著者
金水敏編
出版者
くろしお出版
巻号頁・発行日
2007
著者
金水 敏
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.18-31, 2005-07

『天草版平家物語』に用いられた「ござる」を、文法的機能によって分類するとともに、原拠本と対照させることによって、「ござる」の意味派生の手がかりを得ることができる。「ござる」の語源的意味に近い空間的存在文では、ほとんどの用例が尊敬表現であるが、その他の用法では丁寧表現が多数を占めている。その要因は、丁寧表現には主語に対する選択制限がなく、尊敬表現より広い範囲で使用されることによると思われる。また、「ござる」の文法化、存在動詞の語彙項目の変化等も「ござる」の敬語的意味の変化に影響を与えていると考えることができる。
著者
金水 敏
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.150, pp.34-41, 2011 (Released:2017-02-17)
参考文献数
9
被引用文献数
1

日本語教育,あるいは日本語教師養成のカリキュラムに役割語は必要ないという意見がある。これに対し本稿では,次の点から,日本語教師にとって役割語の知識は有用であることを示す。 1.役割語は「マンガやアニメ等にのみ現れる特殊な言語」ではない。われわれは特定の人物像(キャラクタ)と結びついた話し方の類型(=役割語)をステレオタイプ的な知識として身につける。その意味ではすべての話し言葉は役割語としての性質を帯びているものと捉えることができる。 2.日本語学習者は,いわば“日本語学習者”という役割のロールプレイングを現実社会の中で遂行していると見ることができる。日本語教師は,学習者のキャラクタ作りを支援する立場にあり,そのことを自覚しながら指導に当たる必要がある。
著者
田窪 行則 金水 敏
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.3_59-3_74, 1996-08-31 (Released:2008-10-03)
参考文献数
28

In this paper we attempt to construct a dynamic model of discourse management, a version of Mental Space Theory, modified to accommodate dialogic discourse by incorporating a memory management system. We posit a cognitive interface between linguistic expression and knowledge-base. This interface contains pointers or indices linked to addresses in the knowledge base, controlling access paths to the data in the base. Utterances in a dialogue exchange can be redefined as input-output operations via this interface: registering, searching, editing, etc. The main theses of our approach to discourse management are as follows:The operations coded in the various forms are to be defined as performing input-output operations on the database of the speaker and not that of the hearer's model in the speaker. It is argued that the hearer's model in the speaker is not only unnecessary but also harmful in the description of sentence forms. We divide the interface into two components, I-domain and D-domain. The former is linked to temporary memory, houses the assumptions and propositions newly introduced to the discourse yet to be incorporated into the database and can be accessed only indirectly by inferences, logical reasoning, hearsay, and data search. The latter is linked to the permanent memory, houses information already incorporated in the database and can be directly accessible by simple memory search like pointing to an index. New information passes through only via I-domain. We will demonstrate that our approach solves problems in mutual knowledge but also provides a powerful tool in the description of some of the most recalcitrant phenomena in natural language.
著者
金水 敏
出版者
国立国語研究所
雑誌
国語研プロジェクトレビュー (ISSN:21850119)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.108-121, 2015-02

疑問文の研究の視点を整理した上で,衣畑(2014a, 2014b),野村(2001),高宮(2003)等に沿って日本語疑問文の歴史的変化の方向性やその動機づけ等について概観する。衣畑(2014b)によれば,前上代においては,焦点位置に「か」を置くという原則だけで疑問文形成の説明ができたが,上代に肯否疑問文の焦点位置に「や」も置かれるようになり,中古には疑問詞疑問文と肯否疑問文を区別する方向性が強められたとする。本稿では,なぜ肯否疑問文の領域に「や」が進出してきたのかという問いを立て,その説明のためには「か」と「や」の機能の違いに着目すべきであるということを主張する。さらに衣畑(2014b)では,中世にいったん疑問詞疑問文から「か」が消えたとするが,竹村・金水(2014)では中世末期のキリシタン資料で「か」文末の疑問詞疑問文が一定量存在することを示している。本稿では,竹村・金水論文で示された「ぞ」文末疑問詞疑問文と「か」文末疑問詞疑問文の性質の違いを踏まえ,「リスト表現」という形式の発達,および間接疑問文の発達という観点から,この新しい「か」文末疑問詞疑問文の起源についての仮説を提示する。
著者
金水 敏
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.67-91, 1999-07-10 (Released:2011-03-01)
参考文献数
34
被引用文献数
8 4

日本語の指示詞の3系列(コソア)は, いずれも直示用法とともに非直示用法を持つ. 本稿では「直示」の本質を「談話に先立って話し手がその存在を認識している対象を, 話し手が直接指し示すこと」ととらえ, ア系列およびコ系列では直示・非直示用法にわたってこの直示の本質が認められるのに対し, ソ系列はそうではないことを示す. 本稿では, ア系列の非直示用法は「記憶指示」, すなわち話し手の出来事記憶内の要素を指し示すものであり, コ系列の非直示用法は「談話主題指示」, すなわち先行文脈の内容を中心的に代表する要素または概念を指し示すものと考える.「記憶指示」も「談話主題指示」も上記の直示の本質を備えている上に, ア系列およびコ系列の狭義直示用法において特徴的な話し手からの遠近の対立も備えているという点は, ア系列およびコ系列の非直示用法がともに直示用法の拡張であることを示唆している. さらにさまざまなソ系列の非直示用法を検討した上で, ソはコ・アとは異なって, 本質的に直示の性格が認められないことを論じる. 非直示用法のソ系列は話し手が談話に先立って存在を認めている要素を直接指すためには用いられず, 主に言語的な表現によって談話に導入された要素を指し示すためた用いられる.またソが, 「直示」によっては表現できない, 分配的解釈や, いわゆる代行用法等の用法を持つことも, ソがアやコと違って非「直示」的であるという主張と合致する.
著者
金水 敏
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.37-48, 2023-09-30 (Released:2023-10-31)
参考文献数
22

本稿では,定延 (2011) に示された「性・格・品」の連動」および靳 (2016) で観察された「権力による性差の中和」現象の詳細な構造について検討していく.主たる理論的枠組みとしてポライトネス理論を用い,「権力による性差の中和」を「(女性の発話における話し相手への)フェイス・リスク配慮の原則」から説明する.またこれとは別に,「(女性の発話における)品位保持の原則」を設定し,なおかつこの原則もまた女性の発話を弱める効果を持つことを主張する.
著者
金水 敏 定延 利之 渋谷 勝己 山口 治彦 鄭 惠先 松井 智子 山口 治彦 定延 利之 鄭 惠先 勅使河原 三保子 渋谷 勝己 松井 智子 吉村 和真 岡崎 智子 菅 さやか
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

役割語とは、一定のキャラクタと対応関係を持つ話し方(語彙、語法、音声的特徴等)のヴァリエーションのことである。本研究では、1)役割語の理論的基盤、2)幼児の役割語獲得のプロセス、3)個別の役割語についての記述的研究と歴史的起源の探求、4)日本語と外国語との対照研究、5)教育への応用、という5つの問題について、検討してきた。その結果、社会的属性が役割語の中核となること、役割語の知識が5歳までに獲得されること等を明らかにした。
著者
西光 義弘 金水 敏 木村 英樹 林 博司 田窪 行則 柴谷 方良
出版者
神戸大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

本研究の各研究分担者の研究の概要をあげ、その後で全体の総括をすることとする。まず西光は日本語は英語と比べて談話構造において繰り返しが多く、多義性が高いことをさまざまな現象で示し、その原因について考察をすすめた。柴谷はパラメ-タ理論による日本語の対照統語論の研究を言語類型論の立場から批判し、日英語だけでなく、世界中の諸言語を考慮に入れる必要を唱えた。また日本語の受身表現を類型論の立場から分析し、世界の諸言語における日本語の受身表現のしめる位置を明らかにした。田窪は文脈のための言語理論を開発し、理論的土台を提供した。田窪と木村は中国語、日本語、英語、フランス語の三人称代名詞の対照研究を行い、日本語の三人称代名詞が未発達であることが文脈依存性によるものであることを考究した。益岡は日本語特有であるといわれ、なかなか本質をとらえ難い「のだ」構文を先行の諸説を踏まえ、独自の機能分析を行った。林は日本語、フランス語、ル-マニア語の遊離構文の対照研究を行った。金水は談話における指示詞の機能と述語の意味層に考察を加え、日本語の文脈依存性による説明を試みた。田窪、益岡、金水はそれぞれ日本語のモダリティの諸側面を考究し、文脈依存性との相関関係を明らかにした。また研究協力者として、中川正之は中国語は文脈依存度において、日本語と英語の中間であることを諸現象の観察によって示した。当初の目的である、諸言語との対照によって、日本語の文脈依存度が高いことを相対的に示すことについては、さまざまの現象について、詳細で微細な考察が進められ、相対度を持ったパラメ-タを各言語に設定するための見通しがたった。さらに考察の対照とする現象と言語の範囲を増やし、パラメ-タ設定を精密化し、最終的な理論体系をうち立てる土台ができたといえよう。特に会話方策と談話構造と語用論に関する対照研究の必要性が大きく注目されるさらなる考究の必要な分野として、本研究の結果、明らかになった。また文脈の理論および文脈依存性のモデル化についても全体像が見えてきた。
著者
蜂矢 真郷 金水 敏 岡島 昭浩 岡崎 友子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、近世から近代にかけての資料を中心に、「口語性」と不連続・不整合を見せる語彙、ないし形態を積極的にとりあげ、その由来・発展の過程を明らかとした。概要を以下に記す。(1)北原白秋・長塚節などが、歌や詩で使う語には様々な背景がある。そこで、古語を復活させたり、口語を古語めかしたりする手法を明らかにし、そこから言語意識を伺うことが出来た。「すがし」「かあゆし」「すゆし」「たゆたし」などの語の考証を行ったが、詳しくは、研究成果報告書に記してある。(2)明治からの、ピジン日本語に関わる資料や、ピジン日本語らしきものを使用した文献をいくらか集めることができた。田舎者言葉とされる「あるだよ」は、江戸・東京以外の関東方言の言い方を土台にしているが、これが外国語からの翻訳にも使われているものを、大正時代から見いだすことが出来た。(3)脚本類からの調査も行った。大正時代の『近代劇大系』(外国の脚本を翻訳したもの)を中心に用例を拾った。これは継続して調査・整理中であり、研究成果報告書には、一部しか反映できなかった。なお、この科研費による研究の成果ならびにこれに関する諸情報は、ホームページ(http://www.let.osaka-u.ac.jp/jealit/kokugo/fuseigo/)に示しており、今後も増補を続ける予定である。
著者
伊藤 公雄 金水 敏 イトウ キミオ キンスイ サトシ
出版者
大阪大学21世紀COEプログラム「インターフェイスの人文学」
巻号頁・発行日
2007-01

大阪大学21世紀COEプログラム「インターフェイスの人文学」/ Osaka University the 21st Century COE Program Interface Humanities
著者
田窪 行則 有田 節子 今仁 生美 郡司 隆男 松井 理直 坂原 茂 三藤 博 山 祐嗣 金水 敏 宝島 格
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

日本語共通語、韓国語、英語、琉球語宮古方言のデータにもとづいて、日常言語の推論にかかわるモデルを構築し、証拠推論の性質、アブダクションによる推論と証拠推論との関係を明らかにした。時制、空間表現、擬似用法と推論の関係を明らかにした。関連性理論を用いた推論モデルの構築に関して推論の確率的な性質について研究を行い、一般的な条件文と反事実条件文の信念強度を共通の計算によって扱える計算装置を提案した。
著者
田窪 行則 金水 敏
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 = Cognitive studies : bulletin of the Japanese Cognitive Science Society (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.59-74, 1996-08-31
被引用文献数
3

In this paper we attempt to construct a dynamic model of discourse management, a version of Mental Space Theory, modified to accommodate dialogic discourse by incorporating a memory management system. We posit a cognitive interface between linguistic expression and knowledge-base. This interface contains pointers or indices linked to addresses in the knowledge base, controlling access paths to the data in the base. Utterances in a dialogue exchange can be redefined as input-output operations via this interface: registering, searching, editing, etc. The main theses of our approach to discourse management are as follows:<br>The operations coded in the various forms are to be defined as performing input-output operations on the database of the speaker and not that of the hearer's model in the speaker. It is argued that the hearer's model in the speaker is not only unnecessary but also harmful in the description of sentence forms. We divide the interface into two components, I-domain and D-domain. The former is linked to temporary memory, houses the assumptions and propositions newly introduced to the discourse yet to be incorporated into the database and can be accessed only indirectly by inferences, logical reasoning, hearsay, and data search. The latter is linked to the permanent memory, houses information already incorporated in the database and can be directly accessible by simple memory search like pointing to an index. New information passes through only via I-domain. We will demonstrate that our approach solves problems in mutual knowledge but also provides a powerful tool in the description of some of the most recalcitrant phenomena in natural language.
著者
後藤 昭雄 荒木 浩 米田 真理子 梶浦 晋 落合 俊典 赤尾 栄慶 金水 敏 近本 謙介 宇都宮 啓吾 海野 圭介 仁木 夏実
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、大阪府河内長野市にある真言宗寺院金剛寺所蔵の聖教の全体的調査である。そのために聖教全部の略目録の作成と貴重典籍についての詳細な調査研究を二つの柱として作業を行った。その結果として、なお整理調査が行われていなかった第21函から第55函までの聖教について略目録の作成を行い、報告書に公表した。これによって、金剛寺所蔵聖教のおおよそについては目録化がなされたことになる。貴重典籍については、刊本および音楽資料については全体的調査を行い、そのうちの重要資料は学術的位置づけを行った。精査を行った典籍の主なものは『全経大意』『百願修持観』『明句肝要』『清水寺縁起』『無名仏教摘句集』などである。これらについては論文と併せて影印あるいは翻刻によって全体の内容を報告書に公表した。