- 著者
-
小林 勇人
- 出版者
- 福祉社会学会
- 雑誌
- 福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
- 巻号頁・発行日
- vol.2007, no.4, pp.144-164, 2007-06-23 (Released:2012-09-24)
- 参考文献数
- 33
本稿は,ジュリアーニ政権のもとで全米の約1割に相当する公的扶助受給者数を大幅に削減したニューヨーク市のワークフェア政策の特徴を明らかにする.ジュリアーニは,連邦政府による1996年福祉改革法成立後に抜本的な福祉改革を実施し,組織再編成を行うとともに情報管理システムを導入し,業績べ一スの民間委託契約を通して就労支援プログラムを展開した.同市の公的扶助制度の主要な就労促進プログラムには,「技能査定と就労斡旋斡旋(Skills Assessment and Placement: SAP)」,「雇用サービス就労斡旋 (Employment Services Placement: ESP)」, 「就労経験プログラム(Work Experience Program: WEP)」があった.SAPは公的扶助申請者に対して申請期間中に行われる就労斡旋プログラムであり,申請が受理されて受給者になると受給者にはESPによって就労斡旋プログラムが提供された.申請者や受給者はこれらのプログラムへの参加を義務付けられたが,民間団体の就労支援プログラムでも就労できない受給者は,WEPを通して市に雇われ就労義務を果たすことになった.SAPが申請者を就労へ迂回することで貧困者・失業者による福祉の申請を抑制した一方で,ESPでは雇用能力の高い受給者に有利なサービスが展開されたため,雇用能力の低い受給者はプログラムに滞留し,プログラムへの参加を拒めぼ公的扶助から排除されるに至った.