著者
内堀 朝子 小林 ゆきの 上田 由紀子 原 大介 今西 祐介
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度は本研究プロジェクト3年間のうち1年目として,文末指さしを含む日本手話文のデータ収集に取り掛かった。特に,研究体制として設定した二つの研究グループのうち,「話題要素担当グループ」によるデータ収集に重点を置き,日本手話母語話者の協力のもと調査を行った。調査では,第一に,文頭に話題化非手指標識を伴う要素と,その要素を指示対象とする文末指さしの両方を含む文が,日本手話母語話者にとって自然であると判断される文脈,つまり,その文が文法的かつ談話上適切であるような文脈を設定した。第二に,それと同じ文脈のもとで文頭の話題化要素を省略し,かつ,その要素を指示対象とする文末指さしが許されるかどうか,日本手話母語話者の内省・直観による判断を調べた。なお,第二のデータは,もう一方の研究グループである「非項/陰在的項担当グループ」の収集対象と合致するものが含まれることとなった。調査の結果,日本手話において以下の二つの可能性があることが確認された。すなわち,①話題化要素が省略される可能性(もしくは,空の話題要素が現われる可能性)があること,および②文末指さしが音声化されていない話題要素を指示対象とする可能性である。したがって,この調査は,「研究の目的」で述べた,本研究プロジェクトの課題のひとつである「問題Ⅰ:話題要素を含む文における文末指さしは,何を指示対象とすることができるのか?」に対する肯定的な回答を与えるものと言える。さらに,この調査は,「研究の目的」で述べた,文末指さしを持つ手話言語の類型に関わる問題に対して,日本手話が,文末指さしが主語を指すアメリカ手話と,話題要素を指すオランダ手話の両方の性格を併せ持つことを示唆するものであった。
著者
阿知波 秀彦 布川 修 杉山 友康 小林 徹 太田 直之 草野 國重
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.2191-2192, 2003

鉄道沿線の切取斜面や自然斜面において、降雨や地震の影響で小規模な崩壊が発生することが想定される場合は、崩壊が発生しても崩土が線路内に流入しないように線路際に柵などを施工し防護することが多い。しかし、崩壊の規模や崩土の衝撃力などを予測する手法は確立していないため、崩土により線路際の防護工が破壊され災害に至るケースが見られる。そこで、本研究では、崩土の運動を把握することを目的として、小型模型による崩土の流下・衝撃実験を行った。本稿では、模型実験の概要と実験で得られた衝撃波形のパターン、および衝撃力のピーク値と崩土の厚さ、長さ等との関係について述べる。
著者
前田 憲多郎 岩井 克成 小林 洋介 辻 裕丈 吉田 誠克 小林 靖
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.198-201, 2018 (Released:2018-03-28)
参考文献数
10
被引用文献数
1

症例は受診時51歳女性.6年前より頸部の重みを自覚.1年前から頸部伸展障害が増悪し,歩行障害が加わった.首下がりを主訴に当院を受診した.頸部伸展筋力低下,構音・嚥下障害,頻尿・便秘を認め,両側バビンスキー徴候陽性であった.歩行は小刻みかつ痙性様であった.頭頸部MRIで延髄・脊髄の萎縮を認めた.遺伝子検査でGFAPに本邦ではこれまで報告のない変異p.Leu123Pro(c.368T>C)を認め延髄・脊髄優位型アレキサンダー病(Alexander disease; AxD)(2型)と診断した.首下がりを呈する(AxD)の報告は散見されるものの,本例は首下がりを初発症状とした点が特徴であり,その機序に対する考察を加えて報告する.
著者
大島 悦男 佐藤 秀幸 小場瀬 宏之 内村 達雄 桑原 隆 小林 智
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.2552-2554, 1992-09-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
8
被引用文献数
2 6

(Z)-11-[3-(Dimethlamino)propylidene]-2-(methoxycarbonyl)methyl-6, 11-dihydrodibenz[b, e]oxepin-9-acrylic acid (5) was prepared for application to the radiommunoassay of KW-4679 (1, (Z)-11-[3-(dimethylamino)propylidene]-6, 11-dihydrodibenz[b, e]oxepin-2-acetic acid hydrochloride). The acrylic acid moiety in the 9-position of 5 was employed for coupling with an amino group of bovine serum albumin (BSA) to provide 17. Subsequently, the conjugate 17 was treated with aquenus NaOH to hydrolyze the terminal methoxycarbonyl group in the 2-position of the BSA conjugated 5. Antiserum raised against the antigenic BSA-conjugate 4 finally obtained was specific for 1.
著者
大石 孝義 西家 弘佳 小林 弘幸 小林 智
出版者
The Japanese Society for the Study of Xenobiotics
雑誌
薬物動態 (ISSN:09161139)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.683-688, 1995 (Released:2007-03-29)
参考文献数
7
被引用文献数
2 1

イヌに 14C-KW-4679 を 1mg/kg 経口投与後の吸収および排泄について検討し,以下の結果を得た.1.血漿中放射能は投与後 1.13時間に最高濃度(723.2ng eq,/ml)を示した後,おおむね一相性に消失し,t1/2 は4.53時間であった.2.14C-KW-4679 の血球移行率は投与後2時間から12時間まで31.7-35.5% とおおむね一定値を示した.3.in vivo における血清蛋白結合率は投与後 0.5時間から12時間まで 53.1-56.8%とおおむね一定であった.4.投与後168時間までに尿中に 73.4%,糞中に 22.9% が排泄され,総累積排泄率は 96.3% であった.大部分は投与後48時間までに排泄された.
著者
奥田 稔 高坂 知節 三宅 浩郷 原田 康夫 石川 哮 犬山 征夫 間口 四郎 新川 秀一 池野 敬一 松原 篤 稲村 直樹 中林 成一郎 後藤 了 小野寺 亮 遠藤 里見 亀井 民雄 室井 昌彦 馬場 廣太郎 島田 均 舩坂 宗太郎 大橋 伸也 鄭 正舟 小澤 実佳 八木 聰明 大久保 公裕 後藤 穣 服部 康夫 上野 則之 柏戸 泉 大塚 博邦 山口 潤 佃 守 池間 陽子 坂井 真 新川 敦 小林 良弘 佐藤 むつみ 山崎 充代 藤井 一省 福里 博 寺田 多恵 小川 裕 加賀 達美 渡辺 行雄 中川 肇 島 岳彦 齋藤 等 森 繁人 村上 嘉彦 久松 建一 岩田 重信 井畑 克朗 坂倉 康夫 鵜飼 幸太郎 竹内 万彦 増田 佐和子 村上 泰 竹中 洋 松永 喬 上田 隆志 天津 睦郎 石田 春彦 生駒 尚秋 鈴木 健男 涌谷 忠雄 宮國 泰明 夜陣 紘治 森 直樹 田頭 宣治 宮脇 浩紀 青木 正則 小林 優子 高橋 正紘 沖中 芳彦 遠藤 史郎 池田 卓生 関谷 透 奥園 達也 進 武幹 前山 忠嗣 恒冨 今日子 増山 敬祐 浅井 栄敏 土生 健二郎 中崎 孝志 吹上 忠祐 角田 憲昭 渡辺 隆 野口 聡 隈上 秀伯 吉見 龍一郎 茂木 五郎 鈴木 正志 大橋 和史
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.633-658, 1996-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
21

通年性アレルギー性鼻炎患者211例を対象に, KW-467910mg/日 (KW群) の有効性, 安全性および有用性をoxatomide 60mg/日 (OX群) を対照薬として多施設二重盲検群間比較試験により検討した.最終全般改善度の「改善」以上は, KW群61-6%, OX群57.6%で, 両群間に有意差は認められなかつたが, 同等性の検証を行った結果, KW群はOX群と比較して同等ないしそれ以上と考えられた. 概括安全度の「安全性に問題なし」と評価された症例は, KW群68.0%, OX群61.4%で, 両群間に有意差は認められなかった. 主な副作用症状は両群とも眠気であった. 有用度の「有用」以上は, KW群54.9%, OX群50.5%であり両群間に有意差はなかったが, KW群の方がやや有用率が高かった.以上の成績より, KW-4679は通年性アレルギー性鼻炎に対して, 臨床的に有用性の高い薬剤であると考えられた.
著者
今井 美紗子 髙木 伸浩 吉﨑 麻友子 細貝 恵深 小林 ゆかり
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.1-6, 2019-02-25 (Released:2019-02-28)
参考文献数
10
被引用文献数
3

LC-MS/MSによる農産物中のフルフェナセットおよびその代謝物である[(4-フルオロフェニル)(1-メチルエチル)アミノ]オキソ酢酸ならびに [N-(4-フルオロフェニル)-N-(1-メチルエチル)アセトアミド]-2-スルフィニル酢酸の同時分析法を検討した.試料の抽出にはメタノールを用い,Bond Elut C18およびInertSep GC/PSAで精製しLC-MS/MSを用いて測定した.本法による小麦,大豆,ばれいしょおよびトマトを用いた添加回収試験(添加濃度;残留基準値濃度および0.01 μg/g)では,各化合物の平均回収率は70.6~97.0%,相対標準偏差は5%未満と良好な結果が得られた.また,0.01 μg/g添加試料の試験溶液における各化合物のピークのS/N比は25以上あり,この濃度を定量下限として設定することが可能であった.
著者
荻生 俊昭 セケルバイエフ アレキサンドル 青木 芳朗 小林 定喜 久住 静代 稲葉 次郎 ベレジーナ マリーナ ケンジーナ グルマーラ ルカシェンコ セルゲィ ベレジン セルゲィ ジョタバエフ ジェニス
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.266, 2008

セミパラチンスク旧核実験場では、1949年~1989年に約450回の核実験が行われ、周辺住民は1962年までの約120回の大気圏内核実験により複数回の低線量放射線の外部と内部からの複合被ばくをした。協会では2001年以来、カザフスタンの放射線影響調査防護センター、国立原子力センター等の協力を得てこれらの住民の疫学調査を行ってきた。調査では放射能雲の通過した地域の住民(被ばく調査集団)と対照地域の住民(対照調査集団)について、公文書保管所や住民登録所等での書類調査、住民の聴取り調査等でデータを収集している。2008年7月末時点での調査対象者は約117,300人で、被ばく調査集団46,400人が含まれる。この集団で居住歴判明により線量計算が可能な者は約18,200人、うち生死判明者は約14,800人(生存者:7,000人、死亡者:7,800人)であった。対照調査集団は設定後の日が浅いので今回の解析には用いなかった。死因としては循環器系疾患が全死因の42%で、虚血性心疾患、脳血管疾患が多かった。新生物は全死因の21%で、食道、胃の悪性新生物が多かった。ロシア連邦保健省の計算式により被ばく線量を計算し、被ばく線量と死因(ICD-10分類)に基づいて被ばく集団の内部比較でリスク比を計算した。男性では新生物も循環器系疾患も線量に応じた有意な増加はなかった。女性では高線量群で新生物による死亡リスクは有意に増加した。性別、年齢、被ばく線量、民族に関するロジスティック解析では、循環器系疾患のリスクはいずれでも有意の差が見られたが、新生物では性別、年齢、民族でのみ差が見られた。本調査はまだ調査開始後の期間が短いことから、今後、対象者を増やすとともに、各種指標の信頼性・妥当性、交絡因子やバイアスの検証が必要である。(この調査は平成19年度エネルギー対策特別会計委託事業「原子力発電施設等放射線業務従事者等に係る疫学的調査」の一部である)。
著者
木原 令夫 足立 哲也 小林 秀子 小関 隆 姫野 友美 牧野 荘平
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.1114-1122, 1997
参考文献数
17

八丈島住民のうち坂下地区 (三根, 大賀郷) および坂上地区 (樫立, 末吉, 中之郷) における15歳以上の7946名を対象としてスギ花粉症のアンケート調査を行ったところ回収率は21.3%であり, 春先 (2月末から3月下旬) に鼻症状3項目以上と眼症状2項目とを同時に有する例は坂下地区で1.8%, 坂上地区で0.3%であり, 八丈島住民のうち1.5%にスギ花粉症を疑わせる例が見出された。有症状例に行ったスクラッチテストで9.2%の例がスギ抗原陽性であり, IgE RAST score 2以上の例は12.1%であった。平成4年2月11日から3月31日までの最高スギ花粉飛散数は坂下地区で3月6日に74個/cm^2であり, 坂下地区では同日の127個/cm^2であった。東京から290kmも離れた大海の孤島である八丈島においても, わずかではあるがスギ花粉症の存在が認められた。
著者
今里 雅之 林 恒男 田中 精一 上田 哲哉 竹田 秀一 山本 清孝 武藤 康悦 磯部 義憲 上野 恵子 山本 雅一 小林 誠一郎 羽生 富士夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.80-84, 1990-01-01
被引用文献数
5

症例は50歳男性で,主訴は心窩部痛である.胃潰瘍の診断とともに,超音波検査で肝右葉に蜂巣状内部構造を有する比較的境界鮮明な直径7cmの腫瘤を認めた.Computed tomography(CT)では腫瘤は低吸収域で造影後には菊花状で各花弁にあたる部位の辺縁が濃染される特異な像を呈した.腹部血管造影では,腫瘍血管や圧排所見はないが毛細管相で腫瘍濃染像を認めた.腫瘍マーカーは正常であった.腫瘍の穿刺吸収細胞診では,白色の濃汁の中に線維性組織が吸引されたが炎症性変化のみで悪性所見は認めないため厳重な経過観察とした.2年後,画像的に腫瘤の増大が認められ,悪性腫瘍が否定できないために拡大肝右葉切除術を施行した.病理学的にinflammatory pseudotumorと診断された.肝原発の本疾患は文献上17例の報告しかなく,経過を追い増大を認めた症例はいまだ報告されていない.ここに文献的考察を加え報告する.
著者
小林 義郎
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.100, no.8, pp.779-791, 1980-08-25 (Released:2008-05-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

Studies on organic fluorine compounds in our laboratory are summarized. New methods for the synthesis of fluorine compound are as follows ; 1) fluorination of alcohols with fluorophosphoranes, 2) trifluoromethylation of aromatic and aliphatic halides with trifluoromethyl halides and copper powder, and 3) cycloaddition reaction with novel fluorine reagents like hexafluorobutyne. Reactions of trifluoromethyl aromatic compounds were investigated thoroughly, and some interesting characters of fluorine compounds were revealed. Trifluoromethylated valence bond isomers of aromatic compounds were synthesized, and some novel reactions of these highly strained compounds were shown. The characteristics that a fluorine atom is a small substituent and that a carbon-fluorine bond is very strong were used to study the metabolism of vitamin D3. Some interesting reactions by use of fluorine compounds as synthetic reagents are also discussed.