著者
高宮 智正 横山 泰廣 山下 周 白井 康大 鈴木 雅仁 前田 真吾 田中 泰章 佐々木 毅 笹野 哲郎 川端 美穂子 平尾 見三
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.S3_12-S3_16, 2013

症例は33歳, 女性. ほぼ終日持続する心房頻拍 (atrial tachycardia ; AT) に対してカテーテルアブレーションを施行した. 12誘導心電図のP波の形状から心房頻拍は右心耳または三尖弁輪起源と推定された. EnSite Multi-Electrode Array (MEA) カテーテルが三尖弁輪を跨ぐように右室心尖部に向けて留置してAT中に三尖弁輪部のNCMを行い, 自由壁側10時方向に心房頻拍の起源を同定してカテーテルアブレーションに成功した. ATの機序としては心臓電気生理学的検査 (electrophysiological study ; EPS) 所見より異常自動能と考えられた. 三尖弁輪部は中隔側, 自由壁側ともconventional mappingに苦労することがあり, non-contact mapping (NCM) が有用と考えられた.
著者
佐々木 毅
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.2499-2506, 1999-12-10
参考文献数
30
被引用文献数
1

ヒトパルボウイルスB19 (B19)は,小児の伝染性紅斑(りんご病),成人での急性多発性関節炎,あるいは胎児水腫等を起こす.また,赤芽球障害(Aplastic crisis,赤芽球勞).更には肝障害,急性腎炎,血球貪食症候群発現にも関与しうる.我々は,慢性関節リウマチ(RA)の活動時病変を有する関節滑膜組織において, B19が活性化され,かつB19がTNFα, IL-6らの炎症性サイトカイン産生を惹起することを見出した. B19はRA関節滑膜細胞(SVC)の中でもマクロファージ,芽中心の樹状細胞, T, Bリンパ球に発現し,オートクライン,パラクライン機転で炎症細胞, SVCの活性化と増殖を促すと推定される.この事は自己免疫病(慢性関節リウマチ)発症における免疫系細胞をターゲットとしたB19持続感染の役割を示すものであろう.
著者
佐々木 毅
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.10, pp.2484-2489, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
7

関節は無菌状態にある.感染性関節炎は関節の損傷あるいは血行性など関節外より病原微生物が直接的に関節部に進入して生じる.細菌性関節炎は急速に進行し関節破壊を生じるので早急な対応を必須とする.真菌,マイコプラズマ,ウイルス,スピロヘータ等いずれでも関節炎は起こしうる.特に老齢やステロイド,免疫抑制薬使用状態を含む免疫不全状態の例では本疾患に留意する必要がある.
著者
佐々木 毅志 山本 敦史 小林 勉 設楽 仁 一ノ瀬 剛 下山 大輔 濱野 哲敬 高岸 憲二 大澤 敏久
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.411-413, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
13

夜間痛は肩関節疾患の特徴的な愁訴の一つであるが,その詳細については不明な点が多い.本研究の目的は肩関節疾患における夜間痛について調査を行い,その特徴と背景因子について検討することである.2011年4月1日から2013年3月31日の期間における当科肩外来初診患者232人を対象とした.男性121人,女性111人,平均年齢56.4歳であった.年齢,性別,診断名,罹患側,肩関節痛の症状,肩関節可動域,筋力,夜間痛の頻度,夜間痛の症状,理学所見との関連について調査を行った.対象の58.2%に夜間痛を認め,その64.4%は肩痛のためほとんど毎日夜間に覚醒し,93.3%は体位による疼痛の増減を認めた.夜間痛がある例はない例と比較すると年齢が高く,安静時痛が強い例が多かった.
著者
山田 達雄 稲葉 継雄 坂野 慎二 一見 真理子 本間 学 白土 悟 池田 充裕 山田 礼子 佐々木 毅 澤野 由紀子 馬将 光場
出版者
中村学園大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

イデオロギー対立の終焉の後の失われた10年と言われる間に、経済開発モデルとしての日本の地位は地に落ちた。代わってグローバリゼーションが風靡し、各国の経済開発を牽引するモデルとしてアメリカの地位が強大になった。国際的な経済競争に勝つか否かは教育システムがボーダーレスになった世界経済に適合しているかどうかが一つの重要な鍵になっているのではないかと考え、平成11年度から平成13年度までの3年間、英、米、独、仏、オランダ、ノールウエー、ヨーロッパ連合、中国、韓国、台湾、タイ、マレーシア、シンガポール、オーストラリアの12カ国2地域を訪問し、これらの国で学校と企業の間のパートナーシップの状況を調査した。調査には団体あるいは個人で25回延べ36人が出かけた。またこの間に、国内学会で3回、国際学会で2回、国際セミナーとワークショップでそれぞれ1回発表し評価を受けた。報告書は第2年度に中間報告書(125頁)と最終年度に最終報告書(232頁)を刊行した。調査の結果、共通に見られる傾向としては、脱イデオロギーと経済競争への対応が教育の最も強力な動因となったことにより、官僚支配が弱まり市場化・民営化がどこの国も起こっており、グローバリゼーションの影響を強く受けていることが分かった。その結果、教育システムと経済システムの調和的あり方がどこの国においても重要な課題とされており、教育改革が模索されている。その対応のあり方に、経済そのものの建て直しがうまくいっていないロシア連邦などと、急成長を遂げつつある中国などとは大きな差が見られた。他方、新経済開発国(NIES)と言われる韓国、台湾及びシンガポールではグローバルな経済に対応した人材育成に成功している。注目すべきことは、これらの国が脱日本の政策をとっているらしいことである。かつて日本を先頭とする国際分業の雁行モデルが語られたことがあったが、今は影を潜めてしまった。逆に、日本は改革のスピードが遅く、日本のまねをしていてはならないという考えが強くなっている。韓国、台湾、シンガポールの国々は、米国を先頭とするグローバリゼーションに柔軟についていく姿勢を見せており、イギリスに倣って学校教育と就職後の職能開発を統合する傾向がある。
著者
今木 隆太 庭野 慎一 佐々木 紗栄 弓削 大 脇坂 裕子 平澤 正次 佐藤 大輔 佐々木 毅 森口 昌彦 和泉 徹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Supplement3, pp.142-146, 2005-07-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
10

【目的】心室細動(VF)自然発作既往のない無症候性ブルガダ型心電図症例において,VF誘発性と他の臨床データを有症候性症例と比較し,その臨床的意義を検討した.【方法】対象は心電図で特徴的なST上昇を認め,当科で電気生理学的検査(EPS)を施行した36症例.うち有症候例(VF自然発作群)5例,VF誘発例(VF誘発群)15例,VF非誘発例(VF非誘発群)16例.【結果】観察期間中4例でVF出現を認めた(VF自然発作群2例,VF誘発群2例).各群の失神歴(%)はVF自然発作群:VF誘発群:VF非誘発群=100:13:25(P<0.05),突然死家族歴(%)は40:13:19(NS)であった.ピルジカイニド負荷時のcoved型ST上昇頻度(%)は100:93:63(NS),冠動脈攣縮陽性率(%)は50:64:25(NS),MIBG分布異常(%)は75:40:20(NS)と,VF自然発作群,VF誘発群に多い傾向のみ認めた.【結語】無症候例の経過観察中,VF誘発群でVF自然発作を認めた.高リスク例の指標は明らかでなかったが,冠動脈攣縮誘発率やMIBG分布異常などの重要性が示唆された.
著者
神森 眞 小川 利久 橋本 政典 小長谷 一郎 大原 毅 佐々木 毅
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.717-721, 1996-03-01
被引用文献数
5

本邦における食道異所性胃粘膜島の発生頻度は男性4.0%,女性2.6%でその大部分は食道入口部近傍に存在するとされている.しかし,上部食道の異所性胃粘膜島より発生した腺癌の本邦報告例は,検索しえた限りでは5例のみであり,極めてまれである.症例は,74歳の女性.特記すべき既往歴,家族歴なし.平成5年12月27日上腹部不快感生じ,精査のため平成6年1月17日当院入院する.上部消化管X線検査にて,頚部食道に3cm大の有茎性腫瘍を認め,さらに上部消化管内視鏡検査にて,切歯列より約14cmの頚部食道後壁左側に,山田III型ポリープ様病変をみとめた.生検の結果は,乳頭状腺癌であった.また,超音波内視鏡検査にてこの腫瘍の深達度はmmと考えられた.平成6年2月15日,腫瘍を含めた頚部食道粘膜切除術を施行した.病理組織学的には,異所性胃粘膜島より発生した高分化腺癌と考えられた.今回,我々は外科的粘膜切除術で根治がえられたと考えられる極めてまれな早期頚部食道腺癌を経験したので,文献的考察を加え報告する.
著者
坂野 潤治 馬場 康雄 佐々木 毅 平石 直昭 近藤 邦康 井出 嘉憲
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

本研究は昭和62年度の総合研究「政治過程における議会の機能」の成果を前提にしつつ対象を限定し、議会政の成立・発展の歴史過程を社会経済的・思想的背景との関連でより詳細に検討することを目的とした。研究目的の性格から研究対象が各人の得意とする分野に細分化されるおそれがあったが、その欠を補うために、比較の観点を意識的に打ち出し、そのために異なった分野を対象とする研究者から成る研究会を頻繁に行って意見交換をすることに留意した。主たる研究発表の場である「比較政治研究会」は東京大学社会科学研究所において月一回のペースで行われた。そのさいメンバー以外の研究者も招いて発表をお願いした(福沢研究の高橋眞司氏他)。この研究のメンバーはほぼ一巡して報告を終えたが、主な研究は次のようなものである。まず日本については、坂野が明治憲法体制の成立史という永年の研究視角を深め、植木や兆民との対比において福沢を経済的保守主義の源流として批判的に位置づけた。一方平石はイギリス的議院内閣制の導入における画期的意義を福沢に認め、福沢が用いたバジョット・トクヴィルら西欧政治思想との関連において日本啓蒙思想を読解する視角を示した。西欧に関しては、馬場がイタリアにおける普通選挙法成立の政策過程と権力過程の分析を通じて第一次大戦前のイタリア議会政の構造を明らかにした。また佐々木はシヴィック・ヒューマニズムやスコットランド啓蒙との関連からフェデラリストのアメリカ憲法論を精読し、理念が時代状況のなかでいかに制度に結晶するかを跡づけた。森はヘーゲル学派を材料にドイツ自由主義の特色とその挫折とを検討した。以上の研究成果はその一部がすでに公刊され、他も発表誌未定ながら公刊を想定している。研究の性格上統一的な結論めいたものはあり得ないが、今後ともこの方向で研究を深めてゆきたいと考える。
著者
有賀 弘 高橋 進 曽根 泰教 坂野 潤治 半沢 孝麿 佐々木 毅
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

本研究の目的は, 政治過程における議会の機能を政治思想史的, 政治史的, 現状分析的に多角的に検討することにある. こうした政治学的なアプローチを駆使することによって, 単なる法制度論のレベルで終わりがちだった議会制の研究は, より一層の前進を見ることができるのである.本研究による第一の成果は, 20世紀に入ってからの行政国家化, 福祉国家化とともに議会機能が低下したという通説的な理解である議会無能論ないしは議会無用論に対して, 再検討を加えた結果, 次の点が明らかになったことである. (1)シンボル・統合機能, (2)立法機能, (3)代表機能, (4)(議院内閣制における)行政部形成機能, (5)争点明示機能, (6)行政部統制機能, (7)政治的補充機能などのすべての議会機能が一様に低下したのではない. むしろ「政治」課題や案件の増大に伴って, 政策形成や決定の機能は, 議会だけでなく行政部や政党, マス・メディアや「運動」などの政治的生体に分担されるようになったが, その多くは, 議会の媒介的機能を通じて政治の「場」に登場してきているという点である.第二の成果は, 従来の議会研究においては, 議会制民主主義のモデルとしてのイギリスや強い影響力をもつアメリカの議会がおもに歴史的視点に立って分析されてきたが,本研究においては, 両国だけでなくドイツ, イタリア, オランダそして日本の議会も分析の対象とし, しかも比較的最近の動向まで扱っているために, かなり網羅的になった点である.とくに日本の議会制については, 戦前の帝国議会と戦後の国会の双方を扱い, しかも議会機能の諸モデルの検討や代替モデルの仮説的提示, 各種の事例やデータによる分析を行っており, 包括的な検討が加えられた.本研究の成果は, 今後さらに議会研究を進める際, その重要な拠り所となるであろう.