著者
吉川 直孝 伊藤 和也 堀 智仁 玉手 聡 豊澤 康男
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_125-I_130, 2011 (Released:2012-01-20)
参考文献数
6

本論文ではトンネル切羽の肌落ちにより発生した死傷災害を調査し,その発生状況を分析した.山岳トンネルでは,装薬や支保工の建て込みに際して作業員が切羽に接近して作業するが,多くの災害はそのような作業時に発生している傾向が見られた.また,肌落ちした岩塊の大きさは0.6m角程度と比較的小さいことから,肌落ち・落石災害防止対策として,切羽変位計測,十分な照度の確保,鏡吹付,導水・さぐり削孔といったソフト・ハード両面からの対策を提示した.
著者
高岩 義信 九後 太一 早川 尚男 棚橋 誠治 金谷 和至 五島 敏芳 小沼 通二 伊藤 憲二 伊藤 和行 九後 太一 受川 史彦 平田 光司 小長谷 大介 田中 希生 田中 正 難波 忠清 西谷 正 吉川 直志 坂東 昌子
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

日本の素粒子論研究が世界的に評価される礎を築いた湯川秀樹・朝永振一郎・坂田昌一の遺した資料を活用してその学問の系譜を研究することを目標とし、その資料の利用環境整備を行った。史料データベースを充実させネットワーク上のサーバーを介して一般に公開している。このサーバで稼働するオープンソフトウェアの検討およびカスタマイズ、さらにその後継ソフトウェアの検討を行った。またこれらの資料を科学史研究に利用するのに有益な史料作成者データのデータベースを、史料カタログと連携するものとして構築することによって、史料の有効利用に資することができるようにすることを検討した。また今後へ向けての課題の検討を行った。
著者
伊藤 和彦 中川 成男
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.537-546, 1985-01-31

印伝革の素材となる脳漿なめし白革はどのような革か, 走査型電子顕微鏡と光学顕微鏡で皮練維の分離及び脂質の分布状態を観察した。なめし剤となるウシ脳については, 新鮮脳を1年間貯蔵して腐敗させた脳漿について, これらの一般組成と共に, 貯蔵中の酸敗による脂質の変性成分を溶剤分画法によって分離すると共に, 特に低分子のアルデヒド成分についてはガスクロマトグラフィーによって分離同定した。脳漿なめし白革の特性に関しては, この革と類似の姫路白革, セーム革などと比較して, 熱収縮温度, 熱溶脱窒素, 耐酸, 耐アルカリ性, トリプシン消化性などの相違から検討し, 最後に革の機械的強度についても試験を行った。得られた主な結果は次の通りである。1) 脳漿なめし前後のへら掛けの効果が, 皮線維の分離の状態から認められた。2) 新鮮脳と脳漿との比較で, 一般分析, 脂質の特数, 脂質の溶剤分画及びアルデヒドの同定などの結果から, ウシ脳の脂質は酸敗により, 低分子のアルデヒド, 遊離脂肪酸などに変性されているのが認められた。3) 脳漿なめし白革の特性を, これと類似の姫路白革, セーム革などと比較すると, 耐熱, 耐酸, 耐アルカリ, 耐酵素性などから, 姫路白革, 鹿生皮とよく似た性状で, これらの結果からみて, なめしの効果はかなり少ない。印伝革の柔軟性は鹿皮線維の特別な性状とコラーゲン線維束のほぐれによるものであり, 特有の滑る様な感触は脳の貯蔵中に生じたリン脂質分解産物の影響が大きいものと思われる。特に有効な鞣皮成分はなく, 油脂を用いて, 単に機械的に皮線維をもんで柔らかくするのが原始的製革法の一つのあり方である。
著者
加納 靖之 橋本 雄太 中西 一郎 大邑 潤三 天野 たま 久葉 智代 酒井 春乃 伊藤 和行 小田木 洋子 西川 真樹子 堀川 晴央 水島 和哉 安国 良一 山本 宗尚
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

京都大学古地震研究会では,2017年1月に「みんなで翻刻【地震史料】」を公開した(https://honkoku.org/).「みんなで翻刻」は,Web上で歴史史料を翻刻するためのアプリケーションであり,これを利用した翻刻プロジェクトである.ここで,「みんなで」は,Webでつながる人々(研究者だけでなく一般の方をふくむ)をさしており,「翻刻」は,くずし字等で書かれている史料(古文書等)を,一字ずつ活字(テキスト)に起こしていく作業のことである.古地震(歴史地震)の研究においては,伝来している史料を翻刻し,地震学的な情報(地震発生の日時や場所,規模など)を抽出するための基礎データとする.これまでに地震や地震に関わる諸現象についての記録が多数収集され,その翻刻をまとめた地震史料集(たとえば,『大日本地震史料』,『新収日本地震史料』など)が刊行され,活用されてきた.いっぽうで,過去の人々が残した膨大な文字記録のうち,活字(テキスト)になってデータとして活用しやすい状態になっている史料は,割合としてはそれほど大きくはない.未翻刻の史料に重要な情報が含まれている可能性もあるが,研究者だけですべてを翻刻するのは現実的ではない.このような状況のなか,「みんなで翻刻【地震史料】」では,翻刻の対象とする史料を,地震に関する史料とし,東京大学地震研究所図書室が所蔵する石本コレクションから,114冊を選んだ.このコレクションを利用したのは,既に画像が公開されており権利関係がはっきりしていること,部分的には翻刻され公刊されているが,全部ではないこと,システム開発にあたって手頃なボリュームであること,過去の地震や災害に関係する史料なので興味をもってもらえる可能性があること,が主な理由である.「みんなで翻刻【地震史料】」で翻刻できる史料のうち一部は,既刊の地震史料集にも翻刻が収録されている.しかし,ページ数の都合などにより省略されている部分も多い.「みんなで翻刻【地震史料】」によって,114冊の史料の全文の翻刻がそろうことにより,これまで見過ごされてきた情報を抽出できるようになる可能性がある.石本文庫には,内容の類似した史料が含まれていることが知られているが,全文の翻刻により,史料間の異同の検討などにより,これまでより正確に記載内容を理解できるようになるだろう.「みんなで翻刻」では,ブラウザ上で動作する縦書きエディタを開発・採用して,オンラインでの翻刻をスムーズにおこなう環境を構築したほか,翻刻した文字数がランキング形式で表示されるなど,楽しみながら翻刻できるような工夫をしている.また.利用者どうしが,編集履歴や掲示板機能によって,翻刻内容について議論することができる.さらに,くずし字学習支援アプリKuLAと連携している.正式公開後3週間の時点で,全史料114点中29点の翻刻がひととおり完了している.画像単位では3193枚中867枚(全体の27.2%)の翻刻がひととり完了している.総入力文字数は約70万字である.未翻刻の文書を翻刻することがプロジェクトの主たる目的である.これに加えて,Web上で活動することにより,ふだん古文書や地域の歴史,災害史などに興味をもっていない層の方々が,古地震や古災害,地域の歴史に関する情報を届けるきっかけになると考えている.謝辞:「みんなで翻刻【地震史料】」では,東京大学地震研究所所蔵の石本文庫の画像データを利用した.
著者
中込 さと子 堀内 成子 伊藤 和弘
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.44-62, 2004

目的<BR>本研究は, 遺伝的特質を親から子へ引き継ぐことの意味を探ることを中心に据えて, 遺伝性疾患をもつ女性Fさんにとって子どもを産み育む体験を記述することを目的とした。<BR>対象および方法<BR>1) 協同研究者: 軟骨無形成症をもち, 既婚で, すでに1人以上の子どもを得ており, 現在妊娠していない女性Fさんである。<BR>2) 研究方法: 研究デザインは質的帰納的記述研究とした。研究方法は, Giorgi, A.の提唱した現象学的アプローチとし, Heidegger, M.の存在論を前提立場とした。分析は, 第1に協同研究者の語りから生きられた体験 (lived experience) を統合的に記述し, 第2に記述された体験をHeidegger, M。の存在論に基づき研究者が解釈を加えた。データ収集は, 非構成的面接を2002年8月~11月に行った。<BR>結果<BR>Fさんは新生突然変異で出生し, 他の家族に同じ特質の人がいない環境で育った。Fさんは,「障害」と認めたくない母親から, 何事も同級生たちと同じように取り組むことを期待され努力し続けた。しかし高校卒業時より, 社会での自立に向かう過程でさまざまな障壁があり屈辱的な思いもした。しかし, 身障者の人びととの出会いや身障手帳を取得した以降, 社会的に「正当に」評価されたと感じ精神的に安定した。娘が同じ病気だと知って, 娘に対して, Fさん自身が親から育てられた方針とは逆の,「頑張らなくてよい」というこの身体的特質に対する正当な考え方を教えた。そして娘の身体だけでなく, その時々で感じる辛さも理解し, それに対応できるよう先々に準備をした。<BR>またFさんは, 親の会活動に参加し親や当事者たちを支えた。Fさんは「軟骨無形成症」をもった当事者の声を発信する活動と, 当事者としての自分自身の「個人史」を書き始めた。この活動を通して「骨無形成症者」が社会に広く理解されることを願っている。<BR>Fさんの体験の中心的な意味は,「自分の人生をかけて, 娘とすべての当事者を慈しむ」として理解された。中心的意味を形成する事柄として, 1) 他者評価を超えて, 自己を正当に評価する, 2) 生きてきた体験をもとに, 子どもの人生に関与する, 3) 子育てを通じて, 自己の存在の意味が明確になっていく, 4) ありのままの自分たちを受け入れ, 形のないものを志向する, が確認できた。<BR>結論<BR>子どもに遺伝的特質を引き継いだ体験は, 病の体験を引き継ぐ辛さではあったが, 自分の体験をもとに子どもの人生に関与し, わが子の存在によって自己の存在の意味を明確になっていった。またこの遺伝子がこれからも引き継がれるという観点から, 自分たち親子だけにとどまらず, 地域社会の未来の平和に対する志向の拡がりが確認できた。
著者
伊藤 和行
出版者
京都大学文学部科学哲学科学史研究室
雑誌
科学哲学科学史研究 (ISSN:18839177)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.117-132, 2008-01-31

Von Neumann's "First Draft of a Report on the EDVAC" is known as the first paper on the modern computation theory, where he compared electric circuits to neuron networks. The idea of conceiving neuron networks as logical circuits was proposed by W. S. McCulloch and W. Pitts, and was called the McCulloch-Pitts Model. This model led von Neumann to develop his automata theory, in which he proposed five models like the cellular model. Through them, he tried to present a unified study of modern computing machines and the human nervous system.
著者
伊藤 武男 古本 宗充 鷺谷 威 堀川 信一郎 奥田 隆 松廣 健二郎 野村 晋一 横井 大輝 大間 俊樹 伊藤 和也
雑誌
日本地球惑星科学連合2015年大会
巻号頁・発行日
2015-05-01

1.はじめに 琉球弧は東側の琉球海溝からフィリピン海プレートがユーラシアプレート(沖縄プレート)の下に沈み込み,西側からは背弧海盆が拡大していると考えられている.従来,背弧海盆のような拡大領域が付随するプレート収束帯の地殻は比較的高温で柔らかいと考えられており,このような地域でのプレート間の固着は弱いと思われていた.しかしながら,同様のテクトニクスを持つ場所で発生した2004年スマトラ・アンダマン海地震や2011年東北地方太平洋沖地震の発生は,すべての沈み込み帯でM9クラスの超巨大地震が発生する可能性を検討する必要があることを示している.そのため,測地学的・地形学・地質学的調査研究を含めた早急な琉球弧における巨大地震の発生の可能性の検討が必要である.2.奄美海台の衝突と喜界島の高速隆起 奄美大島・喜界島の東側の琉球海溝では,世界最大級の規模の奄美海台の衝突・潜り込みが進行しており、地殻を高速隆起させる.海岸段丘面から推定される喜界島付近の隆起速度は,2mm/yrの隆起速度を持っており,強いプレート間の固着の存在を示唆している.さらに,海岸段丘面から,大規模隆起イベントが1000年オーダーの間隔で繰り返している事を示しており,(超)巨大地震の可能性を示唆している.これらを裏付けるように,奄美大島近海で1911年にM8.0の地震が発生しており,それ以降M8クラスの地震は琉球弧では確認されていないが地震活動は活発である.3.GNSS観測と水準測量による喜界島の傾動と隆起速度 琉球海溝に直交して100kmを越える測線を設置する事ができる場所は喜界島・奄美大島・横当島の場所のみである.我々は横当島(無人島)にてGNSS観測を2013年10月から実施しており2014年6月にデータの回収を行った.横当島と奄美大島間のひずみ速度は-3.8×10-8 /yr程度であり,奄美大島と喜界島間の-2.5×10-8 /yrと比較すると,奄美大島と喜界島間とほぼ同じかあるいは,横当島と奄美大島間の方が短縮している可能性がある.しかしながら,観測期間がまだ短いため年周変化や横当島の火山活動の影響など考慮すべきことは多い.一方,喜界島内の傾動の方向と速度を測量する為に,喜界島内で水準測量を2014年の3月〜4月にかけて実施した.今回の水準測量の結果と1997年9月の水準測量結果と比較すると海溝軸側へ約10-7/yrの沈降が観測された. しかしながら,喜界島は海溝軸側へ傾きながら,年間2mm程度隆起しており,この地域の隆起のピークは喜界島よりも西側にあることが明らかになった.このことはプレート境界の深い場所(喜界島付近)まで固着している可能性を示唆しているが,喜界島と奄美大島の水平短縮速度では深い場所までの固着を説明する事は難しい.よって,奄美海台の沈み込み・潜り込みに伴うプレート境界の移動や海台の付加などを考慮する必要があると思われる.
著者
藤原 広臨 上床 輝久 内藤 知佐子 小西 靖彦 上本 伸二 村井 俊哉 伊藤 和史
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.46-51, 2017-03-20 (Released:2017-03-25)
参考文献数
15

近年,特に若年者においてうつ病が多様化し,医学教育の現場でも対応困難な場面を体験することは多い.本稿では,「ゆとり世代」の特徴も踏まえたうえで若者のうつ病について概説し,医学生・研修医のメンタル面での初期対応に資する情報を提供する.
著者
小関 成樹 伊藤 和彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.390-393, 2000-05-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
10
被引用文献数
7 12

電解水の保存中の変化を検討した結果,以下のことが明らかになった.1) 短期間の保存において,強酸性電解水のORP,有効塩素濃度は明所開放条件によっては速やかに低下し,有効性を失うことが示された.一方,遮光密閉条件において強酸性電解水は安定していることが確認された.また,強アルカリ性電解水は保存条件によらず不安定であった.2) 長期間の保存においても強酸性電解水は遮光密閉状態であれば安定した状態を保つことが明らかになった.また,遮光しない場合にはORP,有効塩素濃度は速やかに低下してしまうがpHは変化を示さないことから,活性を失っても酸性を示す水溶液であることが明らかになった.
著者
伊藤 和行
出版者
京都大学文学部科学哲学科学史研究室
雑誌
科学哲学科学史研究 (ISSN:18839177)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.117-132, 2008-01-31

Von Neumann's "First Draft of a Report on the EDVAC" is known as the first paper on the modern computation theory, where he compared electric circuits to neuron networks. The idea of conceiving neuron networks as logical circuits was proposed by W. S. McCulloch and W. Pitts, and was called the McCulloch-Pitts Model. This model led von Neumann to develop his automata theory, in which he proposed five models like the cellular model. Through them, he tried to present a unified study of modern computing machines and the human nervous system.
著者
尾崎 昭弘 今井 賢治 伊藤 和憲 向野 義人 白石 武昌 石崎 直人 竹田 太郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.779-792, 2006-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
39
被引用文献数
1

「耳鍼に関するこれまでの研究の展開」を主テーマとしてセミナーを行った。セミナーでは、近年の国内外の耳鍼の展開、作用機序や臨床効果のレビューを行い、知見を総括した。耳鍼による肥満の基礎研究では、耳介と視床下部-自律神経系の関連、耳鍼を受ける側の状態の違いに起因する個人差などが紹介された。さらに、作用機序では耳介の鍼刺激により白色脂肪組織 (WAT) に発現したレプチンが、末梢と中枢の両者に存在するレプチン受容体 (Ob-R) に結合して、摂食を抑制することなどが紹介された。耳鍼の臨床効果については、肥満に関する欧米の知見を中心に紹介された。しかし、欧米の論文のレビューでは共通した治療方法、評価指標などが乏しかったため、総合的な結論を下すには至らなかった。鎮痛効果や薬物依存では、臨床効果が期待されたが、禁煙では否定的であった。
著者
西澤 一 吉岡 貴芳 伊藤 和晃
出版者
Japanese Society for Engineering Education
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1_72-1_76, 2008 (Released:2008-02-13)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Three years of extensive reading lessons have improved engineering students′ reading and listening skills in English. The average TOEIC score has increased to 441 points, and the relative numbers of students of lower scores than 350 points have decreased to 14% in the third year when the median reading amount of easy-to-read English texts is about a half million words. The critical success factors are the reading amount and the easiness of English texts read especially in the first term. When students read extremely easy English texts with the help of pictures, they can finally avoid the translation into Japanese and grasp the meaning of the texts directly in English
著者
伊藤 和幸 数藤 康雄 伊福部 達
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.495-503, 2000-05-25
被引用文献数
75

重度肢体不自由者のQOL(生活の質)向上を目指し, 眼球運動を利用した視線入力によるコミュにケーション装置の開発を試みた.筋ジストロフィー患者や筋萎縮性側索硬化症患者のような障害者では, 病状の進行に伴い四肢が動かなくなり, 走査選択式装置へのスイッチ操作に眼球の動きを利用せざるを得ないといったケースが出てくる.従来このような障害者は, 上下左右への眼球の動きや目の開閉をスイッチ入力のオンオフに利用していたが, 障害者が見つめた対象をそのまま選ぶことのできる視線入力が実現できるなら, 操作はわかりやすく, 入力効率も上がることになる.本論文では直接選択式による視線入力装置の開発内容とその臨床評価結果について報告する.眼球の運動を随意に制御できる障害者であれば, 視線入力方式だけで手軽に文章作成が可能であることがわかった.