- 著者
-
笹谷 春美
- 出版者
- 日本家族社会学会
- 雑誌
- 家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.2, pp.36-46, 2005-02-28 (Released:2009-08-04)
- 参考文献数
- 17
- 被引用文献数
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本稿は, 高齢者介護における「社会化」のプロセスとその問題点を, 家族介護者の視点から明らかにするものである。介護の「社会化」とは, 家族介護者が家庭内で行うアンペイド・ワークを外部の社会的労働に転化する道とその労働を「社会的に評価」する道がある。先進福祉国家では, 福祉国家のリストラにより, 公的サービス供給によってカバーされず, 介護システムの外部に押し出される高齢者の割合が増える傾向にある。北欧では, このような背景から家族介護が再発見され, 家族を介護する人々のニーズに応え, その市民的権利を保障する「家族介護者サポート政策」の制定の新たな動きがある。介護保険制度の施行にもかかわらず, 「社会化」の進展も抑制され, 仕事をやめてでも介護を強制される孤独な中高年女性が多数存在する日本においてこそ, 家族介護者サポートの議論はジェンダーやケア・バランスの視点から深められなければならない。