著者
斎藤 成也 藤尾 慎一郎 木部 暢子 篠田 謙一 遠藤 光暁 鈴木 仁 長田 直樹
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2018-06-29

リースしているサーバー(すさのを)および国立遺伝学研究所のスーパーコンピュータを用いて、現代人ゲノムの解析環境をととのえた。2018年度に購入したサーバー2台(うみさちとやまさち)を用いて、古代人や公開されている現代人ゲノムや動植物ゲノムデータの格納をおこない、それらデータの解析環境を整えた。季刊誌Yaponesianの2020年はる号、なつ号、あき号、2021年ふゆ号を編集刊行した。新学術領域研究ヤポネシアゲノムのウェブサイトを運営した。特に今年度は英語版を充実させた。2020年6月27-28日に、立川市の国立国語研究所にて総括班会議と全体会議をハイブリッド方式で開催した。2021年2月15-17日に、国立遺伝学研究所と共催で「ゲノム概念誕生百周年記念シンポジウム」をオンラインで開催した。2021年3月2-3日に、 「第2回くにうみミーティング」(若手研究者育成の一環)を開催し、公開講演会もオンラインで実施した。2021年3月19-21日に、佐倉市の国立歴史民俗博物館にて全体会議と総括班会議をハイブリッド方式で開催した。
著者
加藤 克知 イルダ ビダル 篠田 謙一 真鍋 義孝 北川 賀一 小山田 常一 六反田 篤
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大学医学部保健学科紀要 (ISSN:09160841)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.13-17, 2002-12

頭蓋骨折と思われる傷痕を有するインカ時代ペルー先住民のTrepanation(頭蓋穿孔)施術頭蓋3例を観察し,骨折痕と頭蓋穿孔の関連について考察した.頭蓋穿孔痕は,一例は骨折受傷部と異なる部位に,残り2例は骨折受傷部に一致して存在した.これらの観察から得られた所見は,頭蓋穿孔が何らかの治療的意図を持って骨折痕に対してとられた処置であることを示唆する.すなわち,特にインカ時代は戦闘行為による頭蓋骨折発生頻度の高い時期であり,当時人々は頭蓋穿孔が骨折受傷後の状態や予後の改善に有効であることを経験的に認識していたと考えられる.Three trepanned skulls with fracture traces in ancient Peru (Inca period) were presented, and whether the trepanations were intended to the fracture lesions or the following symptom was briefly discussed. The skull fractures, probably resulting from violence, was located in the frontal or parietal regions. In one case, the trepanations were performed in different regions from the fracture lesions, and in other two cases the operations were probably done at the correspondent regions to the lesions. The observation on these skulls suggests the possibility of trepanations as an intended therapeutic procedure of the skull fractures in Inca period of Peru, where people might frequently experienced the traumatic injuries by violence such as the fight.
著者
西藤 清秀 吉村 和昭 岡崎 健治 篠田 謙一 米田 穣 吉村 和久 板橋 悠 阿部 善也
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2022-04-01

2022年度から2025年度にマカバ1号墳のできるだけ多くの石室の調査を実施し、副葬品の考古学的分析、人骨の人類学的分析や理化学分析を通して被葬者の人体的特性や集団構成、食性、出生地の同定を行う。またマカバ第1号墳の被葬者との特性の比較を行うために、1号墳の隣接地に所在するマカバ古墳群東地区の古墳を調査し、1号墳と同様の分析を実施する。最終年度の2026年には補足調査・分析を行い、結果をまとめる。
著者
篠田 謙一 神澤 秀明 角田 恒雄 安達 登
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.127, no.1, pp.25-43, 2019
被引用文献数
5

<p>佐世保市下本山岩陰遺跡から出土した2体の弥生人骨の核ゲノム解析を行った。これらの人骨は,遺跡の地理的な位置と形態学的な研究から縄文人の系統を引く西北九州弥生人集団の一員であると判断されている。しかし,次世代シークエンサを用いたDNA解析の結果,共に縄文系と渡来系弥生人の双方のゲノムを併せ持つことが明らかとなった。これらの人骨の帰属年代は弥生時代の末期にあたる。本研究結果から,この時期には九州の沿岸地域でも,在来集団と渡来した人々との間で混血がかなり進んでいたことが明らかとなった。このことは,これまで固定的に捉えられていた渡来系弥生人と西北九州弥生人の関係を捉え直す必要があることを示している。また本研究によって,古人骨の核ゲノムの解析で得られたデータは,このような混血の状況を捉えるのに有効であることも示された。今後,北部九州の弥生人骨のゲノム解析を進めていけば,日本人の成立のシナリオは更に精緻なものになることが期待される。</p>
著者
安達 登 篠田 謙一 梅津 和夫
雑誌
DNA多型 = DNA polymorphism
巻号頁・発行日
vol.17, pp.265-269, 2009-05-30
参考文献数
17
被引用文献数
1
著者
篠田 謙一
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological science. Japanese series : journal of the Anthropological Society of Nippon : 人類學雜誌 (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.116, no.2, pp.154-160, 2008-12-01
参考文献数
30
被引用文献数
1

歴史時代と現代の台湾原住民の関係について考察する目的で,国立台湾大学が所蔵する台湾原住民ブヌン族の古人骨試料からDNAを抽出し,ミトコンドリアDNAの分析を行った。合計で34体分の肋骨サンプルを実験に用い,最終的に25体で塩基配列データを得た。全体で15のハプロタイプを区別したが,特定のハプロタイプが多数を占めると言うことはなく,多様性が保たれていることが判明した。次にハプログループ頻度を用いて現代の原住民8集団との系統関係を解析した。その結果,今回のサンプルは現代のブヌン集団に最も近縁であることが示され,少なくともブヌン族では歴史時代からの遺伝的な特徴が,そのまま保存されていることが証明された。また各集団の遺伝的な関係は,基本的には地理的な近縁関係を反映していることも明らかとなった。今回の研究は,これらのサンプルに解析できる量のDNAが保存されていることを明らかにし,博物館・大学に収蔵されている人骨試料が,現在では収集が困難になりつつある原住民のDNAサンプルの供給源としても大きな価値があることを証明した。<br>
著者
篠田 謙一
出版者
日経サイエンス
雑誌
日経サイエンス (ISSN:0917009X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.10, pp.74-79, 2007-09

今からおよそ100年前,米国の考古学者ビンガム(Hiram Bingham III)に率いられたエール大学の調査隊は,南米のアンデス山中を進んでいた。スペイン征服時代に神父デ・カランチャ(Antonio de Calancha)がその存在を書き残したインカ最後の都,ビルカバンバを探していたのだ。
著者
西本 豊弘 篠田 謙一 松村 博文
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

茨城県取手市の中妻貝塚から、縄文時代後期初頭の人骨100体以上がひとつの小さな土壙墓からまとまって出土した。これまでに縄文時代の遺跡からは多くの人骨が出土しているが、ひとつの土壙からこのような多数の人骨が出土した例はない。しかも発掘状況から、被葬者は堀ノ内2式期のごく短期間のうちに死亡した集落内の血縁の濃い人々であったと考えられた。縄文時代の社会組織については、住居址や埋葬形式などの考古学的事例や民族学的事例から論議されてきたが、いずれも想像の域を出ていない。とりわけ、人骨から議論されたことは一度もない。考古学を専門とする西本は取手市の依頼により中妻貝塚の発掘報告書を刊行すると同時に、1994、95年にわたり形質人類学を専門とする松村を分担者として、科学研究費助成金(一般C)の支援を受け、人骨の復元・整理・記載等の作業をおこなった。また試験的にこれら被葬者のうち29体の歯の計測値にもとづく血縁関係の分析を行ったところ、この29体に2つの家系とみられるクラスターが見出された。今回の基盤研究(C)による研究では、一つには、中妻貝塚人の歯の計測値にもとづいて推定された血縁関係がどの程度まで信頼できるかを別の方法で検討することとし、さらには中妻貝塚以外の遺跡について血縁関係を追及することとした。前者については、分子人類学的手法として、歯根部からDNAを抽出することにより血縁解析を実行した。最終的に歯の形態とDNAによる血縁関係の突合せることによって、確信のもてる血縁関係を明らかにした。歯冠計測による血縁推定とDNAによる血縁解析との対比が大きく注目されるところである。従来の単独の方法による血縁推定は精度の限界から、推定がどの程度事実を反映しているのか、検証が困難であったからである。両者の方法による結果の突合せは画期的であり、血縁推定の有効性や方法論についても大きな進歩が期待される。
著者
篠田 謙一
出版者
佐賀医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

平成13年度に追加した新たな試料は、福岡県鞍手郡新延野田遺跡から出土した人骨である。この横穴遺跡は古墳時代のものであるが、この地域の弥生時代のサンプルが手に入らなかったので、古墳時代の遺跡を選択した。全部で6個体のサンプルからDNAを抽出し、PCR法を用いてミトコンドリアDNAのD-loop領域の一部を増幅した。残念ながら人骨の保存状態が悪く、塩基配列の決定ができたのは一個体のみであった。現代人との相同検索の結果、この配列は琉球の現代人と一致することが判明し、その系統は日本の基層集団に由来する可能性が示唆された。本年度は研究の最終年度であるので、これまでに蓄積した古人骨データを用いて、縄文・弥生・現代日本人の関係を解析した。その結果、以下の事柄が明らかとなった。1.縄文人とアイヌ・琉球の人々とは共通するミトコンドリアDNAハプロタイプを持ち、その近縁性が確認された。2.同時に縄文人と朝鮮半島の人々との間にも共通する配列が多く出現し両者の近縁性も無視できないことが新たに判明した。3.縄文人には南太平洋諸島に特有なミトコンドリアDNAの配列は存在せず、今回の解析でもたらされたデータからは縄文人の南方起源ないし密接な関係は支持されない。むしろ縄文人の起源は、アジアの広い地域に散在しているように思える。4.唐古・鍵遺跡のmtDNAのタイプは、モンゴル等の北方系の集団やアイヌと共通の塩基配列を持ち、最近の遺伝学的な研究の結論から演繹すれば、縄文系の特徴を持つと考えられる。5.渡来系弥生人にはアイヌ・琉球と共通する塩基配列も存在するが、その割合は縄文人ほどではない。6.本土日本人と縄文・弥生人との間には、共に共通する配列があり、両者が現代日本人の祖先であることが示唆された。
著者
土肥 直美 篠田 謙一 米田 穣 竹中 正巳 西銘 章 宮城 弘樹 片桐 千亜紀
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、南西諸島先史時代人の地域差の問題に、形質、遺伝子、年代、生業、考古などの側面から総合的な解明を目指した。南西諸島の先史時代人については、先島諸島の保存良好な人骨が未発見という課題が残されているが、本研究ではまず、沖縄諸島を中心に形態変異の解明に取り組んだ。沖縄先史時代人の基礎データ収集と整理が進んだことが成果である。また、石垣島では更新世人骨の他、縄文時代相当期(下田原期)、弥生~平安相当期(無土器期)の人骨が発見され、今後の分析によってさらに地域性の解明が進展する可能性が広がった点は大きな成果である。
著者
西藤 清秀 青柳 泰介 吉村 和昭 樋口 隆康 中橋 孝博 篠田 謙一 濱崎 一志 宮下 佐江子 豊岡 卓之 石井 香代子 石川 慎治 中橋 孝博 濱崎 一志 篠田 謙一 吉村 和久 宮下 佐江子 花里 利一 佐藤 亜聖 石川 慎治 後藤 完二 佐々木 玉季 吉村 和久 星 英司 鈴井 恭介 アサド カーレッド アサド ワーリッド
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

パルミラ遺跡北墓地129-b号家屋墓の発掘調査を通してパルミラ古代墓制の変遷が理解できつつある。この墓にローマ人が関与する可能性も碑文から読み取れる。この調査には3次元計測システムを活用し、倒壊していた家屋墓の復元も試み、一部視覚化が出来ている。この墓の倒壊に関わる重要な要因として地震の痕跡を墓周辺で検出した。さらにパルミラ滅亡後に1歳未満の乳児が129-b号墓周辺に故意的に埋葬されている事実も確認している。
著者
篠田 謙一 加藤 克知 北川 賀一 米田 穣
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究ではプレインカからインカ帝国成立期の人骨試料を用いて、集団の系統関係の解明と古代社会の多元的な復元を試みた。その結果、アンデス南海岸地域では、紀元前には北部海岸地域と遺伝的に似ているが、時代とともに山岳地域からの集団の移入を受け,インカ時代には集団の置換が起こったことが判明した。一方北海岸においては人口規模の違いから、集団の遺伝的組成に変化はなく、文化変容が遺伝的な変化を伴わないものであることが判明した。これらの結果は古代アンデスにおける文化変容を解釈する際に新たな重要な情報を付け加えることになった。
著者
篠田 謙一 加藤 克知 北川 賀一 真鍋 義孝 中橋 孝博
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

インカによる統一以前のアンデスには、多数の地域国家が存在した。これらは生業形態や地理的環境から大きく海岸地帯と山岳地域または南部と北部に分類することができる。今回の研究では、かつてこれらの地域に存在した集団の遺伝的な関係と、集団内部の血縁関係を考察する目的で、骨と歯の形態学的な研究と人骨から抽出したDNAを解析した。4年間の研究で、ペルー北海岸では紀元前後から11世紀までの遺跡、アンデスの山岳地域ではインカ時代の遺跡、そして南部の海岸地域では紀元前後から7世紀にかけての遺跡を調査して、合計で2百体以上の人骨の研究を行うことができた。得られたサンプルに対し、形態学的な研究からは、各集団の歯の形態学的な特徴の抽出、頭蓋骨の形態学的な研究、そして頭蓋変形と開頭術の時代的な変遷についての解析を行った。また、DNA分析では、抽出したDNAを用いてPCR法でミトコンドリアDNAのD-loop領域とcoding領域の一部を増幅した。この塩基配列データ解析することによって、遺跡内部での血縁関係の追求と、周辺遺跡との系統的な関係についての考察を行った。北海岸のシカンの遺跡では、埋葬された人物間の血縁関係をDNA分析によって推定し、歯の形態学的な研究結果や考古学的な証拠と併せて考察を行った。また、モチェとガイナッソの遺跡を研究し、双方の関係について考察した。それらの知見と考古学的な証拠とを総合的に判断した結果、基本的には北海岸と南の海岸及び山岳地域とは、集団の構成に違いがあることが明らかとなった。また、アンデスのウルバンバ川周辺の遺跡のDNA解析からは、現代の先住民につながる人々がこの時代から居住していたことが明らかにした。
著者
新里 貴之 中村 直子 竹中 正巳 高宮 広土 篠田 謙一 米田 穣 黒住 耐二 樋泉 岳二 宮島 宏 田村 朋美 庄田 慎矢 加藤 久佳 藤木 利之 角南 聡一郎 槇林 啓介 竹森 友子 小畑 弘己 中村 友昭 山野 ケン陽次郎 新田 栄治 寒川 朋枝 大屋 匡史 三辻 利一 大西 智和 鐘ヶ江 賢二 上村 俊雄 堂込 秀人 新東 晃一 池畑 耕一 横手 浩二郎 西園 勝彦 中山 清美 町 健次郎 鼎 丈太郎 榊原 えりこ 四本 延弘 伊藤 勝徳 新里 亮人 内山 五織 元田 順子 具志堅 亮 相美 伊久雄 鎌田 浩平 上原 静 三澤 佑太 折田 智美 土肥 直美 池田 榮史 後藤 雅彦 宮城 光平 岸本 義彦 片桐 千亜紀 山本 正昭 徳嶺 理江 小橋川 剛 福原 りお 名嘉 政修 中村 愿 西銘 章 島袋 綾野 安座間 充 宮城 弘樹 黒沢 健明 登 真知子 宮城 幸也 藤田 祐樹 山崎 真治
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

徳之島トマチン遺跡の発掘調査をもとに、南西諸島の先史時代葬墓制の精査・解明を行なった。その結果、サンゴ石灰岩を棺材として用い、仰臥伸展葬で埋葬し、同一墓坑内に重層的に埋葬することや、装身具や葬具にサンゴ礁環境で得られる貝製品を多用することが特徴と結論づけた。ただし、これは島という閉ざされた環境ではなく、遠隔地交易を通した情報の流れに連動して、葬墓制情報がアレンジされつつ営まれていると理解される。