著者
小林 里瑳 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.251-258, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
28

本研究は,土地所有履歴を時間と空間両スケールで集約化し分析することによる,地域における新陳代謝メカニズムと空間変容の相互作用への理解を目的としている.研究を通じて以下の点を明らかにした.1)土地の所有形態分布はランクサイズルールに従い,寡占地主は分散して所有していた土地を取引を通じて集約する一方で,多くの地主が短期的所有を行なっている.2)寡占地主の土地再配分が地域の公共事業と関連し,地域の特徴的な空間を形成している.3)地割の変化しない街区がある一方で地割の大きく変化した街区が以降の土地利用に影響を与えている.
著者
小林 伸彦
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.1178-1181, 2001-10-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
17

走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて個々の原子を操作することにより,人工ナノ構造の作成が可能となっている.また,そのナノ構造の電気伝導特性を利用し,ナノテクノロジーへの応用も期待されている.本稿では,第一原理電子状態計算による原子操作や原子細線の電気伝導の研究を紹介し, STMによるSi原予引き抜きにおいて,探針による近接効果やバイアス電圧による効果がどのように働き原子が引き抜かれるか,また,個々の原子が連なったAl原子細線がどのような伝導特性をもつかを解説する.
著者
大本 俊彦 小林 潔司 大西 正光
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.693, pp.231-243, 2001 (Released:2010-08-24)
参考文献数
32
被引用文献数
3 3

本研究では建設工事において発注者と請負者の間に生じる紛争解決のメカニズムに関してゲーム理論を用いた分析を試みる. 建設工事における紛争は当事者の間で建設工事契約に関する解釈が異なることにより生じる. 紛争解決の手段として和解もしくは仲裁が存在する. 本研究では工事契約に対する解釈の違いや紛争の程度が, 紛争解決の手段選択に及ぼす影響を分析するとともに, 第3者裁定が紛争解決の効率化に果たす役割を分析する. さらに, 日本型紛争解決方式と国際紛争解決方式の相違点について考察し, 日本型紛争解決方式に残された今後の課題をとりまとめる.
著者
小林英司
雑誌
臨床医薬
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1528-1532, 1998
被引用文献数
3
著者
小林 初夫 安部 清哉
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.12, pp.173-225, 2014-03-01

本研究は、2011 年3 月11 日の東日本大震災で、避難生活を強いられた小学校児童・中学校生徒が受けたであろう言語面への影響についてアンケート調査を実施し、言語形成期にあたる児童生徒が受けた言語の面での有形無形の影響を、部分的にでも記録しようとするものである。児童生徒が、避難生活前後において、各自の言語や周囲の言語の変化について、どのように受け止め、どのように感じたのか、主にその言語意識の側面に関する質問への選択回答形式と自由記載形式によってアンケート形式で調査した。調査対象は、福島県南相馬市の小学校3 校、中学校1 校で、2012 年2 ~ 3 月の間に学校別に実施し、小学生計57 名、中学生計91 名、合計148 名の回答を得た。それを、小・中別、中学の学年別、男女別、避難先の遠近別ほかの観点から分類して集計し、それぞれについて若干の分析と考察を行った。調査ということそのものの“ 難しさ” もあったが、幸い児童生徒の皆さんおよび関連諸方面のご理解とご協力をいただき、小さな調査ではあるが、前例のほぼない言語意識の記録を残すことができた。回答からは、避難生活後、友達の言葉が変化したと感じた児童生徒は、小学生で29%、中学生で41%、平均で39%あり、言語形成期にある児童生徒の5 分の2 以上が、何らかのかたちで言葉への影響を被ったであろうことが推定された。また、複数選択回答式質問への避難先別平均回答率の相違からは、言葉がより異なる県外への避難を経験した児童生徒の方が、福島県内避難の児童生徒の場合よりも、より強く言葉(地域言語)を意識するようになった様子が読み取れた。\ 本研究は、「震災原発等による避難生活が言語形成期の児童生徒に及ぼす影響に関する調査研究」(学習院大学人文科学研究所の平成24 年度特別共同研究プロジェクト、代表:安部清哉)の研究成果の一部である。\This research was based on a survey about the impact on the language of elementary and junior high school students who were forced to live as refugees in local or di erent prefectures after the earthquake on March 11, 2011. Th e survey was conducted in a questionnaire form that asked students, who were in a the formative period for personal language, about how they felt there had been changes in their or other peopleʼs language since living as evacuees. Three elementary schools and one junior high school in Odaka, Minamisoma City in Fukushima were surveyed. The total response was one-hundred forty-eight including fty-seven elementary school students and ninety-one junior high school students. Th e period of survey was from February 2012 to March 2012. Th e response was aggregated for the study by lementary/junior high school, school year, gender, and the distance of their relocation. is is an unprecedented record as a language survey of elementary and junior high school students in uenced by the Great East Japan Earthquake. From the survey responses, students noticed that their friendʼs personal language had changed after living as evacuees: 29% of students noticed in elementary school, 41% in junior high school, and the average proportion is 39%. It appears that two fths of students in the formative period of personal language development had their language a ected in some way by their lives as evacuees.
著者
清水 浩 小林 和生 岩田 博夫 雨宮 浩 阿久津 哲造
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.203-208, 1991-02-15 (Released:2011-10-07)
参考文献数
5
被引用文献数
1

ハイブリッド型人工膵臓では、ラ島は血管系から切り放されさらに半透膜で被われている。このためハイブリッド型人工膵臓の血糖値変化に応答したインスリン分泌は、当然自然の膵臓からのインスリン分泌とは異なるであろう。本研究では、ハイブリッド人工膵臓の形状、半透膜の膜厚や膜中の高分子濃度等がインスリン分泌に与える影響を、実験と理論の両面から検討を加えた。よく実験値を再現できる数式モデルを組み立てることができた。数式モデルによる解析より、インスリン分泌の動特性に与える影響は、ハイブリッド型人工膵臓の形状よりはラ島を包むハイドロゲル膜の膜厚が大きな影響を与えることがわかった。本研究により、ハイブリッド型人工膵臓作製のための、基礎データを得る膜透過試験評価システムまたインスリン分泌の数式モデルを構築でき、これらは今後新規な封入材料を選定したり、新たなシステムを作製する有効な手段になり得ると考えられる。
著者
小林 郁夫
出版者
一般社団法人 軽金属学会
雑誌
軽金属 (ISSN:04515994)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.330-334, 2002 (Released:2007-03-30)
参考文献数
25
被引用文献数
8 6
著者
坂手 誠治 惠 千恵子 小林 正嗣 村田 和弘 阪上 皖庸 木村 隆
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.201-205, 2003 (Released:2004-09-10)
参考文献数
8

中性脂肪 (TG)値は飲食により大幅に変動するので, 空腹時の基準値に基づいて食後のTG値から高TG血症の有無を判断するのは難しい. 多くの健康診断受診者 (TG以外の生化学検査所見異常者と要治療有症者を除く)のTG値を検討すると, 男性における空腹時TGの平均値 (M)+2標準偏差 (SD)は, 一般にスクリーニング値とされる150mg/dlにほぼ一致した. このことから, 食後TGの経時的スクリーニング値を食後の各時間帯でのM+2SDとしたところ, ふるい分け率は19.9~21.8%で, 空腹時の23.5%に近似した率を示した. 従って, 食後におけるTGの実用的なスクリーニング値は, 食後の各時間帯でのM+2SDに最も近く1桁目が0の整数値とするのが適当であると考えられた. 女性の平均TG値は加齢により上昇する傾向を認めるものの男性のそれよりも低値であり, 20~49歳でのふるい分け率は空腹時5.3%, 食後3.2~5.8%に対し, 50歳代ではそれぞれ11.3%, 8.2~12.9%であった.
著者
小林 淳 蔡 恩美 山中 修也 櫻 勇人 山本 隆太 加藤 宏平 高橋 義朗
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集 71.2 (ISSN:21890803)
巻号頁・発行日
pp.507, 2016 (Released:2017-12-05)

近年、光格子中の冷却原子に対する量子気体顕微鏡の技術が急速に進展している。我々はこれまでにYb原子の量子気体顕微鏡を作成に成功している。これによって光格子中での原子位置を1サイトの単位で決定することができる。今回我々はこの技術を分子に適用した。光格子中のYb原子に対する2光子光会合によって電子基底状態の分子を作成し、さらにその分子を原子に戻して観測することで、分子の量子気体顕微鏡による観測に成功した。
著者
福島 雅夫 吉村 一彦 久保 恵嗣 小林 俊夫 半田 健次郎 草間 昌三
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.18, no.10, pp.753-757, 1980

22才男. 中岳 (3,084m) 登頂後呼吸困難, 意識障害が出現, 天候不順のため4日間山頂付近に滞留した. 救助時昏睡状態, 全身チアノーゼを認め, 全肺野で湿性ラ音を聴取した. 呼吸不全のため救助後約12時間で死亡. 剖検にて肺水腫の他に肺胞毛細血管, 肺動脈に微小血栓を認め, 脳白質にびまん性点状出血を認め注目された.
著者
佃 為成 酒井 要 小林 勝 橋本 信一 羽田 敏夫
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.p433-456, 1989-12

北部フォッサマグナの糸魚川・静岡構造線に長野盆地西縁断層(善光寺地震断層系)及び千曲川構造線のそれぞれの延長がぶつかる地域において発生した1986年12月30日の地震の震源パラメータや余震活動および先駆的活動の特徴,テクトニクスとの関連について調べた.震源域直上の1臨時観測点を含む近傍の観測点のデータを用いて余震の高精度震源決定を行い,さらに本震の震源についても定常観測点に基づく結果を補正した.この際,深発地震データから推定した走時の観測点補正時間を導入した.本震の深さは5.5kmで,その近傍に集中した余震(狭義の余震)の発生域はN15~20°Wの走向をもち,僅かに西に傾いた,ほぼ垂直な面上にあり,水平に6km,深さ方向に4kmの広さに収まる.この余震分布は初動の押し引きから得られた断層面の一つ(走向N19°W,傾斜角73°,すべり角26°)にほぼ一致する.この狭義の余震の外に点在する広義の余震は東西,南北にそれぞれ20kmの広さに分布する.気象庁の観測点の変位地震計記録の初動P波から推定した震源断層の破壊は,本震の震源付近から,余震が密集している南の領域へ向けて3km/sの速度で伝播した.その全面積は6km2,平均的な変位は75cm.変位の立ち上がり時間は0.5sである.また,地震モーメントは1.3×1024dyne・cm,応力降下は220barである.本震の破壊領域は既存の断層上にはなかったが,広義の余震は,2本の新第三紀層中の断層(小谷-中山断層,持京断層)が会合する地点,両断層に画された東南側の領域一帯,北部の両断層に挾まれた地域や,孤立的に東部の一地点に分布する.活動の範囲は時間とともに,拡大縮小の変化が認められた.最大余震はM3.5(広義の余震)で,本震の大きさに比べ,極めて小さく,余震回数も多くはなかったが,その減衰の定数はp=1で,通常と変わらない.この地震に先行した微小地震活動があった.その震源域は広義の余震の一つのクラスターとほぼ一致する.また,周囲半径100km以内の地震活動が1~2年前から1年後にかけて活発であった.直前の5~9日前には,飛騨山地を隔てた跡津川断層でも,目立った活動があった.大町市付近の系魚川・静岡構造線に沿った地域には,過去にも度々M6程度の地震が発生している.その中で1958年の地震の震央は,今回の地震の活動域にある.このときにも跡津川断層の活動が連動した(1858年飛越地震,M6.9).糸魚川・静岡構造線等を含む広域のネオテクトニクスの枠組みのなかに今回の地震の活動域が位置づけられるとともに,小規模の地殻ブロックの役割も注目される.A remarkable earthquake of Af 5.9 occurred at 09:38 on December 30, 1986, 10km northeast of Omachi city, Nagano Prefecture. This earthquake was accompanied by precursory microearthquake activity from one year before, at nearly the same place with one of the clustering spots of aftershocks, which is located in the vicinity of the meeting point of the Tertiary faults: the Otari-Nakayama and Mochigyou faults. The historical earthquake of M 5.7 in 1858 took place around this spot. Adjacent to this area, there were two other historical events with magnitude around 6 in 1890 and 1918. Synchronized seismic activity between the Omachi region and the Atotsugawa fault region, about 60 km apart from each other, was found in this 1986 event as in 1858. The surrounding seismicity within 100 km from the epicenter of the 1986 event had been active from several years before.
著者
前田 浩人 小林 加奈 三品 美夏 渡辺 俊文 曽川 一幸
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.43-47, 2018 (Released:2018-12-21)
参考文献数
7

慢性腎臓病(CKD)は,多くのネコに発症が認められ,死因の一つとされている.獣医国際腎臓病学会(International Renal Interest Society,IRIS)の分類では,ステージI期およびステージII期におけるCKDを正常なコントロールと比較して,マーカーを用いて正確に診断することは難しい.正常およびステージI期CKDネコにおける尿中アルブミン濃度は6.0±4.5および11.2±8.4 mg/dlであり,尿中トランスフェリン濃度は0.09±0.42および0.52±0.79 mg/dlであった.ROC曲線分析に基づいて,尿中アルブミンおよび尿中トランスフェリンの感度および特異性は,現在使用されているバイオマーカーである血漿クレアチニンレベルの感度および特異度より高かった.いくつかの候補の中で,CKDの最も有望なバイオマーカーとして39.2 kDaタンパク質であるカルボキシルエステラーゼ5A断片に焦点を当てた.カルボキシエステラーゼ5Aフラグメント測定を診断に応用出来るように,我々は,尿中カルボキシルエステラーゼ5Aフラグメントを測定することを可能にする酵素イムノアッセイを開発した.ELISAの性能については,回収率(96.1–106.4%)および同時再現性(3.5–5.1%)および日差再現性(4.8–8.2%)と良好な結果であった.