著者
大土 隼平 石井 陽子 中谷 桃子 大塚 和弘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J105-D, no.9, pp.504-517, 2022-09-01

複数人対話におけるファシリテータによる対話者の状態把握を支援するため,頭部運動の機能に関する特徴量を用いた対話者の主観的印象の予測モデルを提案する.女性4名,17グループの対話を対象とし,雰囲気の良さ,楽しさ,やる気,集中度について,2分単位に自己報告された9段階のスコアを予測の対象とする.まず,対話者の頭部姿勢角及び発話の有無の時系列を入力とする畳み込みニューラルネットワークを用いて,頭部運動機能10種を検出する.次に頭部運動機能特徴として,検出された頭部運動機能から各機能の出現率や構成比等を2分単位の区間ごとに算出する.また,頭部運動の活発さを表す特徴も併せて抽出し,ランダムフォレスト回帰モデルを用いて内観スコアの予測を行う.実験の結果,全グループに対するモデルでは,印象4項目中3項目にて弱い相関(≥ 0.3)が確認でき,また,グループごとのモデルでは,約32%のグループにて中程度以上の相関(≥ 0.5)が得られるなど印象の予測可能性が示唆された.更に予測モデルの説明可能性を示すため,SHAP分析を用いて予測に寄与した対話者の行動と印象との関連性について考察する.
著者
宮本 直美 北川 知佳 栗田 健介 岩永 桃子 力富 直人 神津 玲 千住 秀明
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.D0483, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】2005年日本呼吸器学会で発表された「特発性間質性肺炎の診断・治療ガイドライン」では、呼吸リハビリテーション(以下、呼吸リハ)は運動耐容能や呼吸困難感の改善などが期待されると示されている。また、間質性肺炎は進行性で予後不良であるため、臨床上呼吸リハが遂行困難な症例も多い。今回、間質性肺炎に対する呼吸リハの効果について検討することを目的に、当院において呼吸リハを施行した間質性肺炎患者について調査検討したので報告する。【方法】平成9年8月から平成17年7月までに、当院に入院し呼吸リハを施行した間質性肺炎患者37例、65エピソード(平均年齢68±10.8歳、男性25例、女性12例)を対象とした。呼吸リハプログラムの内容は、運動療法を中心に動作コントロール指導を併せて実施した。呼吸リハ前後での呼吸困難感(MRCスケール)、身体組成、肺機能、運動耐容能(6分間歩行テスト、シャトルウォーキングテスト)、下肢筋力、ADL(千住らのスコア)を評価し、呼吸リハ実施期間、完遂状況、ステロイド投与量を調査した。【結果】呼吸リハ完遂可能であった患者(完遂群)は34エピソード(52%)、呼吸リハが遂行困難であった患者(非完遂群)は31エピソード(48%)で基礎疾患の増悪が主な理由であった。呼吸リハの実施期間は中央値で53.5日であった。完遂群では、呼吸リハ前後での呼吸困難感、肺機能(VC、MVV)、下肢筋力(n=12)で有意な改善を認めたが、身体組成に変化はなかった。また6分間歩行距離で有意な改善を認めたが、シャトルウォーキングテスト(n=10)の歩行距離に有意差はなかった。ADLでは有意な改善を認めた。ステロイド治療は10エピソードで実施されており、実施期間中の増量はなかった。【考察】今回、呼吸リハが遂行困難であった患者は全体の48%であった。これは間質性肺炎が進行性で、病状のコントロールが困難であるという本疾患群の病態の特徴を反映した結果であると思われた。しかし、完遂群における呼吸リハ前後の比較では、呼吸困難感、6分間歩行テスト(歩行距離)、下肢筋力、ADLで改善を認めており、症状安定期にある間質性肺炎患者では、薬物療法(ステロイド治療)とともに呼吸リハが有効である可能性が示唆された。
著者
根本 玲 相良 亜木子 沢田 光思郎 杉山 庸一郎 櫻井 桃子 川上 愛加 大橋 鈴世 三上 靖夫
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.69-76, 2020-04-30 (Released:2020-08-31)
参考文献数
23

【目的】皮膚筋炎に伴う重度の摂食嚥下障害は,回復まで長期間を要するとされている.さらに間質性肺炎と縦隔気腫を伴うと,治療はより困難になる.われわれは皮膚筋炎に間質性肺炎と縦隔気腫を合併し,重度の摂食嚥下障害をきたした症例に対し,リハビリテーション治療を行い良好な経過を得た.本症例で実施した摂食嚥下リハビリテーション治療の工夫と経過について報告する.【症例】69 歳男性.四肢の関節部痛と筋力低下,嚥下困難感を訴え,皮膚筋炎と診断された.間質性肺炎を併発し,プレドニゾロン,免疫抑制剤による薬物療法が開始されたが,嚥下困難感が増悪したため,リハビリテーション科に紹介された.嚥下造影検査では咽頭収縮は不良で,嚥下内視鏡検査(以下VE)ではとろみ水(段階1 よりうすいとろみ),ゼリー(コード0j)で誤嚥,喉頭蓋谷残留を認めた.摂食嚥下障害臨床的重症度分類2,藤島グレード2 であった.摂取エネルギー維持目的に経管栄養を開始した.過用による皮膚筋炎増悪防止のため頭部挙上運動などの間接訓練は実施せず,とろみ水(段階1)とゼリー(コード0j)の複数回嚥下による直接訓練を開始した.2 週間後,胸部CTで縦隔気腫と診断された.直接訓練では,縦隔気腫の増悪や縦隔炎の予防目的にゼリーを中止したが,摂食嚥下機能向上を目的にとろみ水(段階1)のみ継続した.疲労感,とろみ水摂取量,血清CK値,VE所見から摂食嚥下機能を総合的に評価し,食形態を段階的に変更した.12 週で,摂食嚥下障害臨床的重症度分類6,藤島グレード7 に改善し,1 日3 食の嚥下調整食(コード4)の摂取が可能となった.13 週目,亜急性期病院に転院した.【結論】皮膚筋炎に間質性肺炎と縦隔気腫を合併し,重度の摂食嚥下障害をきたした症例に対してリハビリテーション治療を行った.皮膚筋炎の過用に注意して経鼻経管による栄養管理を行い,縦隔気腫を増悪させないために間接・直接訓練を工夫することで,摂食嚥下機能の向上が得られた.
著者
山田 桃子
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.171-186, 2019-11-15 (Released:2020-11-15)

内田百閒と言えば、『百鬼園随筆』(一九三三)により人気を博し昭和初期の「随筆」ブームを牽引した作家として語られるが、その戦前期の充分な検討が行われているとは言えない。実は、『百鬼園随筆』の刊行以前、百閒のテクストは「随筆」に限らない雑多な文章群をめぐる問題に関わっていた。また、刊行によって「百鬼園」の名が「随筆の代名詞」となって以降も、百閒のテクストはジャンルの分類を攪乱するものとして現れている。そのため本稿では、ジャンルの歴史性をふまえながら、『百鬼園随筆』刊行前後の時期を中心に、百閒のテクストの問題を検討した。百閒のテクストは、文学領域をめぐる変動と関わり、ジャンルの境界線を攪乱させるものとして現れている。
著者
古井 良彦 遠藤 桃子 副島 清美 片山 一朗 西岡 清
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.555-558, 1995-06-01 (Released:2011-07-20)
参考文献数
8

I. はじめに: われわれはlidocaineの経口アナログであるmexiletine hydrochlorideを, 帯状疱疹ならびに帯状疱疹後神経痛の疼痛を除去する目的で使用し, 有効であったので報告する。II. 対象ならびに方法: 対象は帯状疱疹患者97名と帯状疱疹後神経痛の患者8名で, 全例を無作為に次の3群に分けた。第1群: 基本処方+mexiletine(150mg/day), 第2群: 基本処方+vidarabine(300mg/day)+alprostadil(60μg/day), 第3群: 基本処方[naproxen(300mg/day)+mecobalamin(1500μg/day)]のみ。III. 結果: 帯状疱疹において, mexiletineを投与した第1群では内服開始の次の日には疼痛が約半分に, 4日目には約1/5に減少した。また全例が約9日で疼痛が消失し, 他群に比し除痛効果が優れており予後も良好であった。他群では疼痛消失までの期間がより長く, 疼痛が残った症例がみられた。帯状疱疹後神経痛についても同様の傾向がみられた。IV. かんがえ: mexiletineの経口投与はiontoforesisと同程度の有効率を示し, 帯状疱疹ならびに帯状疱疹後神経痛に伴う疼痛の治療に有効であると考えられる。
著者
清水 房枝 作田 裕美 坂口 桃子 伊津美 孝子 Shimizu Fusae Sakuta Hiromi Sakaguchi Momoko Izumi Takako
出版者
三重大学医学部看護学科
雑誌
三重看護学誌 (ISSN:13446983)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.33-45, 2008-03-05
被引用文献数
2

目的】病院で働く看護師が患者から受ける暴力の特徴から暴力が起こる要因を明らかにすることを目的とした. 【結果及び考察】病院で働く看護師が, 患者から受けた暴力の特徴は 〔身体的暴力〕 と 〔言葉の暴力〕 と 〔精神的暴力〕, 〔暴力は 1 回で終結した〕, 〔暴力は一人の看護師が何度も受けた〕, 〔暴力は同一単位の複数の看護師が受けた〕 の 6 つのカテゴリーで構成された. 身体的暴力は刑法に抵触するため暴力が起こった事象に対応しやすく, 患者も不名誉な結果を回避するため看護師に謝罪をするが, 言葉による暴力は容易に終結しない. 暴力が起こった後, 看護師が誤る, 注意をするなどでさらに患者の攻撃性を増加させていた. 暴力の要因と考えられるものとした 〔暴力行為者である患者が持つ背景〕, 〔暴力対象者の看護師が持つ背景〕, 〔病棟環境が持つ要因〕 の 3 つで構成されていた. 暴力行為者が持つ要因に, 暴力の前歴があるが, 暴力に価値を見出した者が, 暴力対象者である暴力に怯える看護師に, 言葉の暴力や精神的暴力を続けていたと考えられる. また, 患者は病気の苦痛や病院という異文化の社会で苦痛やストレスを持ち, 看護師の対応が意に添わないことで暴力行為に及んでいたとこが考えられる. 暴力行為者が持つ背景, 暴力対象者が持つ背景, 暴力の場となる病棟環境か, それぞれ関連しながら暴力が起こっていたことが示唆された. 今後, 看護師が暴力にあわないより良い職場環境で, 看護の提供ができるためには, 暴力の起こる可能性を予知した防止策が必要である.Objective: To clarify the characteristics of violence towards hospital nurses and related factors. Results and Discussion: Six categories of violence towards hospital nurses were identified: physical violence; verbal violence; mental violence; single episode of violence; multiple episodes of violence aimed towards one nurse; and violence towards the same group of nurses. As physical violence is illegal this category of violence is easy to address, and patients often apologize to nurses to avoid legal troubles. However, verbal violence is not easily stopped. Patients become more aggressive when nurses make errors or give warnings. The following 3 factors were related to violence: background factors for aggressors(patients); background factors for victims(nurses); and environmental factors of hospital wards. One of the background factors for aggressors is a previous history of violence, and patients who find some meaning in violence continue to verbally and mentally abuse frightened nurses. In addition, patients appear to resort to violence when they did not like how nurses act and respond because they are suffering from illnesses and are stressed about being in an unfamiliar hospital environment. These results suggest that violence towards hospital nurses involves background factors for aggressors, background factors for victims, and the physical environmental factors of hospital wards. In future, preventative measures for violence against nurses will need to be established so that nurses can perform their duties in good working environments without being subjected to violence.
著者
岡 桃子 山梨 裕美 岡部 光太 松永 雅之 平田 聡
出版者
動物の行動と管理学会
雑誌
動物の行動と管理学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.107-116, 2019

<p>飼育下の大型ネコ科動物で問題とされている常同歩行の発現には環境エンリッチメント(以下エンリッチメント)の有無や来園者の影響など複数の要因が絡んでいると考えられるが、複合的な検討は行われていない。そこで本研究ではエンリッチメントの有効性及び来園者数と気温がトラの行動に与える影響について検証した。京都市動物園で飼育されているアムールトラ3頭を対象とし、 3分毎の瞬間サンプリングを用いて行動を記録した。放飼場内に設置するエンリッチメントの種類が多いと、トラの常同歩行頻度は有意に減少し(<i>P</i> < 0.05)、エンリッチメントの利用頻度が有意に増加した(<i>P </i>< 0.01)。複数のエンリッチメントの設置はトラの常同歩行の抑制に効果的であり、探索行動や捕食行動等多様な行動を引き出す上で有用であることが示唆された。また来園者の存在によって、トラの休息頻度が増加、エンリッチメントの利用頻度が低下する可能性があると考えられた。</p>
著者
後藤 雅宏 東島 弘樹 北岡 桃子
出版者
日本膜学会
雑誌
(ISSN:03851036)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.226-232, 2021 (Released:2021-08-24)

In recent years, pollinosis immunotherapy has been attracting much attention, however, the administration methods of vaccine drugs have been limited to the subcutaneous injection or the sublingual administration. In this study, we developed a transdermal vaccine administration strategy for the simple and non–invasive pollinosis immunotherapy. For the transdermal antigen delivery, the presence of stratum corneum, the hydrophobic outermost layer of the skin, is an obstacle. Another problem with current pollinosis immunotherapy is side effects of using the whole allergen molecules. To overcome these issues, we applied a solid–in–oil (S/O) nanodispersion, which is composed of hydrophilic antigen molecules coated with hydrophobic surfactants, and enables transdermal penetration of the antigen molecules into the skin. In addition, we introduced a T cell epitope peptide derived from the cedar pollen allergen (PepA : SMKVTVAFNQFGP), which had shown lower risks of the side effects. We succeeded in preparing an S/O nanodispersion containing PepA. The oil–based S/O system enhanced the skin penetration of the PepA. Antigen specific IgE levels in the murine models were significantly reduced by the S/O administration. Activations of the type–1 helper T and regulatory T cells were also confirmed, which indicates the effectiveness of the pollinosis immunotherapy using the S/O vaccine system.
著者
山口 倫 森田 道 山口 美樹 大塚 弘子 赤司 桃子 田中 眞紀 矢野 博久
出版者
特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.143-147, 2017 (Released:2018-06-27)
参考文献数
16

以前,乳癌検診は早期発見,早期治療を掲げていたため,病理医も早期癌あるいは将来癌になるであろう病変を見出すことに重きを置いていた。しかし昨今,過剰診断の問題が取り沙汰され,特に検診では予後改善が目的で,“命に関わらない”病変を如何に見出さないかという考えにシフトしているようだ。一方で,その対象が境界病変,低異型度(LG)―DCIS,LG 浸潤癌なのか,それら全部なのかは不確かである。 DCIS はluminal だけでなく,HER2陽性も存在するheterogenous なグループで,前者はLG,後者は高異型度の浸潤癌となる。従来の乳癌モダリティでは,triple negative DCIS はきわめて検出されづらく,残念ながら致死的癌の“芽”の早期発見は大部分ができていない。一方で,大半が予後良好と思われるLG-DCIS も一定の割合で浸潤し,低頻度ではあるが数年後死に至る例もある。 これらのことから私見であるが, ( i )今後の検診について, 1.多形線状石灰化≒コメド壊死≒HER2陽性癌の早期検出にフォーカスし,抗HER2療法の抑制に繋げる。 2.早期乳癌,境界病変の病理診断者間一致率は低いため,マンモグラフィ精査基準を上げ,LG-DCIS/LN/境界病変(luminal)の検出・採取率を減らす。結果的に取扱いに悩む機会が減る。 3.致死的TN の早期検出に関しては新しいモダリティを見出す。 (ii)病理診断(癌診断基準)について, LG 乳癌は低頻度だが死に至り,LN 転移など悪性のポテンシャルも有する。したがって,しばらくの間現状のクライテリアとし,“低リスク”病変の病態を明らかにする。 今後は,“命に関わらない”病変の臨床病理学的定義とその所見を明確にしていく必要がある。
著者
上村 宗弘 中川 尭 脇屋 桃子 池田 長生 田守 唯一 山本 正也 伊藤 信吾 田中 由利子 岡崎 修 廣江 道昭 原 久男 諸井 雅男
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.683-688, 2012 (Released:2013-11-28)
参考文献数
9

目的: 冠動脈の石灰化スコアが冠動脈CTによる有意狭窄病変の診断精度に与える影響について検討した.方法: 64列冠動脈CT(64SCT)と侵襲的冠動脈造影を行った連続25名について, 64SCTの感度と特異度を冠動脈石灰化スコア(Agatston score)別に検討した. 評価対象とした冠動脈は主要3枝で内径が2mm以上とした. また, 最も高度な狭窄部位をその枝の評価対象とした.結果: 64SCTによる狭窄評価が侵襲的冠動脈造影と一致したものが, 49血管(65.0%), 過大評価は20血管(26.0%), 過小評価は6血管(8.0%)であった. 石灰化スコア1,000以上の患者では, それぞれ10血管(41.7%), 10血管(41.7%), 4血管(16.7%)であり, 400以上1,000未満の患者では8血管(53.3%), 5血管(33.3%), 2血管(13.3%), 400未満の患者では31血管(86.1%), 5血管(13.9%), 0血管(0%)であった. 侵襲的冠動脈造影で75%以上の狭窄に対する64SCTの感度および特異度は, 全患者では91.3%および78.8%であり, 石灰化スコア1,000以上では87.5%および56.3%, 400以上1,000未満では85.7%および75.0%, 400未満では100%および92.9%であった.考察: 石灰化スコア400未満では感度と特異度は十分であり, 400以上1,000未満でも特異度は比較的高い. このことは, 64SCTの結果の評価の一助となり得る.
著者
山口将希 伊藤明良 太治野純一 長井桃子 飯島弘貴 張項凱 喜屋武弥 青山朋樹 黒木裕士
雑誌
第50回日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
2015-05-01

【はじめに,目的】関節軟骨は自己再生能力に乏しい組織であり,その再生治療として培養軟骨細胞や間葉系間質細胞(MSC)を用いた細胞移植が注目されている。しかし移植後の物理療法などのリハビリテーションの有効性や安全性については十分に検討されていない。今後,細胞治療が臨床にて適用されるにあたり,再生治療における物理療法やリハビリテーションの有効性を明らかにしていくことは重要な研究課題である。近年,骨折治療で用いられる低出力超音波パルス(LIPUS)を照射することにより軟骨細胞の代謝やMSCの骨・軟骨分化に影響を及ぼすことがin vitro研究にて報告されており,今回我々は骨軟骨欠損した膝関節へのMSC移植後にLIPUSを併用することでin vivoにおいても移植したMSCを刺激し,損傷した骨軟骨の再生を促すのではないかとの仮説を設けた。本報告は細胞治療とLIPUSの併用が骨軟骨欠損の再生に影響を及ぼすかを検討したものである。【方法】8週齢雄性Wistar系ラット12匹の両側大腿骨滑車部に直径1mmの骨軟骨欠損を作成し4週間自由飼育した。その後,全てのラットに対して同種骨髄由来MSC 1.0×106個を右膝関節に注入し,左膝関節には対照群としてリン酸緩衝液を注入した。そして6匹ずつLIPUS照射群と非照射群に分け,対照群,LIPUS群,MSC群,LIPUS+MSC(MSCL)群の4群(各群n=3)を設けた。LIPUS群およびMSCL群には週5回,1日20分間の照射を骨折治療ですでに用いられている設定(周波数1.5MHz,繰り返し周波数1kHz,パルス幅200μ秒,空間平均時間平均強度30mW/cm2)にて行った。介入開始から4,8週後に欠損部の組織切片を作成し,サフラニンO(SO)染色,HE染色および抗II型コラーゲンの免疫組織化学染色を用いて組織を観察した。さらにWakitaniの軟骨修復スコアを用いて修復度合いを数値化し,平均±95%信頼区間にて表示した。スコアは値が低いほど良好な再生を示す。【結果】介入4週間後,各群のスコアは,対照群:8.7±2.36,LIPUS群:4.7±1.31,MSC群:4.7±1.31,MSCL群:4.3±0.65となった。組織観察において対照群では修復組織のSO染色性は深層の細胞周囲に限局し,表層から中間層の多くで線維軟骨様の細胞が観察され,組織表面に軽度から中等度の亀裂が観察された。LIPUS,MSCおよびMSCL群では硝子軟骨様の細胞が多く含まれるようになり,SO染色性も中間層において確認された。また修復組織の厚さも対照群に比べて厚くなっていたが,組織表面に亀裂が観察された。対照群とMSC群において軟骨下骨に軟骨様の組織が侵入している所見が一部見られた。II型コラーゲンの発現は,対照群では深層の一部のみに限局していたが,LIPUS群では修復組織の広範囲において確認できた。MSC群においては表層から中間層で発現の低下が見られた。MSCL群ではLIPUS群同様,修復組織の広範囲で確認できた。介入8週後では各群のスコアは,対照群:7.7±2.36,LIPUS群:7.0±1.96,MSC群:4.7±1.31,MSCL群:4.0±0.00となりLIPUS群で4週に比べてスコアが悪化していた。組織観察では対照群とLIPUS群では線維軟骨様の細胞が多く観察され,修復組織のSO染色性は大きく減弱していた。MSCとMSCL群では硝子軟骨様の細胞が多く観察されていたものの,染色性は大きく減弱していた。MSC群においてのみ軟骨下骨に軟骨様の組織が侵入している所見が一部で見られた。II型コラーゲンの組織観察の結果,対照群では表層から中間層で発現が低下しており,LIPUS,MSC,MSCL群では全層において発現が見られるか,表層での発現の低下が確認された。【考察】介入4週後においてLIPUSは欠損した関節軟骨の修復を促す可能性が示唆された。しかし介入8週後になるとLIPUS群の修復した関節軟骨は劣化しており,骨軟骨欠損に対するLIPUS照射は短期的には効果的だが,修復した軟骨は長期的には維持されないことが示唆された。MSC群の修復した関節軟骨はスコアが保たれていたが,MSC注入とLIPUSの併用は,軟骨修復スコアにおいてはMSC単独の効果と比べてほとんど差が認められなかった。今回の研究条件においてはMSC関節内注入とLIPUS照射の併用による再生への相乗効果は軟骨に対しては限定的である可能性が示唆された。しかし,併用することによりMSC群で見られた軟骨下骨への軟骨様組織の侵入が見られなかったことから,軟骨下骨に対して影響をおよぼす可能性が期待される。本報告は予備実験の段階における結果であり,今回の結果を基に,今後サンプル数およびLIPUS強度などの設定を検討していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】本研究結果は骨軟骨欠損に対する細胞治療において,物理療法のひとつであるLIPUSの併用が軟骨下骨へ影響を及ぼし,骨軟骨再生に有効である可能性を示唆した。
著者
長井 桃子 黒木 裕士 飯島 弘貴 伊藤 明良 太治野 純一 中畑 晶博 喜屋武 弥 張 ジュエ 王 天舒 青山 朋樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>近年,様々な疾患に対し多能性幹細胞を用いた臨床試験が行われている。神経再生には神経のミエリン鞘とシュワン細胞の補充が肝要とされ(Zhiwu, 2012),末梢神経損傷動物モデルを用いて,幹細胞やiPS細胞移植による治療効果を検討した報告は多数あり,幹細胞を用いた臨床試験も始まっている。また,conduit(人工神経鞘)を断端部に連結させる手法においても,その中に自家培養細胞を移植する取り組みが行われている。一方,末梢神経損傷に対する介入効果として,運動は神経発芽や再生軸索の成熟を促進し(Sabatier, 2015),電気刺激は神経再生を促す(Gordon, 2010. Wong, 2015)報告もあり,細胞移植後のリハビリテーション介入が神経再生を促す可能性がある。しかし,同疾患患者の再生治療におけるリハビリテーション効果について,現時点でどこまで明らかになっているか不明な点が多い。本研究の目的は,末梢神経損傷患者に対してconduitや幹細胞を用いた治療方法と効果を報告した論文を系統的かつ網羅的に収集することに加え,これらの治療方法とリハビリテーションのかかわりにおける現状を明らかにすることである。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>研究デザインはシステマティックレビューとし,PRISMA声明に準じて実施した。検索式にはhuman,peripheral nerve,stem cell transplantation,nerve regenerationを用い,データベースはPubMed,PEDro,CINAHL,Cochrane libraryを用いた。2016年9月までに報告された,査読のある英語で記載された論文かつ,ヒトを対象に実施された臨床試験(シングルケースを含む)を対象として,conduitと細胞移植に関するものを抽出した。内科疾患や遺伝疾患に関するものは除外した。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>キーワードを用いたデータベースの検索では1220件が抽出された。適合基準に合致するものは16件(全体数比:1.31%,出版年:2000~2016)であり,そのうち,リハビリテーションに言及しているものは7件(適合論文内比:43.7%,出版年:2000~2011)だった。うち6件が手部に関するものであり,その内容は,手術直後から穏やかに手指屈伸運動を長期に行うものや実施の記載のみなど,リハビリテーションプログラムの内容や期間について詳細について記したものはなく,統一した見解は得られなかった。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>末梢神経損傷患者に対する再生治療介入の臨床試験数は少なく,リハビリテーション介入に関しても十分に検証されていない現状が明らかとなった。今後さらに,臨床試験の蓄積と,末梢神経損傷の再生治療におけるリハビリテーション効果に関するエビデンスが求められることが予測される。これらのエビデンスを,基礎的研究を通じて理学療法士が自ら示してくことは,理学療法介入の重要性を示す一助になると考える。</p>
著者
棚橋 沙由理 山本 桃子
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.17-30, 2022-01

社会の持続可能な発展をにらみ,博物館における学際的な教育研究が社会の持続可能性へどのように寄与し得るのかについて,議論が活発化している.ことに理工系大学・学部では科学技術の社会実装に際し,科学技術コミュニケーションの重要性が増しているため,大学博物館も科学技術コミュニケーションへの貢献が期待されている.そのような現状において,海外の大学博物館ではオブジェクト介在型学習(Object-based learning)による分野横断型学習の可能性に注目が高まっている.欧米を中心に博物館教育の文脈で育まれてきたオブジェクト介在型学習であるが,わが国では学術的枠組みにもとづく実践例が乏しい.本稿ではオブジェクト介在型学習の再考にあたり,大学博物館のコレクションを用いた分野横断型学習としての有効性を検証し,科学技術コミュニケーション活動の一手法としてどのように一般化できるのかを明らかにすることを目的として,理工系大学の大学博物館における養蚕・製糸風景の描かれた錦絵のキュラトリアルワークショップを実施した.その結果,オブジェクト介在型学習は学生の知識習得および共同作業について有用であることが明らかにされた.本研究により今後,オブジェクト介在型学習の多種多様な事例研究が展開されることにより大学博物館の教育研究に資するとともに,科学技術コミュニケーション活動を通じた学術・文化コモンズとしての大学博物館の機能が一層高まるであろうことが示唆された.
著者
広瀬 侑 佐藤 桃子 池内 昌彦
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.9-15, 2008

1章 植物・藻類・細菌の材料の入手と栽培・培養 2