著者
山田 貴子 飯田 哲郎 林 範子 大賀 浩史 大隈 一裕 何森 健
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.263-267, 2010-06 (Released:2011-03-28)

D-プシコースの体脂肪蓄積抑制効果に関して、ラットを用いて検討した。4週齢Wistar系雄性ラットに異性化糖食または異性化糖食にD-プシコースを1.3%、2.6%、3.9%、5.2%添加した飼料を5週間自由摂取させた。体重、摂餌量、脂肪重量および各種血液生化学的指標に及ぼす影響を検討した結果、D-プシコースを5.2%摂取した群は、異性化糖食と比較して、体重において有意な低値を示した。腎周囲脂肪および脂肪組織重量に関しては、用量依存的な低下が認められた。これらのことから、D-プシコースは異性化糖に対しても体脂肪蓄積抑制効果を示すと考えられた。
著者
岸根 雅宏 奥西 智哉
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.26-29, 2011-01-15
被引用文献数
1

糯米の簡易検出法を開発したので報告する.我々はまず,既に報告されている糯米の2つのモチ性変異に由来するDNAマーカーを開発し,その2つのマーカーいずれかによって,糯米の主要48品種(流通量の99.6%)がすべて検出可能であることを示した.また,開発したDNAマーカーの特異性と感度を検証するため,粳米に糯米を人為的に混入したサンプルを用いて分析を行った結果,どちらのDNAマーカーも糯米に特異的であり,また少なくとも0.5%以上の糯米の混入であれば検出可能であることが明らかとなった.
著者
仲田 弘明 長谷川 秀樹 櫻井 博章 田村 雅彦
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.85-90, 2010-02-15
被引用文献数
1 3

当社は北海道十勝管内に所在する芽室製糖所の製糖工程から,産業利用目的に有用な微生物の取得を行っている.製糖工程の温水浸出汁から取得された乳酸菌を使用し,独自の乳酸菌を用いてサワーブレッドの作製を試みた.<BR>取得された乳酸菌菌株NT株は,16SリボソームDNA配列に基づく相同性検索の結果,ストレプトコッカス・サーモフィルス(<I>Streptococcus thermophilus</I>)と同定された.本菌種は古来よりチーズやヨーグルトの製造等に用いられており,食経験のある菌種である.<BR>NT株を乳酸菌培地で培養し,得られた乳酸菌菌体液を使用して市販スターター(TKスターター)と同じ工程によりサワー種を作製した.製パンは,ストレート法食パンにサワー種を添加しサワーブレッドを焼成し,官能試験,有機酸抽出,香気成分分析,防カビ性能の試験を行い市販スターターサワーブレッドおよびサワー種無添加ブレッド(一般的な食パンに該当)と比較した.<BR>官能試験の結果,NT(NT株を使用したサワーブレッド)は強いチーズ臭のするサワーブレッドであった.NTについてGC-MSにより香気成分を分析したところ,チーズ臭はアセトイン,酪酸に由来するものと考えられた.<BR>また,防カビ試験の結果より,NTは市販スターターよりも高い防カビ性能を保持していた.高い防カビ性能を有する理由として,NT株の生産する有機酸等の抗真菌活性物質が推測されたが,今回の試験では明らかとならなかった.
著者
玉川 浩司 飯塚 崇史 池田 彰男 小池 肇 長沼 慶太 小宮山 美弘
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.521-527, 1999-08-15
被引用文献数
4

大麦糠由来のポリフェノール抽出物BPE及びそこから分離精製したプロアントシアニジン類(2量体及び3量体)について,幾つかの抗アレルギー活性測定法を用い,その効果を検討した.<BR>(1) BPEは,生体内における炎症に深く関与しているヒアルロニダーゼ活性を濃度依存的に抑制した.また,その主要ポリフェノール成分であるプロアントシアニジン類の抗ピアルロニダーゼ活性は,(-)-EGCG及(-)-ECGと比較して,小さかったが,(-)-EGC,(-)-EC及び(+)-Cよりは大きかった.<BR>(2) 大豆リポキシゲナーゼ活性についても濃度依存的に抑制し,また,その主要ポリフェノール成分であるプロアントシアニジン類の抗リポキシゲナーゼ活性は,カテキン類と比較して大きいことが判明した.<BR>(3) 感作ヒツジ赤血球における補体価の抑制はBPEの濃度に依存して大きくなった.また,その主要ポリフェノール成分であるプロアントシアニジン類の抗補体活性は,(-)-EGCG及(-)-ECGと同等あるいはそれ以上の効果を示した.
著者
高山 侑樹 稲益 和子 横山 あゆ美 西田 淑男 古市 幸生
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.483-488, 2010-11-15
被引用文献数
2

本研究では,ニガイチゴ果実の成分組成および機能性について検討した.ニガイチゴはラズベリー,イチゴ(トチオトメ)と比較し,ビタミンC含量が少ない果実であった.総ポリフェノール含有量は,ニガイチゴ,ラズベリー,イチゴ(トチオトメ,サガホノカ,アキヒメ)がそれぞれ179.8, 108.7, 108.5, 94.8, 65.6mg/100gであり,イチゴの品種間で差が見られたが,ニガイチゴが最も高い値を示した.また,DPPHラジカル消去活性のIC<SUB>50</SUB>は,ニガイチゴが1.50,ラズベリーが2.31,トチオトメ,サガホノカ,アキヒメがそれぞれ2.32, 3.00, 4.25mg/mlであった.マルターゼ阻害では,予め吸着させたHP-20樹脂より40%エタノールで溶出した画分(40% EtEx)で最も強い作用を示した.正常ラットでのマルトース負荷試験でも,40% EtExを与えた群で血糖上昇が抑制された.これらのことから,ニガイチゴは抗酸化能が強く,血糖上昇抑制に有効な素材であることが示唆された.
著者
山岸 賢治 老田 茂 木村 俊之 岩下 恵子 新本 洋士
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.456-458, 2007-10-15 (Released:2007-11-30)
参考文献数
9

生キクラゲ水抽出液の50~70%硫安沈殿物は,マウス前駆脂肪細胞3T3-L1のトリグリセライド蓄積を阻害した.さらに陰イオン交換カラムクロマトグラフィーで部分精製した画分は,3T3-L1の分化を抑制した.この活性画分には,分子量10000以上のタンパク質が複数認められた.
著者
岡田 忠司 杉下 朋子 村上 太郎 村井 弘道 三枝 貴代 堀野 俊郎 小野田 明彦 梶本 修身 高橋 励 高橋 丈夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.596-603, 2000-08-15
被引用文献数
29 193 25

医薬品として販売されているγ-アミノ酪酸製剤(合成GABA製剤)は,脳代謝促進作用があり,脳梗塞・脳出血後遺症等,脳血管障害の諸症状の改善や血圧上昇抑制効果が認められている.また最近の医学分野の研究では,更年期障害や初老期の自律神経障害にみられる精神的症状の緩和にも効果があると報告されている.<br>本試験では,コメぬかから分別製造した「GABA蓄積脱脂コメ胚芽」を用いて,更年期及び初老期の被験者20名に対する効果をプラセボとの比較にて検討した.<br>その結果,更年期及び初老期に見られる抑うつ,不眠,イライラ,不定愁訴の自律神経障害の改善に,GABA蓄積脱脂コメ胚芽が高い効果を示すことが明らかになった.またこのほかに,高血圧症や肝機能の改善作用も示され,服用に伴う副作用も全く見られなかったことから,毎日摂取できる機能性食品素材として高い利用価値を有していることも明らかになった.
著者
平良 淳誠 大嶺 和可奈 大見 のり子 平良 和代 永田 純一
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.295-300, 2012-06-15 (Released:2012-08-04)
参考文献数
22
被引用文献数
1

沖縄在来系統由来9品種と比較品種系統2品種のカンショ茎葉について,LPS刺激したRAW264.7細胞より誘導される一酸化窒素ラジカル(NO)産生に対する抑制作用を評価した.全品種のカンショ茎葉抽出物にNO産生抑制作用が認められ,同様の葉野菜であるホウレンソウやエンサイよりも比較的高活性であった.NO発生剤NOR3を用いて,カンショ茎葉抽出物のNO消去活性を検討したところ,その主要ポリフェノールであるカフェオイルキナ酸誘導体の総含量と正相関したことから,NO産生抑制メカニズムとしてNO消去作用が寄与している可能性が示唆された.本研究からカンショ茎葉は,過剰なNO産生に伴う様々な炎症性疾患の予防機能性食品として有用食素材になることが示された.
著者
中田 勇二 下田 満哉 筬島 豊
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.848-854, 1997-12-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
7
被引用文献数
1

市販品,及び試作品の中からフレーバー特性の異なる29種類のごま油の官能評価を行い,得られた結果を主成分分析により解析し,各々のごま油のフレーバーを客観的に特徴付けた.(1) ごま油のフレーバーを特徴付ける用語として抽象的用語37語,具体的用語26語,計63語が挙げられた.(2) ごま油フレーバーの評価用語として適正であるかどうかみる為にアンケート調査を行い,さらには専門パネルによる実試料の評価に基づいた評価用語のスクリーニングと新たな評価用語の追加を行った結果,香ばしい,劣化した,強い,苦い,軽い,複雑な,後に残る,まろやかな,渋い,ナッツ様の10語をごま油フレーバーの評価用語として選択した.(3) 29種類のサンプルについて,専門パネルにて評価用語10語について6段階で官能評価を行った.得られた評価データを主成分分析で解析したところ,29種類のごま油はそのフレーバー特性に基づいて9つのグループに分けることができた.(4) 熱風焙煎試作品は苦い,渋い,後に残るという共通の特徴を有しており,焙煎強度が高いほど,その傾向が強かった.遠赤外線焙煎試作品は,軽い,まろやかな,ナッツ様,複雑な,香ばしい特徴を有しており,焙煎強度が高いほど,複雑な,香ばしい風味が増し,低いほど軽い,まろやかな風味が増した.
著者
進藤 久美子 安井 明美 大澤 良 堀田 博 鈴木 東子 金子 勝芳 鈴木 建夫
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.449-452, 2001-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

玄ソバについて古くから行われている寒ざらし処理が,ソバ殻を除いた可食部の成分組成に与える影響を検討し,そば切りの品質向上効果にかかわる伝承の実証を試みた.(1) 寒ざらし処理後も,タンパク質,脂質,炭水化物,灰分,無機質,食物繊維およびルチンについては,ほとんど溶出していなかった.(2) 寒ざらし処理により,全ポリフェノール量の低下および遊離アミノ酸組成の変動が認められ,遊離アミノ酸の中ではγ-アミノ酪酸(GABA)が2倍に増加していた.(3) 成分含有量に大きな変化は見られなかったが,ポリフェノール量と遊離アミノ酸組成の変化は,そば切りの品質向上の可能性を示していると考えられた.
著者
川上 いずみ 村山 伸樹 川崎 貞道 伊賀崎 伴彦 林田 祐樹
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.559-565, 2008-11-15 (Released:2008-12-31)
参考文献数
7
被引用文献数
1 10

本研究ではそばの風味とテクスチャーに与える,保存温度の影響を官能評価と機器分析により確認し,食味保持に適した保存温度の確認と機器分析による客観的手法の確立を行った.石臼挽きソバ粉をクラフト包材に7日間異なる温度で保存し,官能評価と機器分析,味覚認識装置(味覚センサ),GC-MSクロマトグラフィ,テクスチャーアナライザによる分析で次のような知見が得られた.(1)官能評価では保存温度が高いと食味が低下し,苦味の増加が起こることが明らかとなった.しかしながら,保管温度5℃では苦味が強く異なる傾向を示しており,結露による水分変化により食味が変化することが明らかとなった.(2) 機器分析では味覚認識装置(味覚センサ),GC-MSクロマトグラフィ,テクスチャーアナライザによるいずれの分析でも,保存温度の違いによる食味の変化を確認できた.味覚センサでは保存温度による「苦味」,「酸味」,「渋味」を示唆するセンサ出力の変化が確認され(P<0.05)5℃保存サンプルでは「苦味」,「渋味」を示唆するセンサ出力で異なる挙動が確認できた.GC-MS分析では「そばの香り」と定義した香気成分は保存温度が高いほど減少し,保存温度が低い方が香りは保持されることが示唆された.テクスチャーアナライザでも5℃保存サンプルが最も食感がやわらかくなり,−18℃では硬さがあることが確認できた.(3) 官能評価と機器分析値との相関は,味覚認識装置(味覚センサ),テクスチャーアナライザで確認され,これらの方法がそばの食味の客観的分析法として有効であることが示唆された.テクスチャーアナライザの「抗張力」と食感「硬さ」との間で相関の可能性が示唆された.官能評価「酸味」は味覚センサの3chと0.63,4chと0.70,2chと0.74,5chと0.88という相関が確認できた.試料数nを増やし相関の精度を向上することで,味覚センサでそばの味の違いを判別できる可能性が示唆された.(4) そばの食味を維持するには保存温度が低い方が適していることか明らかとなり,クラフト包材で保存する場合5℃温度では結露の問題があることから−18℃の低温が適していることがわかった.
著者
鈴木 彌生子 國分 敦子 絵面 智宏 中山 和美
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.1-10, 2013-01-15 (Released:2013-02-28)
参考文献数
30
被引用文献数
2 2 3

本研究では,三陸産(45検体)·鳴門産(64検体)·中国(54検体)·韓国(46検体)において産地の明確な湯通し塩蔵ワカメを浜単位で入手し,炭素·窒素·酸素安定同位体比を用いて,産地判別の可能性を検証した.鳴門産については,炭素·窒素同位体比ともに,個体内変動·季節変動·地域変動が小さく,全般的に値が安定した傾向が見られた.また,鳴門産の窒素同位体比は10.7±1.1‰(平均値±標準偏差)となり,三陸産(1.4±1.9‰)·韓国産(0.5±1.6‰)·中国産(3.0±2.5‰)よりも有意に高い傾向が得られた.一部中国産については,炭素同位体比が低く,窒素同位体比が高くなる傾向が得られた.酸素同位体比は,韓国産が比較的高い値を示したが,日本·中国·韓国の平均値の差は2.1‰となり,地域差は小さかった.炭素·窒素同位体比の結果を用いて,鳴門産とその他(三陸·中国·韓国)の2群について判別分析を行った結果,判別関数を構築した試料について,正答率を計算すると,鳴門産は98.4% (64点中),その他産は99.4% (145点中)となった.交差検証法を用いて判別関数の精度を検証した結果,96.8%の鳴門産が正しく分類された.年変動といった検証が必要であるが,炭素·窒素同位体比によって,鳴門産を判別できる可能性が高いと考えられる.
著者
伊澤 華子 青柳 康夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.459-465, 2006-09-15
被引用文献数
6 12 9

キノコに含まれるACE阻害物質について,野生,栽培種,市販品の食用キノコ計23種を調査した.熱水抽出物のACE阻害活性を調べた結果,シメジモドキ,スミゾメシメジ,ホウキタケ,コウタケなどのキノコに強い阻害活性が認められた.各キノコの抽出固形物のIC<SUB>50</SUB>は,ヌメリスギタケ(野生種,栽培品),コウタケ,ホウキタケ,スミゾメシメジの順で強いことが示された.透析膜による分画では,キノコの種類によりACE阻害を示す物質に特徴があることが示された.<BR>シメジモドキの70%エタノール抽出画分を種々のクロマトグラフィーによる分画を行った結果,ACE阻害物質が単離され,ニコチアナミンであると同定された.シメジモドキに含まれるニコチアナミン量は13.2mg/dry 100gであった.<BR>また,他の23種のキノコについて,ニコチアナミンの有無を調査した結果,ホウキタケに28.7mg/dry 100g含まれていた.イッポンシメジ科ではシメジモドキ以外には含有が認められなかったが,ホウキタケ科では他の種にも存在が認められた.
著者
沢村 信一 原口 康弘 池田 博子 園田 純子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.304-309, 2010-07-15 (Released:2010-09-01)
参考文献数
8
被引用文献数
3 9 3

(1) 石臼抹茶,ボールミル抹茶,粗粉抹茶の中位径は,15~20μm,最大径は50μm以上であり,微粉抹茶,ジェットミル抹茶の中位径は,5μm以下,最大径は10μm以下であった.(2) ジェットミル抹茶の円形度は,石臼抹茶,ボールミル抹茶と比較して高く,円形度の違いが伸展性試験や流動性に影響を及ぼしていると推測された.(3) 伸展性試験は,粒度の微細なジェットミル抹茶の伸展性が粗い粒度の粗粉抹茶と比較して2倍以上良かった.また,触感においては,伸展性試験の結果以上に,微細さや粗さを感じた.(4) ジェットミル抹茶の流動性は,流動開始振動加速度が一定しており,流動速度や流量も一定であった.これに対して,微粉抹茶は流動開始振動加速度が一定せず,流動速度や流量も一定でなかった.これは,円形度が高いことに起因すると考えられる.(5) 微粉抹茶の起泡性は,粗粉抹茶と比べて非常に優れていた.泡沫の起泡性向上や安定化には,粒子が微細であるとこが重要であることが分かった.
著者
大澤 俊彦
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.728-735, 1995-09-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
18
被引用文献数
1
著者
石崎 太一 黒田 素央 杉田 正明
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.225-228, 2006-04-15
被引用文献数
6 17

プラセボ食群を対照とした,シングルブラインドの2群並行試験により,中高年の気分・感情状態に対する鰹だし継続摂取の影響について調査を行った.全被験者を対象とした解析の結果,鰹だし摂取により「眼の疲れ」,POMSの「抑うつ-落込み」得点が有意に低下(改善)することが示された.疲労感を自覚している被験者を対象とした解析の結果,気分アンケートの「疲労感」,「集中力」の項目において,鰹だし群は摂取時に有意に低下(改善)した.また,POMSについて,鰹だし群は「緊張-不安」において有意に低下し,また,TMD(総合感情障害指標)変化量において鰹だし群はプラセボ群よりも有意に低値を示した.すなわち,鰹だし群はプラセボ群と比較して有意にTMDが改善することが示唆された.これらの結果から,味噌汁形態で鰹だしを摂取した時に,気分・感情状態が改善する可能性が示唆された.
著者
野坂 千秋 星川 恵里 足立 和隆 渡邊 乾二
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.857-863, 2000-11-15
被引用文献数
2

「ジャガイモの裏ごし操作」における経験の異なる熟練者と非熟練者の違いを明らかにすることを目的として,運動解析法を用い実験を行った.さらにこの解析によって得られたヘラが裏ごし器を押し付ける力,そしてヘラの角度と裏ごしされたジャガイモの性状との関連を観察した.<br>(1) 熟練者の裏ごしは,力の各成分の最大値・力積が非熟練者に比べ有意に小さく,かつヘラの押し付け時の角度も10°以下のこすりつけ状態をとらない操作であることが明らかとなった.一方,非熟練者の動作は,力の各成分の最大値・力積が熟練者と比較して有意に大きく,かつヘラの押し付け時の角度が小さく,こすりつけ状態の長い操作であることが明らかとなった.<br>(2) 裏ごしされたジャガイモの性状を比較すると,非熟練者のジャガイモ細胞の状態は,熟練者のものに比べ細胞外へ流れ出た澱粉が多く,細胞の損傷が観察された.このことから,裏ごし時の力のかけ方やヘラ角度の状態がジャガイモの細胞壁の損傷に影響することが示唆された.
著者
加藤 みゆき 大森 正司 加藤 芳伸
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.421-427, 2011-09-15
被引用文献数
2

緑茶を対象としてretroposon-like sequence DNA (RLS-DNA)塩基配列の比較解析により品種の判別を試みた.実験には,やぶきた品種のチャ葉より製造した緑茶と,市販されている中国,ベトナム,ミャンマー,台湾の緑茶,そして日本の緑茶用40品種の生茶葉を用いて実験した.RLS-DNAの塩基配列を比較解析することにより,おくみどり,べにふうき等の品種の判別が生茶葉と緑茶葉を用いた場合,共に可能であることが認められた.また,中国,ベトナム,ミャンマー,台湾の緑茶についてもRLS-DNAの多型解析により我が国の緑茶と識別可能であることが認められた.今回の実験から,RLS-DNAを指標とした塩基配列の多型解析は,おくみどり,べにふうき品種等の品種を判別するための手法に適用できるものと考える.
著者
北岡 桃子 岡村 暢子 一瀬 博文 後藤 雅宏
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.164-169, 2008-04-15 (Released:2008-05-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

FRIP法は,DNA中の既知のSNPsを検出する技術である.1つの品種に対して1組の蛍光ドナー/アクセプタープローブを用いることで,特定の種であるか否かを判別可能であり,解析時間も短く,高精度で解析できる特徴を持つ.本研究では,2色の蛍光プローブを用いたFRIP法により,太平洋産および大西洋産クロマグロの同時種判別技術を開発した.FITC標識した太平洋産クロマグロ識別用プローブおよびTAMRA標識した大西洋産クロマグロ識別用プローブを同一溶液中に混合した.6種のマグロサンプルからそれぞれ転写RNAを調製し,プローブとのハイブリダイゼーション反応を行ったところ,すべてのサンプルにおいて,一旦FRETによる蛍光の消光が確認された.さらに得られたDNA : RNAハイブリッド溶液にRNase Aを添加すると,ミスマッチの有無に応答して蛍光強度に変化が生じ,精度良く種を判別できた.同様の結果は,UV光を励起光として用いた目視判別用の濃縮反応液においても確認された.FRIP法は,簡易,迅速,高精度で安価な分析法として,様々な場面で利用されるものと期待される.