著者
備瀬 美香 伊藤 智子 鈴木 雅之
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S41054, (Released:2017-10-13)
参考文献数
12

本研究は,英語学習方略の中でも英文読解方略に着目し,中学校における方略指導の実態を明らかにすることを目的とした.中学英語教師85名と中学3年生303名を対象に調査を行った結果,中学校ではボトムアップ方略の指導が重視されている可能性が示唆された.また,教職歴の長い教師ほどトップダウン方略の指導を行う傾向にあることが示された.さらに,生徒の方略被指導経験と動機づけの関係について検討した結果,方略の種類に関係なく,方略を指導された経験の多い生徒ほど読解意欲や効力感が高く,長文が好きである傾向にあった.
著者
渡邉 真菜美 伊藤 弘
出版者
筑波大学大学院人間総合科学研究科世界遺産専攻・世界文化遺産学専攻
雑誌
世界遺産学研究 (ISSN:21894728)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.18-31, 2017-08

本研究は、奈良県・吉野を事例に、国史、山岳信仰、桜の鑑賞、林業など地域の多様で複雑な背景に対する世界遺産登録の評価を分析し、国際的な評価と地域の実態との乖離を検証することを試みた。地形図やGISに基づく景観の成立過程の把握、および世界遺産登録に関係する国内外の公式資料の調査を行った。吉野の森林は林業によって形成され、修験道の山岳修行の道である大峯奥駈道周辺は、戦後の森林施業で人工のスギ林に囲まれた空間へと変化してきた。しかし、世界遺産登録において、UNESCOやICOMOSでは吉野の森林が高く評価され、その神聖性が強調されていた。地域の多様な背景のうち一部が注目され、かつ、人の営みで成立してきたという実態とは異なる理解がなされていたことが明らかとなった。Seeking to protect international and universal values, the World Heritage highlights specific aspect of diverse and complicated backgrounds of a local place. Assessing what aspect was valued and what was not at the World Heritage inscription is important in understanding a local place as a whole. Yoshino as part of the World Heritage site "The Sacred Sites and Pilgrimage Routes of the Kii Mountain Range" involves associations with national history, a history of mountain ascetic belief, an appreciation as a scenic cherry blossom site, and traditional forestry activities unique in this region. This research analyses evaluations on the diverse backgrounds of Yoshino made at the World Heritage inscription, to figure out the discrepancy between the international and the local. It utilized topographical maps and GIS data to identify spatial transitions of a landscape of Yoshino. It then reviewed documents related to the World Heritage inscription from UNESCO, ICOMOS and the Japanese Government to see which aspect was highly valued. Spatial analysis discovered that a landscape around O-mine Oku-gake Michi, a training path across mountains for the ascetic religion, has changed over the 20t h century. Views from the path previously included a wide view to distant mountains but due to development of forestry activities, now they are entirely enclosed surrounded by planted cedar forests. On the other hand, evaluations by UNESCO and ICOMOS featured the ascetic belief and particularly emphasized sacredness of forests. While not recognizing the fact that the forest in Yoshino is mostly an artificial plantation developed over time due to the human intervention, the World Heritage inscription associated the forests with religious ascetic practices. This revealed a discrepancy between an international understanding on a local area and the local reality, which the international focused on one specific aspect of local diversities and failed to grasp exact background of the highlighted aspect.
著者
鈴村 高幸 伊藤 博仁
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.J29-J34, 2018-01-01 (Released:2017-12-21)
参考文献数
3

テレビ朝日では,非常災害時における放送継続手法の検討を継続的に行っている.本社の番組送出機能が喪失してしまい,親局送信所のみで放送を継続する事態を想定した時,SNGを用いて各地の系列局より放送素材を伝送してもらい,親局送信所において直接受信するという手法が有効である.しかし,関東広域放送の親局送信所は東京スカイツリー®であるため,アンテナを設置するための条件が厳しく,SNGを簡単に受信することはできない.そこで,常設されているFPU受信アンテナを用いてSNGを受信するという手法を考えた.この手法を実現するために,FPU受信アンテナの受信帯域幅を広帯域化し,SNGも受信可能となるような共用受信アンテナの開発を行った.
著者
伊藤 隆 渡辺 賢治 池内 隆夫 石毛 敦 小曽戸 洋 崎山 武志 田原 英一 三浦 於菟 関矢 信康 及川 哲郎 木村 容子
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.195-201, 2009 (Released:2009-08-05)
参考文献数
1

東洋医学論文には東洋医学を西洋医学のルールで論じることに起因した特異性がある。西洋医学に比較すると,人文科学的要素の多い東洋医学では記述が主観的になる傾向がある。目的,方法,結果,考察は,論文内容を客観化させ,査読者と読者の理解を容易ならしめるために必要な形式と考えられる。より客観的な記述のためには,指定された用語を用いることが理想であるが,現実的には多義性のある用語もあり,論文中での定義を明確にする必要がある。伝統医学では症状と所見と診断の区別が不明瞭な傾向があるが,科学論文では明確に区別して記述しなくてはいけない。新知見を主張するためには,問題の解決がどこまでなされているかをできるだけ明らかにする必要がある。投稿規定の改訂点である,漢方製剤名の記述方法,要旨の文字数,メール投稿について解説した。編集作業の手順について紹介し,再査読と却下の内容に関する最近の議論を述べた。
著者
影目 樹亮 大島 孝昌 中山 正人 伊藤 衡平 恩田 和夫
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 = Transactions of the Japan Society of Mechanical Engineers. B (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.70, no.689, pp.223-228, 2004-01-25
参考文献数
10

The nickel/metal hydride battery (Ni/MH) has been developed as a power source for the hybrid electric vehicle (HEV) and the pure electric vehicle (PEV). But the large battery with heavy duty cycle by more rapid charge and discharge than today's is desirable for the diffusion of HEV and PEV. Therefore the thermal behavior of Ni/MH battery must be understood precisely for the battery size enlargement and its performance improvement. In this report the thermal behavior of small Ni/MH battery during rapid charge and discharge cycle has been studied numerically and experimentally by considering the entropy changes by electrochemical reactions, the endothermic reaction by hydrogen occlusion to MH, the exothermic reaction by side reaction, the heat generation by overpotential and the heat transfer to the ambient air. The calculated cell temperature agrees well with the measured under both the charge and discharge cycles below the rated current, but the calculated is larger than the measured above the rated current.

1 0 0 0 OA [地錦抄 20巻]

著者
伊藤伊兵衛 撰
出版者
須原屋茂兵衞
巻号頁・発行日
vol.[6], 1733
著者
露口 小百合 伊藤 知子 今義 潤 江口 智美 久保 加織 高村 仁知 中平 真由巳 原 知子 水野 千恵 明神 千穂 村上 恵 和田 珠子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.59, 2012 (Released:2012-09-24)

【目的】揚げる・炒める分科会ではこれまで揚げ種重量の10倍程度の油を用いた一般的な揚げ方法での様々な研究を行なってきた。しかし、最近では環境問題や健康への配慮から少量の油で揚げる「シャロウフライ」と呼ばれる方法が注目されている。そこで今回は揚げ種が浸る程度の少ない油量で揚げた場合の揚がり具合について検討した。 【方法】試料として豚カツ(業務用冷凍豚一口カツ)およびサツマイモ、揚げ油はキャノーラ油を用いた。油の量は「ディープ」(油の深さが揚げ種の厚さの2倍)、「シャロウ1」(同1倍)、「シャロウ1/2」(同1/2倍)とした。温度調節付きガスコンロと26cm径のフライパンを用い、豚カツは180℃、5分間、サツマイモは160℃、6分間揚げた。揚げ操作中に揚げ種の中心温度と油温の変化を測定し、揚げ操作後の重量変化より吸油率と脱水率を算出した。官能評価はパネル6~8名で、評点法(外観、油臭さ、におい、味、揚がり具合、テクスチャー、総合)と順位法で行った。 【結果】脱水率は、豚カツ、サツマイモともに「シャロウ1/2」で低かった。吸油率は、豚カツでは油量による差はみられなかった。中心温度は「シャロウ1/2」では温度上昇が遅かった。官能評価の評点法は、豚カツ、サツマイモともに外観、におい、揚がり具合、テクスチャーおよび総合において「シャロウ1/2」が有意に低い評価であった。順位法では、豚カツは、「ディープ」、「シャロウ1」、「シャロウ1/2」の順に好まれた。サツマイモの「シャロウ1/2」では仕上がりが不均一で水っぽく感じられ、脱水率の結果と一致していた。以上の結果から、油量の違いは揚がり具合に影響を及ぼすことが明らかになった。
著者
吉田 美穗子 伊藤 泰子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.5_11-5_16, 2013-01-31 (Released:2013-03-14)
参考文献数
13

自然界では量的な大きさに左右されない、ある図形の部分と全体が相似であるという自己相似性が多く存在している。また、造形的なリズムの中での意外性の混在はわれわれに心地よい環境をもたらし、デザインを豊かなものにする。フラクタルはこの両面の性質をもっている。われわれにとってフラクタル幾何学図形を組み込むことは、自然界に存在する形のシステムを内包する新しい建築・インテリア形体を造ろうとする試みであると考える。フラクタル図形のもつ自己相似性のプログラムをCADに転用して空間構成を行った。大きさを持たないフラクタルに尺度を与えることで空間は幾何学図形の「美」を感じさせる、より自然形体に近いものとなった。フラクタルは居心地の良い空間を生成することのできる有効な手段であるとの確信を得た。
著者
水科 篤郎 伊藤 竜象 片岡 邦夫 中嶋 義弘 福田 昭博
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学 (ISSN:03759253)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.1116-1121,a1, 1971-10-05 (Released:2010-10-07)
参考文献数
6
被引用文献数
3 5

3次元的なテイラー渦運動に追従する微粒子の飛跡をストロボ光により互いに垂直な2方向から同時撮影する。1対のストロボ飛跡写真より渦の歪みおよびテイラー渦流の速度分布を解析できる。広い間隙幅に, 変動量に関する運動方程式とStuartのエネルギー式を適用し, テイラー渦流の速度 (基波) の理論解を得る。その結果, 実験と理論は基波のみが重要であるテイラー数範囲においてよく一致する。
著者
渡邊 法男 細川 佐智子 山田 卓也 吉田 知佳子 鈴木 瑛子 安部 成人 伊藤 真也 丹羽 伊紀詠 山村 恵子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.27-32, 2017-03-20 (Released:2017-03-25)
参考文献数
11

目的:フェンタニル舌下錠(Fentanyl Sublingual Tablets:FST)の有用性および安全性について調査を行い,FSTの適正使用に向けた問題点について検討した.方法:薬学的管理を行ったがん性疼痛入院患者のうち,突出痛に対してFSTを使用した18名を対象に,FST使用前後の疼痛スコアおよび副作用(嘔気・嘔吐,傾眠)の変化について調査した.結果:FST使用前後の疼痛スコアは,投与直前6.4±2.4と比較して,投与30分後3.4±2.8と有意な改善が認められた(p<0.01).傾眠は,投与直前と比較して,投与30分後および2時間後に有意な発現の増加が認められた(p<0.05).嘔気・嘔吐は,有意な変化を認めなかった.FST使用患者9名に口腔乾燥が出現し,口腔乾燥出現時には,疼痛スコアおよび副作用に有意な変化を認めなかった.結論:FSTの適応を判断する上で口腔状態の観察は必須で,十分な口腔ケアを行った上でFSTを使用すべきである.また,傾眠の副作用が高頻度に出現する可能性が示唆された.
著者
木村 琢磨 伊藤 澄信
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.138-143, 2001-03-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
21

近年, 総合診療部門の臨床教育における役割は増大している. 初期研修では将来の専門領域が何であっても, すべての臨床医に求められる基本的臨床能力の教育が求められている. common problemsやcommon diseasesの問題解決能力の修得には外来研修が有用で, 当科ローテート中の研修医には指導医のチェックのもとで入門的な初診外来研修が実施されている. また, 当科では一般臨床医, 臨床研修指導医の養成を目標とした後期研修も行われている. 研修の場として外来を重視し, commonにみられる内科系疾患についての二次レベルから安定期フォローアップまでの診療能力の修得を目標にした初診外来, 継続外来, 救急外来での研修に加え, 内科系以外の一次レベルの診療能力の修得を目標にした内科系以外の専門外来における研修も行っている. また当科では52床の病棟を有し, 侵襲的な検査・治療を必要としない頻度の高い内科系疾患の病棟研修もなされている.
著者
伊藤 大輔
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.33-41, 2017

<p>本研究の目的は,思考内容が行動を制御するための他の有用な資源を抑えて支配的になる傾向を示す認知的フュージョンが,否定的認知を媒介して,外傷後ストレス症状に悪影響をもたらすというモデルを検証することであった。大学生557名を対象に,外傷体験調査票,認知的フュージョン,トラウマに対する否定的認知,外傷後ストレス症状に対する否定的認知,外傷後ストレス症状に関する測定尺度を実施した。広義のトラウマ体験者281名を対象に,共分散構造分析を実施した結果,想定したモデルの適合度について十分な値が得られた。つまり,認知的フュージョンは,トラウマや外傷後ストレス症状に対する否定的認知に正の影響を及ぼし,トラウマや外傷後ストレス症状に対する否定的認知は外傷後ストレス症状に正の影響を及ぼすというプロセスが示された。今後は,認知的フュージョンをターゲットとした介入法の有効性やその改善プロセスの検証が求められる。</p>
著者
伊藤 さよ 佐藤 高広 山下 珠希 鈴木 康弘
出版者
Japanese Association of Forensic Science and Technology
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.133-137, 2014
被引用文献数
1

Glass fragments are valuable evidence in the criminal investigation of hit-and-run, murder and burglary cases. Screening of glass fragments should be carried out by refractive index (RI) measurement after the identification of unknown fragments of glass by analysis using electron probe microanalysis (EPMA), scanning electron microscopy with an energy dispersive X-ray spectrometer (SEM-EDS) and/or X-ray fluorescence spectrometry (XRF). However, it has been pointed out that RI values of glass fragments can be influenced by electron beam and/or X-ray of the instrumental analysis, although the effect of them on RI values of glass has not been sufficiently examined.<br>   In this work, we compared the RI values of glass fragments before and after irradiation by electron beam and/or X-ray using these devices. Glass fragments were collected from 3 different uses (windowpane of building, windshield and beer bottle). No significant difference was recognized in the RI values of these glass fragments before and after 30 minutes of irradiation.<br>   We have ascertained that the effect of electron beam and/or X-ray on the RI values is negligible in the conditions of the present study and that comparison of RI values is still useful for the forensic screening of glass fragments even after the instrumental analysis described above.<br>