著者
金 吉晴
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.231-236, 2003-04-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
12

PTSDをはじめとする心的外傷関連障害が, 広範な社会的な関心の対象となっている. ペルー人質事件以後, 国立精神・神経センターでの委託費研究班が発足し, 平成13年には, 研究班としての対応マニュアルを発行した. PTSDで扱われているトラウマとは, 戦争に匹敵するような体験であり, 生理学的な側面と体験の認知ならびに意味付け的な混乱の両側面がある. 診断に際しては, 出来事の定義, 症状の記述とも, DSM-IVのような基準を参照すべきであり, とくに精神鑑定ではそれが重要である. トラウマからの一般的な回復過程を理解することは重要であり, 直後には一過性の比較的軽度の心身の変調が生じ, 一部がASDとなり, さらに一部がPTSDとなる. 遷延化する例はさらに少ない. 長期的にはアルコール・薬物依存, 自殺をはじめとする社会的な不適応が問題となる. 被害者が有責者であるかのようなスティグマは社会適応を阻害する.
著者
福井 一喜 金 延景 上野 李佳子 兼子 純
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.59-70, 2016 (Released:2019-05-31)
参考文献数
14
被引用文献数
3

本研究は,長野県佐久市の岩村田本町商店街を事例として,地方都市における中心商店街の取組みを調査することにより,新規店舗の開設と新規事業の創出による商店街活性化の方策を明らかにした.中山道の宿場町として発展した事例商店街では高速交通網の整備にともなって,隣接する郊外地域に大型店中心の商業集積が形成されたものの,それに先んじて商店街組織の世代交代を進め,空き店舗を活用した新規店舗の開設と新規事業創出を進め,地域住民の生活を支援する商業的・社会的機能を再構築した.こうした取組みを成立させることができた方策として,①地域貢献を使命とするビジョンの確立とそれを具現化するリーダーシップ,②その基盤となる世代を中心とした地域的連帯の活用,③新店舗や新事業の創出に向けた外部人材と小規模店舗の積極利用が挙げられる.
著者
金田 勝幸 出山 諭司 李 雪婷 張 彤 笹瀬 人暉
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.155, no.3, pp.135-139, 2020 (Released:2020-05-01)
参考文献数
16

ストレスは麻薬や覚醒剤などに対する欲求を増強させる.薬物欲求増強は一旦中止した薬物を再摂取してしまう再燃につながると考えられることから,欲求増強に関わる神経機構の解明が重要である.薬物欲求には,腹側被蓋野,側坐核,内側前頭前野(mPFC)などから構成される脳内報酬系に加え,報酬系と密接に関わる脳幹の背外側被蓋核(LDT)が関与する.また,ストレス時には,mPFCおよびLDTでのノルアドレナリン(NA)レベルが上昇する.したがって,ストレスによる薬物欲求増強に,これらの脳部位でのNA神経伝達の亢進が関与している可能性が推測される.そこで,コカイン条件付け場所嗜好性試験(CPPテスト)に拘束ストレス負荷を組み合わせる実験系を考案し,この仮説を検証した.ポストテスト直前に拘束ストレスを負荷することで,CPPスコアの有意な増大,すなわち,コカイン欲求の増強が認められ,この増強はLDTへのα2あるいはβ受容体拮抗薬の局所投与により抑制された.さらに,コカイン慢性投与後の動物から得たLDTニューロンでは,NAにより抑制性シナプス後電流が抑制されたことから,コカイン摂取により抑制性シナプス伝達に可塑的変化が誘導され,これが,LDTニューロンの興奮性を増大させることが示唆された.一方,NAはα1受容体を介してmPFC錐体ニューロンの興奮性を上昇させた.また,mPFCへのα1受容体拮抗薬の局所投与はストレスによるCPP増大を抑制し,さらに,薬理遺伝学的手法によりmPFC錐体ニューロンの活動を選択的に抑制することによっても,ストレス誘発性CPP増大は減弱した.以上の結果から,ストレスにより遊離の亢進したNAがLDTおよびmPFCニューロンを活性化させることで,コカイン欲求行動を増強させると考えられる.したがって,NA神経伝達の制御が,再燃に対する治療薬・治療法の開発につながることが期待される.
著者
金沢 純一 田中 幸和 小澤 健悟 岡村 宏 菅原 淳一
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
Dynamics & Design Conference 2006 (ISSN:24242993)
巻号頁・発行日
pp._725-1_-_725-4_, 2006-08-06 (Released:2017-06-19)

Front soundboard of classical guitar is the most important as part giving a sound. Because, it emit many sound energy. And, sound board has braces to reinforce it. We examined a difference of bracing pattern by investigating a vibration characteristic and an acoustic feature.
著者
林 雅秀 金澤 悠介
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.241-259, 2014 (Released:2016-07-10)
参考文献数
72
被引用文献数
1

多くのコモンズ研究は,人々の過剰利用によりコモンズが荒廃するリスクがあるという想定のもと,過剰利用を防ぐ制度的な仕組みを解明してきた.しかし,現代日本のコモンズに目を転じると,近代化や少子高齢化といった社会変動の結果,従来のコモンズ研究が想定しない状況が生じてきた.本研究の目的は,既存の研究を検討することで,このような新しいコモンズ問題を解明する糸口を探ることである.まず,新しいコモンズ問題の特徴を把握するために,従来のコモンズ研究の到達点を確認した.次に,新たなコモンズ問題として,社会変動の問題,資源利用の多様化の問題,過少利用問題をとりあげ,それぞれの問題の解明を試みた.その結果,社会的ジレンマモデルに基づく従来の研究では利用者のコミュニティが大きな役割を果たしているが,新しいコモンズ問題では利用者のコミュニティとその外部の関係が大きな役割を果たしていることが判明した.加えて,新しいコモンズ問題を探求する研究の絶対数が少ないことも判明した.

1 0 0 0 OA 訓蒙作文軌範

著者
金子尚政 著
出版者
温故堂
巻号頁・発行日
vol.巻1, 1877
著者
金今 直子 大山 直子 清水 万里江 坂東 誉子 田和辻 可昌 松居 辰則
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.123-133, 2022 (Released:2022-02-28)
参考文献数
25

In this study, we conducted an experiment that compared 27 schizophrenia patients and 29 healthy subjects in perception of emotions expressed by an NAO humanoid robot. We programmed the robot to express the eight basic emotions proposed by Plutchik (1984) which were anger, anticipation, expectation, joy, trust, fear, surprise, sadness, and disgust using Teshi et al. (2015)’s method of dynamically changing the robot’s eye color. We found a significant difference between the two groups of subjects in their judgements of the robot’s emotions. The results showed that the schizophrenic patients had difficulty in recognizing the robot’s emotions. In addition, the two groups showed different patterns of emotion misperceptions. The schizophrenic group’s misperceptions mistook positive and negative emotions. The misperception of schizophrenic patients may be caused by the similarity of colors and fast blinking cycles. We consider it resulting from the decline in information processing abilities of the schizophrenic patients.
著者
藤井 麻美子 戸田 康永 根岸 聡 酒本 勝之 金井 寛
出版者
Japanese Society for Thermal Medicine
雑誌
日本ハイパーサーミア学会誌 (ISSN:09112529)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.18-27, 1997-03-01 (Released:2010-01-28)
参考文献数
3

超音波ハイパーサーミアの大きな問題点として, 音響インピーダンスの著しく異なる境界面 (肺や骨など) での発熱があげられる.この発熱は患者に激痛を与え, その結果, 目的部位を十分に加温できなくなる.そして多くの場合, 治療を中断せざるを得なくなる.そこで本研究ではこの問題を筋肉-骨境界面に限定し, その発熱の原因を数値計算とモデル実験により解析した.超音波の伝搬において, 境界面における反射・透過率, さらには伝搬の圧縮波からずり波へのモード変換などは超音波の入射角度に大きく依存するので, 特に温度分布の角度依存性に注目して検討を進めた.
著者
今井 新太郎 玉木 徹 Raytchev Bisser 金田 和文 曽根 隆志 木内 良明
雑誌
研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.2015-CG-158, no.11, pp.1-6, 2015-02-20

白内障手術の際に眼内レンズが挿入されるが,後遺症として光源とは別の位置に光のぎらつき (グレア) を知覚することやコントラストの低下が挙げられる.Quality of Vision (QOV) の向上のために眼内レンズ挿入眼の見え方の質について調査することは重要である.本研究では,遠近に焦点を合わせることができる多焦点眼内レンズの見え方の質について調査することを目的とし,光線追跡シミュレーションに基づく網膜像作成手法と Modulation Transfer Function (MTF) を算出する方法を開発した.網膜像による定性的評価と MTF による定量的評価により,多焦点眼内レンズの見え方の質を単焦点眼内レンズと比較検討した.
著者
村田 和彦 吉田 忠義 鈴木 忠 河合 恭広 金沢 紀雄 高瀬 真一 佐々木 豊志 塩原 雄二郎 乾 迪雄 土屋 純
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.317-322, 1980-12-20 (Released:2009-11-11)
参考文献数
17

電気的交互脈は比較的まれな心電図異常であり, その正確な頻度は不明であるが, 心電図検査10,000回におよそ5回程度みられるものであるといわれている.本所見は通例心異常のあるものに認められ, その出現はしばしば心膜液貯留の診断の手がかりとなるが, きわめてまれながら, 他に心異常のない症例に電気的交互脈の出現をみたとの記載もある.以下, われわれが最近約15年間に経験した6症例を報告する.
著者
堀 雅夫 金田 武司
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.1101-1106, 2009 (Released:2010-07-22)
参考文献数
6
被引用文献数
2

日本の乗用車市場に、ICEVに代わってHEVとPHEVを導入することによる、長期的なエネルギー需給構造の変化とCO2排出削減の効果を、ロジスティック曲線を用いた導入シナリオにより評価した。登録車・軽自動車の平均的な走行パターン、電池価格、電池容量などを想定し、エネルギー費用を含む車両保有の経済性についても調べた。
著者
金子 希代子
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2020年度は、新型コロナウイルス感染症が拡大したために研究が中断され、継続が難しかった。しかし臨床研究である『尿路結石症患者および健常者における血中・尿中Protein Z濃度の比較』の学内倫理審査が2019年11月に受理され、測定データの見直しを行った。さらに尿路結石の分析に関しては、2019年度からの継続で、ヒトの結石ではないが、イルカとクジラの腎結石について、無機成分分析を実施した。これらがリン酸カルシウム結石であったことから、石灰化との関連に興味が持たれる。さらに検討を進める予定である。
著者
高橋 聡美 濃沼 信夫 伊藤 道哉 金子 さゆり
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.17-25, 2010 (Released:2010-10-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

統合失調症患者の在宅医療が進められる中,病院から地域への療養の場を移した患者のQOLの状態を把握することは,現在進められている施策の評価や今後の精神科領域における在宅医療推進の参考になると考えられる。本研究では,包括的QOL尺度EQ-5Dと,精神疾患特異的尺度QOLIを用い,入院群と地域群のQOLを測定し両者のQOLの差異を明確にし,現在進められている地域医療政策の意義を考察した。調査期間は平成17年10月∼平成18年6月で,クライテリアを満たす外来患者39名,入院患者68名合計107名を対象に面接調査を行った。調査の結果,入院群に関してはプライバシーを確保することが患者のQOL向上につながるひとつの要因であると考えられた。また,地域群の中でもグループホーム居住者は他の群に比べ,生活の満足度が高く,退院後の受け入れ先として患者にとって良好な環境であることが示唆された。
著者
金子 啓子 原田 要之助
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:21888647)
巻号頁・発行日
vol.2018-EIP-79, no.7, pp.1-10, 2018-02-09

情報システム部門は,情報セキュリティだけではなく,現実の運用やコストダウンの要求への対応,新たなシステムの企画 ・ 開発 ・ 導入など,様々な要請を解決する立場にあり,必ずしも情報セキュリティが優先されるわけではない.権限分離を考えると,情報セキュリティの社内ガバナンスは情報システム部門とは異なる別の部門が担当するべきかもしれないが,情報システム部門との緊張関係も生じ,リソースやスキル上の重複という課題もある.この論文では,情報セキュリティ大学院大学原田研究室のアンケート結果の分析等により,CISO を始めとした情報セキュリティガバナンス体制の現状と課題を分析し,あるべき体制を考察する.