を対象とした.〔方法〕術前後で6MWT,呼吸機能検査,膝伸展筋力を測定した.6MWTを従属変数とした重回帰分析を用いた.〔結果〕歩行距離は術後で有意な低下が認められた.術前6MWTの重回帰分析では,最高PR,安静時PR,年齢,%VC,安静時呼吸困難感,膝伸展筋力を独立変数とする有意な変数が得られた.術後6MWTは,年齢,歩行後SBP,%VC,最高PR,安静時呼吸困難感を独立変数とする有意な変数が得られた.〔結語〕術前6MWTには心拍予備能力,術後6MWTには心拍出量が関与し,術前後ともに年齢,%VCの影響を受けた.
著者
鈴木 康文 丸山 仁司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.A0901, 2004

【目的】<BR> 筋肉系は持続的な運動負荷によって、筋細胞と関節や筋の結合組織の発達が促進される。その結果、筋の太さ、横断面積が増大し、最大筋力の増加をもたらす。そして、筋肉内毛細血管の増加をきたさせ、筋肉に対する循環血液量を増大させる。このことから、最大筋力が高ければ筋肉内毛細血管数は多く血液供給能力が高いと推定でき、自転車エルゴメーターのペダル踏み運動などで漸増負荷運動を行なわせると、最大筋力が高いほど相対心拍数における仕事率が大きいと考えられる。そこで、本研究では自転車エルゴメーターを用いた漸増負荷運動を行い、目標心拍数(心拍数の増加率50%)に至ったときの作業強度(PWC <SUB>HR50%</SUB>)を測定し、PWC <SUB>HR50%</SUB>に影響を及ぼしている因子について検討した。<BR>【対象と方法】<BR> 対象は地域情報誌にて体力測定の参加を募集し、体力測定によって悪化が予想される内科的・整形外科的問題がないと医師に判断された60歳以上の中高齢者11名(平均年齢71.9±4.2歳)とした。PWC <SUB>HR50%</SUB>と下肢筋力、酸素運搬能力との関係を検討するために、PWC <SUB>HR50%</SUB>と膝伸筋群の60deg/secにおける最大トルク、赤血球数およびヘモグロビン量とについてPearsonの相関係数を算出した。さらに、PWC <SUB>HR50%</SUB>に関与している因子の影響力を検討するために、目的変数をPWC <SUB>HR50%</SUB>とし、年齢、体重、身長、60deg/secにおける最大トルク、赤血球数、Hb量の6変数を説明変数として、変数増加法による重回帰分析を行った。<BR>【結果および考察】<BR> PWC <SUB>HR50%</SUB>と60deg/secにおける最大トルクとの間に有意な相関(r=0.76)がみられ、60deg/secにおける最大トルクが大きいほど、PWC <SUB>HR50%</SUB>が高くなる傾向を示した。PWC <SUB>HR50%</SUB>と赤血球数、Hb量とには有意な相関が認められなかった。また、重回帰分析の結果、negative変数として年齢、positive変数として60deg/secにおける最大トルク値が採択され、重相関係数は0.81(p&lt;0.05)であった。また、この2つの説明変数のうち、どちらがPWC <SUB>HR50%</SUB>により大きな影響を与えているのかを標準偏回帰係数の絶対値で比較すると、年齢(β=0.295)より60deg/secにおける最大トルク値(β=0.795)のほうが大きく、PWC <SUB>HR50%</SUB>に及ぼす影響の強さは、年齢より60deg/secにおける最大トルク値のほうが大きいことが示された。<BR>本研究からPWC <SUB>HR50%</SUB>と60deg/secにおける最大トルク値との関連性が強いことが明らかになり、下肢の最大筋力を推定するのにPWC <SUB>HR50%</SUB>の測定が有効である可能性が示された。
著者
小野田 公 久保 晃 丸山 仁司
出版者
一般社団法人 栃木県理学療法士会
雑誌
理学療法とちぎ (ISSN:21864861)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.15-18, 2015 (Released:2021-03-11)
参考文献数
8

Social Networking Service(ソーシャルネットワーキングサービス:以下SNS)はインターネット上でメッセージや動画・写真などの情報交換が可能である.簡単に情報をやり取りできるために非常に便利であるが,個人情報の取り扱いや情報漏えいなどの問題が指摘されている.理学療法士は,患者の個人的な情報に扱うことが多く,その情報の漏洩を防ぐために守秘義務が課せられている.しかし,SNSを利用した医療系職員や実習生による個人情報保護的観点や職業倫理観にかける記載が問題となっている.このような問題を起こさないためにSNS上での法的な権利やそれらに対しての使用に関する教育機会が必要不可欠である.
著者
小野田 公 金子 純一朗 森田 正治 丸山 仁司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】携帯電話の普及およびソーシャルネットワーキングサービス(以下SNS)の利用者増加に伴い,インターネットワーク上でのコミュニケーションが増加している。総務省における平成24年版 情報通信白書によるとソーシャルメディアの利用者は,スマートフォン等の普及により急速に増加しつつあり,世界的にSNSサービスを提供しているFacebookの利用者は,既に9億人に達していると報告されている。また,平成23年通信利用動向調査では,スマートフォン,タブレット端末の利用者においてソーシャルメディアの利用率がパソコンや携帯電話に比べて高くなる傾向にあることが報告されている。SNSは,コミュニケーションや情報収集ツールとして非常に有用であるが,最近,倫理観を問われる不適切な行為も散在され,画像および発言内容が報道や事件へと発展している。また,SNSを利用した医療系職員や実習生による個人情報保護的観点や職業倫理観にかける記載が問題となっており,利用に関しての医療系大学生への教育やガイドラインの整備が必要となってきている。本研究では,本学理学療法学科学部生のSNSの利用実態及び情報流出に関する対策についてアンケートを作成し調査した。また,実習中のSNSの利用実態についても調査した。【方法】平成25年,本学理学療法学科に在籍している3年生99名(男性47名21.3±2.1歳,女性52名21.0±1.7歳)を対象に,評価実習終了後アンケート調査を実施した。本調査ではSNSの種類として,総務省の「平成23年通信利用動向調査」を参考にSNS:mixi,Facebook,LINE,マイクロブログ:Twitter,ブログ:Amebaブログ,ソーシャルゲーム:Gree,モバゲーのサービスを挙げた。アンケート調査項目は,(1)SNS利用状況,(2)SNS使用頻度,(3)パスワード管理,(4)公開制限の有無,(5)人物画像掲載の経験,(6)撮影人物への掲載許可の有無,(7)拡散機能知識確認,(8)肖像権,著作権侵害の認識確認,(9)ネット詐欺の知識確認,(10)実習中のSNS利用状況,(11)実習中のSNS使用頻度,(12)実習中のSNS使用内容とした。回答形式は2項選択法,自由記載方式を用いた。【倫理的配慮,説明と同意】全対象者には研究の趣旨・方法について事前に説明し,同意を得た上で無記名にて調査を行った。個人や実習施設を特定するような設問はなくし,情報管理には十分留意した。なお,本研究は国際医療福祉大学倫理審査委員会の承諾を得ている(承認番号:13-Io-139)。【結果】対象者99名全員が複数種類のSNSを利用していた。使用しているSNSの種類は,mixi8名(3.4%),Facebook50名(21.3%),LINE97名(41.3%),Twitter72名(30.6%),Ameba5名(2.1%),Gree1名(0.4%),モバゲー2名(0.9%)であった。使用頻度は,1日1回が最も多く47名(47.5%),次いで1日5回以上が28名(28.3%),1日3~4回7名(7.1%),1日2回5名(5.1%)であった。パスワード変更の定期的実施者は1名,無断掲載が肖像権侵害となる知識を持っている者は85名,実際に撮影人物の掲載許可をとっている者は24名であった。評価実習中にSNSを活用した学生は,73名(73.7%)であった。実習中に活用したSNS種類は,Facebook16名(12.9%),LINE69名(55.6%),Twitter38名(30.6%),Ameba1名(0.8%)であった。実習中の使用頻度に変化がなかったのは54名(54.5%),増加9名(9.1%),減少36名(36.4%)であった。実習中の使用頻度は,もっとも多く増加したのが1日5回以上で4名(4.0%)であった。実習中のSNSの活用方法では,実習生同士の情報交換・共有や励まし等の記載が多く見られた。また,少数であるが,実習中の自分の気持ちをTwitterへ書き込んでいた。【考察】今回の結果よりほとんどの学生が日常的に複数のSNSを頻回に利用していることがわかり,個人情報流出に関する対策不足が認められた。また,実習中に半数以上の学生がSNSを利用しており,頻度としては半数の学生は変化がなかった。活用方法としては,実習生の情報交換や共有に使われおり,患者様の検査結果を含んでいることが認められた。このことから本学生のSNS利用でのメディアリテラシーや医療系学生としての守秘義務についての教育及び指導の必要性が示唆された。また,医療系総合大学としてのソーシャルメディア利用のガイドラインの整備が急務である。【理学療法学研究としての意義】現在,SNS利用者の増加により医療系学生実習時の医学的情報の画像や記載が問題となっている。そのため実習前のSNS利用についての対策が急務である。今後,本学でも医療系学生のためのガイドラインの作成や指導などについて具体的な対策を講じていきたい。
著者
細木 一成 丸山 仁司 福山 勝彦 鈴木 学 脇 雅子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AbPI2012, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】体幹筋の筋緊張軽減や、リラクゼーション効果を得る手段として乗馬療法やフィットネス機器のジョーバなどの先行研究が発表されている。第45回日本理学療法学術大会において立位、座位バランス能力が低下した方にロッキングチェアの自動振幅運動で同様の効果が得られるのではと考え、体幹後面筋の筋緊張が有意に低下することを発表した。今回、体能力低下や、認知症などによりロッキングチェアによる自動的振幅運動の遂行が困難な方を対象に他動的に振幅運動を行ない、自動振幅運動と同様に効果の有無を検討した。効果判定の手段として、他動的振幅運動前後のFFD(finger-floor distance)の変化を測定し、若干の知見を得たので報告する。【方法】被験者は都内理学療法士養成校に在学する腰部に整形外科的既往疾患のない成人男女10名(男性4名、女性6名、平均年齢21.2±0.8歳)とした。5分間の安静座位を取らせた後、床上を-とし0.5cm刻みでFFDの測定を行なった。次に被験者をロッキングチェア(風間家具のヨーロッパタイプ)上に安楽と思われる姿勢で着座させた。下肢を脱力し床に足底を接地した状態で、人為的に3分間前後に揺らすことを指示した。振幅させる周期は各被験者がロッキングチェアに着座した状態で起こる固有の振動数と同期させた。振幅の大きさは後方には足底を設置した状態が保て、前方にはバランスを崩し体幹後面筋に筋収縮が起こる防御姿勢を取らない範囲とし、3分間被検者が安楽に感じるように配慮した。ロッキングチェアでの運動後、施行前の方法でFFDの測定を行なった。運動前後のFFDおよび前方移動能力の値についてウィルコクソンの符号順位和検定を用いて比較検討した。有意水準は5%未満とした。なお統計処理には統計解析ソフトエクセル統計2008 for Windowsを使用した。【説明と同意】被験者に対し目的・方法を十分説明し理解、同意を得られた者のみ実施した。実施中に体調不良となった場合は速やかに中止すること、途中で被験者自身が撤回、中断する権利があり、その後になんら不利益を生じず、また個人情報は厳重に管理することを事前に伝えた。【結果】FFDは振幅運動前で平均-8.5cm±11.1cm、振幅運動後で平均-1.6cm±8.7cmと振幅運動後に有意に増加した(p<0.01)。【考察】FFDが有意に増加したのは、ロッキングチェアによる他動的振幅運動で、体幹後面筋に対する筋緊張の変化が得られたと考えられる。佐々木らによれば体幹の筋緊張、体幹回旋筋力といった体幹部分の機能異常や能力低下が、片麻痺患者の寝返り、起き上がりなどの動作を困難にすると述べ、柏木らによればFFDの増加を伴う体幹の柔軟性の改善は、高齢慢性有疾患者の活動性向上や、意欲向上が認められると述べている。これらより高齢慢性有疾患者の寝返り、起き上がりなどの基本動作能力、意欲の向上を考えると理学療法士が個別に行なう理学療法以外に、高齢慢性有疾患者自身もしくは家族が自主的に行なう運動が必要となってくる。このような運動は継続することが重要で、簡便さが必要になり負担が大きければ継続が困難となる。これらのことを考慮し簡便で安価に導入できるロッキングチェアの他動的振幅運動は、体幹筋の機能異常が原因で、寝返り、起き上がりなどの基本動作能力、意欲の低下している高齢慢性有疾患者に対して有効で、好影響を及ぼすものと推測する。【理学療法学研究としての意義】ロッキングチェアを使用した他動的振幅運動はFFDの増加を伴う後部体幹筋の柔軟性の改善に効果があり、高齢慢性有疾患者が自主的に行なう運動に対し有効であると考える。
著者
和田 英喜 宇井 雄一 田中 佑佳 山本 英樹 丸山 仁実 林 哲也 尾嶋 良恵 木下 昌樹 新田 功児 西分 和也 石原 均
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.56-58, 2002-03-01
被引用文献数
3

【要旨】新たに開発された,アイシン社製IABP装置,CORART BP21(BP21)を使用する機会を得たので,当院で使用しているデータスコープ社製System97e(97e),System98(98)との比較も含め,シミュレーション回路による,応答性・不整脈への追従性の実験および臨床使用で総合的に評価した。BP21は98と同様に拡張・収縮に要する時間が短く,高心拍への追従性が良く,R波デフレーションを選択するのにも十分な性能を有していると考えられた。カテ先センサー付のP1バルーンを使用した際は,センサーオート機能で優れた不整脈への追従性を示した。また搬送時の移動性に優れ,新しく開発されたバックアップモードは臨床上の有効性も示唆された。
著者
山口 育子 内田 学 丸山 仁司
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.113-119, 2019-05-31 (Released:2019-06-28)
参考文献数
23

【目的】高齢者の呼吸筋力,呼吸機能をはじめとする身体機能の実態把握と,運動耐容能との関連因子について検討した.【方法】歩行が自立した地域在住高齢女性60名を対象とした.呼吸筋力はPImax,PEmax,呼吸機能はVC,FVC,FEV1.0,PEF,運動機能は握力,膝伸展筋力,歩行速度,CS-30,TUG,片脚立位,FR,6MWD,身体組成は筋量,筋率を測定した.対象者の握力と歩行速度の結果から運動機能低下群(低下群)と運動機能維持群(維持群)の2群に分け,2群間の比較と,群ごとの6MWDと膝伸展筋力,歩行速度,VC,PImax,PEmax,SMIとの関連性を重回帰分析にて分析した.【結果】筋量,筋力は年代別基準値と近似したが,呼吸筋力,呼吸機能と運動耐容能は予測値より低く,低下群は維持群より有意に低値であった.低下群では運動耐容能の関連因子として呼吸機能が選択された.【結論】握力や歩行速度が低下してきた高齢者の運動耐容能の維持には,呼吸機能,呼吸筋力の重要性が示唆された.
著者
生方 瞳 丸山仁司 霍 明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.348-356, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
35
被引用文献数
1

【目的】本研究は,中高年女性における腹圧性尿失禁とインナーユニットの関係について検討した。さらに,動作課題の妥当性について,骨盤底拳上量による腹圧性尿失禁検出度を比較した。【対象と方法】中高年女性101 名を対象とした。質問紙表にて尿失禁群と非尿失禁群に群分けした。握力,CS-30 テストに加え超音波画像診断装置を用いて腹横筋厚,多裂筋横断面積,骨盤底拳上量を測定した。【結果】尿失禁群はすべての筋で,同時収縮および抵抗運動で非尿失禁に比べ有意に低値を示した。尿失禁を従属変数としたロジスティック回帰分析で選択された因子は,抵抗運動時の骨盤底挙上量であった。【考察】インナーユニットは協同運動しており,特に抵抗運動時の骨盤底挙上量の低下は腹圧性尿失禁のリスクファクターであることが示唆された。さらに,抵抗運動時の骨盤底挙上量が4.88 mm 以下である場合は腹圧性尿失禁の可能性が著しく高いことが示唆された。
著者
岩本 直也 藤 大樹 勝平 純司 丸山 仁司 満倉 靖恵
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.341-344, 2012-06-20
参考文献数
8

〔目的〕右ストレートパンチ動作における,初心者への指導ポイントを抽出するために,群間(経験・未経験)における骨盤の動きを比較した.〔対象〕競技経験者5名(27.3&plusmn;4.5歳)と未経験者7名(22.3&plusmn;1.2歳)とした.〔方法〕実験では三次元動作分析システムを用いて,パンチ動作は3回計測した.測定項目は骨盤の回旋角度と回旋角速度,および回旋時間とした.骨盤の最大回旋角度を基準とし,加速期と復元期に分割した.各期間における各測定項目の平均値を用いて,経験群と未経験群に対して有意差検定を行った.〔結果〕群間における最大回旋角度と両期間の最大角速度,および復元期の平均角速度に有意差を確認した.〔結語〕ボクシング初心者の指導では,すかさず&ldquo;構え&rdquo;に戻れるように指導する必要性が示唆された.<br>
著者
潮見 泰蔵 丸山 仁司 秋山 純和
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.693-694, 1987-10-15

Ⅰ.初めに 床上における種々の移動動作は,その移動形態から,いざる(shuffling),這(は)う(creeping),歩く(walking)などに大別することができる.その中でも,横いざり(片麻痺型),四つ這い,膝歩きは,脳卒中片麻痺患者や脳性麻痺児をはじめ,種々の運動障害者の床上における移動手段および訓練方法として,しばしば用いられる.これらの動作は,直立歩行と比べ,低重心かつ広支持基底面をもつ点では共通しているが,推進する際の上下肢の使われかたは,各動作で大幅に異なっている.したがって,この差異がエネルギー消費に及ぼす影響も大きいのではないかと推察される.一方,移動動作が実用化するか否かについては,その動作に要するエネルギー消費に関連するとも言われる.そこで,今回,いざり,四つ這い,膝歩きについて,これら三つの動作の運動強度を比較・検討するための基礎的資料を得ることを目的に,物理的負荷量を一定にした場合の各動作のエネルギー消費などを測定したので報告する.
著者
濱中 康治 丸山 仁司 室生 祥
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.B3O2101, 2010

【目的】<BR> 脳血管障害(以下、脳卒中)患者に対して急性期から効果的・効率的なリハを実施するためには、その症例の予後を正確に予測したうえで介入することが求められる。また、転帰先・転帰時期を決定するためにも発症後早期から予後を予測する必要がある。<BR> 脳卒中の予後予測に関して、Koyamaらによる対数モデルを用いた予後予測方法が報告されている。この方法は脳卒中の機能回復が自然対数曲線に類似していることに着目し、機能的自立尺度(Functional Independence Measure:以下、FIM)を複数回測定してその変化分を対数変換することで予測式を算出し、将来のFIM得点を予測するというもので、FIMの得点変化のみを用いるため臨床的に簡便で優れた方法である。ただし、この研究は発症後30日以上経過して回復期リハ病院に入院した症例を対象としており、急性期患者への適応の可能性は検証されていない。<BR> そこで今回の研究では、この対数モデルを用いた予後予測式の急性期への適応の可否を検討する。<BR><BR>【方法】<BR> 対象は、2008年4月から2009年4月までに当院脳神経外科および内科に入院した脳卒中片麻痺患者で、その後回復期リハビリテーション病棟に転科、リハを継続して3ヶ月以上実施した29名(脳卒中再発・くも膜下出血を除く)。年齢は64.6±10.9歳、男性21名、女性8名、脳出血例20名、脳梗塞例9名であった。<BR> Koyamaらの対数モデルを用いた予測式とは、発症A日目のFIM総得点はFIM(days A)=βln(days A)+定数 に近似することを利用するもので、FIM得点変化ΔFIM=βln(Day B)-βln(Day A)=βln(Day B/Day A) β=ΔFIM[ln(Day B/Day A)]<SUP>-1</SUP> 発症X日におけるFIM予測値=FIM(Day A)+βln(Day X/Day A) (lnは自然対数)の計算式で算出する。<BR> FIMの採点はリハ介入開始時(発症から5.2±1.3日)、介入から2週時、1ヶ月時、2ヶ月時、3ヶ月時に実施した。リハ介入開始時と2週時のFIM実測値から2ヶ月時、3ヶ月時のFIM予測値を、2週時と1ヶ月経過時のFIM実測値から2ヶ月時、3ヶ月時のFIM予測値を算出し、病型別に各時期の予測値と実測値を比較した。<BR><BR>【説明と同意】<BR> 対象者には、本研究の主旨と方法について説明し、非侵襲性の評価であり治療上の効果判定の一環として実施する旨を伝え、同意を得た。<BR><BR>【結果】<BR> 脳出血例において、リハ介入開始時と2週時のFIM得点から得られた予測値と実測値は、2ヶ月時でR<SUP>2</SUP>=0.666、3ヶ月時でR<SUP>2</SUP>=0.660、2週時と1ヶ月時のFIM得点から得られた予測値と実測値は、2ヶ月時でR<SUP>2</SUP>=0.886、3ヶ月時でR<SUP>2</SUP>=0.734となった。脳梗塞例においては、リハ介入開始時と2週時のFIM得点から得られた予測値と実測値は、2ヶ月時でR<SUP>2</SUP>=0.910、3ヶ月時でR<SUP>2</SUP>=0.837、2週時と1ヶ月時のFIM得点から得られた予測値と実測値は、2ヶ月時でR<SUP>2</SUP>=0.921、3ヶ月時でR<SUP>2</SUP>=0.872と高い相関を示した。<BR><BR>【考察】<BR> 今回の結果から、対数モデルを用いた脳卒中患者の予後予測方法は、脳出血・脳梗塞、どちらの病型においても、急性期からの予後予測が一定水準以上の精度で可能であると言える。しかし、脳出血例ではリハ介入開始時のFIM得点を用いた場合は予測精度がやや低下した。これはリハ介入開始時に意識障害を伴う症例も多く、2回のFIM採点の間に認知FIM項目が大きく改善したために予測精度が低下したものと考えられる。また、急性期は医学的管理のために症例の活動が制約されていることも予測精度の低下につながっていると思われる。ただし、おおよそ医学的管理上の活動制限が解かれたと思われる2週時と1ヶ月時のFIM得点を用いた場合は予測値と実測値が高い一致率を示しており、予後予測の精度は概ね保障されたと言える。今後は医学的管理上の制限が無くなった時点で初回のFIMを採点し予測に用いることで、更なる予測精度の向上が望めるのではないか。また、この予測方法を脳卒中急性期に導入した場合、多くの症例で実測値が予測値を上回る傾向があったため、臨床的には有益で導入しやすい方法であると考えられる。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 急性期脳卒中患者に対しての適応が証明されることで、簡便な方法で正確な予測が可能となり、早期から予後を見据えた介入が可能となるため、臨床的に有意義な研究であると考えられる。