著者
川上 治 古池 保雄 安藤 哲朗 杉浦 真 加藤 博子 横井 克典 都築 雨桂
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.51-55, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
15

目的:脳梗塞後はじめて発作を発症した場合,てんかんと診断できるか検討するため,有事率とそのリスク,非誘発性発作の再発率等について多数例を後ろ向きに調査した.方法:当院に入院した脳梗塞急性期(transient ischemic attack;TIAを除く)患者2071名を対象に,けいれん発作発症例を抽出した.年齢,性,皮質病変,Oxford分類,MRIでの深部白質病変等を評価項目とした.結果:脳梗塞発症後,急性症候性発作(acute symptomatic seizure;ASS)は43例で過半数は発症当日であった.非誘発性発作(unprovoked seizure;US)は,100~300日でピークとなるがその後も増加を続け,5年間で73例であった.ASSのリスクは,皮質病変・total anterior circulation infarction;TACI(Oxford分類),USのリスクは,皮質病変・TACI・partial anterior circulation infarction;PACI(Oxford分類)・deep and subcortical white matter hyperintensity;DSWMH(グレード3・4)・75歳未満(多重ロジスティック回帰法)であった.再発性USは,US群74%,ASS群9%と有意にUS群で高かった.初発より抗てんかん薬(antiepileptic drugs;AEDs)を投与すると有意に再発率が減少した.非誘発性発作の重積発作発生率は,AEDs投与群19.6%,非投与群34.3%と有意にAEDs投与群が少なかった.結論:脳梗塞慢性期に初発発作を発症した場合は,てんかんと診断できる.AEDsは,US再発およびてんかん重積状態の予防に有効であり初発USより投与開始を検討する必要がある.
著者
藤田 裕嗣 吉田 剛 高橋 清吾 鈴木 康之 宇根 寛 牛垣 雄矢 安藤 哲郎 深瀬 浩三 宮里 修 上島 智史 堀 健彦 仁木 宏 山元 貴継 塚本 章宏
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

歴史地理学研究で取り上げられた地図・絵図資料の中には地震・水害など、災害に関わる古地図も多数含まれるが、現在の地図情報には反映されておらず、実際の対策に活かされてきたとは言い難い。そこで本研究課題は、地域中心として機能し続けた城下町に特に注目し、全国各地に残る過去の古地図情報をGISデータ化し、それらをデジタル地図情報に反映させて、防災・災害復興に向けた歴史災害情報をデータベース化し、情報発信することで各地の防災・災害復興への寄与を目指す。2022年度の高校教育「地理総合」必修化も念頭に置き、中等教育に貢献できる歴史災害GISコンテンツの提供も視野に入れる。
著者
伊藤 恭子 高橋 愛里 斎藤 たか子 宮 政明 溜井 紀子 武藤 重明 安藤 哲郎 筒井 貴朗 小川 哲也 永野 伸郎
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.585-592, 2019 (Released:2019-10-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

【目的】シナカルセトをエボカルセトへ切り替え, 血清値, 併用薬剤, 上部消化管 (GI) 症状に対する影響を実臨床下で検討した. 【方法】シナカルセト処方中の血液透析患者147人を, エボカルセトの1mgに一斉に切り替え, 8か月後まで観察した. また, GI症状および服薬アドヒアランスに関するアンケートを実施した. 【結果】切り替えにより, 血清PTHの上昇が認められたが, 血清補正Caの上昇は一過性であり, 速やかに投与前値に復した. 直前のシナカルセト投与量と1か月後のPTHおよびCaの変化量との間に正相関が認められた. また, PTH変化量はCa変化量と正相関し, Caの上昇は骨由来であることが示唆された. 併用薬剤の有意な変化は認められなかったが, 消化管運動改善薬を中止できる症例が散見された. アンケートの結果, GI症状のある患者は切り替え後で減少し, 服薬遵守率は上昇した. 【結語】エボカルセトは, シナカルセトに替わる有用なカルシミメティクスである.
著者
泊 惇 柳橋 次雄 安藤 哲夫 脇阪 一郎 アサ ビルヒリオデ バティック フペンドラ
出版者
日本民族衛生学会
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.189-199, 1982
被引用文献数
1

本研究はフィジー諸島における人々の医療サービスの利用状況を疾病行動の視点から分析することを目的とした。 調査はCWM病院の外来患者365名を対象とし面接調査を実施し,なお一部フィジー政府の年報を参考に分析し,以下の結果を得た。 1) 病院の利用率がフィジー人よりもインド人に高いことから,フィジー人においてはむしろ伝統的な医療への依存が高く,病院で受ける医療サービスが潜在しているものと示唆された。 2) 薬草,祈とう,治療者などの伝統医療は近代医療と同様に,該国の医療サービスにおいて近代医療の代替ではなく,重要な役割を有し健康養護の為の重要な社会資源となっているものと考えられた。
著者
倉 尚樹 岡 孝和 安藤 哲也 石川 俊男 久保 千春 吾郷 晋浩
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.297-303, 2004-04-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
18

症例は21歳女性,37℃台の微熱が主訴であった.諸検査で発熱の原因となる身体的疾患を認めなかったこと,心理的ストレス状況下で症状が出現・増悪したこと,慢性疲労症候群の診断基準を満たさないことから心因性発熱と診断した.治療としてtandospirone 60mg/dayの投与と自律訓練法などの心身医学的治療を併用したところ,体温は徐々に正常化した.serotonin(5-HT)作動性の抗不安薬であるtandospironeは,5-HT_<1A>受容体を刺激し,5-HT_<2A>受容体の密度を低下させることで抗不安・抗うつ作用を示すといわれている.これらの5-HT受容体に対する作用は,体温を低下させる方向にも作用すると推測され,tandospironeは心因性発熱の治療薬の1つとして有用である可能性が考えられた.
著者
藤井雄太郎 安藤哲志 伊藤孝行
雑誌
第73回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.397-398, 2011-03-02

近年,ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やブログ等では,未成年にとって悪影響を及ぼすような書き込みや画像,または動画などの存在が問題となっている.そのため,効率的かつ自動的に有害な情報を適切に判別し,人への負担を軽減するための研究が進められている .本稿では,掲示板等の文章に注目し有害な情報の判別を行う.文章中の複数単語間の共起情報、距離情報に加え、グレイワードという概念を定義し、それらを用いた有害文書分類手法を提案する.また,今回判別する文章の対象として,過度な性的描写を含む文章とする.
著者
船場 美佐子 河西 ひとみ 藤井 靖 富田 吉敏 関口 敦 安藤 哲也
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.330-334, 2021 (Released:2021-05-01)
参考文献数
24

難治性の過敏性腸症候群 (IBS) に対する心理療法の1つとして, コクラン・レビューでは認知行動療法 (CBT) の有効性が示されている. 本稿では, 近年日本で臨床研究が実施されている, IBSに対する 「内部感覚曝露を用いた認知行動療法 (CBT-IE)」 とその構成要素, CBT-IEの臨床研究の動向を紹介する.
著者
安藤 哲也 小牧 元
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.265-272, 2007-04-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
35
被引用文献数
1

Familial aggregation and twin studies have suggested that genetic factors play a significant role in susceptibility to eating disorders such as anorexia nervosa (AN) and bulimia nervosa(BN). A sib-pair linkage study suggested a linkage region for restricting AN in chromosome 1 and that for BN in chromosome 10. Candidate-gene association studies indicated associations of SLC6A4, HTR2A and BDNF genes with AN in multiple studies. We found that ghrelin precursor gene SNPs and their haplotype were associated with purging type BN. In addition, the same gene SNPs were significantly associated with increased body weight, body mass index, fat mass, waist circumference, thickness of skinfolds, elevated fasting acylated ghrelin concentration, decreased HDL-cholesterol concentration and elevated scores in the Drive for Thinness-Body Dissatisfaction in non-clinical young female. A genome-wide association study using microsatellite markers is in progress in Japan. Studying susceptibility genes for eating disorders are expected to lead preventions and development of new treatments.
著者
都築 雨佳 安藤 哲朗 杉浦 真 川上 治
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
2021
被引用文献数
1

<p>症例は発症時16歳男性.高校生となり弓道を始めてから両側の三角筋,上腕二頭筋,腕橈骨筋などのC5, 6髄節筋に筋力低下が亜急性に発症した.神経所見では,両側前腕外側の軽微な感覚障害と下肢の索路症候も伴っていた.前屈位の頸椎MRIとCT myelographyにて脊髄が後方硬膜により圧迫する所見を認めたことから,平山病と臨床像は異なるものの同病態の'近位型平山病'と考えられた.弓を射る姿勢である頸部回旋位のCT myelographyでも脊髄圧迫を認めたことから,頸部回旋も脊髄症発現に関与していると考えられた.頸部前屈および回旋の制限のみで上肢の筋力低下と下肢の痙性が改善した.平山病において,頸部前屈に加えて頸部回旋も病態に関与する可能性がある.</p>
著者
安藤 哲朗
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.352-356, 2016 (Released:2016-11-10)
参考文献数
28

The first step in evaluating patients with spinal cord disease is to localize the lesion from the segmental sign. Cervical spondylosis, which can present as radiculopathy and myelopathy, is common in people over the age of 50. It is necessary to assess whether neurological symptoms result from cervical spondylosis or other neurological disorders. In order to avoid misdiagnosis, it is important to compare the levels of the lesions shown on imaging with the clinical findings. Differential diagnosis between amyotrophic lateral sclerosis and cervical spondylosis is an issue of major clinical importance. The cervical spinal cord MR images of spinal cord sarcoidosis sometimes mimics that of cervical spondylotic myelopathy.Spinal dural arteriovenous fistula is a treatable spinal cord disease, however it is still underdiagnosed.
著者
富田 吉敏 菊地 裕絵 安藤 哲也
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.849-855, 2017 (Released:2017-08-01)
参考文献数
6

大学受験は重要なライフイベントだが受験ストレスにより不調を訴える受験生は多い. 筆者は4年間で当科を受診した大学受験生を10例経験した. 現役高校生が9例で, そのうち7例が女性であった. 半数が頭痛を訴え, 8例が検査上で不安を認めた.治療前, 受験終了で症状は軽快すること, 受験ストレスで症状を生じた自身の特徴を把握することが将来的に重要であることを筆者は説明. その後, 受容・傾聴の姿勢で, つらい事柄を吐露させるベンチレーションをコーピングとした対応をとり, ほとんどが受験終了とともに軽快した. 受験ストレスによって心身へ影響がでる機序こそが心身相関であり, その理解を促す心身医学的治療は, 現状を受け止め, 症状の悪化を防止し, 目標を達成する一助を果たしている. 本報告は心身が消耗した予備校生たちを “受験生症候群” とした報告のように, 大学受験で心身が不調となり心療内科を受診した受験生の特徴と治療経過をまとめたものである.
著者
安藤 哲行
出版者
日本イスパニヤ学会
雑誌
HISPANICA / HISPÁNICA (ISSN:09107789)
巻号頁・発行日
vol.1980, no.24, pp.52-64, 1980-10-25 (Released:2010-06-11)
参考文献数
14
被引用文献数
1
著者
大場 眞理子 安藤 哲也 宮崎 隆穂 川村 則行 濱田 孝 大野 貴子 龍田 直子 苅部 正巳 近喰 ふじ子 吾郷 晋浩 小牧 元 石川 俊男
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.315-324, 2002-05-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
16
被引用文献数
3

家族環境からみた摂食障害の危険因子について調べるために,「先行体験」「患者からみた親の養育態度」について,患者からよく聞かれるキーワードを用いて質問表を作成し,健常対照群と比較検討した.その結果,「母親に甘えられずさびしい」がどの病型でも危険因子として抽出された.また患者群全体で「父親との接点が乏しい」も抽出され父親の役割との関連性も見直す必要性があると思われた.さらにANbpとBNにおいては,「両親間の不和」「両親の別居・離婚」といった先行体験の項目も抽出され,"むちゃ食い"が家庭内のストレス状況に対する対処行動としての意味合いをもつのではないかと考えられた.
著者
安藤 哲也 宮本 恵理子
出版者
日経BP社 ; 2002-
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.16, no.7, pp.28-30, 2017-06

早くから長時間労働削減や生産性向上を目指す組織づくりを提言してきたNPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さんの元には、現在、全国の企業や自治体から「働き方改革」のノウハウを求める依頼が集中しているという。自身もまた、多忙な業…
著者
永野 伸郎 安藤 哲郎 筒井 貴朗 溜井 紀子 伊藤 恭子 下村 洋之助 小川 哲也 安藤 義孝
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.519-533, 2013-06-28 (Released:2013-07-09)
参考文献数
90
被引用文献数
1

二次性副甲状腺機能亢進症(2HPT)の発症機序は,“腎機能が低下すると副甲状腺ホルモン(PTH)分泌が亢進し,尿中リン(P)排泄が増加することで高P血症の発症が回避されるものの,代謝性骨疾患の対価を支払う”とするtrade-off仮説で説明される.慢性腎不全ラットへのP吸着剤投与は,副甲状腺機能を低下させるとともに,骨の劣化も改善するため,改めてPの蓄積が2HPTの発症と病態の根幹をなすことが理解できる.また,透析患者へのシナカルセト塩酸塩(シナカルセト)投与により,PTH低下に付随して骨からのP動員が低下するため,血中Pは低下する.一方,保存期慢性腎臓病患者へのシナカルセト投与は,PTHの尿中P排泄促進作用を解除するため,血中Pを上昇させるとともに,著明な低カルシウム(Ca)血症をもたらす.すなわち,PTHは血中P上昇およびCa低下に抑制的に働いていることが確認できる.さらには,腎不全ラットへのfibroblast growth factor-23(FGF23)に対する中和抗体投与により,血中P,Ca,1,25(OH)2 vitamin D3[1,25(OH)2D3]の上昇ならびにPTH低下が認められる.すなわち,FGF23はPTHとともに尿中P排泄を促進させることで,腎不全末期まで血中Pを正常域に維持すると同時に,1,25(OH)2D3産生低下を介して,PTH分泌に対し促進的に作用していると考えられる.一方,腎不全ラットへFGF23中和抗体を長期投与した場合,骨組織改善が認められるものの,血管石灰化が促進し死亡数が増加する.したがって,腎機能低下時に上昇するFGF23は,代謝性骨疾患の対価を支払い,血管石灰化を抑制しているものと考えられる.これらに加えて,副甲状腺におけるCa受容体,1,25(OH)2D3受容体,FGF23受容体の発現低下や腎でのα-klotho発現低下も2HPTの発症・進展に寄与していると推定される.
著者
安藤 哲 河合 岳志 松岡 可苗
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of pesticide science = 日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.17-20, 2008-02-20
参考文献数
18
被引用文献数
1 23

蛾類昆虫の分泌する性フェロモンは,ボンビコールのような末端官能基を有するタイプIの化合物群(直鎖の炭素数: C_<10>〜C_<18>)と,末端官能基を含まない不飽和炭化水素およびそのエポキシ化物からなるタイプIIの化合物群(直鎖の炭素数: C_<17>〜C_<23>)に大別される.昆虫の種の多様性を反映しフェロモン成分も多様であり,それは生合成の原料ならびに関与する酵素系の違いに起因する.ボンビコールの生合成研究を踏まえ,シャクガ類が生産するタイプIIの性フェロモンの生合成,ならびに頭部食道下神経節から分泌されるホルモン(性フェロモン生合成活性化神経ペプチド,PBAN)による生合成の制御機構に関して追究した.その結果,エポキシアルケニル性フェロモンの前駆体(トリエン)はフェロモン腺では生産されず,またPBANはフェロモン腺が体液中に存在する前駆体を取込む過程を活性化することが判明し,タイプIの性フェロモンでの知見とはかなり異なることがわかった.さらに,PBANをコードするcDNAを同定し,シャクガのPBANは構造もユニークであることを明らかにした.
著者
安藤 哲生 川島 光弘
出版者
立命館大学
雑誌
社会システム研究 (ISSN:13451901)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-22, 1999-03-31

本稿は立命館大学BKC社系研究機構が,福岡県国際技術取引推進協議会からの研究委託に基づき,日中間技術取引促進の前提となる諸条件を解明しようとしたものである.中国の科学技術,技術移転を取り巻く動向を見ると,自主開発については公的R&D機構中心のR&D体制から企業中心へと改革中であり,一定の変化が認められる.技術導入については年々拡大する傾向にあるものの,プラント・設備偏重導入,重複導入,弱い自主開発との結合などの問題点を抱えている.技術導入に関わる法令は,いくつかの論争点が含まれており,技術導入の認可プロセスは複雑で注意が必要である.技術導入の意思決定,交渉,技術使用の各局面で主体が異なるという従来の問題はほぼ解消され,企業が各局面で主体性を有していると言える.技術取引市場一般について見ると,技術取引は一般商取引とは異なる特徴を有し,技術情報が取引対象になるには,導入側は対象技術の技術的・経済的有用性などを,供与側は対価獲得の有利性などを認識し,双方によって取引の必要性が認識されなければならない.このような技術取引を規定する諸条件のもと,96年より新たな技術取引形態として日中テクノマート(技術商談会)が試みられている.'98日中テクノマートで双方の参加企業にアンケート・ヒヤリング調査が行われた.その分析の結果からは,事前情報交換の促進,商談・説明に対する考え方の相互理解,多数の「合作」希望への対応など幾つかの課題が見いだされた.とりわけ中国の場合,資本不足から技術取引に限定した形態が難しいという点は,今後の日中技術移転促進にとって最大の課題であると言えよう.