著者
脇本 竜太郎
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.160-168, 2008 (Released:2008-03-19)
参考文献数
16
被引用文献数
4 3

自尊心の高低と援助要請に関しては,正の関係を想定する脆弱性仮説と負の関係を想定する認知的一貫性仮説・自尊心脅威モデルという対立する仮説が提案され,双方を支持する知見が蓄積されている。本研究では,そのような知見を整理する1つの視点として自尊心の不安定性を取り上げ,自尊心の高低と不安定性が青年の被援助志向性および援助要請に及ぼす影響について,対人ストレスイベントの頻度・日間変動を統制した上で検討した。援助要請についてはさらに,家族・非家族という対象ごとの検討も行った。 48名の大学生・大学院生が1週間の日誌法による調査に回答した。階層的重回帰分析の結果,自尊心の高低と被援助志向性・援助要請の関係は,自尊心の不安定性により調節されていた。具体的には,自尊心が不安定である場合は高さと被援助志向性,援助要請の回数は負の関係を,特に自尊心が安定している場合は正の関係を持つことが示された。また,対象別の援助要請の分析では,上記のような関係が非家族への援助要請数でのみ認められた。自尊心の高低と同時に不安定性を検討することの意義・有用性および今後の研究に対する示唆について議論した。
著者
川本 峻頌 澤井 悠 張 培楠 脇本 宏平
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.3H2GS9b04, 2021 (Released:2021-06-14)

NLGシステムの生成結果の評価、あるいは極性判定のような応用タスクのアノテーションでは、実応用時と同様の幅広い属性のアノテーターによる作業が重要である。こうした応用事例ではクラウドソーシングのような仕組みを利用して多様なアノテーターを集めることが多い一方で、実世界のユーザの多くはスマートフォンなどのモバイル端末を利用する割合が多い。本稿では、これまで注力されていなかったスマートフォンなどのモバイル端末におけるUXを重視した、応用タスク向けのアノテーションツール "FAST" を提案する。実験では、複数名のアノテーターによるアノテーションを実施し、ツールのログやユーザアンケートから速度や品質、使いやすさといった指標を評価した。結果、本システムは特定のタスクにおいて、既存の手法と比較して、品質を維持しつつ高速にアノテーションできることを確認した。
著者
脇本 竜太郎
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.165-179, 2005 (Released:2006-02-18)
参考文献数
62
被引用文献数
1 1

人間の社会的行動は,自尊心への欲求から説明されることが多かった。しかしながら,その自尊心への欲求自体が,“なぜ”人間にとって重要なのかは実証的に検討されてこなかった。この“なぜ自尊心の欲求が重要なのか”という問に存在脅威(死の不可避性の認識に基づく脅威)の緩衝という観点から答え,人間の社会的行動を包括的に説明する枠組みたるべくして登場したのが存在脅威管理理論である。本稿では,まず存在脅威管理理論の概要について紹介する。次に,既存の研究を概観し,存在脅威管理理論がもたらした成果と,個々の社会的行動の実証的検討における課題について述べる。最後に,近年報告されている存在脅威管理方略の差異に関する知見を紹介し,そのような文化内・文化間差を存在脅威管理理論がいかに捉え,組み込んでいくべきかについて展望を述べる。
著者
脇本 竜太郎
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.58-71, 2009 (Released:2009-08-25)
参考文献数
28
被引用文献数
2 2

本研究では,存在論的恐怖と愛着不安・回避傾向が成功・失敗についての自己の帰属と親友からの帰属の推測に及ぼす影響について検討した。近年,対人関係が存在論的恐怖を緩衝する効果を持つことが明らかにされている。そして,Wakimoto(2006)は存在論的恐怖が顕現化すると日本人は関係維持のため謙遜的態度を強めることを報告している。これに,日本人が他者による謙遜の打消しや肯定的言及など支援的反応を期待するという知見を併せて考えると,存在論的恐怖は自己卑下と共に他者からの支援的反応の期待を高めると考えられる。また,このような影響は愛着不安・回避傾向により調節されると考えられる。これら予測を現実の成功・失敗についての原因帰属を用いて検討した。大学生52名が実験操作の後に過去の実際の成功・失敗について自分自身の帰属と親友がどのように帰属してくれるかの推測について回答した。その結果,MS操作により自己卑下的帰属が強まる条件では,親友からの支援的な帰属の期待も強まることが示された。一方,親友からの支援的な帰属の期待が必ずしも自己卑下的帰属の高まりを伴わないことも示された。これら結果を近しい他者を通した関係による存在論的恐怖管理の様態及び互恵的関係の形成における存在論的恐怖の影響という点から論じた。
著者
脇本 仁奈 松尾 浩一郎 河瀬 聡一朗 岡田 尚則 安東 信行 植松 紳一郎 藤井 航 馬場 尊 小笠原 正
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.11-16, 2010-04-30 (Released:2020-06-26)
参考文献数
12

【目的】頸部回旋法は,頭を麻痺側に回旋して嚥下することで,嚥下後の咽頭残留を軽減させる摂食・嚥下代償法のひとつである.しかし,頸部を回旋した状態で長い時間食事をとるという姿勢は,身体へ負担がかかる可能性がある.そのため,頸部回旋の有効性を残したままで,できる限り摂食しやすい姿勢が望まれる.今回われわれは,若年健常者において,どの程度の頸部回旋角度から咽頭嚥下時の食物通過側に変化があるか検討した.【対象と方法】摂食・嚥下障害のない健常若年成人30 名(平均26 歳)を対象とした.被験者がバリウムを嚥下するときの頸部回旋角度を,正面位と左右各15 度,30 度,45 度および最大回旋位の合計9 角度に設定した.被験者が3 ml の液体バリウムを嚥下するところをVF 正面像にて撮影,記録した.デジタル化されたVF 映像上で,下咽頭での回旋側のバリウム通過の有無を同定した.各頸部回旋角度で,回旋側下咽頭をバリウムが通過した人の割合を比較検討した.【結果】正面位では,全例で両側をバリウムが通過していたが,頸部回旋角度が増すと,回旋側通過の割合が減少した.30度頸部回旋でのバリウムの回旋側下咽頭通過の割合は,右側回旋23%(7名/ 30名),左側回旋40%(12 名/ 30 名)と有意な減少を認めた(p<0.01).最大まで頸部を回旋すると,右側回旋1 名,左側回旋4 名のみで,バリウムが回旋側を通過していた.【結論】今回の検討より,頸部回旋が30 度以上になると,バリウムが回旋側下咽頭を通過した人の割合が有意に減少することが明らかになった.摂食・嚥下障害者への姿勢代償法は,必要十分な安全性をもち,かつできるだけ楽な摂食姿勢が望ましい.頸部回旋法の有用性は,通常VF や経鼻内視鏡を用いて決定される.今回の検討より,頸部回旋の有用性を確認するときには,30 度程度の回旋からその有効性を確かめてみる価値があることが示唆された.
著者
望月 俊男 佐々木 博史 脇本 健弘 平山 涼也 久保田 善彦 鈴木 栄幸
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.319-331, 2013-11-20 (Released:2016-08-10)

ロールプレイはさまざまな分野の学習において,学習者の視点の拡大や転換を促進する強力な学習方法として知られている.本稿では,とくに複雑で非構造的な(ill-structured)問題状況下におけるコミュニケーションや意思決定についてロールプレイする上で,対面協調学習の中で人形劇を使うことで,これまでにない多様な視点からの洞察を促す可能性について議論する.複数の人形を操作して人形劇をすることで,演者である参加者と,直接演じている人形との間の心理的距離を作り出すとともに,多様な役割で演技をしやすくすることができる.本稿ではこれを理論的に示した後,人形劇のロールプレイによって演者がより現実的な状況を再現するように様々な役割を演じることを事例研究から示した.そして,そうした人形劇をロールプレイの媒介として利用する上で,学習支援テクノロジの可能性について議論した.
著者
常磐 肇 三浦 不二夫 桑原 洋助 脇本 康夫 鶴田 正彦
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.11-24, 1996-06-30
参考文献数
25
被引用文献数
23

臨床歯学にとって顎口腔機能を評価することは形態学的検査と並んで必須事項になりつつある.これまで顎口腔機能に関する研究は節電図, あるいは顎運動といった単独の分野では発達があったものの, これらを総合的に解析し臨床に応用するための検査システムは必ずしも満足するものがないのが現状である.そこで我々は, 顎口腔機能診断を目的とした本学独自の汎用型顎口腔機能総合解析システムを開発した.これはステレオ画像法を応用した画像処理システムを用い, LEDをCCDカメラで捉えることによる非接触式3次元6自由度顎運動記録装置と多チャンネルアナログ信号同時記録システムおよび各アナログ信号センサーユニットから構成されている.本システムは以下に示すような特徴を有している.(1)本システムは顎運動, 節電図, 咬合音, 顎間接雑音など顎口腔機能に関連する諸現象を同時記録することが容易に行える上, 被験者に対する負担軽減に配慮した結果, 可及的に生理的条件下での測定が行える.(2)本システムの顎運動記録装置の測定精度は±0.15mmと十分な顎運動記録が行える.また任意点指示機能により, これまで煩雑であった操作を解消し, 容易に下顎骨内の任意の点の運動状態についての記録が行える.以上のことから本システムは顎口腔機能に関する諸現象を簡易にかつ的確に捉え, 顎口腔機能診断を行うための有効な検査機器になるものと考えられる.
著者
脇本 亘 本谷 直 塚本 永和
出版者
茨城県畜産センター
雑誌
茨城県畜産センター研究報告 (ISSN:13466488)
巻号頁・発行日
no.43, pp.14-18, 2010-11

本試験では,フリーストール形式において牛体汚染を防止する牛床敷料管理方法について,山砂と戻したい肥を用いて敷料の素材と使用方法の違いによる牛床利用及び牛体衛生スコアへの影響を検討した。敷料導入直後では,種類,量に関わらず,牛床利用率が7割以上であったが, 2週間後には全試験区で低下し,通路への横臥行動がみられた。牛体衛生スコアは場合,牛床利用率の低下にしたがって平均スコアが増加する傾向がみられ,敷料の量が多い乳房付近のスコアが低くなる傾向がみられた。本試験において牛体衛生スコアと体細胞数との関連性は,明確でなかった。入れ替え後3週間後経過した牛床敷料では, 2種類の敷料間で細菌の繁殖性に異なる特徴が認められた。これらの結果から,山砂を多く使用した場合,入れ替え直後は牛の快適性(カウ・コンフォート)が高い牛床条件であるが,2週間以上放置すると著しくカウ・コンフォートが低下するため,敷料の撹拌・入れ替え及び追加などの定期的な牛床管理が必要である。また良質な完熟たい肥を豊富に導入した場合,導入直後は山砂よりもさらにカウ・コンフォートの高い牛床条件になると推察できた。
著者
平野 智紀 中尾 教子 脇本 健弘 木村 充 町支 大祐 野中 陽一 大内 美智子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.Suppl., pp.125-128, 2020-02-20 (Released:2020-03-23)
参考文献数
7

本研究では,横浜市の公立小学校の校長を対象に行った質問紙調査をもとに,ICT 活用とアクティブ・ラーニング推進の実態の類型化を行った.推進のタイプについてクラスタ分析を行い,5つのクラスタを得た.クラスタごとの特徴を分析すると,ICT 活用とアクティブ・ラーニング推進に取り組んでいる学校はカリキュラム・マネジメントが進んでおり子どもの成長を実感していることが明らかになった。教員同士が高め合う学校文化が重要であることも示唆された.
著者
脇本 実
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-23, 2002-01-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
27
著者
見舘 好隆 舘野 泰一 脇本 健弘 望月 俊男 宮田 祐子 中原 淳 三宅 なほみ
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.209-227, 2013-11-20 (Released:2016-08-10)

本研究の目的は,キャリア・コンサルタントが遠隔操作したロボットをピア・カウンセラーに位置付けた上で,ロボットが主導する学習者間のグループ・カウンセリングが成立するのかを探究することにある.研究方法は,自己効力感をたずねる質問紙調査,および大学生の主体的発話の数を測定し,統制群(キャリア・コンサルタント)と実験群(ロボット)とで結果を比較した.両群の大学生の主体的発話内容の分析も行った.この結果,ロボット主導であっても学習者の自己効力感を高めることができることと,またロボット参加により主体的発話が増えることが示唆された.さらに主体的発話のカテゴリ分析の結果,統制群ではほぼ生じなかった3種類の主体的発話が確認され,これらの発話が大学生のアクティブリスニングを促しグループ・カウンセリングに必要な主体的発話を引き出すことが観察された.最後に本結果をもとに今後のロボット開発に資する改善点を考察した.
著者
脇本 竜太郎
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.165-179, 2005
被引用文献数
1

人間の社会的行動は,自尊心への欲求から説明されることが多かった。しかしながら,その自尊心への欲求自体が,"なぜ"人間にとって重要なのかは実証的に検討されてこなかった。この"なぜ自尊心の欲求が重要なのか"という問に存在脅威(死の不可避性の認識に基づく脅威)の緩衝という観点から答え,人間の社会的行動を包括的に説明する枠組みたるべくして登場したのが存在脅威管理理論である。本稿では,まず存在脅威管理理論の概要について紹介する。次に,既存の研究を概観し,存在脅威管理理論がもたらした成果と,個々の社会的行動の実証的検討における課題について述べる。最後に,近年報告されている存在脅威管理方略の差異に関する知見を紹介し,そのような文化内・文化間差を存在脅威管理理論がいかに捉え,組み込んでいくべきかについて展望を述べる。<br>
著者
脇本 仁奈 松尾 浩一郎 河瀬 聡一朗 隅田 佐知 植松 紳一郎 藤井 航 馬場 尊 小笠原 正
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.3-11, 2011 (Released:2011-12-14)
参考文献数
14
被引用文献数
1

頸部回旋法の液体嚥下時の有効性についての報告はあるが, 食物咀嚼時の嚥下前の食物通過への影響は明らかになっていない。また, どの程度の頸部回旋角度が代償手技として有効であるかは不明である。今回われわれは, 咀嚼嚥下時に頸部回旋角度を変化させ, 嚥下までの咽頭での食物通過側の変化について検討した。若年健常者22名が頸部回旋し, 液体バリウム5 mlとコンビーフ4 gを同時に摂食した時の咽頭での食物の流れを経鼻内視鏡にて記録した。頸部回旋角度は, 正中, 左右各30度, 最大回旋位の5角度とした。嚥下までの舌根部, 喉頭蓋谷部, 下咽頭部での食物先端の流入側および嚥下咽頭期直前の咽頭での食物の分布を同定し, 食物通過の優位側について解析した。喉頭蓋谷部では, 頸部回旋側の食物通過の割合が増加する傾向がみられた一方で, 下咽頭部では非回旋側での食物通過の割合が増加する傾向を示した。嚥下開始直前でも, 食物は, 喉頭蓋谷部では回旋側と正中部に多く存在していたが, 下咽頭では非回旋側に多く認めた。頸部回旋角度は30度と最大回旋で, 食物通過経路に有意差はなかった。食物咀嚼中, 頸部回旋すると喉頭蓋谷までは回旋側へ優位に流入するが, 頸部回旋による物理的な下咽頭閉鎖により, 食物が下咽頭へと侵入するときには反対側へと経路を変えることが示唆された。さらに, 姿勢代償法として頸部回旋法は, 最大回旋位まで頸部を回旋する必要性がない可能性が示された。
著者
望月 俊男 佐々木 博史 脇本 健弘 加藤 浩 鈴木 栄幸 久保田 善彦 舟生 日出男
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、多様な人々が関わる問題解決場面における効果的な対話的コミュニケーションスキルを育成する学習環境の開発を最終目的とする。その教育方法としてのロールプレイをより効果的に実施するため、演技全体を見渡す俯瞰視点だけではなく、特定のアクターの視点(他者視点)から対話的コミュニケーションを振り返り、吟味できる3次元リフレクション支援システムを開発した。また、その教育方法を教師教育の授業実践において検討・開発した。授業実践を通して、他者視点と俯瞰視点を往還する中で、他者視点があったほうが、各立場を意識しリフレクションが促され、対話的コミュニケーションを深く検討できるようになることが見いだされた。
著者
脇本 博文 沖重 薫 畔上 幸司 大庭 景介 倉林 学 上原 裕規 瑞慶覧 貴子 小西 正則 志村 吏左 磯部 光章
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.134-139, 2007

後天性QT延長症候群は種々の原因により発生するが,アルコール離脱により生じる後天性QT延長症候群(LQTS)の認識はうすく,同病態下における多形性心室頻拍(torsades de pointes;TdP)発生の報告も少ない.今回,われわれは失神を主訴としたアルコール離脱期のLQTSに伴うTdPを2例経験した.<BR>症例1:23歳,女性.20歳ころよりビール2L/日,焼酎1L/日の飲酒を繰り返し,アルコール性肝不全にて当院入院となった.失神発作を発症し心電図モニターにてTdPが確認された.基礎心疾患なし.QTc=0.753msecと著明に延長(入院時QTc=0.529msec)し,マグネシウム静注,イソプロテレノール持続投与にてTdPは減少,QTcも徐々に短縮した.<BR>症例2:50歳,男性.48歳ころより飲酒量が増え,日本酒1升/日の飲酒を続けていた.他院にてアルコール依存症と診断され禁酒を指示されたが,その後も不定期に飲酒を繰り返していた.失神発作を発症し救急車にて当院へ搬送された.心電図はQTc=659msecと著明に延長しTdPを繰り返していた.基礎心疾患なし.マグネシウムの静注後TdPは消失し,その後QTcは徐々に短縮した.<BR>2症例とも後日施行した心臓電気生理学検査(EPS),epinephrine負荷試験では有意な所見を認めなかった.
著者
脇本十九郎 著
出版者
洛陶会
巻号頁・発行日
1921