著者
江戸 由佳子 髙木 睦子 太田 千春 川嶋 昌美 浅野 和仁
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.325-330, 2017

妊婦では,妊娠の継続や胎児の発育のために非妊婦と比較し,著明な物質代謝の変動やホルモンバランスの変化が観察される.また,分娩に際しては断続的な強い痛みが認められる.これら妊娠・出産に伴う一連の反応によって母体は酸化ストレス反応に曝されていることが推察されるものの,妊娠と母体の酸化ストレス反応に関しては十分に検討されていない.そこで,本研究では非妊婦と正常な経過を辿っている妊婦から尿を採取し,尿中に含まれる酸化ストレスマーカーの検出を試み,その結果から妊娠と酸化ストレスの変動について検討した.対象とした酸化ストレスマーカーは脂質過酸化物であるイソプラスタン,ヘキサノイルリジン,ビリルビンの過酸化物であるバイオピリンならびにDNAの酸化障害産物である8-OHdGであった.対象妊婦を妊娠初期,妊娠中期,妊娠後期そして産後1か月に区分し,上記酸化ストレスマーカーを測定したところ,すべてのマーカーの尿中含有量が非妊婦,妊娠初期ならびに中期と比較し妊娠後期においてのみ統計学的に有意に増加した.また,これら酸化ストレスマーカーは産後1か月で非妊婦のそれらと同濃度にまで減少した.胚胞が子宮に着床すると胎盤が形成され,徐々に発育,妊娠後期ではその機能や胎盤構成細胞の活性化が最大となる.胎盤そのものの機能や構成細胞の活性化は大量の活性酸素を産生するとされていると考えられていることから,妊娠後期の母体では非常に強い酸化ストレス反応が惹起された可能性が推察された.
著者
平澤 真大 小川 祐樹 諏訪 博彦 太田 敏澄
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2011-DBS-153, no.13, pp.1-8, 2011-10-27

インターネットの普及によって,ニコニコ動画のような動画共有サイトの需要が高まり,結果多くの動画コンテンツが蓄積されている.これら蓄積された動画コンテンツの中には多くの人には知られていないが,視聴した際に多くの人の興味・関心が湧くコンテンツが多く埋もれていると考える.我々はソーシャルノベルティのある動画を 「社会的には知られていないが,より多くの人が興味・関心を持つコンテンツ」 と定義し,ソーシャルノベルティのある動画を発見するため 「もっと評価されるべき」 タグに注目した.本稿ではソーシャルノベルティのある動画発見のため,「もっと評価されるべき」 タグの分析と,それを用いた機械学習の精度分析の結果を報告する.
著者
太田 勇
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.318-339, 1985
被引用文献数
2

この論文は・マレーシアとシンガポールにおける国民統合の過程を,華語社会に焦点を当てて明らかにし,言語政策が特定の社会集団に与える影響を論述している.植民地時代に同___.の政治状況下にあった両国の華人は・今日・異なる政府の下で異なる社会的対応をせまられている.華人が絶対多数派のシンガポールでは,英語系華人が共通語に英語を指定し・華語系華人の不満をおさえて,「第三中国」でない国づくりを断行した.マレーシアにおいては,マレー人文化優位の政策に対し,華人は少数派文化の尊重を主張し,華語の存続に努力している・両者は一見すると相反する方向を目ざすようであるが,いずれの場合も,華人が現住国の国民になり切ろうとして,かつての「華僑」の性格を弱めたために生じた現象である.そして,新しい言語政策の発動の結果・華語系華人の多くが社会変革の過渡期にみられる孤立・疎外感を味わい,現在の自分の立場に不安を感じるところも両国に共通である.
著者
太田 美奈子
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.165-182, 2018

<p>This paper examines the reception of early television in rural Japan through</p><p>Sai village in the Aomori prefecture. While the first television station in Aomori</p><p>was founded in 1959, most Aomori residents had previously accessed the television</p><p>signal from NHK Hakodate( Hokkaido), established in 1957. The small fishing</p><p>village, Sai village, had the highest television penetration rate in Aomori at</p><p>that time and was known as a 'TV village'. Why did the people of Sai village</p><p>want television? What effect did this desire have? This paper aims to answer</p><p>these questions by tracing the evolution from the first arrival of television in</p><p>Sai village in 1957 to the wide spread availability of television in Aomori in</p><p>1959.</p><p> Interviews and archival documents show that educational motivations, and</p><p>specifically the desire to show the outside world to the children, were funda</p><p>mental to their choices. Through television education in school, the children's</p><p>education flourished and developed into television reception that went beyond</p><p>educational purposes. Matsunoyama village in Niigata prefecture also had a</p><p>similar television reception as Sai village. Sai village represents a key point of</p><p>reference for television reception in rural Japan in that its remoteness preserved</p><p>television's function as an educational visual aid. This paper goes beyond</p><p>the urban-centred narratives about early television reception by accounting for</p><p>the fact that villagers saw a potential for television beyond leisure in education,</p><p>and by exploring how the affirmation of television as leisure also opened up</p><p>children to outside worlds.</p><p> The children's reactions were in line with a McLuhan-esque view of television</p><p>and what happened in Sai village points to the key potentials of television.</p><p>This paper shows how rural areas had a rich television reception during the</p><p>early days of television. In addition, this paper represents the first steps</p><p>towards understanding an era in which television reception forms were still</p><p>mixed.</p>
著者
ガナール サイモン 太田 純貴
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学法文学部紀要人文学科論集 = Cultural science reports of Kagoshima University (ISSN:03886905)
巻号頁・発行日
vol.85, pp.15-23, 2018-02-28

サイモン・ガナールによる本インタヴューでは、エルキ・フータモがフィンランドにおいて自身が受けた教育と初期の仕事、一九九〇年代における「メディア考古学」の出現、そしてメディア史におけるトポスへの注目を語る。トポスの文化的パターンを追跡することで、フータモは考古学的アプローチから系譜学的アプローチへとまさに舵を切り替えた。フータモが強調するところによれば、しかしながら、彼が行っているのは細心の注意を払った歴史研究であり、この点がフーコーやフリードリヒ・キットラー、そしてジョナサン・クレーリーとは異なっている。フータモによればこの三者は「現在のモデルを過去のそれに重ねており、それゆえに歴史的現実を踏みにじってしまっている」のである。
著者
太田 輝夫
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
コールドチェーン研究 (ISSN:02851377)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.110-114, 1980-12-10 (Released:2011-05-20)
参考文献数
3
著者
太田 宏一 尾形 孝成 パパヤーノ ディミトリー ロンディネラ ヴィンツェンツォ
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
原子力学会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.630, 2010

最大で5wt%のMA(Np,Am,Cm)を添加したU-Pu-Zr合金を燃料スタックの一部に装填した金属燃料ピンを仏国の高速炉フェニックスで照射した。ここでは上記照射試験の概要、および約2.5at.%燃焼度まで照射した低燃焼度燃料の軸方向ガンマ線強度分布や放出FPガス分析、金相観察といった照射後試験の結果を示し、低燃焼度燃料におけるMA添加の影響について報告する。
著者
太田 宏一 ステファン ファンヴィンケル ディミトリ パパヤーノ
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
原子力学会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.487, 2011

低除染プロセスによってリサイクルされた燃料には、有意量の希土類元素が混入しており、照射後の燃焼度評価に広く用いられている148Nd法の適用が困難である。そこで低除染燃料に適用可能な燃焼度評価核種を選定し、照射後試験結果によって適用性を検証した。
著者
太田 宏一 ファンヴィンケル ステファン パパヤーノ ディミトリ
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
原子力学会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.516, 2011

乾式再処理法によってリサイクルされた高速炉用金属燃料には希土類元素が混入しているため、取出し燃料の燃焼度評価に広く用いられているNd148法が適用できない。そこで、148Nd以外のFP核種を用いた燃焼度評価法について検討を行う。
著者
太田 美幸
出版者
日本教育政策学会
雑誌
日本教育政策学会年報 (ISSN:24241474)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.66-74, 2017 (Released:2018-08-27)

Prejudice and discrimination against sexual minorities has now been recognized as a human rights issue in Japan, but it took a long time to make it the official line. Educational policy studies in Japan have also still not paid sufficient attention to it, but we canʼt avoid being aware of the importance of these issues with deep reflection. Recently, MEXT has issued some circulars regarding special care for LGBT schoolchildren and students. These changing attitudes toward LGBT students are so important to guarantee the rights of sexual minorities and support their safe growth. In consideration of the educational policy and issues surrounding sexual minorities, we should also note that behind these changes there have been considerable efforts, researches and policy proposals by sexual minorities themselves and their supporters. By focusing on their individual experience, we may find complex structure of intertwined issues which include sexuality, gender, social scale, physical disability, mental disorder, religious, regional characteristics, etc. In order to develop educational policy research on gender and sexual orientation diversity, the framework from a variety of aspects needs to be improved. For that, firstly we have to examine the culture of homophobia and transphobia embedded in the mainstream educational researches.
著者
山海 嘉之 太田 道男
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.1228-1231, 1989-06-15 (Released:2011-10-07)
参考文献数
6

従来より開発してきた光波利用によるヘモグロビン濃度計測装置および体液系モデルを基に, 透析治療時の初期循環血液量の推定法を開発した。本ヘモグロビン濃度計測装置は体外循環血液チューブを発光部及び受光部からなる測定部に挟み, 発光部からの光が受光部に達するまでに血液中でどの程度減衰したかを測定するものであり, 本体液系モデルは簡易3コンパートメントモデルとして構成されている。本推定法は透析治療時に体外循環している血液に光をあてるだけで初期循環血液量の同定を行なうことができ, 従来にない全く新しい計測法である。これにより, 治療時の循環血液量の経時的変化を相対的変化としてだけではなく絶対量の変化として捉えることが可能となる。
著者
權 偕珍 太田 麻美子
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
ジー
巻号頁・発行日
vol.5, pp.61-76, 2018

2006 年に国連で障害者権利条約が採択されてから、日本国内でも様々な領域(厚生労働省, 2017: 文部科学省, 2012a)で、その権利を保障するための障害理解が重要視されてきた。しかしながら、現在行われている障害理解は、障害者を保護して支援する対象として捉えており、その結果、社会の中で共に生活し、働く仲間として障害者が認識されない一因となっている(權・田中, 2016)。社会における障害理解を促進し、障害のある者と障害のない者が共に生きる社会(“共生社会”)を実現するためには、障害を人間の多様性として捉え、多様な人材を社会で活用するというダイバーシティの観点(日本経済団体連合会, 2002)から障害理解教育を考える必要がある。そこで、本研究では、日本、韓国、アメリカ合衆国、イギリスの高等教育機関における教員養成制度及びダイバーシティ観点に基づいた障害理解教育について整理し、動向を把握する。
著者
小原 愛子 下地 華愛 太田 麻美子 野崎 美沙
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
ジー
巻号頁・発行日
vol.5, pp.18-33, 2018

通常の学級に在籍するASD傾向の子どもへの社会スキルプログラムを開発するための構成概念の検討を行うために、海外のASD傾向の子どもへ実践報告を分析した。ERIC-Institute of Education Scienceの論文データベースにおいて「ASD social skill」で検索した結果、14件が分析対象となった。主に「伝える能力」の「自分の気持ちを伝える」、「語彙力を身につける」といった実践が多く、「場を整理する能力」の「空間を整理する」に該当する実践報告はなかった。「伝える能力」に関しては、特にビデオモデリングやソーシャルストーリーなどの模倣や汎化といった指導方法が効果的とされる実践が多かったため、今後、プログラム開発の際はそれらの手法を取り入れることが重要であることが示唆された。プログラム実施期間は、それぞれの実践によって異なっていたため、さらに分析を行って適切なプログラム実施期間や頻度を考察することが今後の課題として挙げられた。
著者
太田 博巳 楠田 聡 工藤 智
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.7-12, 1995-01-25
参考文献数
23
被引用文献数
6 16

Anadromous shishamo smelt <i>Spirinchus lanceolatus</i> returns to rivers a few days before spawing. Fish were caught in the mouth of rivers in Hokkaido, Japan. Artifical insemination in the smelt by the dry method is difficult because the semen collected through abdominal pressure is scanty. First, we compared sperm motility between ejaculated semen spermatozoa and spermatozoa in testicular semen, and verified the insignificant differences in the duration of sperm motility and percent motility of them. Secondly, we examined the motility of tesicular spermatuzoa in various artificial solutions in order to determine the adequate constitution of testicular semen diluent. The spermatozoa were motile in NaCl and mannitol solutions at osmolalities between 0 to 400mOsm/kg. In KCl solution, they were motile at 200mOsm/kg and below, but the motility was remarkably lower than that in NaCl solution. The duration and number of moving spermatozoa decreased as the KCl concentration in the artificial testicular fluid increased, and motility was almost inhibited when the KCl concentration was over 25m<sub>M</sub>. In this case, the concentration of K<sup>+</sup> was approximately twice as high as those of testicular fluid (12.5m<sub>M</sub>), obtained by centrifugation of testicuar semen, or seminal plasma (11.0m<sub>M</sub>). It was concluded that artificial testicular fluid containing 25 m<sub>M</sub> KCl is an efficient testicular semen diluent for the shishamo smelt.
著者
平井 正孝 中野 優 牛山 知己 増田 宏昭 太田 信隆 田島 惇 河邊 香月 阿曽 佳郎
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1761-1764, 1988-11-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

7例の再燃前立腺癌症例に対し, 13.56MHzの Radio Frequency 波 (RF波) による温熱療法と, VP-16, peplomycin による化学療法を行った.その結果, 4例で前立腺腫瘍内温度が42℃以上に到達したことを確認できた.腫瘍の縮小は, 7例中6例で認められた.副作用は, 火傷が1例, 食欲不振が1例, 下痢が3例に出現した.以上より, 本療法は, ホルモン抵抗性となった前立腺癌に対して有効であると考えられた.