著者
山本 秀幸
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.125, no.3, pp.129-135, 2005 (Released:2005-04-26)
参考文献数
36

インスリンシグナルの主要な生理機能の一つとして,グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)活性の抑制が挙げられる.脳内でのインスリンシグナルの低下は,GSK3の活性を増加させ,神経細胞死を引き起こすことが明らかになってきた.アルツハイマー病で認められる老人斑と神経原線維変化の形成にGSK3が関与していることも示唆されている.また,GSK3の酵素反応の特徴の一つとして他のプロテインキナーゼでリン酸化されたタンパク質をリン酸化しやすいことが挙げられる.すなわち,活性型のGSK3の増加は,他のシグナル系と相互作用して,神経細胞を障害させる可能性がある.カルシウムシグナルにより活性化されるカルシウム,カルモデュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMキナーゼII)とGSK3の共通の基質タンパク質としてタウが知られている.両酵素によるタウのリン酸化が,神経原線維変化形成に関与していることが明らかになってきた.また,GSK3がWntシグナルにも関与していることから,GSK3阻害薬の有害作用も検討が必要になっている.
著者
秋久保 一馬 山本 達 湯川 龍 ダンジェロ マリー 松田 巌
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学学術講演会要旨集
巻号頁・発行日
vol.34, 2014

SrTiO3(STO)は3.2eVの大きさのバンドギャップを持つ遷移金属酸化物半導体である。2次元電子ガスや超伝導など様々な物性が現れ、また金属/STO界面は光触媒などの実用的な観点からも詳細な研究が進められている。本研究では、X線光電子分光を用いて金属/STO界面の電子状態を調べた。金属吸着前後でバンド曲がりの様子が変化した。バンド構造の変化のメカニズムについて述べる。
著者
瀧上 唯夫 秋山 裕喜 朝比奈 峰之 山本 克也
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.84, no.861, pp.17-00531-17-00531, 2018 (Released:2018-05-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1

It is one of the important issues to investigate the vibration behavior of railway bogies, since the vibration of the bogies may result in loosening bolts which fix the parts to the bogie frames or/and fatigue fracture of the parts themselves. A technique for predicting the vibration of bogie parts is proposed by which the acceleration power spectral densities (PSDs) at evaluated points are predicted with the use of frequency response functions (FRFs) between the axle boxes and the evaluated points, together with the use of measured accelerations of axle boxes. Stationary excitation tests are conducted to identify the FRFs, and the axle boxes or rails were hit with impulse hammers to excite the bogies. Alternatively, the new approach without the stationary tests is also proposed in this study. In this case, the FRFs are identified with the accelerations acquired in the preliminary running tests in car depots. The proposed technique is applied to the vibration prediction of the bogies for several types of railway vehicles including electric cars and a diesel car, and the differences or ratio between the predicted and actually measured PSDs are evaluated. It is confirmed that the preliminary running tests are preferable to stationary excitation tests for improving the prediction accuracy. It is also verified that the prediction error can be reduced in the case where not only the vertical but the lateral and longitudinal accelerations of axle boxes are considered as the excitation inputs under the conditions that the principal component regression is applied to identify the FRFs.
著者
トゥーッカ トイボネン 山本 耕平 訳
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.102-110, 2014

社会起業および社会イノベーションという概念は、この20年間で、新たな実践と研究の領域を切り開いてきた。しかし、社会起業家の社会イノベーションの事例などについては研究が蓄積されてきた一方で、起業家の恊働については十分な研究がなされていない。そこで本稿では、この側面をより体系的に探究するための、柔軟な枠組みを構築することを目指す。社会起業という領域における恊働は、いわゆる社会イノベーション・コミュニティー-恊働を可能にする物理的環境およびインターネット環境に加えて、社会起業の文化によって動かされる混合体-という文脈で展開されるようになっている。いまやこうしたコミュニティーは世界中で生まれているが、これはさらに、当初の恊働関係を超えてより広範な社会イノベーションの「回路をつなぎ換える」ような、恊働体(collaborative community)と見なせるだろう。社会イノベーション・コミュニティーは、多様な参与者を取り込み、学習と創造能力の向上を促進することで、創意にあふれ、かつ持続可能な経済への転換を触発するようになっている。こうしたコミュニティーや、それがもたらすイノベーションのプロセスおよび影響にかんするさらなる研究においては、社会ネットワーク分析、社会関係資本の理論、エスノグラフィーといった多様なアプローチが実り多い成果を生むと思われる。
著者
山本 喜三郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.268-275, 1976-08-01 (Released:2017-08-01)

We psychosomatists are sometimes confronted with extremly difficult cases that are often given up by the attending physicians because of the patients' pertinacious somatic complaints and their lack in co-operative attitude. In this paper the author reported on the treatment of two such patients, the result of which, contrary to the initial anticipation, turned to be very satisfactory. This treatment consisted of simultaneous psychotherapeutic approach to the doctor and the patient. Case 1. was a 46-year old single laboror. His complaints were palpitation and fatiguability. Case 2. a 34-year old male clerk. His complaints were diarrhea and fatiguability.Throughout consultation on the treatment of these cases, the author took sympathetic and supportive attitude toward the attending physicians in order to restor their subjectivity which was a vital necessity in a therapist. Only after this, some concrete advice on the treatment was presented to the physicians in concise and concrete terms. At the same time, the author promised the doctors to take over their cases in the out-patient clinic after their discharge.After the discussion, doctors fully encourged, went on to carry out the concrete treatment. Other staffs became spontaneously co-operative. After this, the confused therapeutic atmospher gradually disappeared and the patient's attitude as well as pertinacious complaints were slowly improved.In the author's opinion, consideration over the doctor-patient relationship is sometimes necessary in troublesome patients, and in fact, psychotherapeutic approaches to the attending psysician as well as to the patient were very effective.

1 0 0 0 OA 古今類句

著者
山本, 春正
出版者
巻号頁・発行日
vol.[12], 1666
著者
岡本 英生 森 丈弓 阿部 恒之 斉藤 豊治 山本 雅昭 松原 英世 平山 真理 小松 美紀 松木 太郎
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.84-93, 2014

大規模災害後の被災地では,ドアや壁が壊れて外部から侵入しやすくなった建物や,人々が避難して無人になった家屋や店舗が多くなることなどから,便乗犯罪が発生しやすい.また,災害によるダメージからの回復が遅れればそれだけ犯罪を誘発する要因が解消されず,犯罪は発生し続けることになる.逆に言えぼ,災害被害からの復旧・復興が速やかに進めば,犯罪発生は抑制されることになる.災害の被害が大きいほど,また災害被害からの回復が遅いほど犯罪が発生しやすいということは,阪神淡路大震災(1995年1月発生)のあとの被災地住民を対象とした調査では示されている.そこで,本研究では,地理的条件などが異なる東日本大震災(2011年3月発生)でも同様なことが言えるかどうかを調べた.東日本大震災のあとの被災地(宮城県及び福島県)の住民(n=1030)を対象にインターネット調査を実施し,ロジスティック回帰分析により検討したところ,震災被害が大きいと,また震災被害からの回復が遅いほど,「自転車・オートバイ盗」や「住宅への空き巣」が発生しやすいことなど,阪神淡路大震災後の調査と同様な傾向が確認できた.

1 0 0 0 OA 葉隠

著者
山本常朝 述
出版者
丁酉社
巻号頁・発行日
1906
著者
西本 勝太郎 山本 憲嗣 塚崎 直子
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.348-351, 1989-04-01 (Released:2012-03-03)
参考文献数
4

副腎皮質ステロイド外用療法時における, 湿疹·皮膚炎病巣部のブドウ球菌数を, ガラス管, 小ブラシを用いた洗浄法によつて測定し, その変動を二薬剤(Difluprednate軟膏およびBetamethasone-17-valerate 0.1% Gentamicin軟膏)について比較した。結果は, 1) 病巣のブドウ球菌数は症状の改善度と並行して減少し, 皮疹が治療した状態では, ごくわずかの菌しか検出されない。 2) 病巣部のブドウ球菌数は, 外用剤に含まれる抗生剤よりはむしろ皮疹の湿潤度, いいかえれば外用ステロイドの治療効果に強く影響された。 以上より, 明らかな感染のない湿疹·皮膚炎病巣に対しては, 充分な強さの外用ステロイド剤の使用のみで良いことを確認した。
著者
木庭 守 山本 紀之 橋本 佳幸 三宅 秀和 増田 啓年
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.89-97, 1986
被引用文献数
3

関節内投与ステロイド剤THS-201(halopredone diacetate)の抗炎症作用活性を急性,亜急性および慢性炎症モデル動物で検討した.対照としたtriamcinolone acetonide(TA),methylprednisolone acetate(MPA),hydrocortisone acetate(HA)およびTHS-201の母化合物であるhalopredone(HP)は,急性炎症モデルであるラットのcarrageenin足浮腫,CMC pouch法による白血球遊走,亜急性炎症モデルである線球肉芽腫,carrageenin granuloma pouch法による滲出液の貯溜を,皮下・局所投与によってほぼ一定の傾向の活性比で抑制した(TA>MPA>HA=HP).THS-201は皮下投与では100 mg/kg/dayでも全く抑制作用を示さなかったが,局所投与では急性モデルでは弱い(HA>THS-201),亜急性モデルでは強い(TA≥THS-201>MPA),作用時間依存性の抗炎症作用を示した.慢性モデルのウサギの抗原惹起型関節炎では,THS-201のみが2mg/jointの関節内投与により著明な関節腫脹抑制作用を示し,有意な抑制は30日以上持続した.これらの成績および関節炎ウサギにおけるTHS-201の残存量の成績は,THS-201が組織貯溜性が高く全身循環への移行速度が極めて遅いために,対照薬が投与局所から消失し,炎症反応の開始または再燃が起った後も有効濃度が持続したことを示唆している.また,THS-201は局所および皮下のいずれの投与でも全く全身性の作用を示さなかったが,対照薬では抗炎症作用に比例した全身性の薬理作用が認められた.ステロイド剤のような活性の強い薬剤では関節内のような局所投与であっても全身性の副作用を伴うが,THS-201は投与関節の炎症のみを特異的にしかも持続的に抑制するものと考えられる.
著者
山本 恭子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.50, 2018 (Released:2018-05-22)

イザイホーは沖縄県久高島において12年に一度、行われてきた女性が神女に就任するための儀式である。そして神女は年間20以上行われる神行事を支える重要な役割を担ってきた。しかし、イザイホーを受けるものがいなくなり、1978年を最後に行われてない。現在イザイホーを受けた神女は最も若くても70才を越える。本研究ではイザイホーを受けた女性の生涯を振り返っての語りから、イザイホーが神女に与えたものについて考えた。
著者
金森 雅夫 鈴木 みずえ 山本 清美 神田 政宏 松井 由美 小嶋 永実 竹内 志保美 大城 一
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.659-664, 2001-09-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
17
被引用文献数
12 14

デイケアに通所する痴呆性老人のうち, 事前に動物の嗜好, 飼育体験, 動物のアレルギーを聞き, 本研究に関する本人と家族の同意・承諾を得られた7名 (男性2名, 女性5名: 年齢69~88歳, 平均年齢79.43歳 (±6.06) に対し動物介在療法 (Animal Assisted Therapy: AAT) を実施した. 期間は平成11年7月27日から10月12日までの隔週計6回, 場所は対象者が普段利用するデイケア施設にて行ない, 以下の結果を得た.(1) MMSの平均値を比較すると11.43 (±9.00) から12.29 (±9.69) と僅かに上昇した. コントロール群では10.20 (±7.04) から9.50 (±6.26) と僅かに低下が認められた.(2) N-ADLでは, 28.43 (±14.00) から29.57 (±14.47) とわずかに上昇したが, コントロール群では29.70 (±11.02) から28.95 (±10.92) とわずかに変化した.(3) Bhave-ADではAAT群の合計は11.14 (±4.85) から7.29 (±7.11) と有意な下降を示していた (p<0.05). コントロール群は5.45 (±3.27) から5.63 (±3.59) と僅かに上昇していた. AAT群は「D. 攻撃性」,「G. 不安および恐怖」,「全体評価 (介護負担)」において3カ月後は有意に下降していた (p<0.05).(4) 表情分析によるコミュニケーション行動評価では, AAT群は28.71 (±2.87) から28.14 (±3.76) とわずかに下降していたが, コントロール群では, 26.55 (±4.95) から25.35 (±5.58) と有意に下降していた(p<0.05). コントロール群では「うなずき」,「会話量」,「会話内容の適切性」,「接近行動」の4項目においてコントロール群が有意に下降していた (p<0.05).(5) 精神ストレス指標であるクロモグラニンA (CgA) の評価ではAAT群の平均値は0.327 (±0.043) から0.141 (±0.115) とt検定によりやや差のある傾向が認められた (p=0.084). コントロール群において平均値は0.316 (±0.145) から0.377 (±0.153) と有意ではないが, 僅かに上昇していた.本研究は, AATの評価手法を検討することを目的に既存の評価尺度とCgAの測定を用いた. 既存の評価方法を組み合わせることにより患者の変化の側面を捉える可能性が示唆された.
著者
山本 勇
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.301-308, 2000-05-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
47
被引用文献数
3 1
著者
山本 美紀 筒井 はる香
出版者
奈良学園大学
雑誌
奈良学園大学紀要 = Bulletin of Naragakuen University (ISSN:2188918X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.119-126, 2018-03-10

要旨明治時代後半以降、一部の人のものであった子供と教育への関心は、「こども博覧会」(1907(明治39)年5月4日~16日)をきっかけに、急速に高まりを見せる。博覧会に関わった出版社や新聞社は、子供を対象とした様々な雑誌を創刊したり、教育的イベントを企画したりし、「子供のための」取り組みは大正期に入ってさらに読者を獲得、広がっていく。本稿は、そのような社会的ムードの中で展開した、山田耕筰の童謡観について、山田自身の2つの著述「作曲者の言葉――童謡の作曲に就いて」(『詩と音楽』大正11年11月号ほか所収)、「歌謡曲作曲上より見たる詩のアクセント」(『詩と音楽』大正12年2月号所収)に基づき考察するものである。これらは、前者が概論だとするならば、後者は、実践編にあたる。著述の内容からわかる山田の童謡への姿勢と、そこから生み出された≪あかとんぼ≫の分析から明らかになるのは、「赤い鳥」運動の高い志を保ち芸術的童謡を模索する中で、日本語詩のアクセント論にたどり着き、西洋音楽理論を超えた日本語固有の拍節感から作品を生み出したことである。初期の学校教育と社会教育活動は重なる部分が多い。童謡における山田の活動は、全国各地の小学校で、文部省唱歌の代りに童謡をうたわせることが多くなった時代にあって、初期唱歌教育において目指された共通日本語教育への志向が、芸術家によって一定の見解をみた大きな成果の一つであった。