著者
鈴木 昌 堀 進悟 小林 健二
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.209-215, 2004-06-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
8

目的:病院内で心停止に早期除細動を実践するには,看護師による電気的除細動(DC)が不可欠であるが,多くの看護師はDC施行を躊躇してきた。本邦に看護師によるDCを普及させるには,看護師がDC施行を躊躇する原因を明らかにする必要がある。本研究の目的は,看護師によるDC施行に対する看護師の態度に関与する要因を明らかにすることである。方法:平成15年10月に,救命救急センターを併設する市中総合病院(644床,看護師555人)で行われた救急蘇生法に関する院内講演会に先立ち,出席した看護師242人を対象に無記名アンケート調査を行った。有効回答が164人から得られた(回収率67.8%)。アンケートでは,評点尺度法を用いた9問を用意し,看護師によるDCに関して,教育,経験,法解釈および態度について尋ねた。病院内でVFへの遭遇時に,医師の指示なしでDCを施行するか否かについての態度に関与した要因をcategorical regression analysisを用いて抽出した。結果:VF遭遇時に,医師の指示なしでDCを施行すると回答した看護師は21人(12.8%)であった。この回答に関与した要因は,看護師による緊急時のDC施行は許されているか否かについての法解釈,DCの施行経験,DC施行現場への遭遇経験,および卒前教育の有無であった(r=0.476, p=0.02,重要度:0.444, 0.202, 0.126, 0.111)。結語:医師の指示なしでDCを施行するか否かに関する看護師の態度に最も関与した要因は,看護師のDC施行に対する法解釈であった。本邦において,看護師によるDC施行を普及させるには,看護師によるDC施行の法的根拠を明確に示す必要がある。
著者
山口 雄仁 鈴木 昌和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.65, pp.23-27, 2012-05-18
参考文献数
16

デジタル教科書の本格導入が近い将来予定されている中で,理数系デジタルコンテンツのアクセシビリティは積み残された大きな問題である。ここでは,近年アクセシブルな電子書籍の形式として世界的に広く普及しつつあるDAISY(Digital Accessible Information System)を取り上げ,テキストDAISY形式による日本語理数系教科書製作の問題点を議論する。テキストDAISYの日本語音声合成による読み上げでは,専門用語の読み間違い,息継ぎや抑揚のおかしな箇所などがしばしば見られる。さらに日本語固有ではない問題として,数式の読み間違いも発生する。しかし現行のDAISYにはそれらを適切に修正・制御する方法がないため,DAISY形式のデジタル教科書を製作する上で問題が大きい。さらに障害者自身がDAISYコンテンツを製作できないという問題もある。我々はDAISY形式の改良を提案するとともに,全盲者用の数学文書エディタを元に新たにテキストDAISY編集・閲覧ソフトウェアを開発した。これを用いれば,晴眼者・障害者両方が,非技術的内容から理数系文書までの,読み間違いのないDAISY書籍を製作できる。
著者
鈴木 昌治 小川 明宏 高橋 力也 米山 平 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.575-580, 1984-08-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
21

紹興酒もろみ及び麦麹より分離した発酵性酵母12株の同定試験を行ない, 形態学的性質および生理学的性質の結果よりSacch. cerevisiaeと同定した。また, これら酵母はメレジトーズの資化性 (-), ビオチン欠培地での増殖 (+), イーストサイジンの抵抗性 (-), カリ欠培地での増殖 (+), 高泡形成能 (-), L.caseiによる凝集性 (+Weak), 対5番抗原活性 (-) であり, 本邦の焼酎酵母に類似していた。本研究の遂行にあたり, 試料の提供とともに有意義な御助言を賜わった鈴木明治博士ならびに懇切なる御指導をいただいた竹田正久博士, 中田久保氏に深謝する.
著者
石川 博康 熊野 高行 鈴木 昌幸 熊谷 裕昭
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.17-21, 2003-01-01

62歳,男性.食用のベニナギナタタケと間違ってカエンタケを誤食したところ,嘔吐,腹痛,水様下痢などの消化器症状に引き続き,翌日には全身の潮紅とともにショック症状が出現した.大量補液と人工透析の併用により,ようやく循環動態の改善をみたが,1週後には骨髄抑制による白血球および血小板の減少を認めた.経過中,顔面の発赤腫脹や難治性口内炎,回復期での掌蹠の膜様落屑と脱毛などきわめて特異的な皮膚粘膜症状を呈した.カエンタケの毒素成分は長年不詳であったが,mycotoxinとして有名なtrichothecene類であることが昨年解明された.カエンタケ中毒は本邦で6件発症し,患者10例中2例が死亡している.救命にはキノコの十分な鑑別と初期医療での大量補液が重要である.
著者
川田 三四郎 神藤 修 落合 秀人 飯野 一郎太 宇野 彰晋 深澤 貴子 稲葉 圭介 松本 圭五 鈴木 昌八
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.619-622, 2015-07-31 (Released:2015-10-31)
参考文献数
8
被引用文献数
2

今回われわれはPress Through Package(以下,PTP)誤飲による消化管穿孔の2症例を経験した。【症例1】87歳女性。心窩部痛を主訴に受診。腹部CTで十二指腸にPTPと思われる高吸収構造と遊離ガス像を認めた。PTP誤飲による十二指腸穿孔を疑い,上部消化管内視鏡検査で,十二指腸水平脚にPTPを確認,摘出しクリップで閉鎖したが治癒に至らず,第48病日に十二指腸・空腸部分切除術を施行した。【症例2】60歳女性。上腹部痛で発症し,CTで遊離ガス像を認め消化管穿孔の診断で当院に搬送された。当院で再検したCTでも異物を指摘できず,穿孔部の同定も困難であった。緊急手術で,Treitz靱帯から240cmの回腸に穿孔部を認めPTPの一部が露出していた。【考察】消化管穿孔の原因としてPTPの誤飲も念頭におく必要がある。PTPは材質によりCTで描出されない場合があることを考慮し,画像診断すべきである。
著者
山口 雄仁 鈴木 昌和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.65, pp.23-27, 2012-05-18

デジタル教科書の本格導入が近い将来予定されている中で,理数系デジタルコンテンツのアクセシビリティは積み残された大きな問題である。ここでは,近年アクセシブルな電子書籍の形式として世界的に広く普及しつつあるDAISY(Digital Accessible Information System)を取り上げ,テキストDAISY形式による日本語理数系教科書製作の問題点を議論する。テキストDAISYの日本語音声合成による読み上げでは,専門用語の読み間違い,息継ぎや抑揚のおかしな箇所などがしばしば見られる。さらに日本語固有ではない問題として,数式の読み間違いも発生する。しかし現行のDAISYにはそれらを適切に修正・制御する方法がないため,DAISY形式のデジタル教科書を製作する上で問題が大きい。さらに障害者自身がDAISYコンテンツを製作できないという問題もある。我々はDAISY形式の改良を提案するとともに,全盲者用の数学文書エディタを元に新たにテキストDAISY編集・閲覧ソフトウェアを開発した。これを用いれば,晴眼者・障害者両方が,非技術的内容から理数系文書までの,読み間違いのないDAISY書籍を製作できる。
著者
金堀 利洋 鈴木 昌和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.66, pp.7-10, 2005-05-12

Webアクセシビリティの意識が浸透しつつある一方で, 情報がPDFとして提供される流れが加速している.配布されているPDFには文字情報が、人が読む順序と異なる順番に埋め込まれていて、視覚障害者がその内容を読み取る事は困難な場合が多い.また, 数式の情報が読み取れる形で入っていることはほとんど無い.今回, 特に数式や表を含んだ科学技術文書を対象とし, PDFに既に埋め込まれている文字情報を抽出し, 一方で, PDFを画像として認識し, 認識結果と抽出した文字情報を組み合わせ, 質の高い, アクセシブルな文書情報をPDFから取り出すことを目的とするシステムのプロトタイプを示す.
著者
鈴木 昌子
出版者
山野美容芸術短期大学
雑誌
山野研究紀要 (ISSN:09196323)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.11-17, 1993-03-25

古代の代表的な髪形は,「美<み>豆<づ>良<ら>」であった。奈良時代になって,唐の文化が輸入されて「高髻」という髪形が流行したが,平安時代に入ると日本独自の文化が生まれ「垂髪」が一般的となり,この髪形が室町時代まで続いた。江戸時代には経済の実権が町人に移り艶麗ともいわれる江戸文化が華ひらいた。垂髪のわずらわしさを解放するために,江戸時代前期には唐輪髷が開発され,「兵庫髷」「若衆髷」や「島田髷」が工夫された。江戸中期になると,女髪結という専業者が生れ,また固練油の鬢付油が開発されて新しい髪形が考案されるようになった。江戸後期になると,江戸中期の豪華・精巧な趣があきられて,すっきりと洗練されたいわゆる「粋」な美意識が好まれるようになり,島田の変形が流行した。男女合わせて約三百種類の髪形が生まれた。現在ではこの一部の髪形が儀式や伝統芸能などの非日常的な分野にのみ伝承されている。
著者
鈴木 昌子
出版者
山野美容芸術短期大学
雑誌
山野研究紀要 (ISSN:09196323)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.39-51, 1998-03-25

江戸時代(1603〜1868)は日本文化が中国大陸からつぎつぎともたらされる文物の刺激を受け,豊かに発展した時代である。それは平和な鎖国的環境のもとで成熟期を迎えるとともに,新たに明・清あるいは西洋からの影響も加わって,いろいろな風俗習慣が生まれたのである。日本人は外国からの異文化を和風文化として育てあげ,次に来る文化もまた異文化を捉えて,再度それを和風文化として取り入れてしまう国民なのである。その結果江戸時代は,欧米の文化と東アジア文化が複雑に入りまじった,日本文化の基礎を作ることになったのである。従って大陸での髪型も,江戸時代を通して日本に取り入れられて,日本髪を誕生させる結果となったのである。流蘇髻(図(1)参照)(りゅうそけい)は懐月堂安度とその一門が活躍した時代,また鬆鬢扁髻(しょうびんへんけい)(図(5)参照)は喜多川歌麿の理想の美人の髪を飾った燈籠鬢(とうろうびん)(図(4)参照)であるが,結局日本髪の誕生は中国文化受容の結果であったといえる。
著者
鈴木 昌子
出版者
学校法人 山野学苑 山野美容芸術短期大学
雑誌
山野研究紀要 (ISSN:09196323)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.39-50, 1997

古代の女子の髪形には,垂髪,頭上一髻,頭上二髻,四ツ割,雑等がある。頭上一髻と四ツ割は,当時唐の女性が結っていた烏蛮髻(うばんけい)である。平安初期の神仏混同の影響を受けて神功皇后女神像が造像された。この像を通して当時の髪形を考察してみたい。高髻は吉祥天女図及び諸仏像に結われているが,樹下美人の四ツ割,頭上一髻は,髪の長さによって変形した髪形であり,神功皇后像の髪形もこの系統である。樹下美人図の髪形も,女神像に結われ垂髪へと変化して行くのである。960年の内裏の火災は,こうした髪形から,やがて国風の風俗が生みだされる契機となったのである。
著者
堀 進悟 佐野 元昭 鈴木 昌 太田 成男 林田 敬
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、水素吸入療法の院外心停止蘇生後患者に臨床応用を目指したトランスレーショナルリサーチである。まず、ラット心停止蘇生後モデルを用い水素吸入の有用性の検証した。水素吸入群では、脳機能スコアおよび生存率が対照群と比較して改善した。水素吸入と低体温療法を併用することにより最も改善効果を認めた。さらに、蘇生後患者に対し水素吸入の安全性と有効性の評価を行った。事前に設定した予測しうる心停止発症後7日間以内の臨床的異常変動を観察し、副作用および臨床上の不利益をみとめなかった。対象全5例中4例が独歩退院した。今後、多施設無作為化試験により心停止後症候群患者に対する水素吸入の効果を検証する予定である。

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著者
鈴木 昌
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.1084-1088, 2011 (Released:2013-04-10)
被引用文献数
1
著者
堀 進悟 副島 京子 篠澤 洋太郎 藤島 清太郎 武田 英孝 木村 裕之 小林 正人 鈴木 昌 村井 達哉 柳田 純一 相川 直樹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.11-14, 1997

近隣救急隊の1994年12月から1996年4月まで16ヵ月間の出場記録を調査し,浴室内で発生した急病の調査を行った.浴室の急病は43例で当該期間の全救急件数の0.19%を占めていた.年齢は77±10歳と高齢者に多く,男女比は24例対19例と男性に多かった.診断は心肺停止26例(60%),失神(前駆症)14例,脳血管障害3例であった.各群とも高齢者が多く,明らかな年齢差を認めなかった.浴室急病の発生時期は,心肺停止のみならず,いずれの群も12-3月の厳寒期に集中していた。心肺停止は自宅浴室の発生が26例(100%)で,公衆浴場における発生は認めなかった. 一方, 非心肺停止例では自宅浴室が12例,公衆浴場が5例であった(p<0.01).さらに浴室内の発生場所を検討すると,心肺停止は浴槽内が22例(85%),洗い場が4例,非心肺停止では浴槽内が7例,洗い場が7例,不明が3例であった(p<0.01).溺水の有無を検討すると,心肺停止では21例に,非心肺停止では2例に溺水を認めた(p<0.01).すなわち,心肺停止は非心肺停止例と比較して自宅浴室の浴槽内で発生しやすく,溺水をともない易いことが示された.<BR>本研究により,公衆浴場よりも自宅浴室が心肺停止の危険をもたらしうることが示された.すなわち,身近に救助者がいれば入浴急死は防止できる可能性が示唆された.
著者
藤原 和弘 高橋 智一 鈴木 昌人 青柳 誠司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. [音楽情報科学]
巻号頁・発行日
vol.2014, no.16, pp.1-6, 2014-08-18

楽曲から抽出した遷移確率を用いて旋律部分と伴奏部分を自動作曲する方法を提案する.遷移確率とは,音高,音長について,ある音高 (音長) のつぎに,どのような音高 (音長) が続くかの確率である.本稿では,実際の楽曲 (アーティスト:バンプオブチキン,ラルクアンシエル) から遷移確率を抽出した.アンケート調査の結果,音楽的に悪くなく,アーティストらしい曲が作曲できている事が確認できた.
著者
岡田 俊樹 前田 安彦 角田 潔和 鈴木 昌治 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.8, pp.674-681, 1999-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

Kona-koji was prepared without the addition of a koji starter (Tanc-koji) for the production of Imo-shochu. The spores of molds carried in the air affected growth during the preparation of koji. So, we isolated the spores of molds from the vicinity of the places used for the preparation of koji and production of shochu.As shown by the results, a 103 order of colonies per gram·koji of A. oryzae were isolated from kojimuro solids, shochu distillery solids and from the leaves of N. antiqua that are used to wrap the koji A. oryzae spores were also isolated from the air of the koji-muro and shochu distillery. In addition spores of A. niger and other molds were also isolated.We measured the enzyme activity of these strains and investigated their physiological characteristics. Their acidity was higher than that of the standard strains. The characteristics of these strains agreed with those of strains isolated from kona-koji. Therefore, we found that spores of Aspergillus sp. were mixed with the raw material for koji from the leaves of N. antiqua or airborne spores, and these spores grew during the preparation of koji.Further more, spores of other mold contaminating koji were isolated from the leaves of N. antiqua, but they were not detected in the koji. We found that their mold were selected against as the temperature of koji rose to 40C during its preparation.
著者
岡田 俊樹 前田 安彦 金内 誠 角田 潔和 鈴木 昌治 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.10, pp.849-852, 1999-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

青ヶ島の芋焼酎製造に用いられる粉状麹の諸性質を調べた。(1) 粉状麹の製麹過程中の水分含量の変化は, 引込み時に45.0%であったものが, 7日目の出麹時は, 32.0%まで減少した。これは, 一般的な散麹の値より10%程度高かった。(2) 粉状麹の製麹中の酸度は, 出麹まで増加し続け, 4.0meに達した。これは, 一般的な焼酎用麹の酸度よりわずかに低いものであった。(3) 粉状麹の出麹時の各種酵素力価は, AAは1, 100U/g・麹, GAは260U/g・麹であり, 白麹菌を用いて製麹した焼酎用麦麹と比べて, AAで約12倍, GAで約1.4倍高かった。APは11,900U/g・麹で, 焼酎用麦麹と同等であり, ACPは9, 800U/g・麹で, 約3倍高い値を示した。また, 耐酸性α-アミラーゼは530U/g・麹だった。(4) 粉状麹の製麹過程中の細菌酸度は, 製麹開始後, 4日目に3.1meに達したが, その後減少し, 出麹時は2.4meだった。これは, 一般的な散麹の値より高い値だった。以上の結果より, 青ヶ島の芋焼酎製造に用いられている粉状麹は, 酸度が高いことや各種の酵素力価より, 焼酎用麹として十分な品質を有していることが明らかとなった。
著者
岡田 俊樹 前田 安彦 角田 潔和 鈴木 昌治 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.2, pp.150-157, 1999-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

伊豆諸島の青ヶ島で芋焼酎の製造に用いられている粉状麹の製麹法について現地調査を行うとともに, 粉状麹の製麹過程中の麹の状貌変化や主要糸状菌の検索とその諸性質を調べた。(1) 粉状麹の製麹法の特徴は, 原料大麦を妙こう処理してから粉状にして用い, 種麹などのスターターを使わずに自然種付によって行うことから製麹に約1週間を費やすことにあった。また, 製麹時に, タニワタリの葉が用いられていた。(2) 青ヶ島には7カ所の製麹場があり, そのうち一醸造場の製麹過程中の糸状菌の動態を調査した。引込みから24時問目にはピンク色の胞子と黄色の胞子が混在していたが, 41日目までに黄色の胞子を持った菌株が急激に増殖し, その後も穏やかな増殖が続き, 出麹まで7目間を要した。出麹時の麹は黄色の胞子が2.7×1011個/g・麹, 黒色の胞子は3.1×1010個/g・麹で, 黄色の菌株がセ体の粉状麹であった。(3) 製麹過程中の培養物および出麹時の麹より分離した菌株の同定を行った結果, 粉状麹に優勢して着生する糸状菌はA. oryzae groupに属する菌種であり, 他にA. niger groupがわずかに混在する菌相であった。(4) A. oryzae groupの生理学的牲質を調べた結果, 生酸性においては, 多酸性の株が多く, 麹酸は, 全ての株で高い生産性が認められた。また, 酵素力価は, α-アミラーゼと中性プロテアーゼ活性において菌株間に大きな違いがみられ, さまざまな性質の菌が混在していた。(5) A. niger groupの生理学的性質を調べた結果, 生酸性は, A. oryzae groupより高く, 酵素力価は, α-アミラーゼ, 中性プロテアーとも低かった。本研究を行うにあたりご協力いただきました青ヶ島酒造合資会社奥山喜久一氏ならびに青ヶ島役場の方々に深謝いたします。