著者
古田 世子 吉田 美紀 岡本 高弘 若林 徹哉 一瀬 諭 青木 茂 河野 哲郎 宮島 利宏
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.433-441, 2007 (Released:2008-12-31)
参考文献数
27
被引用文献数
4 6

琵琶湖(北湖)の今津沖中央地点水深90 mの湖水検体から,通常Metallogeniumと呼ばれる微生物由来の特徴的な茶褐色のマンガン酸化物微粒子が2002年11月に初めて観測された。しかし,Metallogeniumの系統学的位置や生化学については未解明な部分が多く,また特に継続的な培養例についての報告はきわめて少ない。今回,Metallogeniumが発生した琵琶湖水を用いてMetallogeniumの培養を試みたところ,実験室内の条件下でMetallogenium様粒子を継続的に産生する培養系の確立に成功した。Metallogeniumを産生する培養系には,真菌が存在する場合と真菌が存在せず細菌のみの場合とがあった。実際の湖水中には真菌の現存量は非常に少ないため,細菌のみによるMetallogeniumの産生が湖水中での二価マンガンイオン(Mn2+)の酸化的沈殿に主要な役割を担っていると考えられる。真菌が存在する培養系では約2週間程度の培養によりMetallogeniumが産生された。しかし,細菌のみの培養系においては,Metallogeniumの産生に4週間から6週間を要した。本論文では特に細菌のみの培養系におけるMetallogeniumの発育過程での形態の変化を光学顕微鏡および走査電子顕微鏡を用いて継続観察した結果について報告する。
著者
吉田 康一 吉田 隆一 伊東 智美 殿内 利夫 斎藤 達哉 瀧谷 佳晃 河野 哲 吉田 隆一
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.456-473, 2015 (Released:2016-01-06)
参考文献数
37

目的 : 強酸性水中の塩素酸や次亜塩素酸は大気に触れると反応し分解する. 水が凝固する際は食塩等溶解物を析出し純水に近い形で凍結するが, 電解機能水を氷結して固体で保存すれば対流はなく酸素との接触面は固定化され, 内部成分を保護でき, 殺菌力を維持した長期保存が可能になると考えた. 装置での機能水生成条件を変えて獲得した, さまざまな強酸性電解水と強アルカリ性電解水を氷結し, 保存条件を変えて解凍液の諸性質の変化を調べ, 最適な使用条件を求めた.  材料と方法 : 可変電圧 (0~90V), 直流電流 (0~10A, 整流), 貯留式の二室型機能水製造装置を試作した. 装置は生成される機能水の性状を大幅に変えることができる. 食塩水の電解により得られた酸性水とアルカリ性水を氷結前に10ml採取し, pHとORP値 (mV), 残留塩素濃度 (ppm) の測定を行った. 両水溶液は容器 (80ml) に各60mlを注入し, −17°Cの冷凍庫にて氷結した. 24, 168時間後に容器を取り出し, 室温 (23°C) で約2時間放置して解凍し, 性状を再度計測した. 分析は, 食塩添加率 (要因A) ; 3水準 (0.3, 0.6, 0.9wt%), 電解電流 (B) ; 2水準 (2, 4A), 保存方法 (C) ; 2水準 (容器の密閉の有無), 氷結時間 (D) ; 2水準として, ランダムに繰り返し3回行い, 測定値を項目別に四元配置分散分析した. さらに, 氷結保存の方法と期間が水溶液に与える影響のみを, 同データからWelchのt-testによって検定した. 機能水生成直後の諸性質の測定値に対して, 同一液で氷結解凍後に得られた値を直線方程式にて回帰分析した.  成績 : 分析から酸性電解水では, pHは解凍液でも2.2以内の酸性度を維持した. ORP値は容器の密閉を行う短期間保存で高い値を維持したが, いずれの条件でも解凍液は1,100mV以上だった. 塩素濃度 (ppm) は氷結保存の前後で263ppmから経時的に減少したが, 食塩添加率と電解電流値を高くし, 容器の密閉でこれを抑制できた. 密閉保存, 168時間氷結の解凍液でy=0.5251x−36.212 (r=0.919**) であった. 開栓でも多種の生成・保存条件の解凍液で, 薬事法上の殺菌料としての強・弱酸性次亜塩素酸水に近似した性状を獲得した. アルカリ性水では, pHは生成時の電解電流が高ければ解凍液でもわずかにアルカリ側に傾いた. ORP値は−849.2から解凍後に+224.94~301mVに転じたが, 容器の密閉によって上昇を抑制できた.  結論 : 生成・保存条件の調節により, 容器を開栓し168時間の氷結保存で解凍した酸性電解水でも十分な殺菌能が維持されており, 密閉保存すればこれが向上した. 解凍アルカリ性電解水では, 市販清掃用アルカリ性水に近似した性状であった. 氷結保存法により解凍後も殺菌能をもつ機能水を獲得でき, 人体への臨床応用の可能性が示唆された.
著者
庄司 洋子 菅沼 隆 河野 哲也 河東田 博 野呂 芳明 湯澤 直美 田中 聡一郎 百瀬 優 深田 耕一郎 酒本 知美
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

「自立とソーシャルワークの学際的研究」と題し、自立についての規範的意味とソーシャルワークという実践との関連を包括的に検討した。その中で、社会福祉の領域で、中心的な議論であった経済的自立だけではなく、様々なフィールドで展開されている社会的な自立とソーシャルワークの重要性について明らかにした。
著者
河野 哲也
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.1-20, 1998-12

1. 「感覚質」という残された問題2. 因果説の検討3. バシュラールの現象工学4. 感覚質と身体の現象工学5. 結果と考察"Qualia" provides one of the most difficult questions for the philosophy of mind, since it seems impossible to explain how a phenomenal-sensible quality like color is produced from colorless electronic-chemical processes in a brain. The purpose of this paper is to propose a causal theory of qualia affirming that a qualia is causally produced by some brain state, and thereby "naturalize" qualia in a certain sense. In order to do that, we must, on one hand, eliminate any anthropomorphic implication from the concept of causality, and, on the other hand, abandon the classical concept of matter and substance to fill the conceptual gap between the mental and the physical. We first examine the concept of causality. We distinguish the ordinary concept of causality (1) and the logical concept of causality expressed by counter-factual conditional (2). We use the concept of causality only in a meaning (2), when we explain the relation between brain and qualia causally. We next interpret the philosophy of science of Gaston Bachelard in order to adopt his theory to the problem of qualia. He criticized the classical concept of matter or substance, and affirmed that far from being reducible to a single level, reality involves a hierarchy where lower level structures produce a quality in a higher level. We show that the same can be said about the relation between brain and qualia. Finally, we conclude that we can maintain a causal theory only if we use the logical concept of causality and reject the classical presupposition of substance.
著者
河野 哲也 西 康晴
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.260-268, 2011-04-15
被引用文献数
1

ソフトウェア開発の上流工程である設計工程において作り込まれる欠陥を未然防止・早期検出するためには,欠陥の原因系を検討することが重要である.欠陥の原因系は大きくプロセス視点とドキュメント視点に分けられる.プロセス視点の従来研究は人的要因に関する研究など広く検討されているが,ドキュメント視点における設計欠陥の原因系の従来研究はいくつかあるものの原因系が設計欠陥発生にどの程度関係しているのかは検討されていない.そこで本研究では,ドキュメント視点の原因系の一つとして単語対の意味の類似性に着目し,類似性と設計欠陥発生との関係を実験により明らかにすることを目的とする.本実験では,類似性の高い単語対をいくつか埋め込んだドキュメントと低い単語対をいくつか埋め込んだドキュメントの二種類のドキュメントを用意し,それを入力として設計実験を行った.そして,実験結果を定量的に評価した結果,「単語対の類似性は設計欠陥発生に関係がある」という知見を得た.
著者
松葉 祥一 河野 哲也 廣瀬 浩司 村上 靖彦 本郷 均 加國 尚志
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、2008年に生誕100年を迎えるモーリス・メルロ=ポンティの哲学とくにその身体論に焦点をあて、これまでの研究を総括するとともに、新たな展開の可能性を探究することにある。彼の身体論は、哲学にとどまらず、社会学、精神医学、心理学、美学、教育学、看護学などの分野に刺激を与えてきた。近年さらに認知科学や脳科学、ロボット工学などの分野にも影響を与えている。そこで本研究では、2008年11月25・26日立教大学における国際シンポジウムを始め講演会や研究会、書籍などを通じて、こうした彼の身体論研究の深まりと広がりを総括し、新たな発展のための基盤を築いた