著者
田中 佐代子 小林 麻己人 三輪 佳宏
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション = Japanese journal of science communication (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
no.21, pp.41-57, 2017-06

研究成果の理解を助けるビジュアルデザインは,研究者にとり重要な位置を占めるようになった.しかし研究者自身によるビジュアルデザインは,煩雑でわかりにくく,審美性の低い場合が多い.そこで私たちは,研究者のために有用なビジュアルデザインのルールについて考察した.まず,研究者に即したビジュアルデザインのルール案を考案し,それを掲載したハンドブックを作成した.次に,これを研究者に配付し,彼らに対するアンケート調査を介して,提案ルール案の研究者にとっての有用性と問題点を検証した.その結果,有用と判明したのは,第1に「画面の構成方法」に関するルール,特に「視線の流れを意識する」,第2に「効果的な配色方法」に関するルール,特に「3色(メインカラー,アクセントカラー,無彩色)でキメる!」,第3に「PowerPointによる描画」に関するルール,特に『頂点の編集』をマスターする」であった.一方,有用性が低いとされたのは「グラフ・表・フローチャート」に関するルールで,改善の余地があるとわかった.配布ハンドブックは概ね評判が良く,国内の理系研究者に有用とわかった.学ぶ機会が少ないデザインの基本ルールと技術を学習できたため,「役立つ」実感を与えたと推察する.Visual designs aiding the understanding of research results are becoming important for researchers. However, many researchers use incomprehensible and unattractive visual designs, which is why we attempted to formulate effective visual design rules for researchers. First, we published handbooks that presented plans of these visual design rules. We distributed them to researchers in Japan and conducted surveys using questionnaires. We then inspected the effects and problems of these plans. Consequently, the most effective rules were about the "Layout," particularly the rule" Being Conscious of the Flow of the Eyes." The second most effective rules were about "Color Methods," particularly the rule "Deciding Three Colors (Main Color, Accent Color, and Neutral Color)." The rules about "Drawing using PowerPoint" were also effective, particularly the rule" Mastering Edit Points."
著者
前田 治男 五十嵐 雅之 小林 肇
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
日本エネルギー学会大会講演要旨集 第26回日本エネルギー学会大会 (ISSN:24238317)
巻号頁・発行日
pp.62-63, 2017-07-25 (Released:2017-07-25)

Carbon Capture and Storage (CCS) technology, which is currently being developed around the world, could become a practical countermeasure to reduce emissions of the greenhouse gas. Depleted petroleum reservoirs and aquifer have been proposed as candidate sites of CCS. The long-term aim of this research is to establish a bio-technological system to convert geologically-stored CO2 into methane, as an energy resource. To develop a means for the conversion, we focus on technological application of a bio-electrochemical system using microbial catalyzed electrode (bio-cathode).
著者
小林 隆
出版者
専修大学情報科学研究所
雑誌
専修大学情報科学研究所所報
巻号頁・発行日
no.78, pp.29-36, 2012-06

ビジネスプロセスデザインにおいて、過去の事例を知識ベース化し新たなデザインに活用すること、すなわちパターンアプローチが重要である。一般に、プロセス改善は、対象プロセスの問題点をリストアップし、問題点の根本的な原因を究明して解決課題を明らかにし、課題を実現する解決策を考案するという手順で行う。従って、パターン作成の対象となるテーマは問題点、解決課題、解決策の3つである。これらのテーマのうち問題点と解決策は、対象業務の実行環境に依存するため個別性が高いが、解決課題は業務上の問題点の根本的な原因として得られる抽象レベルの高いものであるためパターン化しやすい。そこで、本論文では、解決課題に着目してパターン化を行った。ここでは、企業のビジネスプロセスを顧客管理、業務管理、イノベーションという3タイプに分類するとともに、ビジネスプロセスのステップを準備、交渉、実行、受入の4フェーズに分類し、それらの分類ごとに解決課題をパターン化した。そして、クレジットカード発行プロセスの事例により、提案方法の有効性を示した。
著者
小林 達明 山本 理恵
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.265-273, 2012-11-30
参考文献数
13
被引用文献数
1

3 月11 日の地震と津波は,福島第一原子力発電所の全電源消失という事態を招き,引き続いた一連の事故は,大量の放射性物質を大気中に放出させ,その降下域は深刻な汚染に悩まされることになった。このような事態についての危惧は,原子力委員会においても,またそのような公式の会議の外でも,これまで何度か指摘されており,決して科学的に想定外だったわけではないが,国も電力会社もまじめに現実的な対策をとった形跡はない。放射線生物学の研究は,厳重管理され閉じた「管理区域」における研究にほぼ限られてきた。自然環境下における放射性物質の動きについては,1950 年代から60 年代に行われた核実験による放出放射性物質のグローバルフォールアウトを利用した土壌浸食研究や同位体比を用いた生態系循環の研究が一部の研究者によって行われてきただけである。ましてや自然環境に広く拡散された高濃度放射性物質とそれに起因する放射線の対策に関する研究は,米ロの核実験場周辺の研究かチェルノブイリ原子力発電所事故に関わる研究にほぼ限られる。したがって,環境中に広く放出された放射性物質を適切処理して, 健全な自然環境を再生する専門家は,2011 年3 月時点わが国にはいなかった。この原稿をまとめている2012 年秋の時点では,住宅や道路等都市的な環境の除染,農地の除染については一定の知見が集積しつつあるが,森林・緑地の取り扱い方,それが人や農作物,さらには野生生物へ与える影響について取り組んでいるグループはまだ一部に限られる。このような研究には,放射性物質・放射線に関する知識は不可欠だが,それだけで十分とは言えない。例えば,放射線防護の三原則は,Contain: 放射線・放射性物質を限られた空間に閉じ込める,Confine: 放射線・放射性物質を効果的に利用し, 使用量は最小限にする,Control :放射線・放射性物質は制御できる状況で使用する,とされているが,自然環境下でこれらの原則は,すべて予め崩れている。体外放射線に対する防護の3 原則とされる時間・距離・遮蔽と, 体内放射線に対する防護の5 原則とされる希釈・分散・除去・閉じ込め・集中を,自然環境中でどのように選択し,組み合わせて,矛盾少なくいかに適切にリスク低減のプロセスを進めていくかが課題となる。これらの措置は自然環境そのものにも影響を及ぼす。たとえば,森林の落葉落枝層の除去は放射性物質の除去には有効だが,土壌浸食の増加を促すので,その対処が必要である。そのようなことが,居住,飲食,教育などの生活面,農林業などの産業面で,様々に影響しあう。放射性物質管理は,社会に対して大きな影響を及ぼすので, リスクコミュニケーションは特に重要となる。私たち緑化研究者・技術者は,環境の問題を把握し,それに対処して健全な自然環境を再生すべく,これまで研究を重ね,技術を積み上げてきた。その中で放射線・放射性物質に関する問題はほとんど扱われてこなかったが,自然環境の取扱いについてはプロであり,この問題についても果たすべきことは多々あると思われる。また,自然環境の再生を訴えてきた専門家集団の倫理としても,その汚染を黙って見過ごすことはできない。そのような問題意識から,2012 年大会にて, 有志とはかって「原子力災害被災地の生態再生(I) 里山ランドスケープの放射能と除染」を企画した。本特集は,その際の発表をもとに,学会誌向けにとりまとめたものである。本稿では,緑化と関連する放射線・放射性物質の問題の所在と研究の現状を見渡し,今後の展望について整理したい。
著者
小林 義郎 熊懐 稜丸 大沢 昭緒 村上 慎一 中野 隆治
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.1247-1249, 1978-04-25 (Released:2008-03-31)
被引用文献数
31 45

Photochemical trifluoromethylation of pyridine gave a mixture of three (trifluoromethyl) pyridines. Pyrrole and N-methylpyrrole were trifluoromethylated in α-position. Benzene gave very low yield of benzotrifluoride.
著者
小林 義郎 熊懐 稜丸 佐藤 進 原 伸祀 近見 永一
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.18, no.11, pp.2334-2339, 1970-11-25 (Released:2008-03-31)
被引用文献数
39 65

Trifluoromethyl iodide reacts with aryl halide in the presence of copper powder to give aryltrifluoromethane derivatives in a fairly good yield. This newly observed reaction is applicable to heterocyclic halides as well as benzene derivatives. Activities of halides are in the following order of readiness : iodide>bromide>chloride. Effects of solvents and natures of copper were examined.
著者
小林 孝誌
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.374-379, 1995-11-30 (Released:2018-09-25)
参考文献数
16
著者
小野寺 佑紀 小林 繁男 竹田 晋也
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.632, 2005

森林の分断化とそれに伴う消失は、人間活動の広がりとともに世界中で見られる現象である。しかし、一部の森林は住民が保全することで森林パッチとして残存している。タイ東北部の代表的な景観は、水田と森林パッチである。これらの森林パッチは、先祖の魂を奉るための「守護霊の森(don puta)」、火葬・埋葬に用いられる「埋葬林(pa cha)」、そして林産物および薪炭材採取のための公共林に分類されると言われてきた。利用形態は変容しながらも、現在でも住民の生活に森林パッチは欠かすことができない。ところが、これまで森林パッチの構造と種構成に関する調査は行われてこなかった。そこで、森林パッチの植生に及ぼす人為・環境要因を明らかにするために、ヤソトン県南部のK郡に分布する35の森林パッチを対象に、植生調査および村人への聞き取り調査をおこなった。植生調査では、パッチの面積に応じて3から10のコドラート(10m×10m)を合計206個設置した。その結果、K郡では172種の木本を記録した。 35の森林パッチは、既存の分類(e.g. Prachaiyo 2000)のように明確に分けられるものばかりではなく、その利用形態は複合的なものが多かった。今回確認された埋葬林は7つであったが、そのうち6つではすでに埋葬は行われていなかった。なかでも放棄された埋葬林は、利用頻度が高い森林パッチと比較して、個体数密度および種数が大きい値を示す傾向があった。一方で、「守護霊の森」は、個体数密度が小さく、大径木が多く出現する傾向があった。以上より、異なる住民利用は森林パッチの構造に異なる影響を与えていることが明らかとなった。さらに、住民利用が森林パッチの種数および種構成に与える影響および環境要因として河川の氾濫を取り上げ、それが森林パッチの植生に及ぼす影響についても検討する。
著者
小林 和弘 織田 範一 伊藤 磯雄
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.101, no.9, pp.806-813, 1981-09-25 (Released:2008-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

As the initial study of variations of skeletons of antitumor antibiotics, simple synthesis of naphtho [2, 3-g] quinolines (IIIa, b, VIII) and naphtho [2, 3-g] quinoxalines (XIIIa, b), which are novel heterocyclic ring systems, was carried out by Diels-Alder reaction of 1, 2-dimethylenecyclohexane with quinoline-5, 8-diones (Ia-c) or quinoxaline-5, 8-diones (IIa, b). Air oxidation of these Diels-Alder adducts gave tetrahydro naphtho [2, 3-g] quinolines (IVa, b, IX) and tetrahydronaphtho [2, 3-g] quinoxalines (XVa, b). The Diels-Alder adducts and aromatized compounds were converted into the corresponding diacetoxynaphtho [2, 3-g] quinolines (VI, VII, X) and diacetoxynaphtho [2, 3-g] quinoxalines (XVII, XVIII).
著者
小林 和弘 織田 範一 榊原 仁作
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.103, no.2, pp.165-172, 1983-02-25 (Released:2008-05-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

Ethyl 5-hydroxybenzo [α] phenazine-6-carboxylates (IIa, b) were prepared by the condensation of ethyl 1, 4-dihydro-1, 4-dioxo-3-methoxy-2-naphthoate (I) with o-phenylene-diamines. Acylations and alkylations of IIa, b gave the corresponding o-acyl and alkyl compounds (IIIa-k). The reaction of IIa, b with ethanolamine gave β-hydroxyethyl-carboxamides (Va, b). Compound Va was converted into β-chlorinated compound (VIa), whose chlorine was substituted by dialkylamines to give ethylenediamine-type amides (VIIa, b, c). Compounds VIId and VIIe were obtained by the reaction of IIb with dialkylalkylenediamines. Oxidation of IIa, b afforded N-oxides (IXa, b). The antimicrobial activities of all synthetic compounds were tested by paper discagar diffusion assay. Compounds IIId, e, g, VIIa and IXa showed inhibitory activities to T. interdigitale and IXa to C. albicans.
著者
小林 和弘 織田 範一 榊原 仁作
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.103, no.4, pp.473-479, 1983-04-25 (Released:2008-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

Ethyl 1, 4-dihydro-1, 4-dioxo-3-methoxy-2-naphthoate (I) is condensed with amidines, 2-aminopyridines and 3-aminopyrazole, to give new tetracyclic quinones (IIIa-c and VI) containing nitrogen atom and hydrogenation of IIIa and IIIb over Pd-C or Raney-Ni afforded 1, 2, 3, 4-tetrahydro (IXa, b) or 1, 2, 3, 4, 7, 8, 9, 10-octahydrobenzo[g]pyrido[2, 1-b]quinazoline (Xa), respectively. Benzo[g]pyrido[2, 1-b]quinazoline derivatives except for Xa showed inhibitory activities to S. aureus and T. interdigitale.
著者
織田 範一 小林 和弘 植田 泰誠 伊藤 磯雄
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.2578-2581, 1978-08-25 (Released:2008-03-31)
被引用文献数
1 3

Diels-Alder reaction of 5-nitro-1, 4-naphthoquinone (1) and unsymmetrical butadienes was carried out. Reaction of 1 and 2-methyl-1, 3-butadiene gave 1, 4, 4a, 9a-tetrahydro-2-methyl-5-nitro-anthraquinone (2) and its 3-methyl analogue (3) at the ratio of 9.2 : 1. Reaction of 1 and 1, 3-pentadiene gave 1, 4, 4a, 9a-tetrahydro-1-methyl-8-nitroanthraquinone (8) and its 5-nitro analogue (9) at the ratio of 10 : 7. Their structures have been determined by aromatization to methyl-nitroanthraquinones.
著者
寺本 由利子 小林 亮介 寺本 義隆 根尾 櫻子 代田 欣二
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.167-170, 2011 (Released:2011-10-19)
参考文献数
9

11ヵ月齢,避妊雌のチンチラが3度にわたる右肩部皮膚の潰瘍性病変を主訴に受診した。全身麻酔下にて病変部周囲を悌毛したところ皮膚は非常に脆弱で容易に傷つき皮膚伸展率が23.3%と高値を示した。裸出した皮下組織と体幹皮筋を切除・縫合し傷は癒合した。皮膚の病理組織検査では真皮における膠原線維の細片化や染色性の異常等が観察され,超微形態学的にも原線維の著しい配列の異常が観察された。関節を含め皮膚以外の異常は認められず臨床および病理所見より皮膚無力症と診断した。現在術後9ヵ月経過しているが皮膚病変を認めていない。
著者
小林 信一
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.243-249, 2008 (Released:2009-11-19)
参考文献数
28
被引用文献数
1

EBウイルスは, 発癌ウイルとして知られているが, 特に小児領域で多くみられる疾患は伝染性単核球症, 移植後リンパ増殖性疾患 (Post-transplant lymphoproliferative disorder, PTLD), EB関連血球貪食症候群 (EB-VAHS, EB-HLH hemophagocytic lymphohistiocytosis), 伴性リンパ増殖性疾患 (X-Linked lymphoproliferative syndrome, XLP, Duncan症候群), 慢性活動性EBウイルス感染症などである。この中で特に現在問題となっている疾患は慢性活動性EBウイルス感染症である。これは発熱, リンパ節腫脹, 肝脾腫, 咽頭痛などが反復または持続して出現し, 基礎疾患を有せずEBウイルス抗体価の異常高値を示す。予後は不良で, NK細胞に感染した26例中5例 (20%), T細胞に感染した34例中17例 (50%) が死亡している。治療にはacyclovir, ganciclovir, ara Aなどの抗ウイルス剤, プレドニン, シクロスポリン, VP16, 各種抗腫瘍剤の併用 (CHOP療法など), IFNα, 活性化T細胞輸注療法などが試みられているが, 明らかに有効な治療法はまだ確立していない。骨髄移植は24例で行われたが生着は50%とやや低く, 現段階では唯一の根治療法とはいえない状況である。今後より有効な治療法の開発が急務である。
著者
小林 毅
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.1-10, 2017

本論文では、日本銀行による量的・質的金融緩和政策が株式市場やJ-REIT市場に与えた影響をAR-GARCHモデルを用いて分析している。2010年12月に開始された包括的金融緩和政策において日本銀行は、リスク・プレミアムへの働きかけをするためにETF(上場投資信託)およびJ-REIT(不動産投資信託)等への買入れを開始した。この買入れに関して、TOPIXあるいは東証J-REIT指数の前日終値と比較して当日前場終値が下落した場合に日本銀行は買入れを行うという一定の傾向が観察されている。そして、黒田総裁の就任直後の2013年4月に量的・質的金融緩和政策が開始されて以来、ETFおよびJ-REIT買い入れの頻度が増していることが日本銀行の発表資料より示される。実証分析の結果、包括的金融緩和政策によって多くのJ-REIT個別銘柄のボラティリティは低下したが、量的・質的緩和政策はボラティリティをさらに低下させたことが明らかになった。ただしこれらの政策はJ-REITの日次収益率には影響を与えていないと思われる。一方、株価指数を対象に行った分析では、包括的金融緩和政策および量的・質的緩和政策は株式市場には有意な影響を与えなかったことも示される。
著者
小林 文明 松井 正宏 吉田 昭仁 岡田 玲
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
風工学シンポジウム論文集 第24回 風工学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
pp.115-120, 2016 (Released:2017-03-18)

2015年2月13日15時すぎに神奈川県厚木市内で発生した突風被害は,極めて局所的に被害が集中し,推定風速は20 m/sと推定され,F0(JEF0)スケールに相当した。今回の渦は,メソスケールのシアーライン上で形成された積乱雲前面におけるガストフロントで発生し,上空の積雲(アーク)と連なり,親渦が存在するという構造を有していた。ガストフロントに伴い複数発生した渦の一つであり,渦の接線風速もそれほど大きくなく,明瞭な漏斗雲は形成されず,地上の飛散物によって渦は可視化された。ガストフロントにおける上昇流が寄与した“2次的な竜巻”すなわちガストネード(gustnado)と考えられた。
著者
小林 酉子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.96, 2005

<目的> 英国ルネサンス期の演劇で、俳優はどのような姿で舞台に登場していたのか、その復元、視覚化を目的とする。発掘後、当時のままに再建されたロンドンのグローブ座からも明らかなように、劇場は、劇が演じられる舞台の上のみに屋根がかかり、一般観客席は屋根がない青天井であった。それは、俳優着用の高価な衣裳を雨から守るためであったとも言われているが、実際の衣裳の素材、デザインはどのようなものであったかを検証する。<方法> 1600年前後、ロンドンでは二大劇団が覇を競っていたが、その一方の海軍大臣一座の劇場主、フィリップ・ヘンズロウと、女婿にして名優でもあったエドワード・アレンは、劇団所有の衣装類をリストにして書き残した。『ヘンズロウの日記』として知られる劇場運営に関する財務簿の中に、これらのリストも含まれている。衣裳リストは主役級用と道化役用に大別され、その一点一点について、色やデザイン、生地の材質が細かに記されている。このリストを基に、主役級用衣裳を色別、素材別、デザイン別に分類した。<結果> 上記の分析によると、主役級用に用いられた生地はベルベットが最も多く、全体の約40_%_を占め、それに次ぐ素材がサテン、金糸入り、銀糸入り、絹(特定されず)で、各々約10_%_を占める。その他、刺繍、ビューグル(黒の筒型ビーズ)、スパングルの装飾が施された上衣、ズボンの例も見られ、高価、高級な素材が用いられていたことが分かる。色は赤、黒が各々30_%_で最も多く、他に青、紫の使用例が目立つ。ここで、道化役には使用されない色が紫であること、道化役に多い黄色、オレンジ色は主役級には用いられていないことも判明した。
著者
岡本 有希子 長澤 良太 今里 悟之 久武 哲也 小林 茂
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.10, 2007

<BR> 日本軍は,1928年以降空中写真による地図作製を本格的に開始し,第二次大戦中も各地でこれを実施した.これらの写真は,かなりが終戦時に焼却されたが,2002年9月アメリカ議会図書館で発見された.翌2003年には,このうち標定が可能と思われるもの723枚をスキャンして持ち帰り,この一部について中国製衛星写真と比較対照しつつ標定に成功し(安徽省五河付近),すでに分析がこころみられている(長澤ほか, 2005, 岡本勝男, 2007).本発表は、さらに残されていた空中写真について、とくにその方法と撮影地域を報告する.<BR><B>1. 標定の方法</B><BR> 空中写真に付された地名はごく簡略なため,地名辞典によりまず関係する地域を特定した.スキャンした空中写真をプリントし,これを飛行コース(東西方向)ごとにはりあわせて特徴的な地形を観察してから,Google Earthによって類似のものを探した.拡大縮小が容易なGoogle Earthでは能率的に作業を進めることができ,ひとまとまりの飛行コースの標定はほぼ一日で終了した. <BR><B>2. 撮影場所</B><BR> 図1にそれぞれの位置,表1にひとまとまりの飛行コースの北西・南西・北東・南東隅の緯度経度を示す.緯度経度は暫定的にGoogle Earthにより読み取ったもので,今後の本格的な標定の参考にするものである.撮影地域は農村部にかぎられ,特徴的な農地パターンがみられた.またGoogle Earthにみられる湖岸線や農地パターンと比較すると,大きな変化がみとめられ,解放後の中国における土地開発の進行がうかがわれた.今後は本格的な標定をおこなうとともに,オルソ化などもすすめたい.
著者
小林 文明 松井 正宏 吉田 昭仁 岡田 玲
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
風工学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.24, pp.115-120, 2016

2015年2月13日15時すぎに神奈川県厚木市内で発生した突風被害は,極めて局所的に被害が集中し,推定風速は20 m/sと推定され,F0(JEF0)スケールに相当した。今回の渦は,メソスケールのシアーライン上で形成された積乱雲前面におけるガストフロントで発生し,上空の積雲(アーク)と連なり,親渦が存在するという構造を有していた。ガストフロントに伴い複数発生した渦の一つであり,渦の接線風速もそれほど大きくなく,明瞭な漏斗雲は形成されず,地上の飛散物によって渦は可視化された。ガストフロントにおける上昇流が寄与した"2次的な竜巻"すなわちガストネード(gustnado)と考えられた。