著者
湯浅 直樹 石川 達也 徳岡 健太郎 北川 泰久 高木 繁治
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.422-425, 2008 (Released:2008-06-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1

症例は17歳男性である.1歳1カ月の頃左上下肢麻痺が出現し,某大学病院へ搬送され原因不明の急性小児片麻痺と診断された.麻痺は約2週間で改善し,原因不明のまま以後再発なく経過していた.17歳になり頭部外傷で当院へ搬送された.頭部CT施行したところ,右放線冠~基底核にかけて陳旧性脳梗塞をみとめたため精査をおこなった.その結果,メチレンテトラヒドロ還元酵素(MTHFR)欠損(V/V型)による高ホモシステイン血症と診断された.MTHFR欠損は先天性アミノ酸代謝異常の新生児マススクリーニングで検出されないため,診断が遅れることがあり注意を要する.
著者
藤本 隆宏 延岡 健太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.43-55, 2006-06-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
30

企業間の競争力差の内実を根本から解明するためには,経営戦略論と技術・生産管理論の連携が望ましいが,現実には空隙が生じている.これを埋める一策として,「組織能力」概念を中核においた「長期継続的なデータ収集に基づく定量的・定性的実証分析」が有効だと論じる.例として,筆者らが20年以上続けてきた「自動車製品開発国際比較調査」を示し,組織能力の具体的中身や発生過程の動態を理解するには,長期間の測定や定点観測が不可欠だと主張する.継続は力である.
著者
中村 浩規 横山 晴子 矢口 武廣 鈴木 優司 徳岡 健太郎 渡邊 昌之 北川 泰久 山田 安彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.131, no.3, pp.445-452, 2011-03-01 (Released:2011-03-01)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

In this study, we investigated the effect of histamin H2 receptor antagonist (H2RA) or proton pump inhibitor (PPI) for the prevention of upper gastrointestinal lesions associated with low-dose aspirin. We carried out a retrospective study of 2811 patients who had been prescribed low-dose aspirin (Bayaspirin® 100 mg) for more than 30 days at Tokai University Hachioji Hospital from 2006 to 2008. We classified them into three groups: aspirin alone group (n=1103), aspirin with H2RA group (n=844) and aspirin with PPI group (n=864). Patients who developed upper gastrointestinal lesions were diagnosed with gastric ulcer, duodenal ulcer, gastritis or duodenitis by gastroscopy. We then compared the incidence of upper gastrointestinal lesions among the groups. The incidence in aspirin alone group, aspirin with H2RA group and aspirin with PPI group was 2.54%, 1.54% and 1.04%, respectively; that of aspirin with PPI group being significantly lower (p<0.05). Additively, the odds ratio (OR) of aspirin with H2RA group and aspirin with PPI group was 0.60 (95% confidence interval [95%CI]: 0.31-1.17) and 0.40 (95% CI: 0.19-0.86) as compared with aspirin alone group, respectively. The upper gastrointestinal lesions were developed within two years in all groups. Our results suggest that the combined administration of low-dose aspirin and PPI is effective for the prevention of upper gastrointestinal lesions associated with low-dose aspirin. Also, the pharmacists should be especially careful for upper gastrointestinal lesions development within two years after administration of low-dose aspirin, regardless of combined whether H2RA or PPI.
著者
永島 広紀 藤岡 健太郎 久米 朋宣 六反田 あゆみ
出版者
九州大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2019-10-07

本研究は、「演習林」を通じて学問領域を横断的に、かつ大学・部局をも横断的に、しかも最終的には、各「帝国大学」と「内/外地演習林」との関係史を考究することによって、大学と演習林」の史的な連環を繙く作業である。演習林は大学組織としては<準部局>的に存在し、また広大な敷地と研究・実習用標本、そして植林/伐採にまつわる現業部門をも有した重畳的な組織である。本研究は演習林のこうした組織的特性から、狭義の「大学史」では取り扱いづらい「大学史料アーカイヴ」「技術史/技術官僚論」「水環境と地域史」「山林生態学」「災害/災害予防学」という文理両系に跨る各領域を統合した、新たな研究の地平を開こうとするものである。
著者
北川 泰久 大熊 壮尚 徳岡 健太郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.8, pp.1907-1915, 2013-08-10 (Released:2014-08-10)
参考文献数
10

頭痛は日常診療の中で,最も多い神経症状である.近年,病態生理の解明と共に,片頭痛に対するトリプタンをはじめ,新しい治療法もいくつか出てきている.日本の頭痛医療は欧米に比べて,慢性頭痛に対する疾患としての重要性,専門的な治療の必要性がまだ十分に理解されていない.ここでは頭痛治療トピックスについて概説した.最近,日本神経学会・日本頭痛学会から発刊された慢性頭痛の診療ガイドライン2013を参照されたい.
著者
鈴木 優司 横山 晴子 添田 真司 徳岡 健太郎 渡邊 昌之 北川 泰久 山田 安彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
pp.13-00193, (Released:2014-01-18)
参考文献数
11

Low-dose aspirin-induced gastrointestinal lesions are becoming an important problem in clinical practice. In our investigation of such adverse effects, we obtained 4 important findings considered useful for physicians, as follows; 1) even when aspirin was given at a dose, the incidence rate of gastrointestinal lesions was higher than with other NSAIDs, 2) the odds ratios for gastrointestinal lesions induced by aspirin with a histamine H2 receptor antagonist and proton pump inhibitor were 0.6 and 0.4, respectively, as compared with aspirin alone, 3) it is difficult to administer aspirin, which exerts an antiplatelet effect, without inducing gastrointestinal lesions, and 4) these gastrointestinal lesions appears early, especially within 2 years after administration. We distributed a questionnaire to 41 physicians to confirm our findings, and compared high (n=20) and low (n=21) frequency aspirin prescription groups. The recognition rate of points 1 and 3 noted above in the high group was significantly elevated as compared to the low group, whereas there no significant difference in regard to the information in point 4 between the groups and the rate of recognition was low. Moreover, only 27% of the surveyed physicians were familiar with all 4 points. Prior to receiving this information, 17% of the physicians gave no related instructions their patients, which was reduced to 0% after receiving this information. Furthermore, 98% of those surveyed found the information to be useful. Our results suggest that these 4 points of information regarding potential adverse gastrointestinal effects of low-dose aspirin are useful for physicians.
著者
久保 龍哉 藤木 大地 吉岡 健太郎 高前田 伸也
雑誌
研究報告システム・アーキテクチャ(ARC) (ISSN:21888574)
巻号頁・発行日
vol.2023-ARC-254, no.18, pp.1-6, 2023-07-27

インメモリ計算は,メモリ上で直接計算を行う新しい計算方式であり,データインテンシブなアプリケーションの高速化技術として近年活発に研究されている.特に,短いアクセス時間と高い柔軟性を持つ SRAMは,インメモリ計算用のデバイスとして様々な回路技術が提案されている.しかしながら,In-SRAM 計算技術に応用できるような,柔軟な SRAM 回路設計ツールは存在せず,こうした回路の設計者は,膨大な時間を費やして回路の設計・評価を行っている.この課題を解決するために,我々はインメモリ計算のためのオープンソースなメモリコンパイラを検討する.これは,製造プロセスに応じて SRAM 回路を生成する,従来のメモリコンパイラとしての機能性を持ち合わせながら,インメモリ計算のための多様なメモリセルのタイプと,ペリフェラル部に配置される論理回路のカスタマイズ性を導入する.本稿が実現すれば,ユーザーは簡単な設計から高性能なインメモリ計算用の SRAM 回路を迅速に生成することができ,インメモリ計算技術の研究やシステム応用を効率化することができる.
著者
飯田 智哉 伊藤 和 岡村 直香 飯田 道夫 和田 吉生 安藤 なつ美 三浦 光舞 吉崎 秀夫 門脇 睦子 山崎 なな 長岡 健太郎
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.55-60, 2023 (Released:2023-02-17)
参考文献数
7

コロナ禍が終末期の在宅療養に与えた影響や遺族満足度などについて検討することを本活動の目的とした.当院で訪問診療を受けていた居宅終末期がん患者のうち,在宅で看取った100名の遺族を対象にアンケート調査を行い,コロナ禍が在宅療養に与えた影響,遺族満足度などについて検討した.回答率は72.0%で,52.8%の遺族が在宅療養の選択にコロナ禍が影響したと回答した.遺族満足度は98.6%であり,当院でコロナ禍に在宅療養を選択した終末期がん患者に対しても,高い遺族満足度が達成できていた.
著者
藤岡 健太郎 新谷 恭明 折田 悦郎 永島 広紀 陳 昊 井上 美香子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

帝国大学農科大学・農学部がどのように形成され、それぞれがどのように教育・研究活動を展開していたのかを解明することが本研究の目的であった。具体的な成果は以下の3点である。①学科・講座・附属施設の設置状況を中心とした帝国大学農学部の形成と展開の過程の解明。②4帝国大学農学部教官履歴データベースの作成と、それを用いた農学部教官人事の特徴の解明。③農学府附属演習林財政と帝国大学財政全体の関係性の解明。
著者
中溝 智也 多田 憲正 宇田川 智宏 菊池 絵梨子 亀井 宏一 森 崇寧 蘇原 映誠 松岡 健太郎 白井 謙太朗 渡辺 章充
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
pp.cr.2022.0206, (Released:2022-10-26)
参考文献数
34

Galloway-Mowat症候群(GAMOS)は小頭症を伴う精神発達遅滞とステロイド抵抗性ネフローゼ症候群(SRNS)などの腎症を呈する疾患である.GAMOSにおける腎症は,治療抵抗性のため生命予後を規定する.今回シクロスポリン(CsA)で長期間の寛解を維持しているGAMOSの1例を報告する.1歳健診で精神発達遅滞,小頭症を指摘された.2歳時に蛋白尿を認め,5歳時にSRNSの基準を満たし,腎生検で巣状分節性糸球体硬化症を認めた.以上よりGAMOSと診断した.SRNSに対してCsAを導入したところ尿蛋白は減少し,7歳時に不完全寛解した.寛解維持した後にCsAの中止を試みたところ蛋白尿が増悪したため,CsAが尿蛋白減少に寄与していると判断した.腎毒性軽減のため8歳時から1日1回の投与へ変更し,14歳時の腎生検で明らかな腎毒性は認めなかった.CsAの単回投与は腎毒性を抑制し,GAMOS腎症のような遺伝性SRNSの予後改善に有効な可能性がある.
著者
延岡 健太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.4-14, 2007-06-20 (Released:2022-08-19)
参考文献数
20

優れた技術や製品を開発できたとしても,競合企業に模倣され,持続的な業績に結びつけることが困難になっている.本稿では,模倣回避のメカニズムとして,特許などの法的・制度的な権利獲得と,組織能力の長年の積み重ねの2つがあり,持続的な業績のためには後者が特に重要であることを議論する.また,積み重ねる組織能力の内容として,技術者の学習および,ノウハウが蓄積された製造設備・実験機器,擦り合わせの組織ルーチンの3つが鍵を握ることがわかった.
著者
青島 矢一 延岡 健太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.20-36, 1997 (Released:2022-07-22)
被引用文献数
17

競争環境が厳しくなる中,短いリードタイムで連続的に製品を導入していくことがますます重要になってきている.しかし,個々の新製品開発プロジェクトで創造される「プロジェク卜知識」を,他のプロジェクトヘと効果的に移転・伝承する体系的なメカニズムをもつ企業は必ずしも多くない.それは,プロジェクト知識が開発の過程やシステムに関係する暗黙知的要素を多く含むがゆえのマネジメントの難しさを反映している.本論文は,プロジェクト知識を効果的に移転・蓄積する方法として人的移転型プロジェクト連鎖と時間的オーバーラップ型プロジェクト連鎖の2つの方法を議論する.プロジェクト間の直接連鎖に関するこうした議論は従来の新製品開発組織論に新しい視点を提供する.
著者
折田 悦郎 新谷 恭明 藤岡 健太郎 梶嶋 政司 永島 広紀 陳 昊 井上 美香子 横山 尊 市原 猛志 田中 千晴
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

戦前期の帝国大学(以下、帝大)のうち、法文学部が設置されたのは九州帝大と東北帝大だけであった。東京、京都の両帝大には、法学部、文学部、経済学の3学部が置かれ、一方、九州・東北帝大以降の北海道、大阪、名古屋の各帝大には、法文系学部は設置されなかった。このことは法文学部の存在そのものが、帝大史研究の中では一つの意味を持つことを示唆している。本研究は、このような法文学部について、九州帝大の事例を中心に考察したものである。
著者
辻 義弘 吉岡 健太郎 河野 麻実子 鈴木 尚紀 田尻 伸弘 人見 泰正 加藤 かおり 吉田 俊子 水野 (松本) 由子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.413-422, 2015 (Released:2015-07-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

腸溶性カプセル化ビフィズス菌製剤 (以下, カプセル化ビフィズス菌製剤) を透析患者に服用させ, 便秘症状の改善とそれに伴うQOL, および血液検査結果の変化について検討した. 透析患者24名を対象とし, カプセル化ビフィズス菌製剤を1日1包8週間服用させた. 便秘の尺度評価には日本語版便秘評価尺度を用い, QOLの変化にはThe Patient Assessment of Constipation Quality of Life Questionnaire (PAC-QOL) を用いた. カプセル化ビフィズス菌製剤摂取前と比較して, 21名 (87.5%) に便秘症状の改善とQOLの向上が認められた. また, 早期に便秘が改善した群では血清リン値が有意に低下した. カプセル化ビフィズス菌製剤摂取の効果が早発性に出現する透析患者では, 便秘症状の改善に伴うQOLの向上, および血清リン値の低下に有用であることが示唆された.
著者
岡 健太郎 高橋 志達 神谷 茂
出版者
公益財団法人 日本ビフィズス菌センター
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.177-185, 2015 (Released:2015-11-03)
参考文献数
44

Clostridium difficileは芽胞形成性のグラム陽性偏性嫌気性細菌で,主に抗菌薬投与後に下痢や偽膜性大腸炎(pseudomembraneous colitis, PMC)などのC. difficile関連下痢症/疾患(C. difficile-associated diarrhea/disease, CDAD)を引き起こす原因菌として知られている.本菌は一部の健常者の腸内に定着する常在菌の一種であり,通常は他の腸内細菌により抑制されているが,抗菌薬の投与により正常腸内細菌叢が撹乱されると異常増殖と毒素(トキシンAおよびトキシンBなど)産生を引き起こしCDADが発症する.抗菌薬関連下痢症(antibiotic-associated diarrhea, AAD)のうち,5-20%が本菌によるものと考えられており,治療には原因抗菌薬の中止とバンコマイシンまたはメトロニダゾールの経口投与が有効であるが,10-35%に再発が認められ,近年では再発を繰り返す症例が問題となっている.CDADは,腸内に定着した常在性C. difficileによるものの他に,保菌健常者やCDAD発症者の糞便を介した接触感染が主な感染経路であり,特に芽胞を形成する菌であることから,芽胞が長期間にわたって環境中に生残して院内感染や再発の感染源となることが考えられる.特に入院患者では,本菌の検出率は入院期間と相関することが知られている.また,芽胞は抗菌薬に抵抗性であることから,再発例の一部では,治療後に芽胞の形態で腸内に生残して再発を引き起こすものと考えられる.従って,CDADあるいは再発性CDADの治療および予防法としては,原因抗菌薬の中止やバンコマイシンまたはメトロニダゾールの経口投与による治療や接触感染予防策や環境清掃などによる一般的な感染予防法に加え,抗菌薬の使用制限による正常腸内細菌叢の撹乱防止や,何らかの方法による正常腸内細菌叢の維持および早期回復が重要となる.これまでに,正常腸内細菌叢の維持および早期回復を目的としたプロバイオティクスによる予防の有効性が多数の研究者により報告されており,CDADの治療および予防においては,主に抗菌薬の補助療法としてプロバイオティクス製剤等が使用されている.プロバイオティクスには病原性細菌の生育阻害作用と腸内細菌叢の改善作用があることから,C. difficile腸炎の予防や治療補助に有効であると考えられるが,その効果や作用機序はプロバイオティクスの菌種や菌株によって異なり,菌種あるいは菌株ごとの大規模臨床試験による科学的検証が望まれている.