- 著者
-
米倉 裕希子
- 出版者
- 関西福祉大学社会福祉学部研究会
- 雑誌
- 関西福祉大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:1883566X)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.1, pp.75-82, 2012-09
【研究目的】統合失調症の家族研究からはじまった家族の感情表出(EE)研究を障害のある子どもの家族へ応用し研究してきた.本研究は,就学前の発達の遅れのある子どもの家族のEE およびQOL を調査するとともに,就学前の発達の遅れのある子どもを対象に実施した親子教室の効果を検討する.【方法】対象者は,A 市の療育機関に協力を得て,募集した親子で,全5回のプログラムを実施.5回のうち前半3回は親子同室で,後半2回は親子分離型で,親に対して障害についての知識や対応方法等を学ぶプログラムを提供し,介入の前後で評価した.評価には,簡便なEE 評価の質問紙であるFAS(Family Attitude Scale),健康関連のQOL 指標であるSF-6v2,子どもの行動評価としてCBCL(Child Behavior Checklist)の3つの質問紙を用いた.【結果】分析対象者は8名であり,介入前後で,ノンパラメトリック検定を用い,Wilcoxon の符号付順位検定を行ったが,FAS,QOL,CBCL それぞれにおいて,有意差はなかった.しかし,幼児期においても,家族のEE は低く,また,「身体的機能」や「日常役割機能(精神)」を除く他の6つの下位尺度でQOL が低いことがわかり,学齢期とは違う傾向があることが示唆された.【考察】今後,さらに対象者を増やすとともに,子どもの発達段階に応じた介入方法や内容等を検討していく必要がある.また,昨今の障害福祉制度改革の中で,障害児支援が強化され,家族支援が位置付けられる中で,根拠に基づいた家族への実践モデルを示していく必要がある.