著者
土肥 信康 加藤 敏春 正木 征史
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
金属表面技術 (ISSN:00260614)
巻号頁・発行日
vol.26, no.9, pp.411-415, 1975-09-01 (Released:2009-10-30)
参考文献数
10
被引用文献数
8 7

The inhibition effects and mechanism of benzotriazole (B.T.A.) on tarnishing and corrosion of silver were studied by means of potentiostatic polarization curves, differential capacity-electrode potential curves, and accelerated testings in H2S and SO2 atmospheres. It was recognized that B.T.A. had little inhibition effects in acidic solutions (pH 2.5), but had great effects in almost neutral solutions; because, B.T.A.-Ag complex was formed on the surface in anodic potential region, and B.T.A. was adsorbed on the surface with lone electron-pairs of N-atoms in cathodic potential region. Silver treated with B.T.A. had an enhanced resistance to tarnishing in H2S atmosphere. It was considered that the prevention would be due to the formation of stable B.T.A.-Ag film on the surface. The galvanic corrosion of silver-plated panels occurred in SO2 atmosphere, leading to the copper base owing to the presence of pores, was much more markedly inhibited by electrolytic treatment than immersion treatment in B.T.A. solution. It was found that the change in the surface coverage (θ) of B.T.A. treated copper conformed to Langmuir's adsorption formula expressed as follows: θ=Km/(1+Km), where K: adsorption constant and m: concentration of B.T.A. Then, the changes of K by immersion treatment and by electrolytic treatment were measured. As the results, a larger value of K was obtained by electrolytic treatment. Therefore, it was considered that the adsorption of B.T.A. on copper through pores became easier by electrolytic treatment.
著者
佐伯 秀宣 藤岡 良仁 西村 花枝 三谷 管雄 加藤 敏明 小谷 和彦
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.E1169-E1169, 2008

【目的】高齢化率の増大と共に、医療費の増大、特に老人医療費の増大が著しい。今後更なる高齢化が進む事が予想されるが、それに伴う老人医療費も増大しそうである。また、日本の国民医療費は国民所得を上回る伸びを示している。このような現状が続くと医療費削減のため診療報酬の改定が必然となり、医療従事者への風当たりはさらに強くなる事も予想される。そのような問題への打開策として、健康寿命の延長が必要であると考える。政府は2000年に健康日本21、2007年には新健康フロンティア戦略を発表した。新健康フロンティア戦略では、運動・スポーツが重点戦略の一つとして位置づけられている。そのような社会の中、理学療法士として何が出来るのでしょうか?医療・福祉の領域での働きも重要であるが、それ以前の領域、つまり生活習慣病・転倒骨折・変形性疾患等の予備群に対しての何らかの戦略が必要であると感じている。そして今回「ゲゲゲの鬼太郎」発祥の地である鳥取県境港市長寿社会課から鳥取大学医学部健康政策医学への依頼を受け、ご当地ソング(きたろう音頭)を用いての健康体操(きたろう体操)の考案ならびに普及活動を行った。健康体操の主たる方向性として、心疾患や脳血管障害等になる危険性の高い方々を対象としたハイリスクアプローチではなく、全国民に対し、また低リスクの方々を対象としたポピュレーションアプローチとした。そして、今回最大の目的は「健康体操をツールの一つして行動変容をもたらす」事である。<BR><BR>【方法】体操する事のみの効果を狙ったものではなく、行動変容をもたらすツールの一つと考え、まず「きたろう体操の普及員を養成する」事を戦略とした。普及員として40名程度の募集を行い、2週間に1回のペースで全5回、普及員養成講座を開催した。そして、普及員とともに各種イベントへの参加を実施した。また、自宅・地域でも体操を行えるようにDVD作製を行い配布した。<BR><BR>【結果】普及員養成講座として、定期的な運動の実施が行えた。そして不定期ではあるが地域での各種イベントでの体操披露、各種メディアを通しての普及活動を実施した。普及員の中には、所属する機関での体操教室の実施を行った者もいた。<BR><BR>【考察】運動を行う事は比較的容易であるが、それを継続して行う事は困難である。そこで健康体操をツールの一つと考え、体操する機会の提供を行った結果、継続的な運動の実施が行えた。これは継続して運動するには何らかの明確な目標の掲示が必要である事が窺えた。<BR><BR>【今後の展望】本年度で普及活動は終了というわけではなく、来年度には第2期生普及員の養成を行い、その養成指導員として第1期生普及員の参加を図り、継続的な運動の実施を図る予定である。また、鳥取県内の各種体操を使用しての大会を開催し、単に体操をするだけではなく、モチベーションを上げながらの継続的な運動の実施を図る予定である。
著者
加藤 敏英 矢田谷 健 石崎 孝久 伊藤 貢 小田 憲司 平山 紀夫
出版者
日本獸医師会
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.127-130, 2008 (Released:2011-01-19)

トルアジン誘導体であるトルトラズリルの牛コクシジウム病発症予防効果および安全性を調べることを目的に、168頭の子牛を用いて投与試験を実施した。その結果、有効性試験(n=134)では薬剤投与群(n=67)の発症率(0%)が無投与対照群(n=67)のそれ(38.8%)に比べ有意に低かった(P<0.01)。また、薬剤投与群のオーシスト排泄率およびOPG値は投与後4週までは無投与対照群に比べ有意に低く(P<0.01)、便性状や下痢便排泄率でも顕著な差が認められた。いっぽう、安全性試験(n=168)では薬剤投与群(n=84)と無投与対照群(n=84)でそれぞれ19.0%、26.2%の個体に呼吸器症状がみられたが、薬剤投与に起因する有害事象はみられなかった。以上のことから、トルトラズリル5%経口液は牛コクシジウム病発症を抑え、臨床的に有用性が高い薬剤であることがわかった。
著者
中山 博之 加藤 敏江 浅見 勝巳 服部 琢 柴田 康子 荒尾 はるみ 別府 玲子
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.381-387, 2006-08-31 (Released:2010-08-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1 3

言語習得前高度難聴で長期間 (3年以上) 人工内耳装用児25名 (6~11歳) と言語習得前あるいは習得中の中等度から重度難聴の補聴器装用児61名 (6~17歳) を対象とし, 自作の各種語音聴取検査と保護者に対して家庭での聞こえに関する質問紙での評価を行い, 語音聴取能を比較検討することにより, 人工内耳適応聴力閾値を推定した。その結果, 難聴のみの単一障害である人工内耳装用児の語音聴取成績は, 0.5・1・2・4kHzの4周波数平均聴力レベルが70dB台の補聴器装用児に相当しており, 4周波数平均聴力レベルが90dB以上の高度難聴児は人工内耳の適応であると考える。また, 4周波数平均聴力レベルが70dB台と90dB台の補聴器装用児の4周波数平均装用閾値は各々41dB, 53dBであったことから, 補聴器調整後も4周波数平均装用閾値が50dB以上の場合は, 人工内耳の適応を考慮するべきであろう。
著者
土谷 佳之 宇山 環 薮田 拓生 三浦 新平 加藤 敏英
出版者
全国農業共済協会
雑誌
家畜診療 = Journal of livestock medicine (ISSN:02870754)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.339-347, 2016-06

管内大規模酪農場において,Salmonella O4群を原因とする子牛の腸炎による死亡事故が多発したため,新生子へサルモネラ症不活化ワクチン接種を行った、,ワクチンは,出生翌日または3日齢およびその3週後に接種した。その結果,死亡率は接種開始前24週間の32.8%(40/122)から開始後24週間の6.9%(9/131)に有意に低下した (P<0.01)。また,月毎の治療率(月出生頭数の内,治療した個体の割合)は,徹底した消毒直後に低下する傾向が認められた。通常,ワクチンは,血中の移行抗体価が高い若齢期には接種すべきでないとされているが,今回,子牛のサルモネラ症に対しては出生直後のワクチン接種により臨床的な効果が得られたことから,このワクチンが子牛の免疫に何らかの影響を及ぼしたことが示1唆された。
著者
加藤 敏
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.719-727, 2013-08-15

はじめに グローバル化が加速度的に進む現代の高度資本主義は,就労者にとって大きな試練になっている。多くの職場はコンピュータ管理を通し,就労者に対し間違いを許さない厳密性と完全主義を徹底し,消費者,あるいは顧客に落ち度がないよう細やかな気遣いを徹底する他者配慮性を前面に打ち出す。つまり,職場自体が完全主義で他者配慮,良心性を旨とするようになっている。このような規範は,職場の「(偽性)メランコリー親和型化」と特徴付けることができるだろう。それは確かに正しいものだが,平均的な人が従うには心身の限界を超える危険を内包し,生きる意味を剝奪しかねない点で,「過剰正常性」あるいは「病的規範」という性格を帯びている。このハードルの高い課題に応える途上で,うつ病,ないし双極障碍の発症を来す事例が増えているのは由々しき事態である。 筆者は,このような問題意識のもとに,気分障碍の一亜型として「職場結合性気分障碍」(職場結合性うつ病,および職場結合性双極障碍)を提唱している2)。暫定的な診断指標の概略を挙げる。①発病の主な誘因が職場での過重労働にある。過重労働の判断は,労災認定の判断基準において定められた,1か月あたり100時間を超える時間外労働をしているという基準を目安にしている。②対人関係や自己同一性の双方でのパーソナリティ機能の上で問題を来す明らかなパーソナリティ障碍はなく,基本的にはもともと安定した社会機能を持っている。③伝統的診断で内因性うつ病,ないし躁うつ病と診断される。 職場における気分障碍のなかには,DSMやICDの公認の診断体系では,うつ病や双極障碍とすぐに診断するのが難しい病態を呈する事例が少なくない。そこで,本稿ではこの種の病態の代表例をいくつか挙げながら,職場における気分障碍の臨床的特徴を浮き彫りにし,その上で,職場連携を含む治療の要点を述べたい。
著者
中澤 章 唐 寧 井上 嘉則 上茶谷 若 加藤 敏文 齊藤 満 小原 健嗣 鳥羽 陽 早川 和一
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
産業医大誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.69-74, 2017

<p>著者らが開発した繊維状吸着材(DAM不織布)は,両性イオン型高分子であるジアリルアミン‐マレイン酸共重合体(diallylamine-maleic acid copolymer: DAM)を含有し,繊維表面に水和層を形成する.本研究では,悪臭物質の一つである半揮発性有機酸(C1-C5)を対象に水溶液だけでなくガス状でもDAM不織布の吸着特性評価を行った.まず,水溶液中のギ酸はDAM不織布の水和層へ溶解した後,DAMのイミノ基との静電相互作用で吸着することがわかった.一方ガス状では,ギ酸,プロピオン酸,酪酸,吉草酸,イソ吉草酸について高い吸着能を有し,吸着量は曝露時間に依存して増加する傾向があった.ガス状有機酸に対する吸着も水溶液と同様の機序で生じていると考えられるが,さらに酢酸を除く有機酸の吸着速度定数と空気 / 水分配係数(log <i>K<sub>aw</sub></i>)が良好な相関性を有したことから,DAM不織布は大気中から不織布表面に形成される水和層へ移行性が高い親水性化合物に対するほど高い選択性をもつことが示された.</p>
著者
上茶谷 若 齊藤 満 井上 嘉則 加藤 敏文 塚本 友康 多田 隼也 亀田 貴之 早川 和一
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.371-376, 2011
被引用文献数
1

両性イオン型高分子をレーヨンに混合紡糸した臭気物質のための新規な繊維状吸着材を試作し,水溶性臭気物質に対する吸着・除去特性を調べた.アンモニアに対する吸着特性を調べたところ,本繊維状吸着材は,繊維母材であるレーヨンと比較して明らかに大きい吸着量と吸着速度を示した.また,消臭加工繊維製品認証試験に従った減少率評価試験を行ったところ,本繊維状吸着材は酸やアミンに対して高い減少率を示したが,アルデヒドや硫化水素に対しては低い値であった.これらの結果から,本繊維状吸着材の吸着機構は,吸着材表面に形成される水和層への分配と両性イオン型官能基への静電的相互作用であることが示唆された.さらに,本繊維状吸着材の再利用の可能性について調べたところ,酢酸に対しては水洗浄により再生可能であることが判った.本検討の結果,本繊維状吸着材は水溶性でかつイオン性を有する臭気物質の吸着・除去に適用可能であると考えられた.
著者
大森 和子 加藤 敏子 金原 ちゑ子 藤枝 悳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.408-414, 1972

高等学校における衣生活の指導はいかにあるべきかを考えるために, 高校生の家庭の衣生活管理について調査を行なった。家の職業や, 主婦が職業を持つか否かなどの要因が衣生活管理にどの程度影響を与えるかをみるために, 農家と, 主婦が職業を持たない非農家とに分けて, 調査結果を分析した。衣類の使いすて, 着すての傾向については, 主婦と高校生に分けて比較した。<BR>調査対象は, 高等学校生徒の家庭で, 高校は, 青森県, 栃木県, 東京都, 千葉県から1校ずつと, 愛知県から2校計6校を選んだ。各学校に質問紙を送付して, 生徒が家族と話しあって記入するよう依頼した。<BR>結果は, 農家, 非農家とも従来とくらべてクリーニング店の利用度も相当多くなってきており, 農家の方が変化が著しく, 非農家との差は少なくなってきている。<BR>新洗剤や布地などについての情報源は, 農家・非農家ともテレビによるというのが最も多く, 家庭生活におけるテレビの影響力の強さを物語っている。衣類をどこで廃品とするかということでは, 主婦と高校生を比較すると, 年齢のちがいによる生活態度のちがいがはっきりみられた。昔は破れるまで着ることの多かった肌着でさえも, 高校生は, 色があせたり, 布のはりがなくなったという状態で廃品とするものの割合がもっとも多く, スリップでは, 破れるまで着るのは高校生では23.1%程度である。上着類となると, 高校生はもちろん主婦も, 型が古くなったという原因で廃品とすることがふえている。<BR>靴下をのぞいては, 廃品とする原因のうち, 全体として多いのは, 色があせたり, 白いものは黄ばんだり, 布のはりがなくなったりしてという状態が最も多い。上着類ではそれとならんで型が古くなったという原因で廃品とするものが多くなっている。冬ものについては虫害やしみによって廃品とするという者も20%程度はあり, 衣類保管がゆきとどかない状態もあらわしている。<BR>また, 着られる衣類で不用品としたものの処理は非農家は親類や知人にあげるが多く, 仕立直して他の家族が用いたり, 他の物につくりかえるなどや, しまっておくがこれに次ぎ, 農家ではしまっておく, つくりかえるなどの更生による利用が, 親類・知人にあげるのと同程度で, 衣生活の面でも, 農家の方が手をかけることが多く, 非農家では手をかけることが農家より少なく, くずやに出すなどが多くなっている。人間の労力に関しての考え方の変化をあらわしているとみられる。不用品交換会に出す, 社会施設に寄付する, 災害地の見舞として出すなどがほとんどない。このようなことは, 市町村などによる公共的な対策がのぞまれるのである。<BR>以上のような高校生の家庭の衣生活管理の実状からみて, 衣生活指導では, 消費者教育との関連を考え, 次のようなことに注意すべきである。<BR>衣類の手入れ, 保管などは合理的に行ない, その使用価値を十分に利用すること, すなわち衣類をたいせつにすることの必要を認識させる。<BR>衣類の購入, 手入れの方法, 衣類をどの程度で不用とするかの決定などについては, それぞれの家庭の状況を考え, 適切な判断をして, 選択し, 決定しなければならないので, 自主的に適切な選択をすることのできる能力を養うことが必要である。<BR>廃品の処理方法などについては, 社会的な関心を養うことが必要である。
著者
加藤 敏幸
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.67-90, 2005-03-15

ネットワーク上の表現による名誉毀損と表現の自由との調整に際して,プロバイダの責任を制限するための法律が近年制定された.本法律では(1)被害者に対する賠償責任の制限と,(2)発信者に対する賠償責任の制限,さらに,(3)発信者情報の開示請求,について定められている.そこで本稿ではこれらの規定について,これまでに蓄積された判例を検討することで,その適用上の問題を検討したい.
著者
松本 卓也 小林 聡幸 加藤 敏
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1045-1052, 2014-12-15

はじめに 近年,わが国は世界でも類をみないほどの速度で高齢化を迎えている。精神科医療においても,高齢化は重要な懸案事項である。高齢化と関係するのは,認知症だけではない。大うつ病性障害(以下「うつ病」)の頻度は加齢とともに増加する5)ことが知られており,老年期のうつ病は重症度と致死率が高いことも指摘されている19)。また,高齢の患者は入院が長期化しやすく,わが国の医療費の増大にも拍車をかけていることが知られている。そのため,高齢者のうつ病入院患者の在院を長期化させる因子について検討することは,当該患者に対する適切な治療,および適切な医療資源の配分を考える上で重要であると考えられる。 しかし,うつ病患者の在院日数についての研究は,意外なほど少ない。大学附属病院を中心とした研究では,大うつ病性障害の平均在院日数が64〜94日13),高齢気分障害患者の在院日数の平均が112.3日18),60歳以上の高齢気分障害患者の在院日数の平均は約70日であった14)。ドイツとアメリカでのうつ病患者(全年齢)の平均在院日数はそれぞれ51日と11日であり2),日本は諸外国に比べても入院が長期に渡っていることが分かる。この理由には,国民皆保険制度によって比較的安価な医療費負担で入院治療を継続することが可能なことが挙げられるだろう。 うつ病入院患者の在院の長期化を規定する因子についての研究も,国内・海外ともに僅かしかみられない。Markowitzら15)は,大うつ病障害の入院患者(全年齢)に対して,ECTを施行することによって在院日数が平均13日間短縮されることを示している。国内のデータでは,当院での高齢気分障害患者(うつ病,および双極性障害を含む)について検討した玉川ら18)の研究では,65歳以上の患者は65歳未満の患者と比べて在院日数が約22日間長く,男性であること,合併症があること,および独居世帯に居住していることなどが在院の長期化の因子であった。高齢のうつ病入院患者の在院を長期化させる因子については,カナダのIsmailら11)の研究がある。彼らは2005〜2010年のうつ病入院患者についての検討から,高齢うつ病患者では,入院回数の多さ,独居世帯に居住していること,強制入院であることが長期在院を予測する因子であることを報告している。 先行研究をこのように概観すると,次に挙げるような諸々の点が明らかではないことが分かる。1.ライフイベントと在院日数の関係 高齢者は,本人や近親者が重大な病気を発症したり,ときには死に至ったりすることがある。事実,一般人口を対象とした研究において,死別をはじめとしたライフイベントが高齢者に多いことが知られている9)。また,死別が高齢者のうつ病の発症の重大なリスクファクターとなることは以前から知られている7)。同居家族が死去した後に発症したうつ病の場合,患者はうつ病から回復するという課題だけでなく,家族が喪失した家庭の中で新たな生活と役割を引き受けるという課題をも背負うことになる。この場合,在院が通常より長期化することは十分に考えられる。加えて,退職を契機としてそれまでの生活が一変することも,高齢のうつ病患者が生きる社会環境に大きな変化をもたらすと考えられる。しかし,これまで高齢者のうつ病におけるライフイベントと在院日数との関係は検討されていない。2.治療薬と在院日数の関係 うつ病患者がもともと居住していた自宅に退院するためには,ほとんどの場合で,薬物療法の効果によってうつ病を寛解ないし回復させる必要がある。このため,治療薬と在院日数には強い相関があると想定されるが,この論点についてもこれまでの研究では検討されていない。3.高齢初発うつ病の異種性 Ismailらが検討しているのは入院時に60歳以上であった「高齢うつ病患者」についてである。しかし,高齢うつ病患者には,若年初発群と高齢初発群が存在し,後者の高齢初発うつ病は重症度が高く,自殺既遂率が高く,予後も悪いことが知られており,両者を病因論的に区別するべきとされている21)。そのため,在院日数の研究についても,若年初発の高齢うつ病と高齢初発うつ病を区別することが必要だと思われる。 そこで我々は,対象を高齢初発うつ病入院患者に絞り,その在院を長期化させる因子を,患者背景や合併症,家庭環境,職歴,ライフイベント,うつ病の重症度と種類,薬物療法やECTなどの治療との関係から多角的な検討を行った16)。本稿では,以下にその研究から得られた10年分のデータを紹介することにしたい。
著者
加藤 敏弘 岡本 研二 吉野 聡 森田 勝
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

ゴール型の運動課題を誘発するゲームの条件を明らかにし、複数のミニゲーム(手合わせゲーム等)を開発した。その運動課題に応じた評価の観点を含む単元計画を立案し、中学2年生に実施したところ、高い評価を得た。また、ボールを持たないときの動きの指導について、バスケットボールを部活動で指導している教員を対象に調査したところ、子どもたちがゲームの中で工夫するより前に学習すべき内容を先取りして教えてしまう傾向がみられ、指導観の変容には時間がかかることが明らかになった。