著者
戸田 登志也 小阪 英樹 寺井 雅一 森 英樹 辨野 義己 家森 幸男
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.243-250, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
24
被引用文献数
4 13

L. lactis subsp. cremoris FC (1.5×109CFU/g以上) とS. salivarius subsp. thermophilus 510 (3.1×107CFU/g以上) および豆乳を20%含むドリンクタイプの発酵乳を試験食として健常な高齢者70名 (平均年齢67.1±4.8歳) を対象に飲用試験を行った. 被験者を2群に分け, 1カ月間の休止期間をはさんで試験食および対照食 (L. lactis subsp. cremoris FCを含まない発酵乳) 各々150gを毎日1カ月間ずつ摂取させるクロスオーバー試験とした. 排便量は, 摂取後2週間で試験食群, 対照食群とも非摂取期に対して有意に増加した. しかし, 排便回数と排便日数は, 試験食群では有意に増加したのに対して対照食群では増加傾向は示したものの有意ではなかった. また, 試験食群, 対照食群ともに便形状, 色, 排便後のスッキリ感が改善され, 特に便秘傾向者でその傾向が大きかった. 試験食群では菌叢に対するBifidobacterium の占有率が増加し, Clostridium perfringens の検出率は減少する傾向を示したが, 対照食群においては変化がみられなかった. さらに, 試験食群では糞便アンモニア量が減少する傾向がみられた. これらの結果から, 試験食発酵乳は対照食発酵乳と比較して整腸効果が高いと考えられた.
著者
福田 滿 杉原 好枝 伊藤 みどり 堀内 理恵 浅尾 弘明
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.195-199, 2006-04-15
被引用文献数
5 11

乾燥オカラが付加価値の高い機能性食品素材であることを明らかにするために,オカラの脂質代謝改善効果を調べた.高コレステロール食摂取ラットにオカラを投与したところ,血中コレステロール値の上昇に対する抑制効果,肝臓中性脂肪蓄積抑制効果が認められたが,血中中性脂肪濃度の低下作用はなく,肝臓コレステロール濃度は低下の傾向を示した.血中コレステロール濃度低下に要する期間は4週間であった.以上の結果から,オカラ成分は緩慢ではあるが,血中コレステロール上昇抑制,肝臓脂質蓄積抑制という脂質代謝改善作用を示すことが確認された.
著者
深井 洋一 松澤 恒友 石谷 孝佑
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.367-375, 1997-05-15
被引用文献数
16 7

1. 無洗米は,普通精米と比較し水分含量および明度(L値)が高く,タンパク質含量,粗脂肪含量および総遊離脂肪酸含量が低かった.方法の異なる無洗米間では,総遊離脂肪酸含量で若干の差異が認められた.また無洗米の調製残渣は,タンパク質および粗脂肪の含量が高かった.これらの特徴は無洗米化処理により,糊粉層が普通精米と比べ十分に除去されていることが示唆された.<BR>2. 含気包装による貯蔵試験では,無洗米は初発の高い明度が保持され,糊化特性では,同じ玄米を用いている普通精米と比較して糊化開始温度が低く,最高粘度および最終粘度の経時的な上昇が小さかった.総遊離脂肪酸含量では,無洗米は普通精米と比較して貯蔵中の増加率が低かった.<BR>これらの傾向は,室温のポリエチレン包装貯蔵で顕著であり,Kナイロン包装は若干抑えられる傾向にあった.15℃の低温貯蔵では,貯蔵に伴う経時変化が小さく,無洗米と普通精米との差異も小さかった.<BR>脂肪酸度とADAMの遊離脂肪酸含量との間には,一次式y=2.4x-0.15が成立し,相関係数0.995,危険率1%で有意であった.<BR>貯蔵1年後の食味試験では,無洗米Aは普通精米と比較し,香りでは5%危険率,粘りでは1%危険率でそれぞれ有意差が認められた.この有意差は,低い遊離脂肪酸含量に由来していると推察された.
著者
岡本 明 鈴木 敦士
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.891-898, 2001-12-15
被引用文献数
1 7

凍結豚肉を高圧解凍した際に生じるドリップ量,外観,テクスチャーおよび筋原線維蛋白質の変化を研究した.<BR>(1) 豚肉の外観およびテクスチャーヘの影響<BR>解凍時に高圧力を荷すことによって,豚肉のドリップ量を減少させる,すなわち保水性を向上することができる.また,豚肉を軟化させることも可能であった.しかし,200MPa以上の高圧処理では処理圧力間で軟化効果にあまり違いが見られないこと,それに加えて外観の変化(特に肉色)などから,200MPaの高圧解凍が適当だと考えられる.さらに,高圧解凍は長時間加熱を伴う加工品よりも,生ハムやローストビーフ,タタキなどの比較的加熱時間の短い生に近いまたは半加熱食肉製品に適していると考えられる.<BR>(2) 微細構造および筋原線維蛋白質への影響<BR>高圧解凍によって筋原線維は圧力の増加に伴って大きな構造破壊を受けた.筋原線維は通常の高圧処理のように圧力の増加に依存して小片化が進むのではなく,ある粒径(大きさ,長さ)に筋原線維長の分布が収斂していくことが分かった.また,筋原線維蛋白質のSDS-PAGEにおいても,コントロールには見られない新たなバンドが出現した.これらの変化は,200MPa以上の高圧処理で生じた.
著者
横山 定治 垂水 彰二 小関 佐貴代 菊地 恵美 山田 幸子 早川 潔 八田 一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.174-181, 2002-03-15
被引用文献数
1 3

鰹節のアルコール水抽出物を食塩10%,エタノール5%条件下,醤油麹で分解することで調味料を生産し,官能検査により調味効果を検討すると共に,抗高血圧作用に関与すると言われているアンジオテンシンI変換酵素阻害(ACEI)活性,およびγ-アミノ酪酸(GABA)含量を測定した. <BR>(1) 30℃, 3ケ月の分解熟成後の値はTN 1.53%, FN0.73%, pH 5.32であった.分解途中での酵母,乳酸菌を含め微生物の増殖は見られず,醤油臭が少なく,鰹節風味の豊富な調味料が得られた. <BR>(2) 得られた調味料の食塩濃度は11.8%で,濃口醤油より低い.平均ペプチド鎖長4.7は,醤油の3.5に比較して長鎖であった.HPLC-GPCの結果から,本調味料は醤油と比較して分子量1000-3000程度のペプチドを多く含むことが認められた. <BR>(3) 得られた調味液のACEI活性は10倍希釈液で77.6%であり,IC50は1.52mg protein/mlであった.また本調味料はGABAを35.1mg/100ml含有しており,これは135.0mg/100g solidに相当した.これらの結果から,この調味料が抗高血圧作用等の生体調節機能を示す可能性が考えられた. <BR>(4) 調味料としての有用性を確認する為に,汁物,煮物,酢の物などの調理における調味効果を2点評価法により醤油との比較に於いて官能評価した.塩分を同程度に調製したにも関わらず,清汁,天つゆ,煮物の調理において本調味料は醤油の場合よりも塩辛さが有意(p<0.1)に低く感じられ,酢のものでは酸味が有意に(p<5)抑えられまろやかな味に仕上がった.
著者
中嶌 輝子 吉川 公規
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.561-565, 2006-11-15 (Released:2007-09-29)
参考文献数
11
被引用文献数
1

ウンシュウミカンに水浸状の腐敗を接種して腐敗果を作成し,連続した分光画像を用いて腐敗部と健全部を仕分ける検量式を作成した.多変量解析のSIMCAとPLS回帰分析と重回帰分析を用いた結果,2次微分処理したスペクトルで作成したPLS回帰分析の検量式が最も精度が高かった.解析結果をの画像化(イメージング)したところ,SIMCAとPLSのどちらの判定モデルも全ての供試果実の腐敗を判定することが出来た.腐敗果の判定モデルは,5×5画素で分割した分光画像に,検量式を代入し,腐敗部のみを表示させた.これにより直径1cm程度の小さな腐敗を判定することが実証出来た.

1 0 0 0 OA ピロリ菌

著者
三宅 一昌
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.316, 2006-05-15 (Released:2007-05-15)

ピロリ菌は,一端または両端に数本の鞭毛を有する,約4μm長のらせん状をしたグラム陰性桿菌である.胃粘膜に感染するこの細菌は,1983年オーストラリアの病理学者Warrenと内科医Marshallにより発見され,1984年6月,Lancetに報告された.当初,Campylobacter pyloridisと呼ばれていたがCampylobacterとは異なった細菌であることがわかり最終的にHelicobacter pylori(以下ピロリ菌)と命名された.胃の中に細菌が存在していることは約100年前より報告されていたが,ほとんど注目されなかった.たとえ胃の中にどんな細菌が存在したとしても,胃酸のため強い酸性状態にある細菌が病原菌として疾患と関わるとは到底考えられなかった.しかし,この菌はヒトの胃粘膜に持続的に感染し,好中球浸潤を伴う組織学的な胃炎を惹起するとともに,胃潰瘍,十二指腸潰瘍,胃癌および胃の低悪性度リンパ腫であるMALTリンパ腫の発生にも関与していることが判明した.さらにピロリ菌の除菌が,潰瘍の再発を著明に抑制することや,胃癌の予防につながる可能性があること,MALTリンパ腫の一部を寛解へ導くことも示されてきた.そして,これらの膨大な知見をもたらすこととなった,常識を覆す発見をしたWarrenとMarshallに昨年10月,ノーベル医学・生理学賞が授与されることが決定した.感染源は明らかではないが,飲み水や食べ物を介して経口感染すると言われている.40歳以上の約7割の人がピロリ菌感染症に罹患しており,とくに50歳以上の方たちは戦後の衛生状態が悪い時代に生まれ育ったため,高い感染率を示していると考えられている.罹患率が高いことが,日本人に胃炎,胃潰瘍および胃癌など胃疾患が多い理由と考えられる.しかし近年,衛生状態の改善とともに若年者での感染率は先進国とほぼ同等のレベルまで減少している.以下,ピロリ菌と病気の関係について一部概説する.胃 炎免疫応答が未成熟な幼少期の胃粘膜にピロリ菌感染が成立するとほぼ100%の人に好中球やリンパ球浸潤をともなう慢性胃炎をもたらす.自覚症状は多くの場合ほとんど無く,基本的には生涯胃炎が継続する.ただし,慢性胃炎による粘膜の荒廃が進行すると菌が生育しうる環境が維持できず自然消失することがある.また,成人におけるピロリ菌初感染では免疫が強く反応し急性胃粘膜病変が発症するとともに,菌は排除され慢性胃炎は成立しにくい.胃潰瘍,十二指腸潰瘍ピロリ菌陽性者は胃潰瘍,十二指腸潰瘍を発生する頻度が高く,陽性者の2~5%に潰瘍がみられる.潰瘍患者では胃潰瘍で約75%,十二指腸潰瘍では95%にピロリ菌が陽性と言われている.潰瘍のほとんどは酸分泌抑制剤を中心とした薬物治療で一旦治癒するが,ピロリ菌が陽性の場合は高率で再発をおこします.そのためこれまでの潰瘍治療は維持療法が必要と考えられていたが,ピロリ菌の発見以降,除菌療法が胃潰瘍,十二指腸潰瘍の再発を抑えることが明らかとなり,潰瘍再発予防には除菌治療が薦められている.胃がん疫学的な研究から,胃癌の発生とヘリコバクター・ピロリ感染の間に深い関連があることが示唆され,ピロリ菌陽性者は陰性者の6~22倍の頻度でがんを発症すると言われている.ピロリ菌陽性者のうち胃癌が発症するのは年間0.15%以下であるが,胃癌患者からみた場合90%以上の人がピロリ菌陽性である.1994年WHOはピロリ菌が確実な発癌因子であることを認定した.最近の臨床的ないしは主にスナネズミを用いた動物モデルによる研究から,ピロリ菌感染による慢性の組織学的胃炎を背景として胃癌が発生することが明らかとなり,陽性者の中でも高度な胃粘膜萎縮や胃体部胃炎を有する症例に,胃癌発生のリスクが高いことが明らかとなっている.さらに,ピロリ菌の除菌による胃粘膜の炎症の改善が,消化性潰瘍の再発予防だけでなく,胃癌予防の効果も発揮する可能性かあることが期待されている.しかし,臨床的なエビデンスとしては不十分であり,十分なコンセンサスは得られていない.今後,胃癌の予防を目的としたピロリ菌の除菌治療が一般的に認知され保険適用されるには,さらに大規模で長期観察した研究が必要と思われる.
著者
奥西 智哉
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.424-428, 2009-07-15
被引用文献数
6 12

小麦粉の一部を炊飯米で置換したごはんパンは置換率30%までのごはんパンは小麦粉パンと同等あるいはそれ以上の製パン性を有した.一方,部分置換タイプの米粉パンでは置換率の上昇とともに製パン性が低下した.<BR>置換率10-40%のごはんパンは,官能試験の総合評価で小麦粉パンより有意に評価が高く,最適置換率は30%であった.すだち・色相・香りは,20%ごはんパンの色相評価が有意に高い点を除き,いずれも有意差はなかった.内相の触感および硬さは10-30%ごはんパンで有意に評価が高く,20%が最適であった.味ともちもち感は,30%が最も高く,しっとり感と甘味は,40%までなら炊飯米置換率が高まるほど向上した.一方,米粉パンはすべての官能評価項目において小麦粉パンと有意差は見られず,特に総合評価では置換率にかかわらず評価が低かった.
著者
西澤 千惠子 グュエン・ヴァン・チュエン
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.533-538, 2001-07-15
被引用文献数
4 3

コーヒーとお茶類の抽出物について抗変異原性,ラジカル消去作用および抗酸化性について比較した.その結果,下記のことが明らかになった.<BR>(1) 抗変異原性については,AF-2とTrp-P-1に対して,コーヒーは強い抑制率を示した.<BR>(2) ヒドロキシルラジカルとスーパーオキシドアニオンの消去作用では,煎茶が最も大きな抑制作用を示し,コーヒーや他の茶類が続いた.DPPHラジカル消去作用についてはコーヒー,煎茶,玄米茶,ほうじ茶,ウーロン茶,紅茶は同程度であった.<BR>(3) 抗酸化性については,リノール酸に対してコーヒー,煎茶,紅茶,玄米茶,ウーロン茶,ほうじ茶が同程度の抑制を示し,カロテン退色に対しては煎茶,玄米茶が大きな抑制率を示した.
著者
五月女 格 鈴木 啓太郎 小関 成樹 坂本 晋子 竹中 真紀子 小笠原 幸雄 名達 義剛 五十部 誠一郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.451-458, 2006-09-15
参考文献数
21
被引用文献数
14 14

115℃のアクアガス,115℃過熱水蒸気ならびに100℃の熱水にてジャガイモの加熱処理を行った.加熱媒体からジャガイモへの熱伝達率を測定した結果,アクアガスの熱伝達率が最も高かったが,加熱処理中のジャガイモ中心部の温度履歴に加熱媒体間の差は見られなかった.また加熱処理によるジャガイモ中のペルオキシダーゼ失活の進行にも加熱媒体間の差は見られなかった.この原因は,いずれの加熱媒体による加熱処理においてもジャガイモ表面における熱伝達は十分に大きく,ジャガイモ内部温度変化はジャガイモ自身の熱拡散係数に律速されていたためであったことが,ジャガイモ内部における熱伝導シミュレーションの結果から確認された.<BR>また,それぞれの加熱媒体により加熱処理されたジャガイモの品質を比較した結果,アクアガスならびに過熱水蒸気により加熱処理されたジャガイモが熱水にて処理されたジャガイモと比較して,硬さも保たれ色彩も良好であった.走査型電子顕微鏡によるジャガイモ微細構造の観察結果,熱水により加熱処理されたジャガイモにおいては熱水への固形成分の溶出が推察された.このことから固形成分の溶出の有無が加熱処理されたジャガイモの品質に影響を及ぼしたと考えられた.またアクアガスによる加熱処理では過熱水蒸気処理と比較して質量減少を抑制することができた.更に,アクアガス処理によりジャガイモ表面に塗布した<I>B. subtilis</I>胞子を死滅させることが可能であった.<BR>以上のことからアクアガスを用いることにより,熱水による加熱処理と比較して良好な品質にて,また過熱水蒸気処理と比較して小さな質量減少にて,ジャガイモのブランチングを行うことが可能であると結論付けられた.またアクアガスを用いて加熱処理されたジャガイモを無菌状態にて保存することにより,高品質なジャガイモの長期間貯蔵が可能になると期待された.今後はジャガイモの酵素失活に必要な加熱温度条件等を詳細に検討し,アクアガスにより加熱処理されたジャガイモの貯蔵性ならびに貯蔵されたジャガイモの品質変化について解明していく予定である.
著者
宮崎 俊一 大坪 雅史 青木 央 澤谷 拓治
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.858-865, 1996-07-15
被引用文献数
1 5

種酢から酢酸菌を分離し,分離菌株の分類学的な検討を行うとともに,農産物を原料とした分離菌による発酵技術を検討した.<BR>(1) 種酢からの分離菌No. 1株は,グリセリンからのケトン体の生成能,Hoyer-Frateur培地でのアンモニウム塩の資化性はみられず,GC含量が53.8%であった.<BR>以上の結果からBergey's mannualによりNo. 1株はAcetobacter pasteurianusと推定された.<BR>(2) No. 1株によるマルメロ,リンゴ,ホワイトアスパラガス、カボチャを原料とした酢酸発酵の条件を検討した結果,リンゴとカボチャは搾汁液にエタノールのみを添加した試験区で発酵が進行した.<BR>(3) ホワイトアスパラガスは搾汁液のpH 6.8に調整後,窒素源として麦芽エキスを0.1%添加するか,あるいは搾汁液にクエン酸を0.2%添加することにより発酵が進行した.<BR>(4) マルメロ果汁に含まれるポリフェノール成分が酢酸発酵を阻害することから,ゼラチン処理によりポリフェノール成分を除去し,窒素源として酵母エキスを0.1%添加することにより発酵は進行した.
著者
林 あつみ 中山 知子 青柳 康夫 木元 幸一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.154-159, 2005-04-15
被引用文献数
6 12

An angiotensin-converting enzyme (ACE) inhibitor, nicotianamine, was purified from Hayatouri (<i>Sechium edule</i>) by using some ion-exchange column chromatographies. Crystal of nicotianamine (19.8 mg) was finally obtained from 75 kg of Hayatouri. The chemical identification by IR, NMR and MS spectral analysis were carried out, and the data agreed with those of nicotianamine reported by Kristensen <i>et al.</i> The quantitative analytical method of nicotianamine in various resources was established by using the isolated nicotianamine. An ion-pair chromatography of reversed-phase HPLC with 0.1 mol/L SDS elution buffer (pH 2.6) afforded good separation and linearity of calibration curve when o-phthalaldehyde was used for labeled reagent for fluorescence detection. Concentrations of nicotianamine in various vegetables were determined by this method. Nicotianamine concentrations of Hayatouri (<i>Sechium edule</i>), Seri (<i>Oenanthe javanica</i>), Ashitaba (<i>Angelica keiskei</i>), Moroheiya (<i>Corchorus olitorius</i>), Kureson (<i>Nasturtium officinale</i>), Nigauri (<i>Momordica charantia</i>), Soybean (<i>Glycine max</i>) and Soybean milk were determined to be 0.010±0.0014, 0.012±0.0028, 0.017±0.0028, 0.022±0.0021, 0.037±0.0035, 0.015±0.0021, 0.074±0.0106 and 0.090±0.0106 mg/g, respectively. As we have established the method of nicotianamine quantitative analysis, we are planning and starting the study of absorption of this compound into the blood from the intestine and about the effect on renin-angiotensin system of hypertension.
著者
小嶋 道之 山下 慎司 西 繁典 齋藤 優介 前田 龍一郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.386-392, 2006-07-15
被引用文献数
9 15

<I>in vivo</I>および<I>in vitro</I>実験により,小豆ポリフェノール(APP)の抗酸化活性の能力を検討した.マウスに0.05%(w/v)APP入りの飲料(20ml/日)を一週間与えて,その血清,肝臓および腎臓ホモジネートの酸化促進剤に対する影響を検討したところ,どれもコントロールのそれらに比べて酸化を受けにくく,特に肝臓ホモジネートでは有意に酸化抵抗性を示した.また,0.05%(w/v)APPを1週間,事前投与したマウスにガラクトサミンとリポポリサッカライドを腹腔内注射したところ,コントロールのそれに比べて,血清GOT活性の上昇抑制や肝臓の過酸化脂質の生成が有意に抑制された.肝臓のグルタチオン量やGPx活性は,コントロールのそれらよりも有意に高い値を保持していた.これらの結果から,APPは炎症により発生するフリーラジカル・活性酸素を消去し,生体内グルタチオン量とGPx活性を高く保持して,過酸化脂質の生成を抑えることで,結果的に肝臓の炎症拡大を抑制している可能性が推察された.また,APPのDPPHラジカル消去活性におけるIC<SUB>50</SUB>は64.2μmol/l(カテキン量として換算)であり,市販のカテキンやビタミンCの1/2量で同じ効果を示した.また,0.05%APPを80μl添加した2.5mlのヒトLDL溶液(タンパク質70μg/ml)は,200μmol/lの硫酸銅溶液による酸化促進に対して抵抗性を示し,APP無添加の場合に比べて,LDL酸化の開始時間を1時間程度遅延させた.これらの結果は,APPには生体の酸化防止効果や肝臓保護作用があることを示唆している.また,小豆の主要なモノマー型ポリフェノールは,カテキン-7β-グルコシドであることを明らかにした.
著者
西場 洋一 須田 郁夫 沖 智之 菅原 晃美
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.295-303, 2007
被引用文献数
4 6

(1) 全国各地で栽培された大豆20品種・31検体のイソフラボン,ビタミン類を分析した結果,イソフラボン総量は131.6~568.7mg/100gdwの範囲で変動しており,平均値は302.9mg/100gdw, 変動係数は40.7%であった.それぞれの栽培地において,イソフラボンは品種の違いで最も大きく変動する傾向にあった.イソフラボンの組成はマロニル配糖体が全体の72.9~87.6%を占め最も多く,アセチル配糖体,アグリコンは微量であった.アグリコンの組成はGenisteinの比率が高い傾向にあった.イソフラボン総量に占めるアグリコンの割合は平均して53.9%であり,イソフラボン総量とアグリコン換算値との間には極めて高い相関関係が認められた.<BR>(2)α-トコフェロール当量(ビタミンE)は,全国の大豆において3.4~13.3mg/100gdwの範囲で変動し,平均値は5.6mg/100gdw, 変動係数は40.5%であった.4つの同族体の中でα-,β-トコフェロールの変動が大きく,各栽培地で共通した傾向であった.特にα-トコフェロール含量はビタミンEとしての生物学的効力を表すα-トコフェロール当量と相関が高く,大豆のビタミンEがα-トコフェロールの変動により大きく支配されている実態が示された.チアミンは0.55~0.89mg/100gdw, リボフラビンは0.21~0.30mg/100gdwの範囲で変動していた.平均値はそれぞれ0.71mg/100gdw, 0.23mg/100gdw, 変動係数は13.0%,10.3%であり,イソフラボン,α-トコフェロール当量に比べると変動は小さかった.<BR>(3)九州地方の基幹品種である「フクユタカ」について,九州地域11箇所で栽培された大豆を収集し成分分析を行った結果,全国大豆の分析結果と同様,イソフラボンとα-,β-トコフェロールの変動が大きく,チアミン,リボフラビンの変動は小さい傾向であった.
著者
小泉 幸道 並木 和子 川合 三恵子 西堀 すき江 並木 満夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.9-17, 2007-01-15
被引用文献数
2 2

各種ゴマ種子および脱脂粉末に,各種微生物を培養したものについて,抗血栓効果を調べるため,試料の50%エタノール抽出物について,ヒト血液を用いた血流改善,血小板凝集抑制,活性酸素消去の各試験を行った.<BR>(1)中米産ゴマ脱脂ゴマ粉末(セサミフラワー)は殆ど効果を示さないが,これに<I>Asp. niger</I>(NRIC 1222株)を7日間以上培養したものは,いずれの試験においても強い効果を示した.<I>Asp. awamori</I>と<I>Asp. oryzae</I>の場合は弱い効果がみられたが,<I>B. natto</I>では殆ど効果がみられなかった.<BR>(2)各試料の抽出物のリグナン含量の変化を調べた結果,このセサミフラワーには,セサミン,セサモリンは含有されているが,遊離セサミノールは全くない.<I>Asp. niger</I>を培養した場合,セサミン,セサモリンは殆ど変化しないが,著量の遊離セサミノールが生成し,<I>Asp. awamori, Asp. oryzae</I>の場合にもセサミノールは生成するが,比較的少なかった.<BR>(3)原料のフラワーを完全脱脂した試料に,<I>Asp. niger</I>培養,および加水分解酵素処理したものは,いずれの場合にも強い血液機能改善効果がみられ,セサミノールが著量に存在していた.またその脱脂フラワーを70%アルコールで抽出し,配糖体を除去後に<I>Asp. niger</I>を培養した物では,改善効果はみられなかった.<BR>(4)タイ産黒ゴマ,パラグアイ産白ゴマ,高リグナンゴマのいずれの試料において,血流改善効果は種子において僅かにみられただけであったが,<I>Asp. niger</I>の培養で増大した.発芽による影響はあまり見られなかった.血小板凝集抑制効果は種子でみられ,培養,発芽処理により効果はあまり変わらなかった.これらゴマ種子の場合,セサミン,セサモリンは高濃度に存在するが,セサミノールは遊離のものはなく,配糖体も殆どないと推定された.ただ発芽後微生物培養したものに少量の生成がみられた.<BR>(5)<I>Asp. niger</I>または複数の酵素作用により発現する血流改善効果などの抗血栓機能には,それらの処理により,配糖体から生成したセサミノールが主に関与することを強く示唆するものである.<BR>(6)標品のセサミン,セサミノール,セサモールについて同様な血液試験をした結果,セサミノールにはいずれも有効で,とくに血流改善効果では非常に強い効果がみられた.セサミンは血小板凝集阻害のみに効果が見られ,セサモールには,いずれも弱い効果がみられるだけであった.<BR>(7)<I>Asp. niger</I>培養で著量(3~5%)に生成するクエン酸は,このような高濃度においては,培養抽出物の血栓予防効果に多少寄与しているものと思われた.<BR>(8)本研究により,セサミノール配糖体を多く含むゴマ試料に,その配糖体を有効に遊離セサミノールにする作用を持つ微生物の培養は,酵素作用を用いて加工することにより,強い抗血栓効果を持つ新しい機能性食品素材を作成する可能性が示された.
著者
〓橋 沙織 勝股 理恵 吉澤 久美 八巻 桃子 大迫 美由紀 村上 満利子 毛利 さやか 佐藤 みずき 目黒 寛子 久保倉 寛子 広瀬 佳苗 田中 直義 渡辺 杉夫 木内 幹
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.454-461, 2005
被引用文献数
5 1

1. 中国雲南省の淡豆〓から分離した細菌でわが国の糸引納豆を製造した結果, 撹拌すると豆の形が完全に崩れてしまうほど軟らかい納豆を製造することができる菌, KFP843を見いだした. 同定の結果, KFP843株は<i>Bacillus subtilis</i>に属する菌であった.<br>2. <i>B. subtilis</i> KFP843の納豆製造には2種類の温度プログラムを用いたが, KFP843株の最適生育温度である43℃を初発温度とする製造プログラムが適しており, 製造した納豆の硬さは, 市販納豆の硬さを100%とすると, それは約40%の硬さに仕上がった.<br>3. ホルモール窒素は市販納豆のそれが0.94%であったのに対し, 本菌株で製造した納豆は0.28ないし0.38%であった. また糸引きは市販納豆よりもやや弱く, 相対粘度は市販納豆のそれが2.06であったのに対し, 1.10ないし1.21であった.<br>4. 官能検査では, 菌の被り, 豆の割れ・つぶれ, 硬さの項目で市販納豆に比べて有意に良い評価 (p<0.05) であった. 市販納豆に比べて有意に (p<0.05) 糸引きは弱いが, 豆が軟らかいという評価を得た.
著者
菅原 哲也 野内 義之 五十嵐 喜治
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.232-235, 2006-04-15
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

(1)'ジェネバ'果汁は酸味,渋みに特徴があり,他のリンゴ果汁と比較し,糖度が低く,有機酸(リンゴ酸,クエン酸),カリウム,総ポリフェノール含有量が高かった.<BR>(2)'ジェネバ'果汁に含まれるポリフェノール成分(低分子成分)のうち,主要な8成分を推定し,このうち6成分を同定・定量した.リンゴ果汁中に最も多く含まれる成分はクロロゲン酸であり,続いてプロシアニジンB2,(-)エピカテキンの順であった.リンゴ赤色素成分であるシアニジン3-ガラクトシドも,'ジェネバ'果汁の含有量が最も高かった.<BR>(3)リンゴ果汁のDPPHラジカル消去活性は,総ポリフェノール含有量が最も高い'ジェネバ'の活性が最も強く,ポリフェノール含有量の低い果汁ほどラジカル消去能も弱くなる傾向がみられた.
著者
志堂寺 和則 都甲 潔
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-8, 2007-01-15
被引用文献数
6 4

食品の見た目のおいしさについて検討するために,ケーキの写真を見た際に生じる印象について,SD法によるアンケート調査を実施した.その結果,3ないしは4因子を抽出することができた.この結果を参考に,4種類の初期モデルを構築し,共分散構造分析を実施した.モデルを修正しながら,ケーキ写真毎にアンケート調査データと適合性を検討した.最も適合すると考えられたモデルは以下のものであった.<BR>ケーキ写真から色彩に関する印象と形態に関する印象が生じる.両者には相互に因果関係があり,両者からケーキ写真についての全体印象が生じる.見る人の甘味に関する嗜好は色彩に関する印象に影響を及ぼす.また,甘味に関する嗜好とケーキ写真についての全体印象から,ケーキ写真についての評価が定まり,見た目のおいしさが決定される.
著者
小野 晴寛 足立 圭子 福家 洋子 篠原 和毅
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.1092-1097, 1996-10-15
被引用文献数
4 19

1) 沢わさびの水抽出画分を試料として,ヒト胃がん培養細胞MKN-28の増殖抑制作用を示す成分を単離し構造を決定した.<BR>2) Sephadex G-15で分取されたP 5画分は,5FU, MMCなどの抗がん剤よりも強い細胞増殖抑制活性を示した.<BR>3) FAB-MS, EI-MSによる測定結果から活性成分の分子量は205と決定され,組成式をC<SUB>8</SUB>H<SUB>15</SUB>N<SUB>1</SUB>O<SUB>1</SUB>S<SUB>2</SUB>とした.<BR>4) IRおよび二次元NMRスペクトルの結果より活性成分の構造式を6-methylsulfinylhexyl isothiocyanateと決定した.