著者
田村 一軌 腰塚 武志 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第38回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.25, 2003 (Released:2003-12-11)

本研究の目的は,移動効率および通過量から一方通行規制を評価することである.一般に,一方通行規制によって移動の平均距離は大きくなるものの,都心部の交通量を減らす効果もある.そこで本論文ではに目的空間を用いて一方通行規制を評価する.はじめに格子状道路網での距離分布および通過量分布を解析的に導出し,次に交互通行規制が時計回り規制に比べ効率的であることを示す.最後に,新宿一丁目の道路網において,平均距離と通過量の標準偏差との間のトレードオフを分析する.
著者
髙原 勇 大澤 義明 湊 信乃介
出版者
一般社団法人 地理情報システム学会
雑誌
GIS-理論と応用 (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.105-114, 2016

<p>Sun glare may be a major hazard for car drivers in the winter. This is because the sun is low in the sky during the morning and evening where the roads are at their busiest with people driving to work and to home. The purpose of this article is to analyze what to extend the sun glare disability arises in rectangular area. We derive the probability of sun glare by use of computing the number of trips driving toward the sun. In addition, we examine how the shape, the direction, the latitude of the rectangular study area affect such probability.</p>
著者
下津 大輔 石井 儀光 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.400-406, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

物流分野における労働力不足が懸念される中,ドローン配送は離島や山間部などの過疎地を中心に有効な輸送手段として期待されている.ドローン配送普及のためには,民法により土地所有者の権利が及ぶ個人敷地上の空域における通行許可が不可欠であり,土地所有者に支払われる上空利用料に焦点を当てている.本研究の目的は,ドローンが個人の敷地上空を通過する回数と距離に着目し,ドローン配送のための上空利用料の基本システムを確立することである.積分幾何学のランダムラインの知見を用い,ドローンの飛行ルートが格子状敷地を通過する回数及び通過長の予測に,対象敷地の面積比と敷地形状が与える影響を調べた.特に,通過数と通過長間の相関係数の解析解を求めることで,都心部・地方部における固定料金と可変料金の使い分けの有用性を提案した.
著者
渡司 悠人 佐野 雅人 鈴木 勉 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.393-399, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

オフグリッド(独立電源)を導入するにあたり,配電網維持管理コストと,切り離された住民へ電力を供給する独立電源コストとの間にトレードオフが生じる.ここでのオフグリッドとは,電力会社の配電網から完全に分離した電力システムを意味している.本研究の目的は,このトレードオフを二目的最適化問題として定式化し,配電網の電源位置の影響も含めオフグリッド政策を分析することである.第一に,単純な地理条件を想定し,直線モデルを用いて,電源と建物の位置関係からオフグリッドの基本的構造を分析した.第二に,ネットワークモデルを用いて,高速処理の算法を提案するとともに,最適なオフグリッド領域は入れ子構造になることを明らかにした.さらに,現実の電柱と建物データを使用し,この算法をつくば市へ適用して,モデルで得られた知見を解釈した.
著者
萩行 さとみ 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-13, 2021-04-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
23

地方創生の主たる施策の一つである「地方創生関係交付金」は、今から30年程前に各自治体に1億円ずつ配分された「ふるさと創生事業」以来の大胆な自治体向けの交付金事業であるが、この30年でどのように変わったのだろうか。本研究では、両交付金を対象に歴史的背景の考察、人口規模や面積等によるジニ係数の比較、テキストマイニングによる事業名の比較によりそれぞれ比較考証した。結論として、次の3つが得られた。第1に両交付金は配分方法が異なるにも関わらず、住民1人あたりの交付金額の偏在度の差異は僅差である。第2に地方創生関係交付金の獲得の有無には、「財政力指数」、「周辺自治体の平均獲得件数」が統計的に有意であること示めした。第3に両交付金の事業タイトルをテキストマイニングを用いて分析したところ、事業テーマはハード事業からソフト事業へ移行していることが分かった。さらに対応分析から、ふるさと創生のような国主導の方が、より自由度の増した地方創生より地域性をより反映していることを可視化した。
著者
小林 隆史 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
no.37, pp.1-6, 2002-10-15
参考文献数
7
被引用文献数
3

本論文の目的はアロンゾモデルを拡張して,太陽光発電がどの地域に導入されるかを理論的に分析することにある.第一に,距離・地代関数を用いて太陽光発電と中心市街地からの距離との関係を論じる.第二に,常磐線における実際の地代データを用いて,太陽光発電導入が進むための条件を,実証的に論じる.
著者
飯田 マリ 大澤 義明 小林 隆史
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.385-390, 2011-10-25
参考文献数
10

世界の観光地で活躍している2階建てオープンバスは、屋根がなく、視点が高い場所に位置する特徴から、歩行や自動車とは異なった景色を楽しむことができる。本研究では、様々な都市で適用できるように、数理的モデルを用いて、2階建てオープンバスからの景観評価を次の二つの観点を用いて行った:(1)街並み全体を「面」で眺め、その構成要素を徒歩の場合と比較することで、どれだけ「非日常的な景色」が見られるか。(2)東京スカイツリーなど街並みの中の「点」に注目し、バス移動に伴い変化する視線方向を分析することで、首振りによる「視対象の見やすさ」がどう変化するか。主要な分析結果は以下の2つである:(1)高い視点場を持つ2階建てオープンバスは走行車線を工夫することで、効果的な非日常的な景色を演出できる。(2)進行方向の決まっているシークエンス景観であることから、カーブでの首振りが観光スポットへの注目の妨げになる。以上より、複数車線を持つ、カーブの少ない観光都市は2階建てオープンバスの導入に適しているといえる。
著者
大道 博文 目良 和也 黒澤 義明 竹澤 寿幸
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.3Rin404, 2020

<p>近年,VRゲームやVirtual YouTuberなどアバターを介したコミュニケーションが普及しつつある.このようなアバターを通じてユーザの心理状態を伝達させるために,特定の感情を示す表情をアバターに表出させる方法や,自身の表情や動作をアバターと同期させる方法がよく用いられている.代表的な表情同期手法としてFace Trackingが挙げられるが,表情を持たない収録済みの音声や合成音声から表情を作り出すことができない.そこで本研究では,音声のみを用いて表情アニメーションの自動生成を行うことを提案する.具体的には発話音声の音響的特徴量を入力とし,表情動画から解析されたAction Unitのパラメータを教師データとして学習モデルを設計する.評価として,既存手法(CNN)と提案手法(CNN-LSTM)のLoss値を比較した.実験の結果,提案手法のLoss値の方が既存手法よりも下がっていることを確認した.また,出力結果を時系列にグラフ化すると提案手法の方がより滑らかに推移していることも確認できた.このことは表情アニメーションにおいて自然な表情として知覚できることを示している.</p>
著者
四衢 深 小林 隆史 石井 儀光 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1483-1489, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
19

日本国内の仏教寺院数は7万を超え,極めてありふれた施設である.しかし,地方を中心に寺院を支えてきた檀家数が減少し,かつ葬儀形態の変容によって,寺院経営は困難な状況となっており,ストックの未利用化すら進行している.本研究の目的は,僧侶による檀家の見守り機能と,寺院を地域の拠点として利用することによって,寺院維持とストック活用を検討することである.先ず,僧侶による檀家の見守りサービスについて,岐阜県の不遠寺を事例に分析した.寺院と檀家の距離は年々増加しているものの,寺院と同一市内の檀家については概ね2km以下の距離となっていること.また,1日あたり3,4軒程度の檀家を巡回して読経を行っており,移動時間を含めて概ね午前中には巡回が終了することより,僧侶にとって過大な負担とはならずに,僧侶による見守り機能が実現可能であることを示した.次に,寺院の地域拠点化について,埼玉県において,面積と施設のジニ係数,及び施設と人口との距離分布の分析を行った.面積あたりで寺院が小学校やコンビニエンスストアよりも均一に分布していること,宗派による協力で小さくなる距離分布を数量的に表し,地域拠点としての活用可能性を示した.
著者
髙市 晃佑 片上 敬雄 黒澤 義明 目良 和也 竹澤 寿幸
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.3Rin231, 2019 (Released:2019-06-01)

近年盛んである深層学習を用い音源を分離することを目的とする.ネットワークを用い通常の会話から特定の人間の声を抽出することを試みる.画像変換を行うpix2pixに注目する.そのアルゴリズムは純粋な画像変換の手続きに基づくため,追加の手続きとして音声を一度スペクトログラムに変換する必要がある.その後,人間の声を分離するためにネットワークを学習し、特に同性と異性の違いに注意して抽出を行う.この観点から、本稿では男女の声を重ねた音声を使って2つの実験を行った.SSIMとカラーマップを評価の基準に使用した.結果として,女性の声が良く抽出できていることを確認した.ところが,女性同士の発話から抽出はできなかった.今回,分離はうまくいかなかったという結論に至った.しかしながら,生成された音声は自然に再生されたと思われる.今後の課題は,こうした人間の判断を客観的に判定することである.
著者
池田 心 森 幹彦 上原 哲太郎 喜多 一 石橋 由子 石井 良和 竹尾 賢一 小澤 義明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.87, pp.49-54, 2008-09-12
参考文献数
3

京都大学情報環境機構では,PC 端末サービス・メールサービス・認証サービスを中心とする教育用コンピュータシステムの提供を行っている.利用者管理という視点から見たとき,本システムの特徴として,1)学生に加え教職員等全ての京大構成員を利用者として認めること,2)身分番号とは異なる ID を与え,身分が変わっても同じ ID やメールアドレスが使えること,3)利用開始に際し学生には講習会の受講を義務づけていること,が挙げられる.本稿では,この特徴に起因するさまざまな課題と,それにどう対処してきたかを報告する.Educational Computer System of Kyoto University mainly provides PC services, E-mail services and authentication services. From the viewpoint of user management, this system has 3 major characteristics, 1) it is available to all Kyoto University members, not only students but also staffs and faculties, 2) it provides an user-ID "a0xxxxxx" which differs from his student-ID or staff-ID, and he can use the same user-ID even if his position is changed, and 3) before user registration, students must attend a short lecture about computer literacy and security. In this paper, various issues arising from such characteristics and our solutions for them are described.
著者
堀 龍一 小林 隆史 高原 勇 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1335-1340, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
8

本研究の第一の目的はクロフトンの微分方程式を適用して,扇形領域内に一様かつ独立して分布する二点間の直線距離の平均と分散を導出することにある.既存研究では円盤内や円周間でランダムに分布する二点間の平均距離の解析表示が求められているが,これを拡張した.加えて,二つの扇形間直線距離の平均値と標準偏差も解析的に導出した.第二の目的は,災害への備えが必要な我が国において,平時では循環バス,被災時では電源支援の役割を果たす燃料電池バスの移動施設としての効率性について論じることにある.理論的に導いた扇形平均距離の結果を用いて,固定場所からの派遣距離との比較などを通して,被災時における移動施設による電源供給の効率性を求めた.
著者
大澤 義明 小野田 竜已 小林 隆史
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 = Transactions of AIJ. Journal of architecture, planning and environmental engineering (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
no.634, pp.2605-2612, 2008-12-30
参考文献数
26
被引用文献数
1

The cohort-component method is widely used for population projection of local governments in Japan. The purpose of the paper is to examine aggregation errors caused by the cohort-component method, which can account for age distribution. First, we show that the populations estimated at aggregated level frequently are less than those at disaggregated level by using municipality data in Ibaraki Prefecture. Second, we prove this tendency through a simple mathematical model using Lexis diagram by focusing on internal migration.
著者
池田 碩 澤 義明
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.18, pp.13-28, 2013

2011年3月11日、東北地方太平洋岸の広い範囲で、世界的にみても観測史上最大級の地震が発生した。この地震は、これまでわれわれが抱いていた自然現象へのイメージを一変させた。単に、その大きさや発生の要因、プロセス、振動波の伝播のようすといった物理的な要素にとどまらず、現代の科学技術や社会のあり方をも揺さぶる力を示した。
著者
大澤 義明 古藤 浩
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では,迷惑施設配置モデルを構築し,理論的に分析を加えることである。得られた成果は少なくとも以下の3点である。第一に、迷惑施設配置を多目的計画法として定式化し,迷惑施設の配置場所候補となる,パレート最適集合やトレードオフ曲線の導出方法を示す.楕円距離マクシミニ型レクティリニアー距離ミニサム型モデル、レクティリニア距離ミニサム型マクシミニ型モデル、レクティリニア距離ミニマックス型マクシミニ型モデルなどを解く一般的解法を提示した。さらに、移転を考慮した場合、k次距離ボロノイ図を利用して有効集合やトレードオフ曲線を解析的に導けることを明らかにした。第二に、分枝限定法を利用した数値解法を用いて、より一般的な状況の下での、ミニマックス距離制約やマクシミニ距離制約での配置場所を数値的に求め、パレート最適集合を近似する方法を示した。茨城県、山形県の人口分布を事例対象とした。第三に、旧厚生省から各都道府県に対しごみ処理圏域広域化促進の指導があった。広域化はごみ焼却から発生するダイオキシン類を大幅に減少させるが、一方でごみ収集車からの排気ガスを増加させる。そこで、このトレードオフ関係に着目し、ダイオキシン類及び排気ガスをともに減少させる広域化計画を数理計画法により求め、現在の茨城県案を評価した。ダイオキシン類発生量を基準値及びごみ発生予測値から求め、排気ガス量を茨城県内のごみ収集車走行実距離と道路網距離から推定した。そして、茨城県案よりパレート最適の点で優れた多くの代替案を提示した。さらに、広域化計画にて、現存の市町村間ごみ処理協力関係への配慮がどの程度足かせになるのかをも数値的に示した。
著者
大澤 義明 栗田 治 吉瀬 章子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

縮小時代やインフラ老朽化に直面し,道路,交通標識,信号機,図書館,ガソリンスタンド,防災拠点などの施設の整備の見直しが必要となってきた.廃止手続きとして計算負担が軽く現実の政策実施の近似となるけちけち算法の効率性が高いことを証明した.現実データへの適用により,平均距離最小化問題の最適値とカバー率最大化問題の最適値との相関が高いこと,パレート最適配置が狭いことを地理空間を通して確認できた.全体の効率性と地域間公平性とのトレードオフ状況を視覚化することにより,平成の大合併や昭和の大合併の影響を評価した.
著者
大澤 義明 鈴木 勉 秋山 英三 吉瀬 章子 宮川 雅至 小市 俊悟 渡辺 俊 堤 盛人 藤井 さやか 竹原 浩太 有田 智一 田中 健一 小林 佑輔 櫻井 一宏
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題は,老朽化する都市インフラ整備の選択集中に関して,独自にデータ収集し,実証分析を実行し,同時に理論的知見を導くことを通じ,施設整備に関する具体の政策を提言することを目的としている.最初に研究基盤を構築した上で,逐次廃止手法の効率性評価,リスク分析における効率性と冗長性とのトレードオフ構造等に関する理論研究・実証研究を展開した.様々な自治体と意見交換・情報収集することから,実装対象を北海道網走郡津別町,茨城県土浦市,茨城県常総市に絞り,研究・理論の自治体への実装を進めた.
著者
大澤 義明 古藤 浩 栗田 治
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

主たる研究成果は以下の5点からなる.1)原風景の要素であるスカイライン景観と校歌との関係を考察した.平面上眺望点から,山頂仰角を算出し,最も大きな仰角となる山頂に関して領域分割を理論的に求めた.一方で,関東地方公立高校897校の歌詞を調査し,歌われている山を抽出した.そして,領域分割と校歌分布とが8割程度合致することを実証した.2)面的に広がる夜景景観の数理評価モデルを構築した.夜景規模を測る尺度として立体角を導入し函館市街拡大が函館山夜景や裏夜景にどの程度寄与しているのかを時系列(1975年から2000年まで5年間隔6時点)比較することにより定量的に明らかにした.質を求める指標として道路可視率を導入し,函館では度重なる大火の影響で道路幅員が広り防火遮断帯を配置し,結果としてメリハリのある夜景となったことを数値的に検証した.3)季節前線は日本の景観の大きな構成要素である.その一つとして桜前線を取り上げ,モデルや現実データから桜前線近接性時空表示方法を提案したり,日本の中で桜前線を早くかつ長く楽しめるパレート最適場所を求めたりした.また,これらの多項式計算アルゴリズムを提示した.4)斜線規制に換わる代替規制として2003年1月に建築基準法に導入された天空率規制の問題点を解析的に明らかにした.円環敷地や直線敷地に直方体建物建設という単純な数理モデルを通して,天空率規制導入は,高層建物の許容,共同立替を非促進,建築形態への影響から見て斜線制限の代替指標としての不自然さを数学的に証明した.このようにして,規制導入が町並み景観,都市内のスカイラインへ強く影響することを指摘した.
著者
大澤 義明
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本年度実施した主たる研究内容は以下の2点である.1)少子高齢化を迎え社会構造が大きく変化しつつあり,将来の自治体が目指すべき将来像や,政策の方向性を定める総合計画や都市計画マスタープランにおいては,人口フレームが設定されるのが通常である.そこで,北関東3県(茨城県,栃木県,群馬県)の全112市町村の総合計画を冊子ベースで収集し,総合計画における目標人口と国立社会保障・人口問題研究所による趨勢人口を比較した.過大推計の度合いを数値的に把握し,どのような自治体が過大推計しているかといった要因分析を実施した.2)地方交付税額の算定には市町村面積に依存する要素があり,複数の市町村に跨る未定境界地域であった湖などで境界を設定する動きがみられる.境界確定の手法には近年「等距離線主義」手法が採用されるケースが多い.そこで,この手法により配分される地方交付税の推計を行い,市町村の現状や湖との関わり方を整理した.その上で湖境界の確定によって増加する地方交付税配分について考察した.等距離線主義の湖分割のみによる交付税配分では,湖に関連する費用負担を反映した配分を実現できないことを,霞ヶ浦・北浦を例に示した.湖分の増額交付税については湖境界の内側・外側に要する事業費用の拠出を算定した後,各市町村の一般財源として振り分けることが,環境保全・持続可能社会の形成に向けて必要であることを示した,水際線からの湖バッファー・陸バッファーという,湖への交付金の新たな再配分を提示した.