著者
川崎 太志 飯 聡 西村 由二三 白土 男女幸 濱田 明美 仲井 朝美 芳田 哲也
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.123-128, 2009 (Released:2015-03-20)
参考文献数
8

和包丁における,様々な刃先形状と官能評価の関係を明らかにするために,熟練者が研いだ4つの完成度(50%,70%,80%,100%)の包丁について,刃先粗さ,“切れ味”および“研ぎ味”を測定し,これらの項目間の関係を調査した。顕微鏡写真から測定された刃先粗さに関しては,70%の刃先は他の完成度のものよりも粗かった,その一方で100%の包丁は最も刃先粗さが小さかった。レーザー変位計を用いて測定した刃表面粗さと刃先角度は,完成度間で類似した傾向が認められた。“切れ味”および“研ぎ味”については,シェッフェの一対比較法を用いて評価を行った結果,100%の包丁が他の完成度に比べて高い点数を示した。100%の包丁の切れ味は50%の包丁に比べて高い値を示したが,包丁の刃先粗さは100%の包丁が小さかった。また,刃先粗さは“切れ味”との関係において有意な負の相関(p<0.05)が認められた。このように,表面粗さや刃先角度の変化が比較的小さいとき,刃先の細かい粗さが“切れ味”を向上させることが示唆された。
著者
阿部 芳子 上舩津 暢子 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.289-295, 2006-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
18
被引用文献数
3

Egg noodles have characteristic eating quality. The physical properties of the dough and cooked noodles prepared with or without egg were examined by a Reometer, and the texture of the cooked noodles was evaluated by a sensory test. The dough kneaded with the egg was easy to produce and was required no resting time. The sensory test indicated that the egg noodles were harder, slightly more sticky and slightly more elastic than the Japanese noodles. The breaking stress value of the egg noodles measured by the Reometer was higher than that of the Japanese noodles. A microscopic observation revealed clearly recognizable endosperm cells at the center of both the egg noodles and Japanese noodles. These endosperm cells around the outside of the boiled Japanese noodles had swelled and crumbled, while the shape of the endosperm cells in the egg noodles had been retained in the amorphous complex of wheat proteins and egg.
著者
高橋 洋子 粟津原 宏子 小谷 スミ子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.310-319, 2006-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
34
被引用文献数
1

Salmon and yellowtail are recognized as special fishes in Niigata, Nagano, and Toyama prefectures. The traditional dish of Shiobiki Sake originated in the Murakami region of Niigata prefecture, and salmon became popular in the Iiyama, Nagano and Saku districts of Nagano prefecture from its fishing in the Chikuma river. On the other hand, yellowtail became popular in the Matsumoto, Suwa, Ina, and Iida districts of Nagano prefecture due to being on the supply route for salted yellowtail from Toyama prefecture. Toyama bay provides good fishing grounds for catching yellowtail in the winter as Kannburi, while Toyama prefecture is recognized for its development of the fishing method, processing technique and distribution of yellowtail.
著者
孟 琦 熊丸 陽奈 今村 美穂 中尾 隆人 小幡 明雄 菅原 悦子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.214-220, 2014 (Released:2014-09-05)
参考文献数
28
被引用文献数
4

調理加熱前後の生醤油と火入れ醤油から,香気濃縮物を調製した。香気濃縮物のGC-O分析により生醤油では火入れ醤油より甘く香ばしい香気成分が多く感知でき,スモーク様の香気成分は少ないこと,生醤油は調理加熱により感知できる香気成分が加熱前より増加することが判明した。AEDA分析により,生醤油で最も高いFDf成分は甘いカラメル様のHEMFと花様の2-phenylethanolであり,火入れ醤油ではHEMFと燻製様の4VGであることが判明した。さらに,調理加熱後も生醤油ではHEMFの寄与が最も高く,火入れ醤油ではHEMFの寄与度が低下した。甘く香ばしい香りを持つ生醤油は,調理加熱後も火入れ醤油と比較してより複雑な香りになることが明らかになった。さらに,官能評価により,調理加熱した生醤油の甘く香ばしい香りは調理加熱した火入れ醤油より有意に強いことが確認され,この香りの特徴は「豚肉のしょうが焼き」において好まれる傾向があることが判明した。
著者
森脇 弘子 山崎 初枝 前大道 教子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.359-365, 2010 (Released:2014-08-22)
参考文献数
25
被引用文献数
1

本研究では,学生食堂でヘルシー定食を提供し,より健康的な学生食堂のメニューについて検討することを目的とした。ヘルシー定食を食事バランスガイドより検討した結果,副菜が多かった。ヘルシー定食を日本人の食事摂取基準2005より検討した結果,カルシウム量が少なかった。「ヘルシー料理を今後も利用したい」と回答した者は93.8%で,その理由をテキストマイニング手法により集計した結果,「おいしい」,「バランス」,「良い」という言葉が高頻度で出現した。これらのことより,ヘルシー定食は,カルシウムの摂取量を増やす献立を作成することが課題であることがわかった。喫食者からの評価が極めて高く,この試みを日常の学生食堂のメニューに生かしていきたい。
著者
渡辺 豊子 石村 哲代 大喜 多祥子 大島 英子 片寄 眞木子 阪上 愛子 殿畑 操子 中山 伊紗子 中山 玲子 樋上 純子 福本 タミ子 細見 知子 安田 直子 山本 悦子 米田 泰子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.273-282, 2004-08-30 (Released:2013-04-26)
参考文献数
17

強制対流式ガス高速オーブンを使用してカスタードプディングを加熱し,加熱時の中央部5点の温度履歴からプディング内温度分布や凝固温度を調べた. またオーブン皿に注入する湯量に着目し,湯量の相違が温度上昇速度やプディング品質に及ぼす影響を調べた. 1.プディング内における最低温度点は,型中央で底から10mm付近にあると推察された. この点はプディング液高さの底から1/4付近であり,プディングは底方面よりも上方面からの伝熱を強く受けた. 2.本実験条件では,プディング液の熱凝固開始時の中央部温度は76~77℃ であり,凝固完了時の中央部温度は80~82℃ であった. 3.湯量の相違はプディングの温度上昇速度に影響し,湯量を多くするほど,湯の温度までは温度上昇速度が速くなり,湯の温度以降は温度上昇速度が遅くなった. 4.湯量を多くするほどプディング液の凝固が起こる温度帯での温度上昇速度は遅くなり,プディングの離漿量は少なくなる傾向がみられ,プディングの食感はやわらかくねっとりした. 5.湯量を多くするほど型接着部の温度上昇は抑えられ,中央部と型接着部の温度差が小さくなって,表面にすだちのないプディングとなった. 6.本実験条件では,湯量3/3の場合に良好なプディングが得られた. このときの温度上昇速度は, 60℃から緩慢期到達点までは22℃/分,緩慢期は0.4℃/分であった. 本研究の一部は,日本調理科学会近畿支部第29回研究発表会(東大阪短期大学2002年7月6日)において発表した.
著者
丹羽 悠輝 森山 三千江 大羽 和子
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.257-265, 2007

さつまいものビタミンC(VC)量及び1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉活性は調理直後に減少したが,通常調理品より真空調理品のほうが残存率が高かった。ポリフェノール量では差は見られなかった。VC及びDPPHラジカル捕捉活性は,さつまいもに砂糖を加えると有意に減少が抑制され,大根及び里芋に醤油を加えると減少が促進された。さつまいものDPPHラジカル捕捉活性は主にアスコルビン酸量と相関関係にあり,大根及び里芋は主にポリフェノール量と相関関係にあった。さつまいも及び里芋の官能評価では真空調理品が好まれたが,大根ではテクスチャーが真空調理品より通常調理品のほうが好まれた。
著者
三宅 紀子 酒井 清子 五十嵐 歩 鈴木 恵美子 倉田 忠男
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.189-192, 2007-06-20
参考文献数
13
被引用文献数
1

エダマメ中の呈味成分やビタミンCは水溶性や不安定な化合物であるためゆで加熱中に分解したり,溶出したりすると考えられてきた。本研究の目的はエダマメ中の呈味成分およびビタミンC含量に対するゆで時間(3-10分)の影響を調べることである。主要な呈味成分であるスクロース,グルタミン酸,アラニンなどの糖および遊離アミノ酸含量は7分間以内のゆで加熱では著しい減少は認められなかったが,10分間ゆで加熱では総遊離アミノ酸とアラニンが有意に減少した。総ビタミンCは7分間以内のゆで加熱では90%以上が残存していたが,10分間加熱では85%に減少した。従って7分間以内のゆで加熱時間ではエダマメの呈味成分およびビタミンC含量はあまり影響を受けないことが明らかになった。
著者
下坂 智恵 杉山 静代 熊谷 佳代子 木下 朋美 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.344-351, 2004-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1

カスタードプディングの基本的な配合割合にクリームを添加し,嗜好性の高いプディングの配合割合を検討した. 基本材料である鶏卵,牛乳,砂糖にクリームを加えてプディングを調製し,乳脂肱植物性脂肪のクリームがプディングの物性,食味に与える影響を調べようとした. その結果,次のことが明らかになった. 1.プディングは,牛乳の一部を乳脂肪クリームで代替することにより,破断荷重値が有意に低くなり,官能検査においても,基本と比べ,軟らかく,甘く,総合的においしいと評価された. 植物性脂肪クリームを加えたプディングは,代替量が増加することにより硬くなる傾向を示した. 鶏卵の一部をクリームで代替したプディングは,白く,やわらかく,甘く,なめらかなプディングとなり,総合的に好まれた. 2物性試験において,牛乳の一部を乳脂肪で代替すると破断荷重値が低下し,クリームの割合が高くなるにつれ,さらに低下した. 一方,植物性脂肪クリームで代替すると,少量の代替ではやや低下したが,代替割合を高くすると逆に破断荷重値が高くなった. クリープメータによる荷重曲線から,プディングの物性が材料配合の割合で異なり,水分よりもクリームの種類,牛乳及び鶏卵の割合が影響することが示された. すなわち,牛乳の一部を植物性脂肪クリームで代替したプディングは,基本プディングとほぼ同様の荷重曲線を示した. しかし,乳脂肪クリーム代替では,荷重曲線にみられたピークが低く,乳脂肪クリームと植物性脂肪クリームでは,プディングの物性に対する影響が異なった. また,鶏卵の一部をクリームで代替したプディングは,非常にゆるやかな,破断荷重値が低い曲線となり,乳脂肪クリームと植物性脂肪クリームとの違いはほとんどみられなかった. 3.プディングの組織を顕微鏡で観察すると,加えたクリームの種類により脂肪球の大きさが異なっていた. 乳脂肪クリームでは,脂肪球が大きくこれがたんぱく質の結合を阻害していると考えられた. 植物性脂肪クリームでは,均一な細かい脂肪球が全体に分散していた. 小さな脂肪球の多粒子が集まって凝集を起こし固化するために硬くなるものと推察した.
著者
川崎 寛也 赤木 陽子 笠松 千夏 青木 義満
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.334-341, 2009 (Released:2015-01-23)
参考文献数
13

本実験では,サーモグラフィ動画像の自動色分解処理技術を用い,中華炒め調理における具材及び鍋の温度変化を詳細に把握するための新規システムを構築し,プロ調理と家庭調理の比較によりあおり操作の調理科学的意義を考察した。さらにあおり操作の回数も自動取得した。回鍋肉(豚肉とキャベツの味噌炒め)調理を例とし,サーモ動画像と可視動画像を同時に取得した後,サーモグラフィの動画像から鍋領域と具領域を分離して鍋と具材の表面平均温度を経時的に把握した。終点具材温度に家庭調理とプロ調理では大きな差が見られなかった。プロ調理では,あおり操作が定期的連続的に行なわれているのに対し,家庭調理では不定期であった。各あおり操作の前後におけるプロ調理の具材温度上昇は家庭調理よりも大きい傾向があった。鍋温度はプロ調理では家庭調理よりも顕著に大きく上昇した。本システムにより,動きを伴うプロの炒め調理においても,具材や鍋の平均温度変化を計測する事ができた。
著者
黒沼 有里 下村 道子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.169-175, 2019-06-05 (Released:2019-06-21)
参考文献数
12

はんぺんは多くの泡を含んだ独特のテクスチャーを持つ日本の伝統的な水産食品である。起泡材としての卵白や山芋のほかに近年は増粘多糖類(主成分はグアルガム)が使われることが多い。そこで,卵白,山芋,増粘多糖類がはんぺんの食味,硬さなどにどう影響しているのか,味覚検査,物性測定,光学顕微鏡観察を行って調べた。はんぺんの製造にはサメの鮮肉を用い,一般的なはんぺん製造の材料から卵白,山芋あるいは増粘多糖類を除いたオミッションテストを行ってその作用を検討した。従来のはんぺんでは,製造材料から卵白または山芋を除くと,はんぺんの硬さの値が高くなり,比重は大きくなり,食味は好まれなかった。増粘多糖類添加はんぺんは,増粘多糖類無添加はんぺんより硬さの値が低く,比重が小さく,また内部に丸みを帯びた多くの泡が観察された。増粘多糖類の添加は山芋の作用を補い,起泡性,気泡保持に効果があると推察された。
著者
北野 直子 中嶋 名菜 福山 豊 中嶋 康博 松添 直隆
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.254-259, 2014 (Released:2014-11-07)
参考文献数
17

2010,2012年に,熊本市と農耕祭事の行事が残っている阿蘇地域において質問紙調査を行った。質問は,年中行事の認知・経験と喫食状況であった。対象は,熊本市が136名,阿蘇地域が168名の食生活改善推進員であった。年中行事は,正月,節句,七夕など15行事であった。両地域の90%以上の者が,ほとんどの行事について認知,経験をしていた。「春祭り」,「秋祭り」の認知度,経験度は他の年中行事より低く,地域差は認められなかった。稲作儀礼を中心とした行事は,農業従事者の高齢化,農業就業人口の減少とともに廃れていき,行事食の伝承も難しくなっていると考えられた。行事食を家庭で作る割合は熊本市より阿蘇地域が高かった。熊本市に比し阿蘇地域が3世代世帯は多かった。その結果,年長者から子どもへ継承されやすいと考えられた。