著者
齋藤 孝義 丸山 仁司 菅沼 一男 鈴木 知也
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.389-392, 2014 (Released:2014-07-03)
参考文献数
18
被引用文献数
1

〔目的〕考案した「座位での連続底背屈運動テスト」の測定値の再現性を検討することとした.〔対象〕65歳以上の高齢者の検者内再現性は16名(男性1名,女性15名),検者間再現性は14名(男性2名,女性12名)とした.〔方法〕検者内再現性の測定は1名の検者が2日間以上の間隔をあけて2日間行い,検者間再現性の測定は1名の被検者に対し,2名の検者がそれぞれ2回の測定を行った.検者内再現性および検者間再現性の評価は級内相関係数のそれぞれ,ICC(1,1)およびICC(2,1)により行った.〔結果〕検者内再現性の級内相関係数ICC(1,1)は,0.915,検者間再現性ICC(2,1)は0.932であった.〔結語〕再現性は良好であり,簡便かつ安全に実施でき,臨床の現場でも有用であると考えられる.
著者
齋藤 孝義 丸山 仁司 菅沼 一男 鈴木 知也 佐野 徳雄 岩瀬 洋樹
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.805-808, 2014 (Released:2014-10-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

〔目的〕本研究は,座位での連続底背屈運動テストを転倒予測として用いることができるのか検証することを目的とした.〔対象〕対象者は65歳以上の高齢者50名とした.〔方法〕転倒群と非転倒群に分け,連続底背屈テスト,timed up & go test,functional reach test,5 m全力歩行テスト,立位つま先テストを評価した.その後,転倒と関係についてロジスティック回帰分析を用いて検討した. 〔結果〕2群間で全ての運動機能に差が認められた.ロジスティック回帰分析の結果,転倒の有無に影響する変数として底背屈テスト,立位テストが選択された.〔結語〕連続底背屈テストは座位で行なうことができ,安全,簡便に理学療法士以外でも実施できる転倒予測指標として有益であると考えた.
著者
岩佐 知子 菅沼 一男 知念 紗嘉 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.23-26, 2011 (Released:2011-03-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

〔目的〕中学生野球選手が青少年の野球障害に対する提言での上限である70球投を投げることによる投球前後の肩関節機能の変化について検討した。〔対象〕中学生野球クラブチームに所属する男性投手10名であった。〔方法〕投球前後に投球側の肩関節内旋可動域および肩関節内外旋筋力,疲労度,球速の測定を行った。投球は実践投球を意識しストレートと変化球を合わせた計70球とした。投球前後の肩関節内旋可動域および肩関節内外旋筋力,疲労度については,対応のあるt検定を用い,球速については1元配置の分散分析を用いて分析を行った。〔結果〕肩関節内旋可動域は投球後に可動域が有意に減少した。肩関節内外旋筋力は投球前後において筋力に差が認められなかった。肩関節の疲労度は,投球前後において有意に増加したが,球速については差が認められなかった。〔結語〕高校生を対象とした報告と同様に投球後は肩関節内旋可動域が低下し,肩関節内外旋筋力は差が見られなかった。したがって,投球練習後は肩関節外旋筋のストレッチを行う必要があると考えられた。
著者
吉川 幸次郎 丸山 仁司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3P3413, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】内腹斜筋の上部線維と中部線維の比較体幹の安定性を維持するために体幹筋が注目されている.内腹斜筋は体幹屈曲、側屈、回旋させる主導筋の働きが中心である.しかし、一方では腹圧の調整および胸腰筋膜に働きかけることで体幹の安定化させる役割があるとされている.近年内腹斜筋が線維の方向や線維長、筋厚の観点から上中下部に分類できることが主張されており、機能的にも相違があるといわれてきている.今回姿勢の変化に伴い上部線維と中部線維とで姿勢保持のための活動の相違を検証した.【方法】健常成人男性14名(平均年齢22.7±2.96歳 身長171.5±3.95cm 体重65.7±5.31kg).姿勢を背臥位→立位→爪先立ち位と姿勢を変える.併せて超音波画像診断装置(東芝PV8000)で内腹斜筋を撮像する.撮像部位は上部線維(中腋窩線と第11肋骨が交わった付近)と中部線維(胸郭と腸骨稜の中間と中腋窩線の交わった付近)である.各姿勢につき30秒撮像する.撮像した映像を画像編集ソフト(WinDVD)で静止画像化し画像解析ソフト(image J 1.41)で内腹斜筋の筋厚を測定する.呼吸筋としての活動を最小限にするため最大吸気の時点で静止画像化する.内腹斜筋の上部線維と中部線維の筋厚を比較しその活動の違いを考察する.比較方法は背臥位の筋厚を基準にした立位と爪先立ち位の筋厚の増加率を計算し、上部線維と中部線維とで比較する.検定方法としてt検定を用いた.なお、今回の実験を行うに際しヘルシンキ宣言を参考に事前に被験者に内容を説明し理解してもらい同意を得て実験を行った.【結果】各肢位における平均筋厚は以下の通りであった.上部線維(背臥位→立位→爪先立ち位の順)41.4±6.0mm、48.2±9.5mm、52.1±10.2mm.中部線維は51.9±9.0mm、52.6±10.5mm、54.4±11.0mmであった.背臥位の筋厚を基準にした筋厚の平均増加率は、上部線維では117%、126%であり、中部線維は101%、105パーセントと上部線維が活発な活動を示していることが示唆された.立位、爪先立ち位ともに上部線維と中部線維とでは有意な差が生じた.【考察】先行研究では、内腹斜筋の上部線維と中部線維とではいずれも線維の走行が内側上方に向かっていて機能的にも類似しているとするものがある.しかし、文献によると、内腹斜筋の各線維付着部に着目した場合、上部線維が肋軟骨に付着するのに対して、腹直筋の腱膜に付着しているとしている.そのため、上部線維が胸郭を固定することで姿勢を安定させ散るのに対して、中部線維は腹圧を高めること出姿勢を安定させているという違いがあるのではと考える.【まとめ】今回の研究で内腹斜筋上部線維と中部線維の活動に違いがありうることが示唆された.
著者
小林 薫 丸山 仁司 柊 幸伸
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.401-404, 2011 (Released:2011-07-21)
参考文献数
15

〔目的〕転倒回数の違いが座位両足開閉ステッピング(以下開閉ステッピング)におよぼす影響を検討した.〔対象〕歩行が自立している高齢者67名(男性10名,女性57名:平均年齢78.3±5.3歳)とした.〔方法〕過去1年間の転倒回数により非転倒群,1回転倒群,複数回転倒群の3群に分類した.開閉ステッピングにおける施行回数を群間で比較した.〔結果〕開閉ステッピング施行回数は,非転倒群15.2±2.1回,1回転倒群12.6±1.7回,複数回転倒群11.5±2.1回であった.1回転倒群および複数回転倒群の施行回数は非転倒群よりも有意に少なかった.〔結語〕開閉ステッピングが高齢者の転倒リスク評価として応用できる可能性が期待できた.
著者
黒川 貴志 勝平 純司 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.589-594, 2010 (Released:2010-09-25)
参考文献数
29
被引用文献数
2

〔目的〕本研究の目的は,脊柱後弯を呈する高齢者の歩行の特徴を明らかにすることである。〔対象〕健常高齢者12名と脊柱後弯を呈する高齢者12名の24名とした。〔方法〕脊柱後弯の定量的指標として円背指数を用いて2群(健常群,脊柱後弯群)に分けた。運動学,運動力学的歩行計測のために,赤外線カメラ12台を含む三次元動作分析装置と床反力計6枚を用いた。計測条件は,自由速度とし,歩行動作を3回計測できるまで計測を繰り返した。〔結果〕脊柱後弯を呈する高齢者は立脚後期の股関節外転モーメントピーク値が減少した。また骨盤後傾と回旋角度が増大した。〔結語〕脊柱後弯を呈する高齢者の姿勢のアライメント変化は,前額面上の力学的変化を及ぼしていることが明らかになった。
著者
大野 吉郎 潮見 泰蔵 黒沢 和生 関 勝男 高橋 高治 猪股 高志 福田 敏幸 今泉 寛 丸山 仁司 秋山 純和
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法のための運動生理 (ISSN:09127100)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.109-111, 1987 (Released:2007-03-29)
参考文献数
2

健康成年男性6名を対象として、一定頻度(1回/10秒)でtotal rotation pattern(以下TRPとする)、partial rotation pattern(以下PRPとする)、none rotation pattern(以下NRPとする)による起き上がり動作を行わせ、各動作での酸素消費量、心拍数を測定し、パターンの相違によるエネルギー消費量の変化について検討した。その結果、FRP、PRP、NRPの順で酸素消費量および心拍数は低くなった。これは運動発達の順序に即したものと考えられ、この順序がエネルギー消費からみて、より効率の良い起き上がりパターンへの移行と解釈できる。
著者
吉川 幸次郎 丸山 仁司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P3413, 2009

【目的】内腹斜筋の上部線維と中部線維の比較<BR>体幹の安定性を維持するために体幹筋が注目されている.内腹斜筋は体幹屈曲、側屈、<BR>回旋させる主導筋の働きが中心である.しかし、一方では腹圧の調整および胸腰筋膜に働きかけることで体幹の安定化させる役割があるとされている.近年内腹斜筋が線維の方向や線維長、筋厚の観点から上中下部に分類できることが主張されており、機能的にも相違があるといわれてきている.今回姿勢の変化に伴い上部線維と中部線維とで姿勢保持のための活動の相違を検証した.<BR>【方法】健常成人男性14名(平均年齢22.7±2.96歳 身長171.5±3.95cm 体重65.7±5.31kg).姿勢を背臥位→立位→爪先立ち位と姿勢を変える.併せて超音波画像診断装置(東芝PV8000)で内腹斜筋を撮像する.撮像部位は上部線維(中腋窩線と第11肋骨が交わった付近)と中部線維(胸郭と腸骨稜の中間と中腋窩線の交わった付近)である.各姿勢につき30秒撮像する.撮像した映像を画像編集ソフト(WinDVD)で静止画像化し画像解析ソフト(image J 1.41)で内腹斜筋の筋厚を測定する.呼吸筋としての活動を最小限にするため最大吸気の時点で静止画像化する.内腹斜筋の上部線維と中部線維の筋厚を比較しその活動の違いを考察する.比較方法は背臥位の筋厚を基準にした立位と爪先立ち位の筋厚の増加率を計算し、上部線維と中部線維とで比較する.検定方法としてt検定を用いた.<BR>なお、今回の実験を行うに際しヘルシンキ宣言を参考に事前に被験者に内容を説明し理解してもらい同意を得て実験を行った.<BR>【結果】各肢位における平均筋厚は以下の通りであった.上部線維(背臥位→立位→爪先立ち位の順)41.4±6.0mm、48.2±9.5mm、52.1±10.2mm.中部線維は51.9±9.0mm、52.6±10.5mm、54.4±11.0mmであった.背臥位の筋厚を基準にした筋厚の平均増加率は、上部線維では117%、126%であり、中部線維は101%、105パーセントと上部線維が活発な活動を示していることが示唆された.立位、爪先立ち位ともに上部線維と中部線維とでは有意な差が生じた.<BR>【考察】先行研究では、内腹斜筋の上部線維と中部線維とではいずれも線維の走行が内側上方に向かっていて機能的にも類似しているとするものがある.しかし、文献によると、内腹斜筋の各線維付着部に着目した場合、上部線維が肋軟骨に付着するのに対して、腹直筋の腱膜に付着しているとしている.そのため、上部線維が胸郭を固定することで姿勢を安定させ散るのに対して、中部線維は腹圧を高めること出姿勢を安定させているという違いがあるのではと考える.<BR>【まとめ】今回の研究で内腹斜筋上部線維と中部線維の活動に違いがありうることが示唆された.
著者
久保 晃 丸山 仁司
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学紀要 (ISSN:13424661)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.15-18, 0003

本研究の目的は、理学療法学科学部生の就職先と就職先選定における関心事項を明らかにすることである。対象は、2000から2001年に国際医療福祉大学保健学部理学療法学科を卒業した187名、平均年齢24±3歳(男性94名、平均年齢24±4歳、女性93名、平均年齢23±2歳)である。就職内定先は、医療施設が全体の80%と大部分を占めた。他は、大学院進学7%や老人保健施設3.7%であった。内定先の希望順位は、60%が第一志望であった。希望勤続年数は、5年程度以下が過半数を占めていた。就職先選定要因についての関心度は、職場の人間関係を最も重視していた。
著者
福山 勝彦 福山 ゆき江 丸岡 裕美 原田 悦子 鎌田 幸恵 細木 一成 矢作 毅 丸山 仁司
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ca0213-Ca0213, 2012
被引用文献数
2

【はじめに、目的】 近年、足趾が床面に接地せず、歩行時に趾先まで体重移動が行われない「浮き趾」についての報告を散見する。これまで浮き趾例では足趾把持力の低下や前方重心移動能力低下、床面からの感覚入力の低下がみられることを報告してきた。また浮き趾の状態が継続されることで歩行時において体幹のアライメントの崩れや傍脊柱筋、大殿筋などの筋活動の乱れが生じ、腰痛の出現につながる可能性があることも示唆されている。我々はこの浮き趾の抽出、評価として、自作のPedoscope撮影による画像から「浮き趾スコア」による点数化を試み検討している。これは左右10本の足趾に対し,完全に接地しているものを2点,接地不十分なものを1点,まったく接地していないものを0点とし,20点満点で評価するものである。しかしこれらの方法による信頼性、再現性については検討されていない。本研究ではPedoscopeを使用し、浮き趾スコアの検者間、検者内の信頼性について確認することを目的とした。【方法】 下肢に整形外科疾患の既往のない健常成人98名を対象とした。男女の内訳は男性48名、女性50名、年齢は22.3±2.9歳であった。足底画像を自作のPedoscopeにて撮影した。Pedoscopeは、床面から30cmの高さのステージ上面に強化ガラスを固定し、この上に被検者を起立させる。ステージの側面に斜めに固定した鏡で足底を反映し、デジタルカメラで撮影する構造になっている。被検者をステージの強化ガラス上に、開眼で2m前方の目の高さに設定した目標点を注視した状態で起立させた。足幅は両足内縁が5cm開くように枠を用いて開脚した。趾先に力を入れたり重心を移動したりせず安楽な姿位を保持した上で、身体の動揺が落ち着いている状態での足底画像を撮影した。初回の撮影に引き続き、その1時間後、1週間後の同じ時間帯で同様の撮影を行なった。得られた画像を前述した方法で10本それぞれの足趾に対し、完全に接地しているものを2点、不完全なものを1点、接地していないものを0点とし20点を満点とする「浮き趾スコア」を求めた。初回時の画像に関しては3人の経験者(これまでの研究に参加し画像評価していた者)と3人の未経験者、計6人の評価者で評価した。3人の未経験者については、事前に評価の方法を説明、サンプルを用いて採点の練習を行なった。1時間後および1週間後の採点については筆者が行なった。初回時のデータから評価者6人全員による検者間信頼性ICC(2,1)、経験者3人、未経験者3人それぞれの検者間信頼性ICC(2,1)を求めた。また初回、1時間後、1週間後のデータから検者内信頼性ICC(1,1)を求めた。【倫理的配慮、説明と同意】 すべての被験者に対し、事前に本研究の趣旨および方法を説明、また本研究への協力は自由意志であり辞退、途中棄権しても何ら不利益がないこと、得られたデータは個人が特定できないよう管理し本研究以外に用いないことを説明し同意を得た。【結果】 全評価者のICC(2,1)は0.858、経験者3人のICC(2,1)は0.895、未経験者3人のICC(2,1)は0.829であった。初回、1時間後、1週間後のICC(1,1)は0.927であった。【考察】 我々が用いている浮き趾スコアの評価者間における信頼性は、Landisの基準から経験による差は若干あるものの、Almost perfectの結果が得られた。不完全接地1点の評定にばらつきがあるのではないかと思われたが、完全接地趾、足根部、踵部との接地画像の比較により近似した値を得ることができると考える。また検者内信頼性についてはかなり高い信頼性を得ており、それぞれの被検者の足趾接地の再現性が確認できた。我々は本スコアをもとに、18点以上かつ両側第1趾とも2点のものを「正常群」,10点以下のものを「浮き趾群」と分類し、正常群と浮き趾群における機能の比較研究を行なっており、その基礎となる群間分類上の信頼性が得られたものと思われる。しかし接地画像の形やどの趾が接地していないかという分類はできず、今後検討していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 最近「浮き趾スコア」は、他の研究者の間にも導入されており、Pedoscopeでの撮影以外にフットプリントやフットスキャンなども使用されている。いずれも床面と足底の接地状態を反映するものであり、自作によるPedoscopeやフットプリントの使用は比較的安価で簡便なものである。この信頼性が得られたことは「浮き趾」の抽出、分類、理学療法の効果判定に役立つものと思われる。
著者
可児 利明 橋本 重倫 勝平 純司 丸山 仁司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A4P2032, 2010

【目的】<BR> メタボリックシンドロームという言葉が市民権を得たわが国では,食事や運動療法を含めた生活習慣の改善,高血糖・高血圧・肥満に対する取り組みを国家レベルで始めている。とりわけ運動習慣・運動変容に関して理学療法が果たすべき役割は極めて大きなものになると予測される。また,肥満による下肢関節荷重時痛,変形性関節症などの運動器疾患の治療においても,減量と関節障害改善のための理学療法が実施されることにより,運動機能が改善し活動量増加や生活の質向上に繋がると考えられる。<BR> 本研究では,歩行スピードを変化させて平地歩行や階段降段動作を行った際に,体重の増加が下肢関節にどのように影響するかを三次元動作解析装置と床反力計を用いて算出した関節角度・関節モーメントを指標として客観的に比較・検討した。<BR>【方法】<BR> 対象は下肢に重大な既往のない健常成人女性10名(年齢22.4±1.3歳,身長160.4±3.3cm,体重52.0±4.0kg)とした。体重の増加は重錘バンドをウエストポーチ,固定用ベルトを用いて検者の下腹部に負荷し,それぞれ0kg,7.5kg,15.0kgの3通りとした。歩行速度は歩幅を一定としメトロノームを用いケイデンスを116と138の2通りとした。平地歩行,階段降段の2条件で測定し,上記の組み合わせ12通りについてそれぞれ3回ずつ測定した。12通りの順番については乱数表を用い順不同とした。身体動作計測には,三次元動作解析装置VICON MX(VICON MOTION SYSTEMS社製),床反力計(AMTI社製)6枚,赤外線カメラ(周波数100Hz)8台を用いた。被験者には身体各部27箇所に赤外線マーカーを貼付した。計測用階段は中央で分離し,床反力計上に左右別々に設置した。下肢3関節における違いを分析するために,股関節・膝関節・足関節それぞれの関節角度・関節モーメントを計測項目とした。関節角度およびモーメントの算出にはVICON BODYBUILUDERを用い,木藤らの方法を参考にした。統計学的検討は一元配置分散分析を行ったのち,多重比較検定Bonferroni法を実施した。危険率は5%未満をもって有意とした。<BR>【説明と同意】<BR> ヘルシンキ宣言に基づき,実験の目的と方法を口頭と書面にて説明し同意を得たうえで実施した。その際,研究への参加は対象者の自由意志によるものとし研究への参加・協力が得られない場合であっても不利益は生じないこと。参加している場合であってもいつでも研究への参加を中止することが可能であること。得られたデータは本研究以外に使用せず,プライバシーを守ることなどを保障した。<BR>【結果】<BR> 一歩行周期における左下肢関節モーメントの値は,右足指離地時(以下,RTO時)と右足指接地時(以下RTC時)に増加していた。この傾向は全ての被験者に共通してみられるため,これら二つの時期の値と最大値・最小値を抽出して比較検討することとした。歩行において体重の増加によりRTO時, 膝関節屈曲角度,膝関節伸展モーメントが有意に増加した(p<0.05)。また, 膝内反角度には変化がみられず外反モーメントが有意に増加した(p<0.05)。階段降段動作においては膝内反角度に変化がみられず外反モーメントにおいて有意に増加した(p<0.05)。<BR>【考察】<BR> 体重の増加により歩行においてRTO時,すなわち左下肢のloading response時に膝屈曲角度,膝伸展モーメントが有意に増加していた。これは体重が増加したことにより下肢関節特に膝関節伸筋群の遠心性収縮により衝撃吸収を多く行うようになったためと考える。内外反については歩行・階段降段動作ともにアライメントに変化が見られず,関節モーメントのみが増加していた。これは膝関節の構造上,前額面でのアライメントに変化をきたしにくいが,増加した外反モーメントがストレスとしてかかり続けることにより関節の構造に破綻をきたすことが予想された。また歩行速度の変化については有意差がみられなかったことから体重の増加は下肢アライメントの変化に大きな影響を及ぼすものと考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 体重の増加が下肢関節にどのように影響するかを関節角度・関節モーメントを指標として客観的に比較・検討した。体重を減らすことは下肢関節にかかる負担を軽減させることが示唆された。これらの結果が、膝関節症など障害を評価・分析する上で非常に役立つと考える。
著者
細木 一成 福山 勝彦 鈴木 学 丸山 仁司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A4P2076, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】国立社会保障・人口問題研究所が発表した西暦2050年の日本人の平均寿命は、男性80.9歳、女性89.2歳と予測している。このように平均寿命は伸び今後、高齢者の数がますます増加してくるのは明白である。時間的に制約のある病院、介護老人施設、訪問リハビリテーションで理学療法士が行う個別の理学療法は限界があり、病院や施設内、在宅で後部体幹筋などのリラクゼーション効果を得ることは不十分で、理学療法を有効に活用できないと考える。体幹筋の筋緊張の軽減や、リラクゼーション効果を得る手段として、乗馬療法やフィットネス機器のジョーバなどが多く研究され紹介されている。その中でもジョーバは簡便に行えるが、立位、座位バランス能力が低下した高齢者においては、使用することが困難であろうと予測する。これに対する一つ手段として、座位にて振幅運動を利用したロッキングチェアによる運動により同様の効果が得られないかと考えた。ロッキングチェアよるリラクゼーション効果判定の手段として、施行前後のFFD(finger-floor distance)および重心の前方移動距離の変化を測定し、若干の知見を得たので報告する。【方法】被験者は理学療法士養成校に在学する腰痛等に既往のない成人男女10名(男性5名、女性5名、平均年齢24.1±6.2歳)とした。5分間の安静座位を取らせた後FFDおよび重心の前方移動能力の測定を行なった。方移動能力の測定は福山らの方法に順次、アニマ社製グラビコーダGS-10を使用した。被検者を床反力計上に5cm開脚位、2m前方の目の高さにある目標点を注視して起立させた。まず10秒間の安静時重心動揺を測定した。次に体幹を屈曲させたり踵を浮かせたりすることなく身体を前方に最大移動した状態で保持させ、10秒間の重心動揺を測定した。前方移動時のMY(MEAN OF Y:動揺平均中心偏位)値から安静時のMY値を減じ、さらに足長(踵の後面から第1趾先端までの距離)で除し前方移動能力とした。次に被験者をロッキングチェア(風間家具のヨーロッパタイプ)上に安楽と思われる姿勢で座らせた。床に足底を接地した状態で、下肢の筋力を使わず体幹筋の運動により10分間、前後に揺らすことを指示した。振幅させる周期は被験者の任意とし10分間安楽に行なえるように配慮した。ロッキングチェアでの10分間の運動後、運動前と同様の方法でFFDと前方移動能力の測定を行なった。運動前後のFFDおよび前方移動能力の値についてウィルコクソンの符号順位和検定を用いて比較検討した。有意水準は5%未満とした。なお統計処理には統計解析ソフトSPSS 11.5J for Windowsを使用した。【説明と同意】被験者に対し目的・方法を十分説明し理解、同意を得られた方のみ実施した。実施中に体調不良となった場合は速やかに中止すること、途中で被験者自身が撤回、中断する権利があり、その後になんら不利益を生じず、また個人情報は厳重に管理することを伝えた。【結果】FFDは運動前で平均2.1cm±10.9cm、運動後で平均5.2cm±11.4cmと運動後に有意に増加した(p<0.05)。前方移動能力は平均27.4%±8.2%、運動後で平均31.7%±4.8%と運動後に有意に増加した(p<0.05)。【考察】今回のロッキングチェアでの運動によりFFD、前方移動能力が増大したことについては、後部体幹筋、下腿後面筋に対するリラクゼーション効果により体幹、下肢の柔軟性が増大したものと推察する。佐々木らによれば体幹の筋緊張、体幹回旋筋力といった体幹部分の機能異常や能力低下が、寝返り、起き上がりなどの動作を困難にしていると述べている。高齢者の寝返り、起き上がりなどの基本動作能力の維持・向上を考えると個別に行なう理学療法以外に、高齢者自身が行う自主的な運動が必要となってくる。このような運動は継続することが重要で、簡便さが必要になり複雑な運動や、負荷が強ければ継続が困難となる。簡便で安価に導入できるロッキングチェアの持続運動は、体幹筋の過緊張が原因で寝返り、起き上がりが困難となっている高齢者に対して、有効で動作の遂行に好影響を及ぼすものと推測する。【理学療法研究としての意義】ロッキングチェアを使用した持続運動は後部体幹筋、下腿後面筋に対するリラクゼーションに効果があり、高齢者自身が行う運動に対し有効であると考える。
著者
河西 理恵 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.203-208, 2010 (Released:2010-05-27)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

〔目的〕本研究の目的はPBLの効果と学生因子の関係について検証することである。〔対象と方法〕対象はK大学理学療法学科の3年生19名であった。PBLの効果指標を,学生自身による自己評価とPBLにおける発言頻度とし,約2ヶ月のPBL実施後,学業成績,性格,自己学習習慣の有無,自己学習時間,テスト志向性およびPBLに対する満足度などの学生因子とPBLの学習効果の関係をSpearmanの順位相関係数により検討した。〔結果〕PBLに対する学生の自己評価と学業成績,性格,自己学習習慣の有無,PBL実施中の自己学習時間およびPBLに対する満足度の間に有意な相関が認められた。また,発言頻度と自己評価ならびに学業成績,PBL実施中の自己学習時間,PBLに対する満足度の間にも有意な相関が認められた。〔結語〕PBLの効果には複数の学生因子が関与することが示唆された。
著者
岸田 あゆみ 霍 明 丸山 仁司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A3P2065, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】 日常生活動作は、二つ以上の動作を同時に遂行している場面が多くある.心理学領域では、同時に複数の動作を行う場合、人間の注意需要には限界があり、それぞれの動作に対して必要な注意の容量が配分されると考えられている.必要な注意の容量は、動作の習熟度や複雑性、個人の動作レベルにより異なる.これを評価する指標として反応時間がある.ある連続した活動(主課題)遂行中に、単純反応時間課題(第二課題)をそこに加えた時の第二課題に対する反応時間のことをプローブ反応時間(Probe Reaction Time, P-RT)といい、歩行中のP-RTは歩行安定性の評価に有用であると報告されている.これら反応時間測定の多くは、10回の平均値を用いて検討しているものが多い.しかし、動作と与えられる刺激のタイミングには関連性があると考えられ、10回という回数を採用する客観的な理由は明らかではない.そこで、速さの規定が容易で比較的自動化されやすいといわれる手タッピングを主課題としたP-RTを測定し、その測定回数の絶対信頼性について検討した.【方法】 対象は、健常成人14名(男性11名、女性3名)で、平均年齢は19.9±2.1歳であった.測定は、椅子座位にて安静座位時、1・2・3・4・5Hzの速さに合わせたタッピング施行時について行った.タッピングは非利き手とし、各速さの施行順序はくじにてランダムに決定した.被検者の課題は「ようい」の後の電子音(音刺激)に対して、できるだけ早く「Pa」と発声することとした.タッピングによる疲労を考慮し、各速さの測定終了後に休憩を入れ、各速さにつき10回測定した.反応時間測定機器は,刺激装置はPCでサウンド処理ソフトを用いて音刺激信号を作成し,デジタルオーディオプレーヤ(Rio製)にデータを転送し携帯式スピーカに接続した.集音装置はデジタルIDレコーダを使用した.データをPCに取り込み,DIGIONSOUND5サウンド処理ソフトで分析を行った.得られたデータは、速さごとに測定回数までの平均値を算出し、10回の平均値と比較した.10回の平均値を基準にして、それに対する測定回数までの平均値の信頼性についてBland-Altman分析を用いて検討した.なお研究に際し、被験者に研究の目的について十分説明し、参加の同意を得た.【結果】 1Hzでのタッピング以外は、7回目までの平均値で系統誤差が消失した.1Hzでは9回目までの平均値において系統誤差を有していた.【考察】 反応時間の測定において高い信頼性のある結果を得るためには、少なくとも10回は測定値を得る必要があると考えられる.ただし、1Hzの測定結果からは10回の測定でも信頼性の高い結果とはいえない可能性が示唆された.
著者
松山 旭 丸山 仁司 鈴木 康文
雑誌
名古屋市立大学看護学部紀要 = Bulletin of Nagoya City University School of Nursing (ISSN:13464132)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-7, 2008-03

本研究の目的は、要介護者への電気刺激による筋力増強効果と安全性を検討することである。要介護者8名に対して、両大腿四頭筋への電気刺激を4週間行い、筋力は膝伸展筋力で、安全性を循環反応、皮膚症状、疼痛で検討した。患肢においては有意差が認められ、筋力増強効果がみられた。また、筋力の低い症例についても増強効果の可能性が考えられた。安全面の検討においては、電気刺激前後で血圧、心拍数に有意な差はなく、皮膚状態の異常、疼痛もみられなかった。これらから、筋への電気刺激を安全に施行できる可能性が示唆された。今回の研究において、要介護者への電気筋力刺激による増強効果と、安全に行える可能性が示唆されたが、今後、疾患の検討や、刺激中のモニタリング等を含め、症例数を重ねていくことが課題として挙げられた。
著者
衣笠 隆 長崎 浩 伊東 元 橋詰 謙 古名 丈人 丸山 仁司
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.343-351, 1994-10-01
被引用文献数
60 30

高齢者用の運動能力テストバッテリーを確立するために, Fleishmanの運動能力のモデルに準拠し, 高齢者でも安全に行えるテストを選び, 若年者から高齢者までを対象として, 運動能力の加齢変化を調べた.<BR>被験者は男性150名 (年齢: 18歳から83歳) であった.運動機能は8項目を測定した. (1) 握力と等尺性膝伸展力. (2) ステップテスト. (3) 開眼時と閉眼時の重心動揺距離と重心動揺面積. (4) 立位体前屈. (5) 指タッピング (最大タッピングと2Hz, 3Hz, 4Hz, 5Hzの音に合わせるタッピング) . (6) ペグボードテスト. (7) 視覚単純反応時間. (8) 通常の速さの歩行 (自由歩行) とできるだけ速い歩行 (最大歩行) .自由歩行の速度と5Hzの指タッピングの変動係数を除いて, すべての運動機能に加齢に伴う低下がみられた.20歳を100%とした時の, 80歳の主な運動能力の低下は, 仮定した運動能力ごとに以下のような特徴がみられた.手指巧緻性や反応時間は30%以内の低下, 筋力, 持久性および歩行に関する運動能力は40~60%の低下, 柔軟性や平衡性は70%以上の低下であった.以上の結果より, 運動能力の加齢変化の総合的な評価ができ, かつ安全性の面からも適切な運動能力テストバッテリーとして, 体前屈, 握力, 膝伸展力, 最大速度歩行, 閉眼重力動揺距離, ステップテスト, 指タッピングが上げられる.
著者
丸山 仁司
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.101-105, 1999 (Released:2007-03-29)
参考文献数
4
被引用文献数
6 3

高齢者の運動機能は低下を示すが,運動要素などにより,低下程度などが異なる。ここでは,最初に一般的な運動機能とその加齢変化の特徴を述べる。特に,日常生活で最も重要な動作,機能である歩行について,詳細に述べる。歩行の周期,筋電図などの変化を述べる。
著者
安藤 正志 丸山 仁司 小坂 健二
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.10-13, 1995-01-31
被引用文献数
4

速く歩行させた(高速度歩行)後, また遅く歩行させた(低速度歩行)後, 快適歩行はどのように影響されるかを確認することを目的に, 健常成人30名(男12名, 女18名・平均年齢19.3歳)を対象として10m直線路上を歩行させた。1. 快適歩行を連続4回施行させ, それぞれの歩行所要時間, 歩幅そして歩行率を比較したところ, 再現性が確認できた。2. 高速度歩行後に快適歩行を再生させ, 事前に測定した快適歩行と比較したところ, 所要時間は一時的(5秒時)に短縮し歩幅, 歩行率は一時的に増大した。3. 一方, 低速歩行後の快適歩行では, 所要時間は増大し, 歩幅, 歩行率は減少した。しかしながら, これらの異なった歩行速度における干渉効果は時間経過とともに減弱してしまうことが確認できた。