著者
山本(前田) 万里
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
生物物理化学 (ISSN:00319082)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.37-40, 2009 (Released:2009-12-04)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

O-Methylated (−)-epigallocatechin gallates (EGCGs) have an anti-allergic action, and the Japanese tea cultivar ‘Benifuuki’ is rich in EGCG3''Me, which is lost due to processing in black tea. Oral administration of O-methylated EGCGs significantly and dose-dependently inhibited type I allergic reactions in mice. O-methylated EGCGs also strongly inhibited mast cell activation through the prevention of tyrosine phosphorylation of cellular protein and high-affinity IgE receptor expression, as well as histamine/leukotriene release. Over a one-month period, drinking ‘Benifuuki’ green tea was useful to reduce some of the symptoms of Japanese cedar pollinosis, and did not affect any normal immune response in subjects with seasonal rhinitis. The AUC (area under the drug concentration time curve) of EGCG3''Me was 6.4 times that of EGCG in healthy human volunteers. Furthermore, many foods and household goods used ‘Benifuuki’ green tea were developed and sold by several manufacturers.
著者
東泉 裕子 水島 諒子 小板谷 典子 黒谷 佳代 西平 順 山本(前田) 万里 瀧本 秀美
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.368-382, 2022-05-15 (Released:2022-05-24)
参考文献数
56

目的 ストレス,メンタルヘルス,睡眠,疲労に関わる軽度な不調(軽度不調)は,それぞれが密接な関係にあるとともに,それらの悪化が生活習慣病等を惹起することが報告されている。客観的な健康指標との関係性が明らかな軽度不調を明らかにすることで,質問票による健康状態の予測が可能になると考えられる。とくに,日常的にストレスを感じる者の割合の高い日本人を対象とした疫学文献を用い,軽度不調に関する質問票と健康指標との関連についてシステマティックレビューを行い,軽度不調の尺度開発に必要な調査票の項目の検討を行うこととした。方法 軽度不調に関する先行研究のキーワードを基に「自律神経系」,「睡眠障害」,「精神およびストレス」,「疲労」についてPubMedを用いて研究論文を検索した。抽出された研究論文は,以下の包含基準(日本人健常者集団を対象に含んでいる,対象集団の特徴について記載がある,研究デザインが分析疫学研究,介入研究およびシステマティックレビューである,軽度不調を質問票で評価している,軽度不調と健康指標との関連を検証している,日本語または英語で書かれている)に沿ってスクリーニングし,10件を採択した。結果 採択論文10件中1件がコホート研究,3件が症例対照研究,6件が横断研究であり,研究対象者は成人期の労働者が5件と多かった。ストレスに関する質問票を用いた報告6件のうち3件で,睡眠に関する報告7件のうち4件で,包括的な健康状態に関する報告2件のうち2件で,それぞれの軽度不調と健康指標との間に統計学的に有意な関連が報告されていた。調査票による仕事に関連するストレス反応の増加は,健康指標の「うつ病発症リスク(オッズ比2.96(信頼区間:1.04-8.42))」の増加と関連していた。また,睡眠の質の低下は「自律神経指標の変化」,「併存疾患の数およびうつ病の比率」および「労働時の傷害のリスク」の増加と関連していた。加えて,健康度スコアは「自律神経指標」との関連が認められた。結論 これらの結果から,軽度不調の評価に必要な質問票には「ストレス」,「睡眠の質」,「包括的な健康状態」に関する質問が必要であることが示唆された。一方,バイアスリスクに適切に対処した研究が限られていることから,今後,コホート研究や介入研究において,本研究で整理した質問票と健康指標との関連について,前向きに検討する必要がある。
著者
山本 (前田) 万里 永井 寛 江間 かおり 神田 えみ 岡田 典久 安江 正明
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.584-593, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
31
被引用文献数
8 9

A double-blind clinical study was carried out on subjects with Japanese cedar pollinosis for the evaluation of the effects and safety of ‘Benifuuki’ green tea, which contains epigallocatechin-3-O-(3-O-methyl)-gallate (O-methylated catechin), and a combination of ‘Benifuuki’ green tea and ginger extract, with ‘Yabukita’ green tea as a placebo. First, the effect of the combination of ‘Benifuuki’ green tea and various vegetable extracts on cytokine production inhibition was investigated using mast cells ; the simultaneous use of ‘Benifuuki’ green tea and ginger extract was found to suppress cytokine (TNF-α or MIPI-α) production to a remarkable extent. Subjects were given 1.5 g of ‘Benifuuki’ green tea, ‘Benifuuki’ green tea containing 30 mg of ginger extract, or ‘Yabukita’ green tea with water twice every day for 13 weeks. As cedar pollen scattering increased, the severity of pollinosis symptoms among the groups was observed to increase in the following order : placebo group>’Benifuuki’ group>’Benifuuki’ and ginger group. Eleven weeks after the beginning of treatment, during the most severe cedar pollen scattering period, symptoms of runny nose and itchy eyes were significantly relieved among the ‘Benifuuki’ group compared with the placebo group (p<0.05). In the ‘Benifuuki’ and ginger group, runny nose, itchy eyes and nose symptom scores were significantly reduced at the eleventh week, and nasal congestion, sore throat and nose symptom medication scores were significantly reduced at the thirteenth week compared with the placebo group. Among all test groups, hematological examination, general biochemical examination, determination of total IgG, CMV antibody titer, and serum iron content, and interviews throughout the intake period found no changes related to clinical problems. These results suggest that intake of ‘Benifuuki’ green tea over one month is useful in reducing some of the symptoms of Japanese cedar pollinosis, and did not affect normal immune response in subjects with Japanese cedar-pollinosis. It was also found that the addition of ginger extract enhanced the effect of ‘Benifuuki’ green tea.
著者
山本(前田) 万里 廣澤 孝保 三原 洋一 倉貫 早智 中村 丁次 川本 伸一 大谷 敏郎 田中 俊一 大橋 靖雄
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.23-33, 2017-01-15 (Released:2017-01-24)
参考文献数
26
被引用文献数
3 2

内臓脂肪を減少させメタボリックシンドローム(MetS)を予防する食品は有用であり,MetS改善作用の評価は,農産物単品にとどまってきたため,日常消費される組み合わせ食品としての有用性の検証が必要である.肥満傾向を有する健常な成人の昼食に,機能性農産物を組み合わせた機能性弁当を継続摂取させ,機能性農産物を使用していないプラセボ弁当を摂取した場合と比較して,腹部内臓脂肪の減少効果について検証した.BMIが25以上30未満および内臓脂肪面積が100cm2以上の肥満傾向を有する健常な成人を対象に,ランダム化プラセボ対照試験を行った.被験食品は,機能性農産物を使用した「おかず」,「べにふうき緑茶」および「米飯」(50%大麦ご飯および玄米),プラセボ対照食品は,機能性農産物を使用しない「おかず」,「茶」(麦茶)および「米飯」(白飯)であり,3因子の多因子要因1/2実施デザインを採用して,試験群は機能性の「おかず」「茶」「米飯」それぞれ1要素のみ被験食品とする3群とすべての機能性要素で構成される被験食品1群の計4群とした.平日の昼食時に12週間摂取した.主要評価項目は,内臓脂肪面積,副次評価項目は,ヘモグロビンA1c (HbA1c),グリコアルブミン,1,5-AG(アンヒドログルシトール)などとした.159名が登録され中途脱落はなかった.全期間の80%以上の日で弁当の配布を受けたPPS (Pre Protocol Set)解析対象者は137名であった.試験に入ることによる効果はPPSで-8.98cm2と臨床的にも統計的にも有意であった(p=0.017)).主要評価項目のサブグループ解析の結果,試験開始時の内臓脂肪面積が中央値100∼127cm2の被験者で,被験米飯の効果はPPS で平均-7.9cm2であり,p値は0.053とほぼ有意であった.被験米飯については女性でも有意な(平均値-14.9cm2,p=0.012)減少効果が観察された.副次評価項目では,1,5-AG に関してべにふうき緑茶の飲用で有意差が認められた.また,安全性に関して特筆すべき問題は生じなかった.食生活全体の変化と機能性農産物を使用した機能性弁当の連続摂取により,内臓脂肪面積の低減効果等の可能性が示唆された.
著者
井上 紗奈 本田 秀仁 森 数馬 山本(前田) 万里 椎名 武夫 曲山 幸生 永井 成美 和田 有史
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.7-25, 2018-03-01 (Released:2018-09-01)
参考文献数
41
被引用文献数
1

A new functional food-labeling system was implemented in 2015. Food products with new functional information are expected to increase along the increase of health awareness in Japan. However, it is difficult for ordinal consumers to understand each functional component of food. When descriptions on food include scientific information,people often misunderstand or excessively expect about a new function. This research investigated how understanding the information of foods was correlated with individual’s cognitive traits conducting a web-based survey using a fictional news report based on real research to two groups, ordinal consumers group and specific occupations group that supposed to have high recognition degree of new functional food-labeling system. We also used three cognitive indices, the cognitive reflection test, numeracy and graph literacy, to investigate the influence of cognitive traits on reading comprehension and interpretation. The results revealed that graph literacy was correlated with understanding and that the other two indices were correlated with psychological factors of interpretation though there was no group difference.
著者
桂樹 哲雄 森 翔太郎 十一 浩典 石川(高野) 祐子 小林 暁雄 伊藤 研悟 山本(前田) 万里 川村 隆浩
出版者
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
農研機構研究報告 (ISSN:24349895)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.13, pp.47-61, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
15

農研機構では,2012-2015 年度に実施した機能性農林水産物・食品開発プロジェクトの成果物を元に,農林水産物が持つ機能性成分について文献情報と共に整理し,「機能性成分・評価情報データベース」として2018 年より公開している.一方,2019 年から,農研機構は島津製作所と共同で「食品機能性成分解析共同研究ラボ(NARO 島津ラボ)」を設置し,機能性農林水産物に関する様々な分析を実施してきた.また,農研機構内には戦略的イノベーション創造プログラム第2 期「スマートバイオ産業・農業基盤技術」(SIP2)の分析データも存在する.このたび農研機構では,機構内で得られた食品機能性成分データを一か所に集める狙いから,「機能性成分・評価情報データベース」,「NARO 島津ラボ」のデータ,SIP2 の成果等を集約し,「農研機構食品機能性成分統合データベース」を開発した.収録するデータには,公開情報だけでなく閲覧者を制限すべきクローズドデータが含まれるため,柔軟なユーザ認証機能を導入し,適切なアクセス管理を行えるようにした点に特徴がある.本データベースでは,データの属性に応じて検索結果をグループ化して表示するファセット検索機能やグラフ表示機能などを実装した.
著者
山本(前田) 万里 奥田 祐 大菅 武 物部 真奈美
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.586-591, 2014-12-15 (Released:2015-01-31)
参考文献数
33

茶葉中の健康機能性成分であるメチル化カテキン,エピガロカテキン(EGC),テアニンを給茶機RICH+®を用いて短時間で自動抽出する条件を検討した.最適抽出条件と飲用カップ1杯(120 mL)当たりの最大抽出量は次のとおりであった.茶葉中にメチル化カテキンを1.7 %含有する「べにふうき」緑茶1.9 gを94°C20秒間攪拌抽出することによって19 mgのメチル化カテキンが抽出された.EGC/EGCG含有比1の「ゆたかみどり」緑茶1.5 gを10°C30秒間攪拌抽出することによってEGC/EGCG含有比2.5のEGC 39 mgが抽出された.テアニンを1.4 %含有する「さえみどり」緑茶1.7 gを65°C20秒間攪拌抽出することによってテアニン20 mgが抽出された.メチル化カテキン,EGCに関しては,健康機能性が期待される1日必要成分量のおよそ 1/2量であった.
著者
山本(前田) 万里
出版者
ファンクショナルフード学会
雑誌
Functional Food Research (ISSN:24323357)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.FFR2020_p11-20, 2020-08-11 (Released:2020-09-10)
参考文献数
19

2015 年に施行された機能性表示食品制度は,生鮮食品も対象となった届け出制で「身体の特定の部位の表現」や「主観的な指標による評価」が認められた.2020 年3 月16 日現在2,801 品目あり,そのうち生鮮食品では,みかん(機能性関与成分はβ-クリプトキサンチン;骨の健康の維持),大豆もやし(イソフラボン;骨の健康の維持),リンゴ(プロシアニジン;体脂肪低減),メロン,ブドウ,バナナ(γ- アミノ酪酸<GABA >;高めの血圧低下,記憶力の維持),カンパチ,ぶり,卵(DHA/EPA;血中脂質低減),米,トマト,ケール(GABA,ルテイン;目の健康の維持),ホウレンソウ(ルテイン),唐辛子(ルテオリン;血糖上昇抑制),メロン(GABA;精神的ストレス緩和),鶏胸肉,豚肉(イミダゾールジペプチド;ストレス緩和)など62 品目が,また,単一の農林水産物のみが原材料である加工食品では,緑茶(メチル化カテキン;ハウスダストによる目や鼻の不快感軽減),冷凍ホウレンソウ,蒸し大豆,大麦,無洗米,みかんジュース,数の子,寒天などが届け出・受理された.2019 年3 月にガイドラインの修正が行われた.生鮮食品に関わる主な修正点は次のとおりである.生鮮食品について,機能性が報告されている一日当たりの機能性成分の摂取量の一部(50% 以上)を摂取できると表示可能になったこと,届け出確認の迅速化,軽症者データの取り扱い範囲の拡大,専ら医薬品として使用される原材料を元から含む生鮮食品や加工品について届け出しようとする食品の機能性関与成分が「専ら医薬品リスト」に含まれる場合の消費者庁における確認過程の明確化(医薬品に該当しなければ上記リストに記載されていても機能性表示食品として届け出可能<成分例:デオキシノジリマイシン,γ- オリザノール>),届け出対象成分の拡大など.今後の生鮮食品開発では,機能性関与成分のばらつきに対する栽培・加工的制御技術開発,農産物の全数検査システムの開発,複合的な作用の検証方法,消費者が「食による予防,医食同源」の考え方を身につけて機能性食品を適正に喫食するための教育と消費者への正しい情報発信などの課題がある.
著者
堀江 秀樹 山本(前田) 万里 氏原 ともみ 木幡 勝則
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.94, pp.60-64, 2002-12-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
9
被引用文献数
14 15

緑茶のカテキン類,ストリクチニン,カフェインを分析するための抽出法について検討した。2%リン酸水溶液で茶粉末を分散後,エタノールを等量添加して抽出する方法により最も高い抽出率が得られた。
著者
物部 真奈美 江間 かおり 徳田 佳子 山本(前田) 万里
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.113, pp.113_71-113_76, 2012-06-30 (Released:2015-10-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

Catechins, one of the main components in green tea extract, have antioxidative activity and immunomodulating activities, and play an important role in reducing the risk of disease. The most abundant catechins in a green tea extract are epigallocatechin gallate (EGCG) and epigallocatechin (EGC), and the EGCG/EGC ratio in a green tea extract was affected by the extraction temperature. We found that the cold water extract or the catechin mixture with a high EGC ratio induced greater immunoglobulin A (IgA) production by murine Peyer's patch (PP) cells. Here, we investigated the effect of cold water extract of green tea on salivaly sIgA levels in habitual green tea (hot water extract) drinker.
著者
物部 真奈美 池田 麻衣 江間 かおり 徳田 佳子 山本(前田) 万里
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.114, pp.114_29-114_36, 2012-12-31 (Released:2015-10-30)
参考文献数
10

緑茶冷水(4℃)浸出液を飲用することによる粘膜免疫系の活性効果は,マクロファージの活性上昇と正の相関が認められている。そこで,本報では,マクロファージ様細胞の貪食能を指標に,緑茶冷水浸出液による自然免疫系の活性化について,茶期及び品種による違いを調べた。その結果,緑茶冷水浸出液のEGC/EGCGが約2を超えていることが必要条件であり,かつEGC量が十分量含まれていれば,茶品種・年度に関わらず活性を得られることが示唆された。さらに,茶期が進むに従いカテキン含量が上昇するため,茶期の進んだ茶葉を利用すると効率良く成分を得ることが可能である。また,品種によっても茶葉中EGC含量に違いがあり,本報告の環境条件下で調べた茶品種の中では「ゆたかみどり」が全ての茶期でEGC含量比が高く,効率良く高EGC浸出液を得られる品種であった。
著者
稲垣 宏之 杉谷 政則 瀬戸口 裕子 伊藤 良一 織谷 幸太 西村 栄作 佐藤 進 加藤 正俊 齋 政彦 山本(前田) 万里 亀井 優徳
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.403-411, 2009-07-15 (Released:2009-09-01)
参考文献数
17
被引用文献数
6 6

エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル)ガレート(EGCG3″Me)を始めとするメチル化カテキンを含有する茶品種「べにふうき」と,国内流通量の大半を占め,かつメチル化カテキンを含まない茶品種「やぶきた」の抗肥満効果を比較検討した.12週齢のC57BL/6J雄性マウス(n=10/群)に低脂肪飼料,高脂肪飼料,高脂肪飼料に2%「べにふうき」茶葉または2%「やぶきた」茶葉を添加した飼料を与えて5週間飼育した.2%「べにふうき」茶葉高脂肪飼料を摂取した群は,高脂肪対照群に対し,体重,皮下および内臓脂肪組織重量,血中レプチン濃度が有意に低減した.一方,2%「やぶきた」茶葉高脂肪飼料を摂取した群では有意な抗肥満効果は皮下脂肪組織重量のみで観察され,相対的に抗肥満効果が弱かった.また工業的利用性の高い「べにふうき」熱水抽出エキスを1日1回体重1kg当りのカテキン総量として100mg,50mgおよび25mgを強制経口投与した結果,用量依存的な抗肥満効果が認められた.以上の結果より,「べにふうき」は「やぶきた」よりも強い抗肥満効果を示し,その効果は用量依存的であることが明らかにされた.また,「べにふうき」の強い抗肥満効果は,EGCGよりも吸収性および血中滞留性に優れたEGCG3″Meを始めとするメチル化カテキンが特異的に含まれているためと考えられた.
著者
山本(前田) 万里
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.53-60, 2006 (Released:2006-06-29)
参考文献数
24
被引用文献数
1

茶に含まれている主要カテキン,エピガロカテキンガレートの 2 倍強の抗アレルギー活性を持つメチル化カテキン(エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル)ガレート)を「べにふうき」(1993 年野菜茶業研究所枕崎育成)などの特有の茶品種に見いだした.「べにふうき」茶葉中のメチル化カテキンは,発酵(紅茶製造)で消失し,下位葉に多く含まれ,本州では 2 番茶,3 番茶で含量が高まることを明らかにした.「べにふうき」は,輪斑病,炭疽病に抵抗性があり,樹勢が強く非常に多収な香りの良い品種である.メチル化カテキンの作用機作は,初期アレルギーで重要なマスト細胞内の情報伝達系抑制(チロシンキナーゼ活性化抑制,高親和性 IgE 受容体発現抑制,ミオシン軽鎖リン酸化抑制)による脱顆粒抑制であり,「べにふうき」緑茶は,ヒトボランティア試験でスギ花粉症,通年性アレルギーの症状を軽減した.それを受け,食品メーカーと共同で「べにふうき」緑茶容器詰め飲料及び菓子を開発した.