著者
米山 裕太 高橋 健太 西垣 正勝
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC)
巻号頁・発行日
vol.2013-CSEC-62, no.45, pp.1-6, 2013-07-11

著者らが提案した生体情報を秘密鍵とするディジタル署名 Fuzzy Signature においては,曖昧な生体情報を誤り訂正するために整数格子上の Fuzzy Commitment を用いている.整数格子上の Fuzzy Commitment では,L∞ 空間における整数格子への丸め処理によって誤り訂正を行っている.しかし,顔認証など,特徴量がユークリッド空間上のベクトルとしてコード化される場合には,Fuzzy Commitment への適用が困難であった.本稿では,三角格子の最近傍探索を用いることで,近似的にユークリッド距離に基づく Fuzzy Commitment および Fuzzy Signature を実現する方法を提案する.
著者
中井 隆司 高橋 健夫 岡沢 祥訓
出版者
日本スポーツ教育学会
雑誌
スポーツ教育学研究 (ISSN:09118845)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.125-135, 1996
被引用文献数
1

本研究では, 学習者の側から体育教師のイメージを教授学的に明らかにするとともに, 学習者の個人的特性がどのように関係するのかを明らかにしようとした。調査票は, 教授学的視点にたった体育教師像を探求する観点から65項目 (内3項目は学習者の個人的特性に関する項目) で作成し, 11大学の学生1058名を対象に回顧形式で中学・高校時代の体育教師について回答させた。<br>そこで得られた結果は次のようである。<br>(1) 62項目の調査項目に因子分析を施したところ, 学習者の側からみた体育教師のイメージとして, 「慕われる人」「専門的な能力」「熱心な指導」「無計画な授業」「恐い存在」「精神力の強さ」「社会的教養の欠如」「健康な人」「情意的な授業」「科学的な授業」「狭い専門性」の11因子が抽出された。これらは, 本研究が意図した教授学的視点が顕著に反映され, 従来の研究とは異なった教師像を示している。<br>(2) これら11因子の因子別項目平均得点から, 学生が体育教師に対して抱くイメージは「丈夫で, 精神力があり, スポーツに関わった能力のみならず, 幅広い教養を持ったすぐれたスペシャリストで, 授業では運動の楽しさなどの情意面に焦点をおいて計画的かつ熱心に指導する人であるが, 信頼感や思いやりに欠け, 生活指導面での厳しい恐い存在である」ということである。<br>(3) 学習者の個人的特性と各因子の関係を分析した結果, 男子学生や体育学部に進学した学生は, 体育教師に対して人間的なイメージを持っている一方, 教育学部に進学した学生は, より教師的なものになっており, 女子学生やその他の学部に進学した学生は, スポーツマン的にみていることが明らかになった。また, 「体育教師への好意度」, 「体育授業への好意度」, 「運動の得意度」と各因子の関係を分析した結果, 「慕われる人」因子が体育教師への愛好的態度育成に最も強い規定力をもっていることが認められた。このことは, 体育教師としての専門的な力量とともに, 教師としての資質や人間性, 特に生徒に対して信頼感や思いやりをもつことの重要性を示唆していると考えられる。<br>最後に, 本研究では, 中学・高校時代の記憶が比較的鮮明に残っている大学生を対象に回顧形式で調査を行ったため, その結果は, 直接授業で教わっている生徒のイメージを反映したものではない。しかし, その研究意図や導き出された結果から, 今後の教師教育にとって非常に有益な示唆が得られたと考える。今後は, この示唆を教師教育に具体的にどのように役立てていくのかについて研究を深めたい。
著者
高橋 健一郎
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.40-51, 2003

本稿は非協同的なコミュニケーションの一例としての1934年のスターリンとH.G.ウェルズの対談を「イデオロギー闘争」という観点から分析する.スターリンのディスコースの基本的な命題は,「資本主義はアナーキーを生む」(つまり,資本主義は悪である)と「人間は資本家階級と労働者階級に分けられ,両者は闘争をしている」というものであるが,ウェルズがいかにそれを批判し,スターリンがいかに正当化するかを分析する.ウェルズは自分自身を「世界を知り,イデオロギー的制約から自由な一庶民」と提示し,その反対の立場にスターリンを置きながら批判を試みる.それに対して,スターリンは「資本主義」と「資本家階級と労働者階級」に関する基本命題をさまざまな言語形態の《前提》表現によって発話の中に滑り込ませ,ウェルズの批判をかわしていく.そして,上記のウェルズの立場に対立する立場として「豊富な歴史的経験」を持ち出し,ウェルズが批判する「古臭さ」から「豊富な歴史的経験」へと価値評価を逆転させる.
著者
有田 皓亮 高橋 健一 上田 祐彰
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第26回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.121, 2010 (Released:2010-11-05)

近年,大学などへのパソコンの普及とともに,eラーニングシステムが広く用いられるようになってきた.eラーニングシステムは,時間や場所を選ばず、学習者の理解度に応じて学習を進められるなどの利点を持っている反面、学習者の学習意欲の持続が難しいことや,教師が学習者の状況を視覚的に把握できないことなどの欠点も持っている.そこで本研究では、Webカメラにより学習者を正面からと側面からの2方向から撮影し、撮影画像に画像処理を施すことによって学習者の集中度を推定するシステムを構築する.正面からの撮影画像からは,Haarlike特徴を用いたAdaboostによって学習された識別器を用いて学習者が正面を向いて学習を行っているかを判定し,横からの撮影画像からは,ニューラルネットワークを用いて学習者が正しい姿勢で学習を行っているかを判定する.また,これらの有用性を確かめるために,それぞれの判定の正答率を調べ,その結果について考察する.
著者
山口 さやか 高橋 健造
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.12, pp.2513-2517, 2019

<p>アタマジラミは,市販されているピレスロイド製剤を用いて家庭内で駆虫してきたため,これまで皮膚科医が介入する機会はほとんどなかった.しかし近年,ピレスロイド製剤で駆虫できない難治性アタマジラミ症が世界中で広がり,日本でも遭遇する機会が増えている.アタマジラミの特徴,治療法,感染対策について解説するとともに,ピレスロイド抵抗性アタマジラミの耐性化機序や日本の現状と,今後期待される薬剤について紹介する.</p>
著者
坪田 敏男 金川 弘司 高橋 健一 安江 健 福永 重治
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.203-210, 1985-12-25 (Released:2008-05-15)
参考文献数
6
被引用文献数
11 15

1982年と1983年の2年間にわたって,多頭集団飼育されているエゾヒグマの性行動を観察した。個体識別した雄と雌グマ各20頭においては,特定のクマ同志で交尾をするということはなく,無差別に交尾を行っていた。交尾様式は,乗駕開始(Mounting),腰部の突き(Pelvic thrusting),後肢の痙攣様運動(Quivering),および乗駕終了(Dismounting)の順で行われ,その一連の行動に要する時間は平均23分であった。このうちの後肢の痙攣様運動は射精に伴う運動と推測された。乗駕は,1日の中では朝7時頃と夕方19時頃に多かった。また,繁殖期の中でも6月上旬にそのピークがみられた。雌グマは発情すると雄グマの乗駕を許容するようになり,その継続期間はかなり長くなる傾向を示したが,個体差も大きかった。雄グマは10歳以上になると年齢が進むにしたがいしだいに乗駕回数が減少するのに対して,雌グマは年齢によって雄グマに乗駕される回数に変化はなかった。
著者
飯島 涼 南 翔汰 シュウ インゴウ 竹久 達也 高橋 健志 及川 靖広 森 達哉
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.2, pp.17-24, 2018-10-15

市中で販売されている音声認識装置の多くは,人が発生した肉声のみならず,ダイナミックスピーカや,超音波を用いた指向性スピーカから再生される音声にも反応することが知られている.肉声ではない音声信号に反応することを悪用し,なりすましやリプレイ攻撃等の様々な攻撃が可能となる.本論文では,超音波を用いた高度な音声攻撃を提案する.鍵となるアイディアは変調した超音波を搬送波と側帯波に分離して放射することであり,2 つの波を標的のマイクに一致する点で交差させることにより,可聴音が聞こえる範囲を極小化する.その攻撃を X (Cross) - Audio Attack と名付け,その特性と有効性を主観評価実験により評価する.また,このような音声認識デバイスを標的にした攻撃への汎用的な対策手法として,超音波から発生する音声,ダイナミックスピーカが発生する音声,および人間の肉声を見分ける識別器,Voice Liveness Detector を提案する.作成した識別器の性能評価を行い,これまでに提案された音声認識への攻撃全てを検知でき,かつ高精度で攻撃検知が可能であることを示した.
著者
大嶺 卓也 粟澤 剛 山口 さやか 粟澤 遼子 山本 雄一 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.187-191, 2019

<p>68 歳,男性。初診の 10 年前に徐々に拡大する後頭部の皮下腫瘤を自覚していた。部分生検の結果,隆起性皮膚線維肉腫(dematofibrosarcoma protuberans:DFSP)の疑いで当科を紹介され受診した。当科初診時,後頭部皮下に 4.5×1.5 cm の皮下腫瘤を触知した。可動性は不良で,表面皮膚の色調変化や萎縮はなかった。頭部造影 MRI で腫瘍は後頭部皮下に境界明瞭に描出され,STIR 像で高信号を示した。病理組織学的には,紡錘形の腫瘍細胞が皮下組織において比較的均一に増殖し,花むしろ構造を呈しており,腫瘍細胞は核異型に乏しく,核分裂像はほとんど存在しなかった。免疫組織化学的には腫瘍細胞はCD34 がびまん性に陽性であった。腫瘍の凍結組織から抽出した RNA を用いて RT-PCR を行い,<i>COL1A1-PDGFB</i> の融合遺伝子を検出した。以上より皮下型 DFSP と診断した。皮下型 DFSP の報告は稀であるが,<i>COL1A1-PDGFB</i> 融合遺伝子を検出したことから,皮膚に発生した DFSP と腫瘍発生学的に同じ発癌機序によることが示唆された。</p>
著者
小山 倫史 高橋 健二 西川 啓一 大西 有三
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.61-67, 2010-03-26 (Released:2010-03-26)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

近年多発しているゲリラ豪雨では,極めて短時間に降雨量が変化するため,斜面表層部の湿潤履歴によっては,数秒単位で多量の雨水浸透が発生し,斜面安定性を著しく低下させ,斜面崩壊を誘発する.したがって,数秒単位の鋭敏な雨水浸透現象を評価する必要性があり,そのためには,まず,降雨量を数秒単位で精度よく計測する必要がある.本研究では,超音波レベル計を用いてリアルタイム雨量計の開発を行った.本雨量計は,超音波により円筒形の雨受けに溜まった水位(降雨量)を1秒ごとに計測することで,従来の転倒枡型雨量計を用いた場合に生じるタイムラグを生じることなく,リアルタイムで精度よい計測が可能である.また,雨量計測の結果を1次元の飽和–不飽和浸透流解析に用い,従来の降雨強度として用いられる時間降雨量(あるいは10分毎降雨量)を入力値とした場合と比較し,降雨境界条件の入力方法の相違が降雨の浸透特性に与える影響について調べた.
著者
深井 恭子 小松 恒太郎 松尾 雄司 林 健太郎 苅谷 嘉之 宮城 拓也 山口 さやか 照屋 操 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.115-119, 2019
被引用文献数
1

<p>症例 1:87 歳,男性。18 歳時に L 型ハンセン病と診断された。5 年前から左足背に皮膚潰瘍があり,次第に隆起してきた。初診時,左足背に腫瘤があり,病理組織検査にて有棘細胞癌と診断し,左下腿切断術を施行した。症例 2:54 歳,男性。20 歳で L 型ハンセン病と診断された。43 歳頃より右第1 趾に皮膚潰瘍があり,47 歳時,病理組織検査にて有棘細胞癌と診断し右下腿切断術を施行した。30 代から左足底には胼胝があり,52 歳頃に皮膚潰瘍が出現した。54 歳時,潰瘍が増大し,病理組織検査にて有棘細胞癌と診断し,左第1~3 趾切断術を行った。術後約 3 カ月で術後創部から再発,肺に転移し永眠した。ハンセン病の慢性潰瘍は瘢痕癌の発生母地となる。瘢痕癌は他の有棘細胞癌より予後不良であり,ハンセン病の後遺症による神経障害で生じた難治性潰瘍は注意深く経過観察する必要がある。</p>
著者
稲葉 通将 高橋 健一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.E-I94_1-9, 2019-03-01 (Released:2019-03-01)
参考文献数
28

Non-task-oriented dialogue systems are required to chat with users in accordance with their interests. In this study, we propose a neural network-based method for estimating speakers’ levels of interest from dialogues. Our model first converts given utterances into utterance vectors using a word sequence encoder with word attention. Afterward, our novel attention approach, sentence-specific sentence attention extracts useful information for estimating the level of interest. Additionally, we introduce a new pre-training method for our model. Experimental results indicated that it was most effective to use topic-specific sentence attention and proposed pre-training in combination.
著者
鈴木 隆介 高橋 健一 砂村 継夫 寺田 稔
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.211-222, 1970-04-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
8
被引用文献数
8 5

調査地域の洗濯板状起伏は,その尾根部が凝灰岩層,谷部が泥岩層からなる.泥岩には微小な節理が著しく多いが,凝灰岩には存在しない.本地域の泥岩は凝灰岩にくらべて圧縮強度,弾性波速度,衝撃・摩耗硬度が大きい.また,吸水膨脹歪と膨脹圧は泥岩の方が著しく大きい.以上のことから,洗濯板状起伏は,岩石の圧縮強度や衝撃・摩耗硬度といったいわゆる“かたさ”あるいは“つよさ”の差異に起因するのではなくて,基本的には,含水状態の変化に伴う膨脹・収縮歪の差異が節理の発達状態の差異に関連し,節理で分離した泥岩の小岩片が波で持ち去られるといった機構で生じたものと解した.