著者
江口 智美 北元 憲利 鈴木 道隆 小河 拓也 吉村 美紀
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.711-717, 2013-12-15 (Released:2014-01-15)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

水挽条件のクリアランス20~60μm程度,回転数40~800rpmの範囲で9種の白玉粉を調製し,白玉粉の粒子の特性および分散糊液の特性を比較検討した.その結果,一般成分と損傷澱粉率にほとんど差がなく,MV 4.8~12.1,スパン1.5~3.5で,粒形態の異なる白玉粉が調製され,経験的に選択された現状の製品調製条件が粘弾性の制御に最適な水挽条件であったことが示唆された.現状の調製条件では,粒子径のばらつきが少なく,澱粉単粒が分散した白玉粉が得られ,その分散糊液は,澱粉濃度の低下に伴い粘弾性が減少する傾向にあったことから,澱粉濃度の調整による粘弾性の制御が容易であることが示唆された.
著者
津志田 藤二郎 鈴木 雅弘
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.642-649, 1996-05-15
参考文献数
22
被引用文献数
6 54

北海道産の黄色タマネギ,赤色タマネギ及び白色タマネギのフラボノール含量を測定したところ,生鮮重当たり黄色タマネギではケルセチン-3, 4'-ジグルコシドが16.8mg/100g,ケルセチン-4'-グルコシドが18.5mg/100g,セルセチン-3-グルコシドが0.8g/100g,イソラムネチン-4'-グルコシドが2.9mg/100g存在していた.赤色タマネギでは黄色タマネギに比べて3倍量のフラボノール配糖体が検出されたが,白色タマネギには検出されなかった.また,フラボノール配糖体は外側の鱗茎に多く存在した.<BR>一方,フラボノール配糖体の代謝に関与する酵素としては,2種のフラボノールグルコシダーゼと2種のUDP-グルコース:フラボノールグルコース転移酵素が検出された.これらはそれぞれ至適pHが異なり,3-β-グルコシダーゼでは4.5, 4'-β-グルコシダーゼでは7.0であり,3-β-グルコース転移酵素では6.0, 4'-β-グルコース転移酵素では8.0であった.使用した全ての品種において,ケルセチン-4'-β-グルコース転移酵素の活性が4'-β-グルコシダーゼの活性に勝っていることから,ケルセチン-4'-β-グルコシドは蓄積される方向にあることが分かった.一方,ケルセチンの3位においては逆にグルコース転移酵素がグルコシダーゼの活性より弱いため,ケルセチン-3-β-グルコシドは蓄積しにくいことが分かった.<BR>また,ケルセチンの3位に糖が結合したフラボノール配糖体には4'-β-グルコース転移酵素が作用できないため,タマネギのケルセチン-3, 4'-ジグルコシドは,ケルセチン-4'-β-グルコシドに糖転移が起こることにより合成されることが推定できた.
著者
早川 文代 井奥 加奈 阿久澤 さゆり 米田 千恵 風見 由香利 西成 勝好 中村 好宏 馬場 康維 神山 かおる
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.488-502, 2007-11-15 (Released:2007-12-31)
参考文献数
19
被引用文献数
4 8

前報2)の調査データを用いて,性別,年齢層別,調査地点別に消費者のテクスチャー語彙およびその中核となる用語を求めた.また,ロジスティック回帰分析によって用語の認知度に及ぼす人の属性の影響を調べた.その結果,以下の結果を得た.(1)各属性の各区分における消費者のテクスチャー語彙およびその中核となる用語を得た.(2)日本語テクスチャー用語445語について,用語の認知度に及ぼす人の属性の影響が明らかになった.(3)消費者のテクスチャー語彙の用語数も,その中核となる用語数も,男性よりも女性の方が多かった.女性の方がテクスチャーを表現する語彙が豊富であることが示唆された.女性の方が認知度の高い用語には“もそもそ”,“もったり”等がみられた.(4)消費者のテクスチャー語彙の用語数も,その中核となる用語数も,高い年齢層の方が低い年齢層に比べて多かった.時代による影響と世代による影響が考えられた.年齢層の高い方が認知度の高い用語には“かゆ状の”,“ぶりんぶりん”等,一方,年齢層の低い方が認知度の高い用語には“ぷにぷに”,“シュワシュワ”等がみられた.(5)消費者のテクスチャー語彙の用語数も,その中核となる用語数も,首都圏の方が多かった.首都圏の方が認知度の高い用語には,“ぼそぼそ”,“ぽくぽく”等,一方,京阪神地区の方が認知度の高い用語には“にちゃにちゃ”,“もろもろ”等がみられた.これらには方言の影響が推察された.以上の結果は,消費者を対象とした官能評価,質問紙調査および面接調査の設計の際に,また,消費者への情報発信を計画する際に重要な情報を提供する.さらに,食嗜好調査や食文化研究の考察の際にも有用な知見であると考えられる.
著者
中田 哲也
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.307-308, 2009-05-15
被引用文献数
1

フード・マイレージとは,イギリスのNGOによるフードマイルズ運動(なるべく身近でとれた食料を消費することによって食料輸送に伴う環境負荷を低減させていこうという市民運動)の考え方を参考に,農林水産省農林水産政策研究所において開発された指標である.その計算方法は,食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせ累積するという単純なもので,例えば10トンの食料を50km輸送する場合のフード・マイレージは10×50=500t・km(トン・キロメートル)となる.また,これに二酸化炭素排出係数(1tの貨物を1km輸送した場合に排出される二酸化炭素の量)を乗ずることにより,食料の輸送に伴う環境負荷の大きさを定量的に把握することが可能となる.<BR>農林水産政策研究所では,2001年に日本を含む主要国の輸入食料のフード・マイレージを初めて試算した.その後,2003年に計測方法を改善した上での計測結果によると,2001年におけるわが国の食料輸入総量は約5800万トンで,これに輸送距離を乗じ累積した輸入食料のフード・マイレージの総量は約9千億t・kmとなる(図1).これは,韓国・アメリカの約3倍,イギリス・ドイツの約5倍,フランスの約9倍と際立って大きい.品目別にみると,食生活の変化により輸入が急増した飼料穀物(とうもろこし等)や油糧種子(大豆,菜種等)が大きな部分を占めていることが分かる.<BR>そして,このフード・マイレージに輸送手段毎の二酸化炭素排出係数を乗ずると,輸入食料がわが国の港に到着するまでに排出される二酸化炭素の量は約17百万トンと試算され,これは,国内における食料輸送(輸入品の国内輸送分を含む.)に伴う排出量の約2倍に相当する.<BR>地球環境にかける負荷が小さな食生活を送るためには,なるべく近くでとれた食料を消費すること,つまり「地産地消」が重要である.近年,多くの地域で地産地消の取組が盛んとなっている.これらは新鮮で安心感のある食品の入手,現金収入の確保など消費者,生産者双方のニーズを反映したものであるが,フード・マイレージの考え方を応用すると,輸送に伴う環境負荷を低減させるという面でも有意義と言える.<BR>例えば同じ献立でも,伝統野菜など地元産食材を使った場合の食材の輸送に伴う二酸化炭素排出量は,市場で国産食材を調達した場合と比べ約17分の1,市場で輸入食材も含めて調達した場合と比べ約47分の1に縮小されるとの試算もある.<BR>ただし,輸送に伴う環境負荷は輸送手段による差が大きいこと(例えば鉄道はトラックの約10分の1)そもそもフード・マイレージは輸送段階のみに着目した指標であることに留意が必要である.このことから,フード・マイレージは食料の環境負荷を示す指標としてはカーボン・フットプリントに比べ限界があり,慎重に取り扱う必要があるといえる.ただ,食材の使用量と産地(輸送距離)さえ判れば誰でも簡単に計算でき,かつ,なるべく身近な場所でとれたものをといった実践にも結びつけやすいことから,自分の身近な食生活が地球環境問題と関わっていることに気づくツールとしては有効であり,さらに旬産旬消,なるべく食べ残しはしないといった食行動につながっていくことが期待される.
著者
菅原 悦子 米倉 裕一
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.323-329, 1998-05-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
13
被引用文献数
3 10

味噌は原料麹の種類や,味,色の濃淡によって区別され,それぞれ特徴的な香気を持っている.そこで,大豆と米から製造される3種類の米味噌,赤色辛口系米味噌・淡色辛口系米味噌・米甘味噌と,大豆と大麦から製造される麦味噌,大豆のみから製造される豆味噌の香気成分の組成を明らかにし,5種類の味噌の香気形成への原料や製造工程の影響について検討した.香気濃縮物は5種類の味噌,それぞれ8点ずつ合計40点から調製し,ガスクロマトグラフとガスクロマトグラフーマススペクトロメトリーを用いて分析し各香気成分の濃度を算出した.求めた濃度を変数として,統計的に処理した.(1) 5種類の味噌間のガスクロマトグラムのパターン類似率は赤色辛口系米味噌,淡色辛口系米味噌,麦味噌の3種間では極めて高かった.しかし,これら3種類の味噌と豆味噌,米甘味噌の類似率は低かった.(2)赤色辛口系米味噌と淡色辛口系米味噌の比較では有意差が認められた香気成分は1種類のみで両者は極めて類似した香気組成をもつことが判明した.米甘味噌と赤色辛口系との比較では12種類の香気成分で有意差があった.米麹を用いて製造される味噌では,特に発酵過程の有無が香気の特徴を大きく左右することが示唆された.(3) 赤色辛口系米味噌では麦味噌,豆味噌よりフェノール化合物とピラジン化合物の濃度が有意に低かった.豆味噌では赤色辛口系米味噌や麦味噌よりHEMFなどの酵母によって発酵過程で形成される香気成分の濃度が有意に低かった.原料とする麹の種類によって形成される香気成分の種類に差が生じることが示唆された.(4) 4-ethylguaiacolは麹の違いによる,米味噌と豆味噌・麦味噌の香気を判別するのに重要な成分であり,HEMFとmethionolは酵母による発酵の過程を示す重要な成分であることが示唆された.それぞれ特徴的な香気を有するこれら3成分の組み合わせと濃度が各種味噌の香気特性に大きな影響を与えると判断された.
著者
逢阪 江理 田中 八壽子 武士末 純夫 開 俊夫 西村 理子 玉井 敬久
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.521-526, 2015-11-15 (Released:2015-12-31)
参考文献数
16
被引用文献数
3

大麦の一種であるはだか麦(マンネンボシ)を使ったパンの開発を行った.はだか麦をピンミルにて粉砕し0.2mmの篩を通してはだか麦粉を調製し,その特性と製パン性についての評価を行った.製パン試験では,はだか麦粉をグルテンと8 : 2で混合し,製パン性を評価した.その結果, (1)はだか麦粉の特徴として,強力粉と比較して,粘度が高いこと,吸水量が多いことが挙げられた.また,これらの特性ははだか麦中の食物繊維に由来することが示唆された. (2)はだか麦粉とグルテンを用いて製パン試験をしたところ,はだか麦の製パン性を低下させる原因として食物繊維が考えられた.そこで,セルラーゼ(セルロシンAC40)を添加したところ,強力粉のパンと同様の比容積と柔らかさを持つパンを作製することが可能となった. (3)開発したはだか麦パンは食物繊維が小麦パンの約1.5倍含まれており,日常の食生活で食物繊維を取り入れる効果的な手段になることが分かった.
著者
吉田 充 小野 裕嗣 亀山 眞由美 忠田 吉弘 箭田 浩士 小林 秀誉 石坂 眞澄
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.822-825, 2002-12-15
参考文献数
5
被引用文献数
5 20

日本で市販されている加工食品32品目63製品について,<B>アクリルアミド</B>含有量をLC-MS/MS法及びGC-MS法で測定した.検出限界及び定量限界は,LC-MS/MS法でそれぞれ0.2, 0.8ng/ml, GC-MS法で臭素化誘導体としてそれぞれ12, 40ng/mlであった.RSDによる繰り返し精度は,LC-MS/MS法では5%以下,GC-MS法では15%以下であった.両法による分析値は高い相関(r2=0.946)を示した.<B>アクリルアミド</B>含有量は,<B>ポテトチップス</B>で439-1870μg/kg,<B>スナック</B>菓子で15-3540μg/kg,米菓で17-303μg/kg,即席麺.<B>ワンタン</B>では4-54μg/kgであった.
著者
大山 高裕 阿久津 智美 伊藤 和子 渡邊 恒夫 神山 かおる
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.14-19, 2009-01-15
参考文献数
31
被引用文献数
3 4

若年者と高齢者の漬物咀嚼の違いについて,咀嚼筋筋電位計測により検討を行った.その結果,若年者と高齢者では咀嚼回数,咀嚼時間,咀嚼周期,筋電位振幅,筋活動量,咀嚼音で違いが認められ,両者の咀嚼に違いがみられることが示唆された.また,各漬物試料の咀嚼特性値を比較し,漬物の咀嚼特性の違いを確認した.中でもたくあんは特に咀嚼負担のかかる漬物であることがわかった.筋活動量の経時的な変化に関する検討結果からは,若年者では初期から後期にかけて咀嚼の変化が起きていたが,高齢者では若年者ほどの筋活動量の急激な変化はみられず,若年者と高齢者で咀嚼過程に違いがあることが示唆された.また,咀嚼音の経時変化は筋活動量の変化と近い変化を示し,若年者と高齢者の咀嚼活動の違いを表していると考えられた.
著者
鈴木 寛一
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.657-663, 1999-10-15
参考文献数
14
被引用文献数
3 5

液状食品の粘性及び粘弾性を簡便・迅速に評価する新しい解析理論と測定法を提案した.共軸二重円筒の環状路に試料を入れ,内筒(プランジャー)を定速で上方又は下方に微小距離移動させる場合に内筒壁面に作用するずり応力を二重円筒の半径比,試料へのプランジャーの浸入距離,プランジャー移動速度等の条件で理論解析した.その理論から,ずり応力に含まれる粘性寄与分と弾性寄与分を分離して算出する方法を考案し,試料の粘度と粘弾性と求める理論式の有用性を検討した.用いた液体試料は,ショ糖水溶液等のニュートン流体とマヨネーズ,ケチャップ,ドレッシング,ガム類水溶液等の液状食品である.本研究で以下のことが明らかとなった.(1) 本法では,プランジャーを移動させる瞬間の荷重値から各試料の粘度(又は見かけ粘度)を測定できた.(2) 続くプランジャーの微小移動に伴う荷重値変化からt=0での接線を求めることで粘弾性が評価できた.(3) 以上の結果より,本研究で提案した粘性と粘弾性の測定理論と方法の有用性を認めた.
著者
梶野 和代 古川 宏 恵美須屋 廣昭 深谷 正裕 秋田 澄男 川村 吉也 内山 俊一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.163-168, 1995-03-15
参考文献数
14

キノン依存性アルコール脱水素酵素反応と自己駆動型クーロメトリーを組み合わせた新規なエタノールの簡易迅速定量方法を開発し,食品中のエタノール濃度測定への適用性を検討した.<BR>(1) 標準液を用いて定量性を検討した.Q<SUB>0</SUB>を含むマクイルベイン緩衝液(pH 5.0)に,エタノール標準液とキノン依存性アルコール脱水素酵素溶液を混合し,室温で15分間放置して酵素反応させた後,酵素反応の結果生じた還元型Q<SUB>0</SUB>の量を自己駆動型クーロメトリーで電気量として測定した.エタノール濃度0.1-30% (v/v)の範囲で,自己駆動型クーロメトリーでの実測放電電気量は理論放電量とよく一致し,試料中のエタノール濃度とr=0.9997で相関しており,無校正で定量が可能であった.繰り返し測定時の変動係数(6% (v/v)標準液を使用し,10回測定の場合)は,1.22%であった.自己駆動型クーロメーターでの測定時間は,1-5分であった.<BR>(2) 各種市販食品20サンプルについて,本法とガスクロマトグラフィーの分析値を比較したところ,r=0.9991の高い相関があった.また,各種食品を10回連続測定したときの変動係数は,2%以下であった.<BR>(3) 自己駆動型クーロメーターのカーボンフェルト電極の耐久性をビールを用いて検討したところ,100回の連続測定後でも電極の劣化は認められなかった.
著者
東 幸雅 伊藤 和徳 佐藤 学
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.656-663, 2001-09-15
参考文献数
15
被引用文献数
5 7

<I>L. gasseri</I> NY0509および<I>L.casei</I> NY1301の<I>in vitro</I>における人工消化液(人工胃液および人工胆汁液)耐性および腸内有害細菌(<I>E. coli</I>および<I>C. perfringans</I>)の生育に対する抑制効果を検討した.<BR>(1) <I>L. gasseri</I> NY0509および<I>L. casei</I> NY1301は,両菌株とも0.04%ペプシンを含むpH 3.0の人工胃液中で,4時間後まで高い生残性を示した.また,0.3%胆汁末を含む人工胆汁液中で,<I>L. casei</I> NY1301は比較的高い増殖性を示した.一方,<I>L. gasseri</I> NY0509の増殖は抑制されたものの,胆汁耐性を示した.<BR>(2) 腸内有害菌との混合培養試験において供試<I>Lac-tobacillus</I> 2菌株は,<I>E. coli</I> JCM 1649Tの増殖に対し抑制作用を示さなかったが,これらの2菌株が定常期に入った48時間後では,(a) <I>L. gasseri</I>, (b) <I>L. casei</I>, (c)<I>L. gasseri</I>+<I>L. casei</I>は何れも<I>E. coli</I>の菌数を明確に減少させ,その作用は(c)が最も強く,これら<I>Lactobacillus</I>の乳酸産生量に依存していた.<I>C. perfringens</I> JCM1290Tの増殖に対しては,(c) <I>L. gasseri</I>+<I>L. casei</I>のみ若干の抑制作用を示した.さらに,<I>L. gasseri</I> NY0509および<I>L. casei</I> NY1301が定常期に入った48時間後では,(a) <I>L. gasseri</I>, (b) <I>L. casei</I>, (c) <I>L. gasseri</I>+<I>L. casei</I>の何れも<I>C. perfringens</I>の菌数を明らかに減少させ,その作用は乳酸濃度産生量が最も多かった(c)が最も強かった.
著者
高橋 義宣 河原崎 正貴 星野 躍介 本多 裕陽 江成 宏之
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.428-431, 2008-09-15 (Released:2008-10-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1 4

アンセリンは回遊魚や渡り鳥など持久力を必要とする動物の筋肉に多く存在することが知られており,マウスの強制遊泳試験によりその抗疲労効果が確認されている.サケ肉より抽出したアンセリン含有サケエキス(SEAns)を用いてヒト臨床試験を行い,疲労の低減に関する効果を検証した.SEAns摂取群は対照群と比較して,筋肉疲労の血中マーカーであるクレアチンホスホキナーゼおよび精神ストレスの血中マーカーであるコルチゾールの有意な減少,さらに運動継続時間の減少を抑制する傾向も確認された.以上の結果より,SEAnsには筋肉疲労,及び疲労感(精神ストレス)を低減する効果があると考えられた.
著者
添田 孝彦
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.672-676, 1995-09-15
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

冷蔵ゲルを中心とした大豆タンパク質ゲルのゲル状食品への適性を,ソーセージ,ハンバーグ,さつま揚げを用いて調べた.その結果,冷蔵ゲルは加熱ゲル,凍結ゲル,SPIと比べてゲル状食品への高い適性をもち,畜肉や魚肉すり身に対する高い代替の可能性を示した.特に,ハンバーグのようなヘテロジニアスな歯ごたえを有する食品に対してはテクスチュロメータ物性並びに官能評価の結果から,畜肉代替比率50%でも対照(大豆タンパク質無添加)と同等の食感を有した.一方,ソーセージとさつま揚げの場合は畜肉代替比率が50%であると,その物性は対照よりも劣った.その理由は両サンプルともかたさと弾力の低いスコアーのためであった.<BR>以上より,冷蔵ゲルはゲル状食品において畜肉や魚肉すり身の高い代替が可能であった.これは冷蔵ゲルのもつしなやかで喉ごしのよいゲル物性が最終食品の物性に活用されたためであり,冷蔵ゲルの性質が畜肉や魚肉すり身との親和性を向上したためであると考えられた.この冷蔵ゲルの高い親和性は,冷蔵ゲルが加熱ゲルのようなS-S結合主体のゲル化ではなく,疎水結合や水素結合主体のゲル化であると考えられる2)ことに基因していると推察された.
著者
大久 長範 鈴木 直樹 三浦 みどり 遠藤 耕介 藤田 康弘
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.442-446, 2012-09-15
被引用文献数
1 5

小麦粉に8% (w/v)食塩水を添加し24時間熟成した後に手で伸ばし製麺したところ,稲庭うどん等に見られている空隙が形成された.熟成温度を10℃から23℃,30℃と高くすると空隙が大きくなった.稲庭うどんの生地から酵母(M1株とM2)を単離した.いずれの株も,グルコースをはじめ5種類の単糖,二糖類を発酵しガスを発生し,可溶性デンプンを資化し,10% (w/v)の食塩水溶液にも耐性を示した.rDNAのITS領域の塩基配列および糖の資化性から,これらの菌株を<I>Hyphopichia burtonii</I>と同定した.M1株,M2株を小麦粉に添加しドウを作製し30℃に保存すると,10時間以降にドウ体積の増加した.対照および<I>Hyphopichia burtonii </I>NBRC10837では,36時間にわたりこのようなドウの膨れは認められなかった.稲庭うどん等の手延べ乾麺の空隙形成に耐塩性酵母が関与していると考えられた.
著者
飯塚 俊輔 望月 義範 田代 有里 小川 廣男 水野 治夫 磯 直道
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.488-492, 1996-05-15
参考文献数
10
被引用文献数
1

豚肉(スペアリブ)の塩濃度は,4%食塩添加によって生肉の0.5%から塩蔵1日後の3.1%へ増加し,その後はほぼ一定となった.示差走査熱量(DSC)測定の結果から,塩蔵による肉の変性は主としてミオシンに生じることがわかった.変性の進行につれて,エンタルピー変化ΔH (mcal/粗タンパク質mg)は1.212から塩蔵3日後の0.830まで急減し,その後は塩蔵27日後の0.736まで徐々に減少した.試料の弾性率,粘度,破断強度は全体として,塩蔵中に増加した.豚肉ペーストの加熱中の動的剛性率は塩蔵6日後は52~58℃で減少する傾向を示した.この結果はミオシンの熱変性による試料の構造変化のためと考えられる.
著者
村田 充良 宇野 みさえ 永井 陽子 中川 多世 奥西 勲
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.477-482, 2004-09-15
参考文献数
11
被引用文献数
7

機能性成分である6-MSITCの,各種わさび及び加工わさび製品における含量を分析した.本ワサビ5品種の6-MSITC含量を部位別に測定した結果,いずれの品種も根茎における含量が最も高く,次いで根,茎,葉の順であった.一方,西洋ワサビの6-MSITC含量は低かった.本ワサビ根茎の6-MSITC含量が最も高かった品種はみつきであり,最も含量の低かった品種との間には約1.6倍の差があった.みつきは収穫量も高く,優れた品種であることがわかった.<br>加工わさび製品25種類の6-MSITC含量を分析した結果,メーカーや製品の種類によって,大きな差があった.6-MSITC含量には本ワサビ原料,特に根茎の配合率が大きく関与していることが明らかになった.<br>以上のことより,食事の中で効率よく6-MSITCを摂取するためには,本ワサビ根茎を食べるのがもっとも望ましく,また,加工わさび製品でも,本ワサビ根茎が多く配合されている製品を選ぶことが重要であると考えられた.
著者
渡部 保夫 鳥居 枝里子 大野 一仁 前田 耕作
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.182-185, 2011-04-15
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

本研究は,愛媛県が生産量1位である裸麦類に属するもち麦を食品原料としての利用を活性化するためにGABA機能付加を試みた.精麦した精麦もち麦粒とグルタミン酸溶液を混合して浸漬後,水切りして湿った精麦もち麦をもう一度保温することで,高含量のGABAを含むもち麦粒が製造できた.0.3%から1%グルタミン酸溶液(pH4から8)に浸漬するが,もち麦の表皮を剥いだ精麦もち麦粒を用いることが重要であった.
著者
大久 長範 堀金 明美 大能 俊久 吉田 充
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.522-527, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
11
被引用文献数
3 4

1) 稲庭うどん, ナンバーワンひやむぎ, 讃岐うどんの圧縮強度 (低圧縮H1, 高圧縮H2) 及びその比 (H2/H1) を求めた.2) 茹で30分後のH2は, ナンバーワンひやむぎで1.9N, 讃岐うどんで2.5Nでに対し, 稲庭うどんでは4N~7Nと大きな値であった. 時間の経過とともにH1とH2は変化するものもあったが, H2/H1比はほぼ一定の値となり, No1ひやむぎが約10, 讃岐うどん約8, 稲庭うどんが13~18であった.3) 茹でた稲庭うどんをMRIにより観察したところ, 空隙があり, 空隙には水が進入していない状態が6時間に渡り維持された. ナンバーワンひやむぎや讃岐うどんにはこのような空隙が観察されなかった.
著者
森 勝美 北原 郁文
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.630-635, 1998-10-15
参考文献数
19
被引用文献数
2

水産物入り漬物市販製品3品の液汁(食塩濃度1.8~3%,pH4.6)の微生物相は,乳酸菌数10<SUP>8</SUP>-10<SUP>9</SUP>CFU/ml台,グラム陰性菌数10<SUP>3</SUP>-10<SUP>4</SUP>CFU/ml台,酵母菌数10<SUP>2</SUP>-10<SUP>4</SUP>CFU/ml台,カビコロニー数10-10<SUP>4</SUP>CFU/ml台,からなっていることが明らかになった.乳酸菌相は,Lac-tobacillus属とLeuconostoc属等からなり,Lactobacil-lus属は全製品に多数存在したが,Leuconostoc属は製品により菌数が異なった.グラム陰性菌相はEnterobacteriaceae科,Alcaligenes-Agrobacterium属およびPseudomonas属等からなっていた.これらの微生物相は,多数の乳酸菌とそれよりは少数のグラム陰性菌および酵母菌からなるという点で,菊地らが明らかにした発酵が進んだ段階の「ニシン漬」や,野菜の発酵漬物,またはすし類等の微生物相と類似したものであった.
著者
三輪 章志 黒田 晃 織田 秀晴 高谷 友久 西成 勝好
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.32-39, 2002-01-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
25
被引用文献数
1 4

品種別米の食味を簡易に評価する方法として,精米の吸水率測定法の検討を行った.(1) 官能試験の評価が異なる9品種の精米を含水率調整したのち,7通りの浸漬時間(10, 20, 30, 40, 50, 60, 120分)で15℃の水に浸漬して吸水率を測定し,官能試験と比較したところ,官能試験の各項目との相関が最も高かったのは60分浸漬吸水率であった.(2) 60分浸漬吸水率は,3年間いずれの年でも官能試験の各項目との相関が0.1%水準で有意であり,9品種の被害・未熟粒を含んだ試料および整粒100%の試料の吸水率と官能試験各項目との相関においても,整粒歩合に関わらず高い相関を示した.(3) 90%と70%精米をそれぞれ6通りの浸漬時間で吸水試験を行った吸水曲線を比較すると,90%精米で認められる10分浸漬時の品種による吸水率の差が70%精米では認められなかった.この結果より短時間浸漬した品種別吸水率の違いは,90%精米の外側の層(70~90%)に含まれる成分及び組織構造に影響されていると示唆された.(4) 米の理化学特性(タンパク質含量,Mg/K・N,アミロース含量,粗脂肪含量,アミログラフのブレークダウン値)の60分浸漬吸水率への影響を検討したところ,アミロース含量が少ない品種ほど高い60分浸漬吸水率を示す傾向が認められた.以上のことから,60分浸漬吸水率は,品種ごとの吸水特性を明確・安定的に測定でき,米飯の食味評価法として利用可能な方法である.