著者
平野 昌宏 宮内 敏雄 高比良 嘉一
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.52, no.480, pp.3043-3051, 1986-08-25

This study aims at establishing a heat transfer analysis of non-gray gas in a flow system. An integro-differential equation of energy conservation is established for the laminar channel flow of non-gray gas, which includes the multi-band feature of radiative gas. The numerical analysis was conducted and the results are compared with the results obtained from the analysis based on the conventional gray gas assumption. From the comparison of these results, it is made clear that the radiative heat flux q_r obtained from the gray analysis is greater than that of the non-gray analysis, and convective heat flux q_c is vice versa. By comparing the divergence of radiative heat flux and temperature profile, it is made clear that the gray gas analysis estimates excessively small absorption of radiation in the cold region near the heat absorbing surfaces. This results in the large q_r and small q_c compared with the non-gray analysis.
著者
宮内 裕貴
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

今年度は主に2つに分類される研究を平行して進めてきた。一つ目は昨年に引き続き、D.LewisとP.Griceの言語観を考察するという研究である。2人の言語観を考察するうえでかかせないのは、哲学で「命題的態度」と呼ばれる問題についての考察である。命題的態度は従来、例えば「私はクラーク・ケントは空か飛べないと信じている」のような信念文を分析するうえで、命題的態度の発話者Sが「クラーク・ケントは空か飛べない」という命題pとの間に、信じる(B)という関係に立っている、つまりSBpという構造を命題的態度が持っていると考えられて来た。この命題的態度についてS.Schifferの著書The Things We Meanを手がかりに研究を続けて来た。命題について問われるのはその存在論的身分である。一般的な物と違い、命題は目に見えるわけでも触れるわけでもない。しかしSchifferはPleonastic Propositionという命題を導入する事により、この命題が従来の存在論の中に組み込まれても従来の存在者の数を保存拡大(変化させない)ことにより、命題が存在する事によって生じる問題を排除したうえで、命題が存在するという立場をとる。このSchifferの立場が擁護可能かということを考察するのが今後の課題である。二つ目はD.Lewisが著書Conventionにおいて、conventionという概念を合理的再構成することによってconventionという概念の正当化を行ったことの意味を研究することである。論理実証主義者が算術命題の必然性を説明するために「規約主義(conventionalism)」という考え方をとり、その規約主義への批判がV.O.Quineらによって積極的になされ、その結果言語にconventionが存在するという考え方自体が否定されることを通して、conventionという概念自体が曖昧な概念だとみなされたことに対して、D.Lewisはconventionの概念(特に言語の中に存在する事)を全うな概念であると擁護し、それらの見解に対してアンチテーゼを提出したということができよう。問題はLewisがたとえconventionという概念を合理的再構成することによって正当化できていたとしても、その正当化はあくまで規約主義批判への応答という文脈に立ってなされていることである。これはどのようなことかと言うと、Lewisがconventionの概念を正当化するうえで、合理的再構成という手段をとったのは規約主義批判への応答の手段としてではないかということを明らかにする必要がおるからである。つまりLewisは現実にconvention(規約、慣習)のあり方を見て、実際に人々がどのように慣習にのっとって振る舞っているかを見て、そこから現実に成立しているconventionのメカニズムを探すことによってconventionの概念を正当化するという手段をとらなかった。Lewisはこのように現実的にconventionが成立している地点から出発することも可能だったはずである。しかしLewisはそういった地点からconvention概念の正当化をしようとはしなかった。この点についてもっと研究を進める必要がある。
著者
宮内 清子 望月 好子 石田 貞代 佐藤 千史
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.433-441, 2009-01
被引用文献数
1

目的:中高年女性の就業形態が更年期症状にどのように影響しているかを明らかにし,今後の健康支援において主たる対象とすべき集団の特性とその課題をみつけることを目的とした。方法:対象者は40〜65歳までの女性とし,都内および近郊に在住の某女子大学学生の母親および大学関係者から公募した。調査協力に同意の得られた220名を対象として,自己記入式質問紙調査を実施した。調査内容は,属性,生活習慣,健康情報入手方法,健康相談相手,将来の健康不安,更年期症状とした。更年期症状は簡略更年期指数(SMI)を用いて調査した.また,医学中央雑誌で先行研究を検索し,SMIの得点を比較した。結果:SMI得点は先行研究における一般女性とほぼ同様の結果であった。SMIの得点を就労形態別に5群で比較したところ,就業形態によってSMI得点に有意な差がみられた(p=0.049)。症状別にみると,自営業群は他の群と比較して「怒りやすくいらいらする」「くよくよしたり,憂うつになったりする」「頭痛・眩暈・吐き気がよくある」などの精神的症状が有意に高かった。結論:就業形態別に更年期症状を検討した結果,就業形態によってSMI得点に有意な差がみられた。特に自営業群の精神的な症状が,他の群に比べて有意に高かった。このことから自営業の中高年女性に精神面の支援の必要性が示唆された。
著者
宮内 誠 カルロス 杉浦 元亮 蓬田 幸人 秋元 頼孝 月浦 崇 川島 隆太
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

他者の身体に危害を加えるという過去の出来事に関して加害行為を実行することと被害者を目撃することが脳内で別々に表象されている可能性がある。本実験では参加者に顔写真を提示し、仮想の加害行為として顔写真の目に画鋲を刺す行為を含む課題を行わせた。その行為の想起時の脳活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて測定した。本研究では加害行為の有無を識別することが可能かどうかを機械学習的手法を用いて検討した。
著者
宮内 弘
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ラーキンを中心に、イェイツ、ハーディ、ヒーニー,テッド・ヒューズなどの詩作品に見られる形式、すなわち押韻形式、韻律、統語法などを分析し、これらの詩人が使用した形式が、彼らの個々の詩の内容を反映していることを実証した。次にこの研究をふまえて、上述の詩人の作品の際だった特質であると考えられる「重ね合わせ」と「埋め込み」の技法を、特に形式と内容との関係に注意を払いながら、考察した。
著者
宮内 泰介 古川 彰 布谷 知夫 菅 豊 牧野 厚史 関 礼子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、ヨシをはじめとするさまざまな半栽培植物(または半家畜の動物)に焦点を当て、かかわる人間の側のしくみ・制度を論じることにより、自然のあり方とそれに対応する人間社会のあり方を統一的に把握するモデルを提示することを目標としている。本研究の最終年度に当たる平成19年度は、(1)宮城県の北上川河口地域でヨシ(葦)(Phragmites australis)原の利用のしくみと変遷についての現地調査を継続し、まとめにかかる一方、(2)研究会を開いて多様な専門分野の研究者が集まり、本研究の総括的な議論を行った。その結果、(1)の北上川河口地域での調査では、ヨシ原が歴史的に大きく変遷しており、それと地域組織や人々の生活構造の変遷が大きくかかわっていることが明らかになった。自然環境-自然利用-社会組織の3者が、相互に関連しながら、変遷している様子が見られ、さらに、そこでは、強固なしくみと柔軟なしくみとが折り重なるように存在していることが分かった。また、(2)の総括では、(i)「半栽培」概念の幅広さが明らかになり、(a)domestication(馴化、栽培種化)、(b)生育環境(ハビタット)の改変、(c)人間の側の認知の改変、の3つの次元で考えることが妥当であり、さらには、さまざまなレベルの「半」(半所有、半管理.)と結びついていることが明らかにされた。(ii)また「半栽培」と「社会的しくみ」の間に連関があることは確かだが、その連関の詳細はモデル化しにくいこと、したがって、各地域の地域環境史を明らかにすることから個別の連関を明らかにしていくことが重要であることがわかった。 (iii)さらに、こうした半栽培の議論は今後の順応的管理の際に重要なポイントになってこと、これと関連して、欧米で議論され始めているadaptive governance概念が本研究にも適応できる概念ではないかということが分かった。本研究は、そうした総括を踏まえ、成果を商業出版する方向で進めている。
著者
三浦 大生 秋元 崇 宮内 新 石川 知雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.88, pp.15-20, 2000-05-18
被引用文献数
1

本稿では複数のエージェントを同時に学習する手法として, 遺伝子プログラミングを用いた学習にエージェント間評価を導入して, エージェント同士が互いに評価する手法を提案する.実ロボットに提案した手法による学習法を実装してのサッカーゲームによる実験を行う.まずスルーパスに戦術を特定した学習を行い, エージェント間評価を用いることでスルーパス行動の学習効率を高めることができることを示し, エージェント間評価が有効な手法であることを示す.続いて戦術を特定することなく複数の戦術を1回の学習で同時に学習することができることを示す.
著者
今村 浩明 宮内 孝知 武笠 康雄
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. 第2部 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.37-56, 1982-12-20

行為体系理論の立場から設定された4種の価値,スポーツ体系構成要因間の投入産出の相互交換,及びR.ベネディクトの文化型にみられる日本的特性を手掛りにした調査の結果,わが国競技者(陸上競技,野球,剣道)の価値意識について次の事実が明らかになった。1.全体的な傾向についてみれば,スポーツ,チーム,試合,練習に関する価値については業績価値,献身価値が多く選ばれた。これは競技スポーツの特性とよく合致している。指導者の資質,年長者-年少者の関係についてみれば,献身価値,和合価値等の個別主義的価値への志向が多くみられたが,これはベラーの指摘する日本文化の伝統的特性と対応するものである。2.世代間の差についてみれば,スポーツ,チームに関してはOB,現役とも業績価値,献身価値という成就本位の価値に志向する者が多いが,OBは現役よりも和合価値を,現役はOBよりも充足価値を選ぶ者が多い。集団を構成する人間関係についてみれば,年長者-年少者という先天的属性のみにかかわる上下関係では双方とも和合価値を志向し,指導者-競技者という機能的上下関係に関してはOBは現役よりも厳しい献身価値を,現役はOBよりも暖かい和合価値や,自由な充足価値をより多く志向する。これはOB,現役が競技者としておかれた社会的文化的背景の差,また監督経験の有無の差によるものであろう。3.種目間の差についてみれば,陸上競技は合理的な業績価値を,野球はスポーツに対しては和合価値を,チームや連帯,指導者に関しては克服価値を他種目より多く選ぶ。これは個人の記録の客観比較である陸上競技と,監督による統制の強いチーム競技である野球との間のスポーツ文化としての特質の差によるものであろう。剣道は人間関係に関する項目では和合価値を選ぷ者が他の2種目より多いが,この点に限ってみれば個別主義性質本位という日本文化の特徴の一つと対応する。しかし,これ以外の項問では,和合価値以外の諸価値へと志向が分散しており,結果として価値の4類型間のバランスが最もよくとれたものとなっている。これに関しては,伝統的価値への反作用,抽象化と昇華による価値意識の意味拡大などの解釈が可能であろうが,これは今後の課題である。4.各種目の価値意識を世代間で比較すると,陸上競技が最もOB,現役間の差が少ない。これは陸上競技それ自体の客観的,合理的性格から,競技の型や競技のおかれる状況が世代をこえて比較的安定していることによるものであろう。野球では価値意識の世代間の差は,他の2種目と比較して最も大きい。これは野球の現代社会での急速な普及と,それにともなう大衆化,世俗化によるという解釈が可能であろう。剣道にもOBと現役間に若干の差がみられ,特に目立つのはチームの目標決定について,全員の希望の最大充足のために全員で決定することを(充足価値)を現役の大多数が望ましいとしていることである。5.スポーツ体系の構成要因である練習,試合,連帯,楽しさ間の投入産出の相互交換についてみれば,全体では練習-試合間の相互交換量が多く,練習と試合への他の要件からの投入が多かった。これは競技スポーツの特性からみて当然のことであろう。世代間の比較においては,OBでは連帯と練習への投入量が現役より多く,現役では試合と楽しさへの投入量がOBより多かった。これは連帯と練習の揚でのOBの「自己統制」と,試合やインフォーマルな楽しみの場での現役の「自己解放」「自己表現」という態度の差として理解できよう。種目別にみると,陸上競技は他の2種目に比較して試合と練習,特に練習への他要件からの投入量の比率が高く,連帯の比率が低い,また野球は他種目と比較して連帯の比率が高く,楽しさの比率が小さい。これは個人の運動能力の客観比較という陸上競技と,チームスポーツである野球との特質の差をよく表わしている。剣道は他の2種目と比較して,試合の比率が小さく,楽しさの比率が大きいということ,またそのことによって,4要件間の比率のバランスが最もよいものとなっている。これは先にみた4種の価値への志向のバランスのよさと対応している。以上の作業を通してスポーツに関する価値意識の分布様態と,スポーツ体系における投入産出のパタンとの間に蓋然的な対応関係があることが明らかになった。6.競技者の価値意識にみられる日本的特性を明らかにするため,ベネディクトの日本文化の型の特性をスポーツ場面に援用し調査したところ,OBが現役よりも多くの日本的価値意識をもつことが明らかとなった。種目別では陸上競技が最も日本的な型から遠く,剣道が最も日本的な価値意識の型に近いことが明らかとなった。この分析を通して,マクロな普遍文化とその下位体系としての特殊文化,任意文化であるスポーツとの対応関係,及びスポーツの場における文化,集団,個人の意識の3者を総合的に理解するための一つの手掛りを得ることができた。
著者
宮内 肇 栗山 繁
出版者
松江工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

アーチェリーにおいては、射形の変動は得点に大きな影響を及ぼす。このスポーツは、高得点を得るために、同じ射形を繰り返す必要がある。普通はコーチの指導の下で、繰り返しの練習で射形の安定を達成するものである。しかしながら、高校や高専の部活動においては、専門のコーチを置くのは難しい。そこで、我々は、アーチェリーの競技力を工学的な手法で伸ばすことを考えた。この研究においては、フィジカルコンピューティングを用いた様々なトレーニング装置を考案した。この装置によって、射手は、自分の射形の癖などを把握することができる。
著者
小林 進 落合 武徳 堀 誠司 宮内 英聡 清水 孝徳 千葉 聡 鈴木 孝雄 軍司 祥雄 島田 英昭 岡住 慎一 趙 明浩 大塚 恭寛 吉田 英生 大沼 直躬 金澤 正樹 山本 重則 小川 真司 河野 陽一 織田 成人 平澤 博之 一瀬 正治 江原 正明 横須賀 收 松谷 正一 丸山 紀史 税所 宏光 篠塚 典弘 西野 卓 野村 文夫 石倉 浩 宮崎 勝 田中 紘一
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.265-276, 2004-12-01

千葉大学医学部附属病院において2000年3月から,2003年8月まで8例の生体部分肝移植手術を施行した。5例が18歳未満(7ヶ月,4歳,12歳,13歳,17歳)の小児例,3側が18歳以上(22歳,55歳,59歳)の成人例であった。2例(7ヶ月,4歳)の小児例は左外側区域グラフトであるが,他の6例はすべて右葉グラフトであった。2側が肝不全,肺炎のため移植後3ヶ月,2ヶ月で死亡となったが他の6例は健存中であり,元気に社会生活を送っている。第1例目は2000年3月6日に実施した13歳男児のウイルソン病性肝不全症例に対する(ドナー;姉22歳,右葉グラフト)生体部分肝移植である。現在,肝移植後4年3ヶ月が経過したが,肝機能,銅代謝は正常化し,神経症状も全く見られていない。第2例目は2000年11月23日に実施した12歳男児の亜急性型劇症肝炎症例である(ドナー;母親42歳,右葉グラフト)。術前,肝性昏睡度Vとなり,痛覚反応も消失するほどの昏睡状態であったが,術後3日でほぼ完全に意識は回復し,神経学的後遺症をまったく残さず退院となった。現在,術後3年7ヶ月年が経過したがプログラフ(タクロリムス)のみで拒絶反応は全く見られず,元気に高校生生活を送っている。第3側目は2001年7月2日に実施した生後7ヶ月男児の先天性胆道閉鎖症術後症例である。母親(30歳)からの左外側区域グラフトを用いた生体部分肝移植であったが,術後,出血,腹膜炎により,2回の開腹術,B3胆管閉塞のためPTCD,さらに急性拒絶反応も併発し,肝機能の改善が見られず,術後管理に難渋したが,術後1ヶ月ごろより,徐々にビリルビンも下降し始め,病態も落ち着いた。術後6ヵ月目に人工肛門閉鎖,腸管空腸吻合を行い,現在,2年11ケ月が経過し,免疫抑制剤なしで拒絶反応は見られず,すっかり元気になり,精神的身体的成長障害も見られていない。第4例目は2001年11月5日に行った22歳男性の先天性胆道閉鎖症術後症例である(ドナー:母親62歳,右葉グラフト)。術後10日目ごろから,38.5度前後の熱発が続き,白血球数は22.700/mm^3と上昇し,さらに腹腔内出血が見られ,開腹手術を行った。しかし,その後敗血症症状が出現し,さらに移植肝の梗塞巣が現れ,徐々に肝不全へと進行し,第85病日死亡となった。第5例目は2002年1月28日に行った4歳女児のオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症症例である(ドナー;父親35歳,左外側区域グラフト)。肝移植前は高アンモニア血症のため32回の入院を要したが,肝移植後,血中アンモニア値は正常化し,卵,プリンなどの経口摂取が可能となり,QOLの劇的な改善が見られた。現在2年5ヶ月が経過したが,今年(2004年)小学校に入学し元気に通学している。第6例目は2002年7月30日に行った17歳女性の亜急性型劇症肝炎(自己免疫性肝炎)症例である(ドナー:母親44歳,右葉グラフト)。意識は第2病日までにほぼ回復し,第4病日まで順調な経過をたどっていた。しかし,第6病日突然,超音波ドップラー検査で門脈血流の消失が見られた。同日のCTAPにて,グラフトは前区域を中心とした広範囲の門派血流不全域が示された。その後,肝の梗塞巣は前区域の肝表面領域に限局し,肝機能の回復が見られたが,多剤耐性菌による重症肺炎を併発し,第49病日死亡となった。第7例目は2003年3月17日に行った59歳男性の肝癌合併肝硬変症例(HCV陽性)症例である(ドナー:三男26歳,右葉グラフト)。Child-Pugh Cであり,S8に4個,S5に1個,計5個の小肝細胞癌を認めた。ドナー肝右葉は中肝静脈による広い環流域をもっていたため,中肝静脈付きの右葉グラフトとなった。術後は非常に順調な経過をたどり,インターフェロン投与によりC型肝炎ウイルスのコントロールを行い,移植後1年3ヶ月を経過したが,肝癌の再発も見られず順調な経過をとっている。第8例目は2003年8月11日に行った55歳男性の肝癌合併肝硬変症例(HBV陽性)症例である(ドナー;妻50歳,右葉グラフト)。Child-Pugh Cであり,S2に1個,S3に1個,計2個の小肝細胞癌を認めた。グラフト肝は470gであり過小グラフト状態となることが懸念されたため,門脈一下大静脈シヤントを作成した。術後はHBV Immunoglobulin,ラミブジン投与により,B型肝炎ウイルスは陰性化し,順調に肝機能は改善し合併症もなく退院となった。現在移植後10ヶ月が経過したが,肝癌の再発も見られず順調な経過をとっている。ドナー8例全員において,血液及び血液製剤は一切使用せず,術後トラブルもなく,20日以内に退院となっている。また肝切除後の後遺症も見られていない。
著者
湊 太郎 宮内 宣宏 山崎 正一 佐藤 義夫 福江 正治
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.181-186, 2006 (Released:2013-02-19)
参考文献数
10

本研究では, 大阪湾の湾奥に位置する尼崎港と尼崎運河において行った実証実験の結果をもとにして, 海水浄化船による水質汚濁物質の削減の可能性について検討した. その結果, 海水中のSSの中で粒状態有機物の占める割合が大きいほど, 海水浄化船を稼動させてSSを除去することによって, 海水中から水質汚濁物質である有機物を除去することが可能であるということが判明した. また, 植物プランクトンは, 海水中に溶存する無機栄養塩類を取り込み固定している. つまり, SSとして植物プランクトンをより多く除去することができれば, それに伴って海水中の栄養塩類の濃度をある程度まで低減させることが可能になると思われる. これらのことから, 大阪湾の湾奥のように, 植物プランクトンが大規模に増殖する海域では, 海水浄化船によるSSの除去に伴う水質改善が, より効果的に行われると考えられる.
著者
工藤 芳彰 宮内 [サトシ]
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.46, pp.198-199, 1999-10-15

This paper investigates a viewpoint of The Studio about Japanese fine art and craft on exhibit in the Japan-British Exhibition(191O)as foundation work of a study on relationship Western design movements and Japan until the end of the 19c to the beginnig of the 20c. There were 6 articles about painting, ceramic art, textiles and embroidery, wood and ivory carving, metal work, and cloisonne ware. There were various levels from antique to craft for export in Japanese exhibits of the Japan-British Exhibition. Above all, The Studio payed attention to the modification in Japanese contemporary fine art and arts and crafts for the influence of West and the Japanese attitude on the modification.
著者
山口 巧 堀尾 郁夫 青木 亮太 山下 登 田中 守 出石 文男 宮内 芳郎 荒木 博陽
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.133, no.11, pp.1249-1259, 2013 (Released:2013-11-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1 7

In 2009, the Japan Anti-Doping Agency (JADA) established Sports Pharmacist—a system for certified pharmacists. There are many over-the-counter drugs that contain prohibited substances in Japan, and they are easily available. In Japan, most doping violations are committed when athletes unintentionally take prohibited substances. Therefore, the Sports Pharmacist has a vital role in promoting the prevention of doping. In the present study, surveys involving a total of 350 athletes, (including 260 representatives of Ehime Prefecture in the National Athletic Meets and 90 college students who participated in the intercollegiate athletics Shikoku area meets), on awareness regarding doping and medical drugs were conducted. Using correspondence and logistic regression analyses, the results were examined to develop a model for the prediction of athletes' actions to cope with sickness based on changes in their awareness of anti-doping, and the relationship between them was also analyzed. The survey results suggested that attitudes towards doping were strongly influenced by gender, rather than the athletic ability and whether or not a doping test is scheduled. Their behavior and criteria for the selection of drugs to address sickness were strongly correlated with awareness of anti-doping. Therefore, athletes with an increased awareness of anti-doping are expected to consult a pharmacist prior to using medicine. The Sports Pharmacist should further promote environmental development, such as activities to improve awareness of doping among young athletes and the establishment of medical drug consultation services for athletes (female athletes in particular).
著者
藤本 薫 高橋 真理 眞茅 みゆき 宮内 清子 稲次 潤子 大蔵 由美
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、更年期女性の健康行動の促進に向けて、セルフコーチングを基本としたプログラムを作成し、評価を行うことを目的とした。更年期症状を有する45-55歳の女性を対象に、更年期の健康に関する情報およびセルフコーチングを促す記事について、ホームページを作成し、63日間更新した。対照群17名、介入群16名をITT解析した結果、簡略更年期指数、自己効力感、健康関連QOLの得点および平均歩数における介入前後の差の比較では、いずれも有意な差は認められなかった。ホームページを利用した情報提供や行動を振り返るセルフコーチングの働きかけは、一方向となり、効果が得られなかったことが推察された。