著者
阿波 邦彦 堀江 淳 白仁田 秀一 堀川 悦夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.D3P2523, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】 Timed Up and Go Test(以下、TUG)は機能的移動評価として用いられることが多く、起立動作や歩行動作、方向転換を含む複合運動であるため多くの身体機能が影響する.慢性呼吸不全患者の運動機能評価に関する研究で、筋力評価、運動耐容能評価などは多くなされているが、機能的移動評価であるTUGはほとんど検討されていない.しかしながら、慢性呼吸不全患者の多くは高齢者であり、呼吸困難と運動不足による運動機能低下を呈していることがしばしば確認される.本研究では、慢性呼吸不全患者を対象にTUGが慢性呼吸不全患者において評価法の一つに成りえるのかを検討したので報告する.【対象】 対象は当院で呼吸リハビリテーションを実施している慢性呼吸不全患者21名(男性15名、女性6名)とした.平均年齢は77.1±9.2歳、標準体重88.7±11.1%、疾患の内訳として、COPD 11名、塵肺4名、肺結核後遺症3名、びまん性汎細気管支炎2名、気管支喘息1名であった.MRC息切れスケール(以下、MRC)はGrade 2が7名、Grade 3が9名、Grade 4が4名であった.なお、対象の選定においては、重篤な内科的合併症の有する者、歩行に支障をきたすような骨関節疾患を有する者、脳血管障害の既往がある者、その他歩行時に介助を有する者、理解力が不良な者、測定への同意が得られた者なかった者は対象から除外した.【方法】 測定項目はTUG、MRC、肺機能検査、呼吸筋力検査(最大吸気口腔内圧(以下、MIP)、最大呼気口腔内圧(以下、MEP))、上肢筋力として握力、下肢筋力として膝伸展筋力検査、6分間歩行距離(以下、6MWD)、The Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire(以下、NRADL)とした.【結果】 TUG測定結果について、全対象者では8.1±2.3秒であった.MRC 2では5.7±0.6秒(n=7)、MRC 3では9.4±2.1秒(n=9)、MRC 4では9.2±1.4秒(n=5)であった.MRC別比較においてMRC 2とMRC 3(p=0.01)、MRC 4(p=0.04)の間に有意差が確認された.また、TUGと身体機能の関係において、MRC 2.9±0.8(r<0.000、p=0.740)、MIP 54.7±29.4cmH2O(r=0.018、p=-0.510)、MEP 80.5±37.5cmH2O(r=0.004、p=-0.600)、膝伸展筋力検査23.0±10.5kgf(r=0.006、p=-0.576)、6MWD 320.0±117.3m(r<0.000、p=-0.719)、NRADL連続歩行距離6.7±2.7(r=0.002、p=-0.634)であった.他の項目では有意な相関は確認されなかった.【まとめ】 TUGとMRC息切れスケール、6MWDとの間に相関を認めたことで、TUGは慢性呼吸不全患者の機能的移動能力を反映することが示唆された.またMRC別比較を行い、MRC 2とMRC 3、4との間に有意差が確認されたことから、重症慢性呼吸不全患者の機能的移動能力の評価としては、より鋭敏に反応する評価であると考えられた.これらよりTUGが慢性呼吸不全患者において評価法の一つに成りえることが示唆された.
著者
齋藤 真由 白岩 祐子 唐沢 かおり
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究
巻号頁・発行日
2018
被引用文献数
3

<p>本研究の目的は,市民の司法参加に対する認知構造を,広瀬(1994)の要因関連モデルなどで提出されている3つの評価の枠組みから把握するとともに,それらが参加意欲に与える影響を明らかにすることである。本研究が着目した3つの評価とは,市民における知識や経験の有無に関する「実行可能性評価」,負担感についての「コスト評価」,市民による司法参加の効用についての「ベネフィット評価」である。都内の大学生74名を対象とする予備調査で得られた自由回答をもとに,司法参加に対するさまざまな認知を収集し,上記3つの評価に分類した。本調査は都内の大学生を中心とする206名を対象に実施した。因子分析の結果,実行可能性評価とベネフィット評価に関する因子はそれぞれ4つ,コスト評価に関する因子は1つが得られた。その中でもベネフィット評価に含まれる「親和性の向上」と「透明性の向上」が参加意欲を高め,実行可能性評価に関する「知識・経験の欠如」とコスト評価に関する「責任の重さ」が参加意欲を低下させていることが明らかになった。これらの結果にもとづき,今後研究が進むべき方向性について議論した。</p>
著者
兒玉 昂幸 白石 日出人 渕上 哲
出版者
福岡県水産海洋技術センター
雑誌
福岡県水産海洋技術センター研究報告 Bulletin of Fukuoka Fisheries and Marine Technology Research Center (ISSN:09192468)
巻号頁・発行日
no.24, pp.13-23, 2014-06

福岡県有明海区の河口域漁場では,ノリ網に付着したノリ葉体が数日で消失する現象が以前から発生しており、生産性の低い漁場となっている。しかし、河口域漁場は栄養塩が豊富にあり、ノリの色落ちが起きにくいため、原因を特定し有効な対策を講ずれば,ノリの生産性を向上させることができると考えられた。そこで,ノリ葉体消失の原因と考えられる低塩分海水による影響と藻食性動物の食害について検討を行ったところ,現場においてカモの摂食を確認し,消化管からもノリが見られた。また,カモの侵入を防ぐための囲い網を設置したノリ網では,消失は発生しないことが確認された。以上のことから,ノリ葉体消失はカモ類による食害が原因であり,カモ類のうち特にオナガガモとヒドリガモによる影響が大きいことが明らかとなった。
著者
黒木 政秀 白須 直人
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

光線力学療法とは、生体に無害な特定波長の光を光感受性物質に照射し、惹起した光化学反応で細胞を傷害する方法で、低侵襲性で安全性が高い。近年報告されたフタロシアニン系化合物IRDye700DXは、生体透過性が高い690 nmの近赤外光線(NIR)で励起される極めて有望な光感受性物質であるが、正常細胞にも光毒性が及ぶという問題は残されている。我々は、腫瘍関連抗原CEAに特異的なヒトモノクローナル抗体C2-45をIRDye700DXで標識した複合体(45IR)を作製し、胃癌や大腸がんなどのCEA産生癌細胞を殺傷する光免疫療法(PIT)の開発を試みた。これまでCEA産生癌細胞に対するインビトロでの増殖抑制効果は確認できているため、今回はインビボでの抗腫瘍効果を検討した。ルシフェラーゼ遺伝子を恒常発現するCEA産生癌細胞を背側両体側に皮下移植したヌードマウスに対して45IRを腹腔内投与し、その24時間後、インビボ・イメージング装置IVISによる蛍光観察によって45IRの腫瘍への集積を調べた。次いで、右体側の腫瘍に対してNIRを照射することでPITを実施した。その結果、45IR投与群では、光照射終了直後においても、非照射の左側腫瘍と比較して顕著な細胞死が認められた。また、腫瘍径の計測からも、45IR投与マウスの被光照射腫瘍にのみ有意な効果が認められた。以上より、45IRを用いたPITはCEA産生癌細胞に対して極めて選択的かつ強力な抗腫瘍効果を示すことが判明した。この方法が実用化できれば、腕バンドやコタツ型のNIR照射装置を開発し、手術や化学療法あるいは放射線療法で根治できなかった患者さんの癌細胞、とくに血中やリンパ管に流出して転移の原因となる癌細胞に対して、仕事中や就寝中の治療で根治できることが期待される。
著者
池見 元宏 斎藤 久一 小泉 武夫 野白 喜久雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.831-834, 1981-12-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
21
被引用文献数
1

1. 秋田県産市販清酒特級酒5点 (本醸造酒3点, 純米酒1点, 吟醸酒1点), 1級酒7点 (本醸造酒3点, 純米酒1点, 純米吟醸酒1点, 普通1級2点), 2級酒6点 (いずれも普通酒) の合計18点を試料として各種タイプ別清酒の成分比較を行った。2. 一般成分の分析から純米酒, 本醸造酒は味の濃醇な清酒, 2級酒はアミノ酸度が少く, 糖分, 日本酒度が高い淡れい甘口型であることなどを知った。3. 微量成分としては3ーデオキシグルコソン値, アルデヒド量, フーゼル油, エステル, ケト酸, フェリシアナイド還元値を比較したところ, その含有量には清酒のタイプ別により特徴的差が見られた。4. 有機酸の組成では純米酒にコハク酸, リンゴ酸が多いこと, アミノ酸組成でも清酒のタイプ別でその構成比が異なることを知った。5. 香気成分では吟醸酒が高級アルコール類およびエステル類ともに多量で, 級別では特級<1級<2級酒の順位であり, 高級酒に香気成分が高い傾向にあることを知った。
著者
白井 康仁
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.143, no.3, pp.131-136, 2014 (Released:2014-03-10)
参考文献数
20

ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)はジアシルグリセロール(DG)をリン酸化し,ホスファチジン酸(PA)に変換する脂質キナーゼであり,これまでに10種のサブタイプが報告されている.周知のようにDGはPKCの活性化因子であり,産生されるPAも様々な酵素の活性を調節することから,DGKはPKCの抑制やPAの産生を介して生体内において重要な働きをしていると考えられている.しかし,神経系に多く存在するβサブタイプの機能は長い間不明であった.そこで,我々はDGKβのノックアウト(KO)マウスを作製し,その神経系における機能を調べた.その結果,DGKβKOマウスは,記憶障害と感情障害を示した.また,この感情障害は10日間のリチウム処理で改善した.一方,DGKβKOマウスから調製した海馬および大脳皮質初代培養細胞は,突起の分岐の数およびスパイン数が有意に減少していたが,DGKβを過剰発現させることで形態異常は回復した.さらに, DGKβKOマウスの海馬および大脳皮質において,スパイン密度が減少していることを確認した.これらのことから,DGKβは神経細胞の形態を調節・維持することにより神経ネットワークの形成,ひいては記憶や感情などの脳高次機能において重要な働きをしていることが明らかになった.本総説では,このDGKβKOマウスから得られた知見を中心に,神経系におけるDGKβについて概説するとともに,DGKβの記憶障害や感情障害の予防薬および改善薬のターゲットとしての可能性と問題点について論ずる.
著者
竹内 昭博 土橋 かおり 島澤 謹江 五十嵐 久佳 坂井 文彦 白鷹 増男 池田 憲昭
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.319-326, 2000 (Released:2017-08-21)
参考文献数
7

慢性頭痛の自覚症状を把握するために「頭痛日記」が臨床現場で用いられている.「頭痛日記」に記載されたグラフ(頭痛曲線)の面積(頭痛の強さの積分値)を頭痛量と定義し,その計測を画像解析の技術を用いて自動的に行うシステムを開発した.同時に,頭痛曲線の特徴を表すパラメータ(頭痛の最大強度や持続時間,発作回数,日差変動等)を計測・算出した.本システムは,MS-Windows NT/98/95のインターネットエクスプローラ(IE4.1以降)上で稼働する.システムは,頭痛日記画像ファイルの入力や計測結果の集計・提示を担うHTMLファイル(HTML+VBScript,TKS.HTM 20 KB)と,WWWブラウザから画像ファイル名と輪郭線のRGB値を受取り,画像の二値化・抽出・計測を行うActive Xコントロール(TKS.OCX 100 kB,Microsoft VC++6.0)とから構成されている.自動計測した頭痛量は病状をよく反映しており,頭痛を定量的に把握するための一指標として,頭痛量が有用と考える.なお,本システムは,http://info.ahs.kitasato-u.ac.jp/tks/tkssetup.htmからダウンロード可能である.

1 0 0 0 OA 東谷鈔 11巻

著者
白井寛蔭 編
出版者
巻号頁・発行日
vol.[4],

1 0 0 0 OA 樹木和名考

著者
白井光太郎 著
出版者
白井光太郎
巻号頁・発行日
vol.[1], 1933
著者
谷口 徹 大川 茂樹 白井 克彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.121, pp.87-92, 2002-12-16
参考文献数
4
被引用文献数
1

音声・音楽識別は音響コンテンツへのインデキシングやその前処理など、様々な応用が期待されており、現在多くの手法が提案されている。本研究では特に音声・音楽識別に用いられる特徴量に注目し、先行研究で有効性を示されている4種の特徴量の評価を行った。評価には性別やBGMの有無、歌声と楽器音の重畳などを考慮し設定した7種のクラスによりラベル付けをしたデータセットを用い、各特徴量の誤認識の傾向を分析した。Speech/Music discrimination has been studied for various applications such as automatic indexing of audio data. In this paper, we focus on four acoustic features examined in related studies and evaluate these features with audio data sets classified into seven audio classes.