著者
森田 達也 古村 和恵 佐久間 由美 井村 千鶴 野末 よし子 木下 寛也 白髭 豊 山岸 暁美 鈴木 聡
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.382-388, 2012 (Released:2012-07-31)
参考文献数
22

本研究の目的は, 患者所持型情報共有ツール『わたしのカルテ』の利用状況を明らかにすることである. 配布数, 医師706名・看護師2,236名の質問紙調査, 医療福祉従事者40名に対するインタビュー調査, 事例を分析した. 年間平均1,131冊が配布され, 15%の医師, 16%の看護師が使用した. 医療者の体験としては, 現状として【一部では使われているが全体には広がらない】, 効果として【患者の自己コントロール感が上がる】【医療福祉従事者間の情報共有になる】, 普及しない理由として【患者にとって利益がない・負担が大きい】【関係する地域の職種すべてが使用する必要がある】ことが挙げられた. 11病院で運用が試みられたが, 3年間継続した運用ができたのは2病院のみであった. わが国の多くの地域において, 患者所持型情報共有ツールを短期間に地域全体に普及させることの実施可能性は低いことが示唆された.
著者
本川 雅治 下稲葉 さやか 鈴木 聡
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.181-191, 2006 (Released:2007-02-01)
参考文献数
40

日本産哺乳類の最近の分類体系について,阿部(2005)「日本の哺乳類 改訂版」(以下,日本哺乳類2)とWilson and Reeder(2005)「Mammal Species of the World」第3版(以下,MSW3)での扱われ方について検討した.明らかな外来種と鯨目,および海牛目を除くと,日本産哺乳類として,日本哺乳類2は116種,MSW3は120種を認めた.高次分類群に関連して,日本哺乳類2を含む従来の文献で食虫目(Order Insectivora)とされていた一群は,MSW3ではアフリカトガリネズミ目(Order Afrosoricida),ハリネズミ形目(Order Erinaceomorpha)およびトガリネズミ形目(Order Soricomorpha)の3つに分割され,日本産の「食虫目」に含まれるトガリネズミ科とモグラ科はすべてトガリネズミ形目に含まれた.種レベルでの両書の分類体系について,記述された内容や引用文献の内容などに基づいて対応表を作成したところ,種レベルでの分類体系について両書で相違が見られた.また,両書が編集,出版された後に,日本産哺乳類の分類体系について大きな変更や分類学上の重要な知見がいくつかの種で得られている.これらの37項目について,本文中でコメントした.
著者
鈴木 聡 森島 泰則 中村 美代子 槻舘 尚武 武田 英明
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.513-525, 2008-08-15
被引用文献数
1

本研究では身体化エージェントの登場位置・身体方向に注目し,物理空間・仮想空間の間に寸断されたユーザと身体化エージェントの位置関係を乗り越え,対等な社会的関係の構築が行える環境を追求する.身体化エージェントの身体方向と,画面奥行き方向の仕切りを基準とした身体化エージェントの登場位置に着目し,これらのユーザへの影響を心理実験により検討を行った.この際,人間同士の2者対話における身体配置の選好における男女差の存在が知られているため,考慮に入れた.実験1(N=48)では作業の遂行(写真の記憶再認課題)と身体化エージェントの印象に対して上記の要因が与える影響について,男女差も考慮の上検討した.実験2(N=51)においては身体化エージェントの身体方向の,ユーザが認知するエージェントとの距離への影響について実験を行った.これらの実験の結果,エージェントの登場位置のみならず,身体方向もエージェントとの距離のユーザの認知に影響し,男性のユーザは女性のユーザより距離を離した形でのエージェントの身体配置を好む可能性が示唆された.身体化エージェントの身体配置,およびその影響の男女差を踏まえた身体化エージェントの設計の必要性を本研究は示している.
著者
森田 達也 野末 よし子 花田 芙蓉子 宮下 光令 鈴木 聡 木下 寛也 白髭 豊 江口 研二
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.121-135, 2012 (Released:2012-02-22)
参考文献数
19
被引用文献数
5

本研究の目的は, 地域緩和ケアプログラムが行われた地域の医師・看護師の体験した変化を収集することである. OPTIMプロジェクト介入後の医師1,763名, 看護師3,156名に対する質問紙調査の回答706件, 2,236件を対象とした. 自由記述の内容分析を行い, それぞれ327, 737の意味単位を同定した. 好ましい変化として, 【チーム医療と連携が進んだ】 ([相談しやすくなった][名前と顔, 役割, 考え方が分かるようになった]など), 【在宅療養が普及した】 ([在宅移行がスムースになってきた]など), 【緩和ケアを意識するようになり知識や技術が増えた】が挙げられた. 意見が分かれた体験として, 【病院医師・看護師の在宅の視点】【活動の広がり】【患者・家族・市民の認識】が挙げられた. 地域緩和ケアプログラムによるおもな変化は, チーム医療と連携, 緩和ケアの意識と知識や技術の向上, 在宅療養の普及であると考えられた.
著者
石井 宏幸 山本 将生 鈴木 聡 神山 斉己 臼井 支朗
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.2370-2378, 1994-12-25
被引用文献数
3

網膜水平細胞間を結合するギャップジャンクションは,視覚情報処理の基本である中心-周辺拮抗型受容野の形成に重要な役割を担っている.従来,こうした水平細胞間のギャップコンダクタンスが非線形特性をもつことや順応状態により動的に変化することが示唆されているが,そうした特性を生理実験によって直接測定することは著しく困難であった.本論文では,筆者らが先に提案したイオン電流モデルを用いた入力電流推定法に特定の信号伝達経路を制御する生理実験技術を適用し,水平細胞の膜電位応答からギャップコンダクタンスの動的変化を推定する手法を提案する.提案手法の有効性は,視細胞-水平細胞ネットワークモデルから求めた水平細胞モデル応答を擬似実験データとして用い,モデルのギャップコンダクタンス値が精度良く推定されることにより確認した.更に,コイ網膜L型水平細胞より記録した膜電位応答に提案手法を適用したところ,従来報告されている知見に近いギャップコンダクタンス値が推定された.
著者
鈴木 聡 鈴木 宏昭
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.24, 2010

アカデミックライティングの学習において,参照したテキストの中から学習者自ら議論する問題を発見し,協調学習を通じて内容を洗練させる問題構築的読解のプロセスは重要な役割を果たす.著者らは,問題構築的読解のためのマーキング・相互コメントが可能なWebベースの学習環境を開発し,大学授業にて運用した.本発表では,その際の相互コメントの内容を分析し,相互コメントの質とライティングの質との関係について検討する.
著者
鈴木 聡子 阿部 祐子 船橋 良 片山 倫子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.589-596, 2007-09-15

We evaluated the washing performance of 3 basic type and 6 domestic automatic washing machines using the evaluation method of Katayama et al. The 3 basic types were the agitator type (JIS standard washing machine), the tumbler style (Wascator), and the whirlpool type (Two-tub washing machine). The 6 domestic automatic washing machines were 4 tumble style washing machines, 1 whirlpool type washing machine and 1 beat-wash type washing machine sold in the last five years. As a result of a comparison of their washing performance, the JIS standard washing machine removed dirt much better than the others, and its Mechanical Action Value was much higher than the others. The two-tub washing machine showed the second best detergency and Mechanical Action Value. The Wascator showed much worse detergency, and its Mechanical Action Value varied widely. We also tried to examine the washing performance of the standard washing course of each of the 6 domestic automatic washing machines for 4.0kg loads washed in water for 10min. As a result of a comparison with their previous washing performance, their detergency was no different, but their Mechanical Action Values varied widely.
著者
片柳 憲雄 武藤 輝一 田中 乙雄 鈴木 力 藍沢 喜久雄 西巻 正 田中 陽一 武藤 一朗 武田 信夫 田中 申介 鈴木 茂 田中 典生 藪崎 裕 大森 克利 多田 哲也 鈴木 聡 大日方 一夫 曽我 淳
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.968-976, 1991-04-01
被引用文献数
18

1989年末までの22年間に経験した食道癌症例814例のうち,他臓器に重複癌のある64例(7.9%)を対象として,手術術式,治療成績を中心に検討した.同時性2臓器重複癌は37例,異時性2臓器重複癌では食道癌先行が10例,他臓器癌先行が11例あり,3臓器以上の重複癌も6例に認めた.同時性重複癌の重複臓器は胃が25例と圧倒的に多く,このうち16例は早期胃癌であった.胃癌合併例では,早期癌が胃管作製時の切除範囲に含まれる場合を除いて胃全摘,結腸による再建を原則とした.同時性重複癌の両癌切除例の5生率は34.6%であり,少なくとも一方が非切除であった症例に対して有意に(p<0.05)良好であった.さらに,食道癌治癒切除例の予後は,5生率58.3%とほぼ満足できる成績であった.治療成績向上のためには,重複癌の存在を念頭においた診断と,両癌の治癒切除を目指した積極的な手術が重要であると思われた.
著者
鈴木 聡 白石 藍子 鈴木 宏昭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.15, pp.97-104, 2009-02-20
被引用文献数
2

文章構成能力の需要は増加しており,この能力を高めるための学習方略の発見は重要である。本研究では,学習者がこの能力を高めるためのアプローチとしてライティング活動におけるテキストの批判的読解に注目した。ライティングの学習や認知に関する各分野の知見から,感情的思考がライティングにおける問題発見に寄与すると考えられる。そこでWeb上のテキストの下線・コメントの付与 (マーキング) と感情タグの付与を可能にする EMU (Emotional and Motivational Underliner) を開発した。そして, EMU の感情タグが批判的読解に与える影響を実験により検討し,感情タグが学習者による批判的読解を促すことが示唆された。Demand of ability of essay writing is increasing, and finding learning strategies of improving such ability is important. We focused on critical reading to discovering problems for essay writing. Taking into account the studies related to writing activity in various research fields, emotional thought should contribute to problem discovery in essay writing. We developed a Web application called EMU (Emotional and Motivational Underliner) , which enables learners to add comments on arbitrary strings with emotional tagging. We examined the influence of the emotional tagging on the EMU on learners' critical reading. The results suggested that the emotional tagging elicited learners' critical attitude toward the text.
著者
鈴木 聡
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.23, 2009

これまでHAI研究は,身体化エージェント,ロボットといった身体の実装を含むソーシャルアクタ(SA)の機構をもとに概観されてきた.しかし人間中心視点でSAをみると,SAの機構は中心的な課題といえない.本発表では人間中心視点の背景を説明した上で,約20のHAI研究を人間による自身の身体・SAの身体・タスクの場の定位という視点で概観し,HAIの設計・評価に関する今後の研究方針を提案する.
著者
羽倉 昌志 鈴木 聡 佐藤 哲男
出版者
日本環境変異原学会
雑誌
環境変異原研究 (ISSN:09100865)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.135-146, 2003 (Released:2005-08-19)
参考文献数
57
被引用文献数
3 4

Because of the recent advances in the acquisition of human materials for research in addition to the value in the evaluation of the mutagenicity in humans, the use of human S9 fractions in the Ames test is starting to attract attention. However, until recently, available data on the mutagenicity with human S9 fractions has been limited. We have thus accumulated a large and extensive body of data on the Ames test with human S9 fractions during the last 5 years. In this report, these data are reviewed, and the utility of the human S9 fractions in mutagenicity testing systems is discussed.