著者
佐藤 雅俊
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

廃棄バイオマス資源の一つであるケナフ心材部の有効利用の一つとして、バインダーレスボードの開発について検討し、製造条件、特に圧締温度が高いほど耐水性が向上し、最適条件下では、ユリア・メラミン共縮合樹脂接着剤と同等かそれ以上の性能を有することが認められ、さらに、一年間の暴露試験においても材料の劣化は少なく、バインダーレスボードが耐水性に劣るという概念を覆す結果となった。一方、ケナフコアボードを用いたバインダーレスボードの自己接着機構に関する検討を、化学的手法と物理的手法を用いて実施した。化学的分析結果から、自己接着には、熱によるリグニンの軟化及びリグニンの縮合型構造の形成が確認された。また、カルボン酸類によるエステル結合の生成の可能性も示唆され、このような変化を生ずる要因は、製造時における圧締温度であり、適切な温度条件下において自己接着機構が発現していることが推測された。また、廃木材および竹を爆砕処理したパルプ等の化学分析あるいは走査型電子顕微鏡を用いた分析からは、爆砕によりパルプ表面に析出し遊離したリグニンが自己接着に関与していることが明らかとなり、この結果からも上述したリグニンの関与が明らかとなった。バインダーレスボードの製造条件に関しては、圧締圧力および圧締温度が木質系ボードの製造条件と比較しても差異がないことから既存のボード製造装置を用いたバインダーレスボードの製造が可能であり、今後、各種のバイオマスの有効利用に適用可能と思われる。
著者
佐藤 雅彦
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.3-23, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
35

In this paper, we analyze the historical process of emergence of proof assistants, and acceptance of proof assistants by the community of mathematicians. Our analysis is done by reflecting on how the notion of proof deepened through the proposal of formalism by Hilbert, formalization of the notion of computability, and especially development of type theory. In this analysis, we view mathematics as human linguistic activity where proofs are produced and communicated by means of both natural languages and formal languages. The complete acceptance of proof assistants by mathematicians is yet to be achieved, but we argue that it should and would happen by properly designing and implmenting a meta proof assistant which can talk and reason about any formal systems.
著者
佐藤 雅浩 瀧口 述弘 徳田 光紀 庄本 康治
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.65-71, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
29

経皮的電気神経刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:TENS)は電気刺激を用いた非薬物的鎮痛手段である.最大耐性強度で実施する高強度高周波(High intensity, high frequency:HI-HF)TENSは,数分間の実施で広汎性の鎮痛効果が得られるとされており,疼痛部位と離れた部位への刺激によっても鎮痛効果が得られる可能性がある.そのため,手術の影響を受けにくい非手術側へのHI-HF TENSの実施によっても術側の鎮痛効果が得られると考えた.本研究では大腿骨頸部骨折術後患者の運動時痛に対して,手術の影響を受けにくい非術側にHI-HF TENSを実施し,即時的な鎮痛効果を検討することを目的に実施した.大腿骨頸部骨折術後患者6名に対し術後翌日より1週間,HI-HF TENSを非術側へ実施した.実施前後で運動時痛が即時的に軽減した.非術側へのHI-HF TENSは術後の運動時痛を軽減する可能性が示唆された.
著者
藤野 浩子 田熊 大祐 戸野倉 雅美 馬場 亮 松木薗 麻里子 高橋 香 鴇田 真弓 笹原 沙衣子 市橋 弘章 伊藤 寛恵 佐藤 雅美 文原 千尋 押田 智枝 小暮 啓介 山地 七菜子 藤田 桂一
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.25-29, 2014-03-20 (Released:2016-02-05)
参考文献数
17

血便・粘液便を主訴に来院したミニチュア・ダックスフンド4例に対し,内視鏡下生検材料による病理組織検査にて,直腸炎症性ポリープと診断した。4例中1例では,内科治療にて症状の改善がみられ,現在プレドニゾロン,シクロスポリンの投与を継続し,良好な経過を示している。4例中3例では,最初に内科療法を行ったが,十分な症状の改善がみられなかったため,直腸粘膜引き抜き術による外科治療を実施した。いずれも,術後症状の改善がみられ,現在まで再発を認めず維持している。
著者
佐藤 雅也
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.147, pp.133-196, 2008-12-25

ここでの問題意識は、民衆・常民の視点、民衆・常民の側に立った史学、文化史が民間伝承の学(民俗学)の本質とするならば、語りの部分、語られた部分を基礎に、戦争をとらえていくこと。日本の民衆・常民にとって、近代の戦争体験とその後の人生を明らかにしたうえで、戦争体験の記録と語りを継承していくことを目的としている。このことをふまえて、本報告では、三つのテーマから構成されている。第一に、「軍都」仙台の戦争遺跡と記念碑では、現在の時点から見た近代仙台の旧軍事施設の史跡、旧軍関係及び戦時関係の記念施設・記念碑・慰霊碑などについて、その概要を報告している。また、旧「軍都」仙台の陸軍施設の変遷と、近代の戦争に関わる記録を概観している。そして、昭和十五年(一九四〇)以降の仙台第二師団における宮城県・福島県・栃木県関係の旧軍施設に関する原本資料である仙台師管区経理部「各部隊配置図・国有財産台帳附図」について、その概要を紹介している。第二に、戦死者祭祀と招魂祭では、記念碑、文献資料、新聞記事などから、戊辰戦争、西南戦争、甲申事変、日清戦争、日露戦争、満洲事変、日中戦争、アジア太平洋戦争などにおける戦死者の慰霊と招魂の問題を取り上げている。第三に、戦争の民俗~戦争体験とその後の人生をめぐる民衆・常民の心意とは~では、「聞き書き」資料を基礎に、実物資料、文献資料、写真資料なども付け加えている。ここでは、①徴兵検査の意義と役割、②徴兵検査と軍隊への入営、③内地での軍隊生活、④一兵士が見た軍隊と戦争(召集、家族、戦地、敗戦と捕虜生活)、⑤満洲開拓と満洲移民、⑥「戦争未亡人」の戦中・戦後などについて、報告している。実際の調査では、約五十人の話者の方々のご協力をいただいたが、その中から十八人のインタビューをもとに記述している。このように民俗学の手法を駆使して、戦争の民間伝承を各地で継承していくことは、常民・民衆のための文化史としての民俗学にとって、課題の一つだと考える。

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著者
佐藤 雅仁 三遊亭 貴楽
出版者
駒澤短期大学国文科研究室
雑誌
駒沢短大国文
巻号頁・発行日
no.35, pp.77-92, 2005-03
著者
佐藤 雅幸 平田 大輔 野呂 進 鈴木 啓三
出版者
専修大学社会体育研究所
雑誌
専修大学社会体育研究所報 (ISSN:02884135)
巻号頁・発行日
no.55, pp.29-36, 2007

The purpose of the present study was to investigate the effects of athletic experience on concentration. The Test of Attentional and Interpersonal style (TAIS) was administered to twenty female university students without daily athletic experience and forty female university athletes involved in interpersonal ball sport such as tennis. Results indicated that university athletes scored significantly higher on BET and BIT in attentional-style subscale, INFP in control subscale, and CON, SES, P/O, EXE, PAE in interpersonal subscale, in comparison to university students. It was, thus, concluded that university athletes seemed to have haigher ability to accurately select and process many external stimuli than university students. In addition, it was also revealed that university athletes tended to be more extroverted and have higher self values in the interpersonal relationship compared to university students.
著者
佐藤 雅俊
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.69-80, 2015

1. 釧路湿原国立公園の湧水地において,新たにヌマハコベとカラフトノダイオウをそれぞれ優占種とする2 つの湧水辺植物群落の存在を認め,それぞれの種組成と立地を明らかにした.<br> 2. 調査は方形区法に従い,均質な植分に大きさ1 m×1 m の調査区を設置し,方形区内の維管束植物と蘚苔類の優占度および群度を記録した.確認された2 群落について,釧路湿原に既知の群落であるカラフトノダイオウ-エンコウソウ群集と比較した.このほか方形区の位置情報や表面土壌状況の記録と水温測定を加え,2 群落の立地で典型的な1 地点の湧水地を選び,簡易測量によって地形断面図を作成した.<br>3. 2 群落には植物社会学的な植生体系上の上級単位であるオオバセンキュウ-タネツケバナ群団の標徴種であるオオバタネツケバナとオオバセンキュウが出現したので,両群落とも同群団に属すると判断された.しかしながら,群団標徴種の常在度がやや低いヌマハコベ群落は群団レベルの所属において検討の余地があると思われた.<br>4. カラフトノダイオウ群落は,オオバタネツケバナやオオバセンキュウが高常在度で出現する点で,北海道内の大雪山高根ヶ原や十勝三股のカラフトノダイオウが主体となる群落と類似のものであった.一方で,本報のカラフトノダイオウ群落は,釧路湿原に記録されたカラフトノダイオウ-エンコウソウ群集と比較すると,エンコウソウの常在度と優占度がやや低く, クサヨシ,ツリフネソウ,オオカサスゲが欠落したので,低層湿原植生に位置づけられた同群集とは異なると判断された.<br>5. ヌマハコベ群落の立地は,湧水が表面全体を浅く流れる砂の平坦面であったが,カラフトノダイオウ群落の立地は泥の緩斜面であり,両群落の立地は大きく異なっていた.同一の湧水地の範囲内であっても,湧泉と谷底面との比高差が小さい場所では前者の立地が形成され,比高差が大きい場所では後者の立地が形成されると考えられた.<br>
著者
山中 淳彦 佐藤 雅彦
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.4_388-4_401, 1997-07-15 (Released:2018-11-05)

本論文では、代入を持つ関数型言語Λを提案する.この言語の定義を示し、操作的意味論がChurch-Rosser性や参照透明性のような良い性質を持つことを示す.次に、Λと[5]で提案された同様の関数型言語Λ94とを比較し、両者の間に成り立つ関係を調べる.Λの操作的意味論はΛ94のそれよりも簡潔に与えられており、そのためΛに対しては決定的な操作的意味論を自然に定義することができる.
著者
佐藤 雅哉
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュータ = Nikkei computer (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.938, pp.34-41, 2017-05-11

チャットボットがあらゆる顧客応対サービスに広がり始めた。ヤマト運輸や航空会社のAIRDO(エアドゥ)、SBI証券などが消費者との新たなインタフェースとして採用するほか、業務システムへの適用も進む。 チャットボットとは、人の質問に機械が答えを返す自動対…
著者
佐藤 雅彦 中村 豊郎 沼田 正寛 桑原 京子 本間 清一 佐藤 朗好 藤巻 正生
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.274-282, 1995-03-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
9
被引用文献数
3 1

和牛がなぜおいしいかを解明する一助のために,銘柄牛とされる5種類の和牛の香気および呈味成分について検討した.理化学的分析の結果は以下のとおりである.(1) 赤肉部の分析では,ペプチドの分子量分布,ヒスチジン関連ジペプチドおよび核酸関連物質に銘柄による顕著な差は認められなかった.全アミノ酸量およびグルタミンは飛騨牛で多く,松阪牛で少なかった.(2) 脂質の分析では,いずれの銘柄牛もほとんどHPLCにおける保持時間(Rt)55分以降にピークが存在し,そのピークパターンは類似していた.脂質の融点は,神戸牛,米沢牛および松阪牛で低く,前沢牛および飛騨牛で高かった.(3) 加熱香気分析では,加熱後の牛肉試料中の脂質含量に差はないが,回収された香気画分の量,香気画分中の窒素化合物において前沢牛が多く,香ばしいことが予想された.また,官能基別分類では,酸類,アルコール類,アルデヒド類,ケトン類に銘柄による相違が認められ,これらは脂質に由来する化合物の差が現れていると考えられた.
著者
村上 正樹 藤江 智也 松村 実生 藤原 泰之 木村 朋紀 安池 修之 山本 千夏 佐藤 雅彦 鍜冶 利幸
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.41, pp.P-2, 2014

【背景・目的】有機金属化合物はそれを構成する分子構造や金属イオンとは異なる生物活性を持ち得るため,生命科学への活用が期待される。メタロチオネイン(MT)は有害重金属の毒性軽減などに関与するが、誘導機構には不明な点が多い。本研究では,有機アンチモン化合物ライブラリーから見出された化合物(Sb35)によるMT誘導の特性について,ウシ大動脈由来血管内皮細胞(BAE)を用いて調べた。<br>【方法】BAEをSb35で処理し,MTサブタイプおよびMTF-1 mRNAの発現をReal-Time RT PCR法により評価した。金属応答配列MREおよび抗酸化応答配列AREの活性をDual Luciferase Assayにより測定した。<br>【結果・考察】Sb35は,BAEが発現するMTのすべてのサブタイプ(MT-1A,MT-1EおよびMT-2)のmRNA発現を濃度依存的に増加させたが,MREを顕著に活性化しなかった。しかしながら,転写因子MTF-1をノックダウンすると,すべてのMTサブタイプの発現が抑制された。一方,Sb35は転写因子Nrf2を活性化し,AREを強く活性化した。そこでNrf2をノックダウンしたところ,MT-1AおよびMT-1EのmRNA発現が有意に抑制された。MT-2の発現には変化は認められなかった。以上の結果より,Sb35はすべてのMTサブタイプの遺伝子発現を誘導するが,MT-1AおよびMT-1Eの誘導はMTF-1-MRE経路とNrf2-ARE経路の両方に介在されること,これに対しMT-2の誘導はNrf2-ARE経路に依存せず,MTF-1-MRE経路に介在されることが示唆された。Sb35がNrf2の活性化によってサブタイプ選択的にMT遺伝子の発現を誘導することは,この有機アンチモン化合物がMTの誘導機構解析の有用なツールであることを示している。
著者
佐藤 雅浩
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 = Saitama University Review. Faculty of Liberal Arts (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.53-74, 2021

本稿の目的は、「うつ」で通入院経験のある人々を対象とした社会調査によって得られたデータを分析することで、精神疾患に関する医学的知識が、どのような経路を辿って社会に普及し、また人々に受容されているのかについて、その実態を明らかにすることである。佐藤(2019)においては、上記調査における回答者の属性的特徴や通院・治療経験、医療情報の取得経路、診断前後の意識変化などについて、主として計量的な観点から分析を行った。本稿では上記論文の問題意識を引き継ぎつつ、特に「うつ」で通入院経験のある人々が、受診前から接触していた医療情報の取得経路について、より詳細な検討を行う。具体的には、調査対象者らが、自身の「うつ」に気が付くきっかけとなったと考えている各種の情報源について、その概要と媒体の特徴を考察する。この作業により、精神疾患の流行と関連するI. Hacking の言う「ループ効果」について、その過程の一端を経験的な水準から明らかにすることが、本稿の最終的な目標といえる。
著者
佐藤 雅也 柊 和佑 山本 明 柳谷 啓子
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.s1, pp.s13-s16, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
7

近年ではヴァーチャル・リアリティ(以下VR)技術の発展により容易にVRコンテンツに触れることが可能になった。現在流通する3Dモデルのアバター(以下アバター)現在流通するアバターの数は少なく、製作するか配布・販売しているものを利用する必要がある。将来的に個人の所有するアバターの数が増えることが予想できる。また、VRサービスが一般化することで、従来の“わかっている”利用者以外が経済圏に参入してくる。その際、アバターは洋服的な“着替える”対象になり、感情や気分、体調といった要因で選択されることが考えられる。そこで、今後の利用者及びアバター自体の増加に対応できるように、洋服を選ぶようにアバターを蓄積し、検索、装着などの広範な利用方法を検討する必要がある。本稿では、ファッションの分類を参考に、価格や3Dモデル特有のポリゴン数などの要素を追加した、アバターのアーカイブ化について提案を行う。