著者
田中純夫 辻田知晃 佐渡幹也 西田敬志
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第57回総会
巻号頁・発行日
2015-08-07

Ⅰ 目的 昨年の発表ではBaron-CohenらのEmpathizing-Systemizing理論に基づいて,「男性脳」の特性を示すものは回避型の愛着の得点が有意に高いことを報告した(田中・佐渡・西田,2014;西田・田中,2014)。 今年度は特に成人前期までに内的作業モデルを通して形成された愛着スタイルに着目して,自閉症スペクトラムの特性とどのように関連するのかを探ることを目的とする。Ⅱ 方法1対象:首都圏の大学に在学する大学生225名(男性104名,女性121名,平均年齢19.7)2期間:2014年7月初旬3質問紙の構成:(1)対象者の属性:性別,学年,年齢等からなる。(2)一般他者版成人愛着スタイル尺度(Brennan, 1988):下位尺度は「見捨てられ不安」18項目,「親密性の回避」12項目からなり合計30項目で構成される。(3)内的作業モデル尺度(戸田, 1988):成人の内的作業モデルの質を評価するための尺度である。下位尺度は「安定型」「アンビバレント型」「回避型」の3つからなり,各6項目の合計18項目で構成される。(4)自閉症スペクトラム指数(Autism-SpectrumQuotient, Baron-Cohen, 2001以下「AQ」とする):下位尺度は「社会的スキル」「注意の切り替え」「細部への注意」「コミュニケーション」「想像力」の各10項目からなり,合計50項目で構成される。(5)AS困り感尺度(山本・高橋,2009):自閉症スペクトラムの行動特徴を有する学生の日常生活における支援ニーズの把握を目的としており,合計25項目で構成される。Ⅲ 結果・考察 成人前期の愛着スタイルと自閉症スペクトラムとの関連を検討するために,成人の愛着を測定する「一般他者版成人愛着スタイル」および「内的作業モデル」と自閉症スペクトラムを測定する「AQ全体」と「5下位尺度」および「AS困り感」との間で相関係数を算出した(Table1)。主な結果は以下の通りである。○一般他者版成人愛着スタイルの下位尺度「見捨てられ不安」「親密性の回避」の双方が「AQ全体」および「社会的スキル」「コミュニケーション」という対人関係の側面との間に明確な正相関が示された。○AQ尺度の全般および「AS困り感」は,内的作業モデルの「安定型」との間では負相関を示し(女性の方がより明確に関連している),内的作業モデルの「アンビバレント型」「回避型」とでは正相関を示した。安定した愛着形成は定型発達の基盤となりうること,また発達的な弱点を補填しうる可能性が示唆される。(本研究は,平成26~28年度日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(C)26380954(研究代表者:田中純夫)の助成を受けて実施した調査の一部を使用している。)
著者
糸井 隆夫 土屋 貴愛 栗原 俊夫 石井 健太郎 辻 修二郎
出版者
Japan Biliary Association
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.39-46, 2013

<b>要旨:</b>胆管ステンティングおよび胆嚢ステンティングの際の注意すべきポイントについて解説した.胆管ステンティングにおいてはステントの種類と特性を理解しておくことが肝要である.特に胆管メタルステントに関しては近年様々な種類のものが登場しており,ステントの特徴(カバーの有無,編み込み型かレーザーカット型か,再収納の可否など)を理解した上でのステンティングが極めて重要である.胆嚢ステンティングにおいてはまず胆嚢内にガイドワイヤーを送り込むことが重要であり,胆嚢管の分岐パターンを理解して効率よく確実な胆嚢管挿管を心がけることが大切である.<br>
著者
石原 恵子 長町 三生 大崎 紘一 石原 茂和 辻 昭雄
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.9-16, 1998
被引用文献数
3

市販の色セロファンを使った75歳相当の透過率をもつ眼鏡を用いて, 高齢化に伴う眼の水晶体の黄変化を模擬体験し, 高齢者の視界が日常生活にどのような影響を及ぼしうるかを調査した. 食事の場面・買い物・道路で調査した結果, (1) 色が変わってみえるだけでなく, (2) 色による区別がつきにくくなる, (3) 液体など不定形のものが知覚しにくい, (4) 立体感や奥行き感が減少する, (5) 光るものがみづらい, ことがわかつた. 具体的には, 食品の鮮度を誤認したり飲み物の種類や量がわかりにくい, 商品の区別が困難, 段差への対処が遅れるなどの生活上の困難があげられた. 色紙を用いた実際の高齢者による色の同異判断実験では, 黄と白, 青と緑, 濃青と黒, 紫と濃赤という, シミュレーションで誤認しそうな色の組み合わせに対して同じように誤認する高齢者がいることが確認され, ヒアリングでもシミュレーションであげられた困難に関連する事柄があげられた.
著者
宇野 宏司 高田 知紀 辻本 剛三 柿木 哲哉
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_677-I_682, 2015
被引用文献数
2

国生み伝説で知られる淡路島の海岸から1km圏内には多くの神社が鎮座している.本島沿岸は2012年に公表された内閣府による南海トラフ巨大地震の被害想定(第二次報告)で兵庫県下最大の津波被害が出ると予想されており,避難場所の確保が重要な課題のひとつになっている.本研究では,本島沿岸1km圏内に鎮座する神社の空間配置の諸情報(緯度経度・標高)と内閣府による津波被害の想定結果を用いて,将来の南海トラフ地震時における淡路島沿岸域の神社の津波被災リスクについて検証した.その結果,多くの神社が直接の津波被害を免れ,長い歴史をもつ神社の現在の空間分布は過去の大規模災害によって淘汰された結果を示しているという仮説を裏付ける結果が得られた.また,祭神による津波被災リスクの違いがあることも明らかにされた.
著者
宇野 宏司 高田 知紀 辻本 剛三 柿木 哲哉
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_1603-I_1608, 2015
被引用文献数
3

古くから熊野信仰やお伊勢参りで知られる紀伊半島には多くの神社が鎮座している.太平洋に面する本半島沿岸は,2012年に公表された内閣府による南海トラフ巨大地震の被害想定(第二次報告)で甚大な被害が出ると予想されており,限られた平野部に拓かれた集落における避難場所の確保が重要な課題のひとつになっている.本研究では,本半島沿岸1km圏内に鎮座する神社の空間配置の諸情報(緯度経度・標高)と内閣府による津波被害の想定結果を用いて,将来の南海トラフ地震時における神社の津波被災リスクについて検証した.その結果,境内が直接被災するのは2割程度に留まるが,こうした神社の多くは浸水深が1mを超え,避難場所には適さないことがわかった.祭神別では,伊勢神宮の主祭神である天照大神とその周辺の神々で津波被災リスクは低くなっていることが明らかにされた.
著者
紀藤 典夫 大槻 隼也 辻 誠一郎 辻 圭子
出版者
日本植生史学会
雑誌
植生史研究 (ISSN:0915003X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.15-26, 2017

青森県八甲田山の田代湿原(標高560 ~ 575 m)から採取されたコアの花粉分析の結果に基づき,十和田中掫テフラ(厚さ7 cm;To-Cu;約6000 cal yr BP)降下が植生に与える影響について考察した。分析の結果,テフラ降下以前はブナ属・コナラ属コナラ亜属を主とし,ハンノキ属等の落葉広葉樹からなる花粉組成で,安定した森林が復元された。テフラ直上では,コナラ属コナラ亜属は割合が著しく増加し80%以上に達する一方,その他の樹種は一様に割合が減少し,特にブナ属は30%から2.6%に減少した。テフラの上位1.7 cm でコナラ属コナラ亜属は割合・含有量ともに急激に減少し,他の樹種の割合が増加して,上位8.9 cm の層準(150 ~ 250 年後)でテフラ降下前の組成に近い安定した状態となった。ブナ属とコナラ属コナラ亜属のテフラ降下後の変化の著しい違いは,テフラ降下に対しブナは著しく耐性が低かった一方,ミズナラが強い耐性を持っているためと考えられる。非樹木花粉組成の変化に基づき,テフラ降下後,湿原植生は著しく組成が変化し,分析層準の最上位でもテフラ降下前に戻ることはなく,湿原の生育環境が大きく変化したものと推定した。
著者
岡田 由紀子 押谷 創 杉山 豊 三村 哲史 浅野 靖之 辻田 誠 渡部 啓子 成瀬 友彦 佐々木 洋光 渡邊 有三
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.249-253, 2009-03-30 (Released:2010-03-01)
参考文献数
12
被引用文献数
4

症例は58歳,女性.47歳より糖尿病を指摘され,52歳からインスリン(ペンフィル30R®)を使用していた.53歳で血液透析を導入し,57歳で右下肢切断術を行った際,血糖コントロール不良でインスリン抗体68.8%, HbA1c 13.3%であった.インスリンリスプロに変更し,血糖コントロールは改善した.今回,急性腹症で来院し穿孔性腹膜炎の診断で緊急入院手術となったが,術後遷延性低血糖と高血糖を呈した.インスリン製剤の変更,ステロイドの併用,二重膜濾過(DFPP), pioglitazoneの併用などを試みたが血糖コントロールは改善せず.インスリンとは異なる機序の血糖降下作用をもつIGF-1製剤メカセルミン(ソマゾン®)を使用し,コントロールを得た症例を経験したので報告する.
著者
小林功介 辻本拓也 安本匡佑 羽田久一 太田高志
雑誌
第75回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.207-208, 2013-03-06

2012年10月の就職内定率が6割を切り、就職難と叫ばれて久しい。多くの就職活動生(以下就活生)は、いくつもの企業の選考を受けてもなお内定を獲得することができず、その代わりに数多の「不採用通知メール(通称 お祈りメール)」を受け取っている。 本研究では、お祈りメールが就活生に与える虚しさに着目し、これを題材にしたインタラクティブコンテンツを開発することで、就職難という昨今の世相の皮肉的な表現を試みている。神社の参拝を模したお祈りのジェスチャーに反応して、映像と音楽に併せて加工したお祈りメールの文面を提示する作品である。 なお、このコンテンツは今年10月30日から1週間に渡って開催された東京デザイナーズウィーク2012に出展され、閲覧者の好意的な反応を多数得た。
著者
倉本 宣 辻永 和容 斉藤 陽子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.385-390, 2000-05-20
被引用文献数
3 2

多摩川河川敷においてカワラサイコの局所個体群が103箇所, ヒロハノカワラサイコの局所個体群が3箇所発見された。両種の分布は細粒堆積物が薄く, 群落高の低い立地に限られていた。芝の堤防法面においては, カワラサイコは生育していたが, ヒロハノカワラサイコは見られなかった。発芽実験の結果, カワラサイコはシャクチリソバの菜の庇蔭による発芽抑制効果および変温による発芽促進効果を持たないのに対し, ヒロハノカワラサイコは両効果を持っていた。カワラサイコは植被の下でも発芽するのに対し, ヒロハノカワラサイコは植被の下では発芽しないと推測される。この発芽特性の違いが, 芝の堤防法面における分布に影響を与えている可能性がある。

1 0 0 0 OA 結麗阿曹篤丸

著者
辻岡
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
no.101, 1890-07-26
著者
辻村 純代
出版者
国士舘大学イラク古代文化研究所
雑誌
ラーフィダーン = al-Rāfidān = JOURNAL OF WESTERN ASIATIC STUDIES (ISSN:02854406)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.189-201, 2016-03-31

There are two opinions concerning the period of Christianization in Egypt. One is that Christianity acted as a substitute for the traditional pagan cult was declining rapidly in the first half of the 3^rd century, altering the existing social structure centering on a city society to a rural community. The other is that it survived and coexisted with the pagan cult to the 4^th-5^th century. In the present paper, the author studied the western temple at the site of Akoris to reexamine the above-mentioned opinions. The temple worshipping Ammon and Souchos (Sobek), controlling navigation on the Nile was supported strong, Roman imperial demand for steady supply of stones and a strongpoint in the long distance commerce in the 1^st and 2^nd centuries. Certainly, no stele dedicated by Roman emperors has been found in the temple, likewise temples at other sites after that time. However, amongst the 13 graffiti of the Nile hymn preserved on walls in the hypostyle hall, the 2 graffiti were written at the end of the 4^th century. In addition, the court of the temple was reconstructed on a large scale after the end of the 3^rd century. This reconstruction was probably executed by Diocletianus who is known as a persecutor of Christians. Furthermore, just under Dioscuri and a goddess carved on the cliff on the south side of the crag, on the opposite side of the temple, a rock-cut stairs on which many animal bones were scattered and charcoal for sacrifices were found. Judging from pottery and lamps, the pagan rite accompanied with burning is supposed to have been performed from the 1^st century to the 4^th century. It thus appears that pagan temple had kept peoples’ loyal up to the 4^th century. The temple area proceeded to suffer from disfiguration by olive oil presses, grind stones of a flour mill and houses after the 5^th century. If destruction of idols inscribed on ostraca was linked with subversive activities led by Apa Shenoute in the White Monastery, monks may have taken this opportunity to begin living in the temple area They had fishing right besides managing the olive estate and workshops for making oil. According to other papyrus, a riot which dragged in all of the residents participated happened in 698. It was probably the riot that heralded a rash of riots to protest high taxes in the next century. As a result of the riots, residents became impoverished and at last at the beginning of the 8^th century Akoris was abandoned.
著者
辻森 樹 石渡 明 坂野 昇平
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.5, pp.353-362, 2000-05-15
被引用文献数
7 34

蓮華変成帯, 新潟県青海町上路(あげろ)地区湯ノ谷にエクロジャイト質藍閃石片岩が産する.この岩石は主として藍閃石(37%), ざくろ石(21%), オンファス輝石(19%), 緑れん石(19%)と少量の石英, 曹長石, フェンジャイト, 緑泥石, ルチル, チタン石から構成される.エクロジャイト相鉱物組み合わせ 'ざくろ石+オンファス輝石+藍閃石+緑れん石+石英+ルチル' はマトリクスの片理(S_1)を構成し, わずかに二次的な緑泥石, 曹長石, 方解石に置換され, S_1片理形成以前の緑れん石青色片岩相の鉱物組み合わせ '藍閃石+緑れん石+チタン石+石英+曹長石' の包有物列(S_0)がざくろ石のコアに観察される.蓮華変成帯では, これまでにも残存エクロジャイト相鉱物の報告はあったが, 今回, 岩石組織と鉱物化学組成・累帯構造から, 初めて, 緑れん石青色片岩相からエクロジャイト相への累進変成作用を読みとることができた.
著者
辻 誠一郎 Tsuji Sei-ichiro
出版者
名古屋大学年代測定資料研究センター 天然放射性元素測定小委員会
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.10, pp.56-59, 1999-03 (Released:2010-05-25)

第11回名古屋大学タンデトロン加速器質量分析計シンポジウム(平成10 (1998)年度)報告 名古屋大学タンデトロン加速器質量分析計第1号機の研究実績と1号機,2号磯の利用計画