著者
後町 武志 石田 祐一 高橋 直人 三森 教雄 柏木 秀幸 矢永 勝彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.696-701, 2010 (Released:2010-09-25)
参考文献数
39
被引用文献数
1

症例は64歳,女性.進行胃癌に対する胃全摘術+脾摘術施行後S-1を内服中で再発徴候は認めていなかった.術後2年5カ月目に発熱,下痢,意識障害にて緊急入院.精査にてインフルエンザ桿菌性髄膜炎・菌血症を発症しているoverwhelming postsplenectomy infection(OPSI)と診断した.抗菌剤,ステロイドによる治療で軽快し第50病日に退院した.OPSIは脾摘後に敗血症,髄膜炎などで突然発症する重症感染症で,発症すると高率に死亡することが知られている.予防として適切な予防的抗菌薬投与,患者教育,ワクチン接種が重要とされるが,脾摘後長期間経過後に発症することもあり,脾摘後患者では常にOPSIを念頭におく必要がある.今回われわれは胃癌に対する脾摘術後化学療法中に発症したインフルエンザ桿菌によるOPSIの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
著者
千須和 寿直 田内 克典 大森 敏弘 森 周介 岸本 浩史 小池 秀夫 樋口 佳代子 宮澤 正久
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.2462-2467, 2008 (Released:2009-04-07)
参考文献数
18
被引用文献数
4 2

目的:急性虫垂炎の診断におけるCTを重視したプロトコールの正確性と虫垂径の測定の有用性の評価.対象と方法:2002年1月から2004年6月の間に急性虫垂炎と診断した連続した239人を検討した.CTでの診断基準は6mm以上の虫垂径または2次性の炎症変化とした.病理学的な診断基準は筋層以上の炎症細胞浸潤とした.結果:239人のうち235人がCTを受けていた.222人が虫垂切除術を受け,205人が病理学的に急性虫垂炎と診断された.CTで虫垂径が6mm以上あった200人中193人が病理学的に急性虫垂炎と診断された.手術症例の陽性的中率は92.3%(205/222)で,CTで虫垂径が6mm以上あった手術症例の陽性的中率は96.5%(193/200)であった.また保存的治療症例の35.3%(6/17)が再発し,10mm以上で再発率が50%(5/10)と高かった.結論:CTは急性虫垂炎の診断に有用である.
著者
碇 直樹 松山 悟 下西 智徳 那須 賢司 大田 準二
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.1095-1098, 2009 (Released:2009-10-05)
参考文献数
24
被引用文献数
1

症例は62歳,男性.2007年1月27日(土)心窩部痛,右下腹部痛を主訴に夜間外来を受診した.30年前虫垂炎の診断で開腹されたがドレナージのみで治療され未切除だった.血液検査で炎症所見を認め,US施行されたが診断は困難であったため,CTを施行し当直医は急性腸炎と診断し外来で抗菌薬加療を開始した.翌日,圧痛を右季肋部に認めた.翌々日,症状及び炎症所見は改善傾向であったが,放射線科医によるCT再読影で,盲腸の頭側偏位と腫大した虫垂,糞石を認め,移動盲腸を伴う急性虫垂炎と診断された.虫垂根部の処理を考え右上腹部傍腹直筋切開で開腹すると盲腸・上行結腸周囲は右側腹部,右上腹部で強固に癒着しており,これを剥離し盲腸壁の一部を含め虫垂を切除した.移動盲腸は稀ではなく,急性腹症の診断においては念頭に置く必要がある.今回,CTで移動盲腸に伴う急性虫垂炎と診断し,適切な皮膚切開での病変切除が可能であった.
著者
花岡 俊仁 藤井 徹也 高橋 寛敏 石田 数逸 三原 康生 白川 敦子
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.2628-2631, 1999-10-25 (Released:2009-08-24)
参考文献数
6

症例1は72歳,女性,胸部異常陰影を主訴に受診した. CTにて右S8に径2cm大の不整形の結節影を認め,開胸下に肺部分切除術を施行した.病理組織学的に異物肉芽腫の中にPAS反応陽性の球状の菌体を多数認めた.症例2は38歳,女性.検診にて胸部異常陰影を指摘され当院を受診した. CTにて右S6に径1cm大の境界明瞭な結節影があり,娘結節を伴っていた.胸腔鏡下肺部分切除術を施行し,凝固壊死に陥った腫瘤の内部にPAS反応およびGrocott染色陽性の球状の菌体を多数認めた. 2症例とも基礎疾患はなく肺のみに病変を認め,原発性肺クリプトコッカス症と診断した.症例1は手術後4年,症例2は1年6カ月を経過し,再発を認めていない.本症は比較的稀な疾患で,臨床像と画像所見は特徴に乏しく,術前確定診断が困難な症例も多い.胸膜直下に病変をつくりやすく孤立結節影を呈することが多いため,侵襲の少ない胸腔鏡下手術の良い適応と考えられる.
著者
齋藤 学 境澤 隆夫 有村 隆明 西村 秀紀 保坂 典子
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.1422-1426, 2011 (Released:2011-12-25)
参考文献数
11
被引用文献数
2

意識障害を契機に発見されたPTHrP産生肺癌の1例を経験したので報告する.症例は76歳,男性.2007年4月下旬頃より,呼びかけに対する応答が鈍くなったと意識障害を主訴に,同年6月に通院中の近医を受診した.心臓,脳の精査を施行したが,これらに異常は認められなかった.高カルシウム血症と胸部X線検査にて異常を指摘され,当院に紹介となった.諸検査にてPTHrP産生肺癌による高カルシウム血症と診断し,同年8月左下葉切除術および縦隔リンパ節郭清(Node Dissectoin 2a-1:以下ND2a-1)を施行した.術直後に一過性の低カルシウム血症を認めたが,意識レベルや腎機能障害も改善し,術後10日目に退院となった.術後1カ月後の血清カルシウム値,PTHrPは正常化し,intactPTHは改善傾向であった.現在術後3年5カ月経過しているが,再発なく経過している.
著者
安岡 利恵 熊野 達也 森田 修司 満尾 学 小田 俊彦 川端 健二 門谷 洋一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.129-134, 2005-01-25 (Released:2009-05-26)
参考文献数
37
被引用文献数
2 3

急性腹症で発症した小児大腸癌の1例を経験したので,本邦における小児大腸癌の検討と併せ報告する.症例は15歳,男児.腹痛,嘔吐,発熱を主訴に来院. CT上,多量の腹水とfree air認めたため,消化管穿孔による汎発性腹膜炎との診断の下,緊急手術施行.術中所見で直腸癌穿孔に伴う癌性腹膜炎と診断し, Hartmann手術を施行した. Rsの全周性びまん浸潤型腫瘍の組織学的所見は, mucinous carcinoma, se, n(+), ly1, v1, H0, P3, M0, stage IVであった.術後10日目より化学療法(5FU/leucovorin)を開始するも,癌性腹膜炎は進行し,術後157日目永眠.小児大腸癌は予後不良であり,小児であっても大腸悪性腫瘍の存在を念頭に置き精査し,早期発見・治癒切除に努めることが重要であると考える.
著者
須浪 毅 雪本 清隆 澤田 隆吾 阪本 一次 山下 隆史
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.1437-1441, 2008 (Released:2008-12-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

症例は65歳,女性.血便を主訴に当院を受診.注腸造影X線検査にてS状結腸に約2cm大の亜有茎性の隆起性病変を認めた.大腸内視鏡検査では頂部に潰瘍を有する隆起性病変を認め,Isp型のS状結腸癌を疑った.数か所の生検を行ったがいずれも肉芽組織との結果であった.Endoscopic mucosal resectionを試みたがlifting不能であったため断念.しかし,悪性腫瘍の可能性を否定しきれず,腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行した.切除標本では1.4×1.2cm大のIsp腫瘤を認め,組織学的には線維細胞,膠原線維などの結合織の増生や毛細血管の増生,リンパ球,形質細胞,好酸球などの炎症細胞の浸潤を認め,inflammatory fibroid polyp(以下.IFP)と診断された.IFPは消化管の粘膜下に発生する炎症性腫瘤であり,胃に発生することが多く,結腸に発生することは稀である.われわれは稀な結腸IFPの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
高屋 快 鈴木 龍児 梅邑 明子 鈴木 雄 遠藤 義洋 北村 道彦
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.2725-2728, 2008-10-25
参考文献数
13
被引用文献数
1

症例は76歳,男性.平成18年10月12日17時頃温泉のサウナ内で倒れているところを発見され救急車にて当院搬送された.来院時体温38.2℃,血圧126/70mmHg,脈拍147回/分,意識レベルJCS 300点,全身皮膚にI度熱傷あり.CT,MRIなどで意識障害の原因を検索したが明らかなものは認められなかった.全身管理目的にて当科入院となり2病日には意識レベル回復し経口摂取開始したが,3病日朝より39℃を超える発熱と意識障害(JCS 20~30点)をきたし,採血にてDICと判断し中心静脈カテーテルを留置しメシル酸ガベキサート持続静注を開始した.また肝機能障害も認めた.意識レベル,凝固能・肝機能はともに日数経過とともに改善認め,6病日より経口摂取開始,7病日にメシル酸ガベキサート投与中止し中心静脈カテーテルも抜去した.その後皮膚の所見も軽快し16病日に独歩退院となった.サウナによる熱中症に伴う意識障害の報告は散見されるが,本症は遅発性に意識障害,DIC,肝機能障害をきたしたもので,興味深い病態と考えられた.
著者
谷口 文崇 赤在 義浩
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.2072-2075, 2010 (Released:2011-02-25)
参考文献数
14

症例は66歳,女性.2001年10月,上行結腸癌に対し回盲部切除,D3郭清を施行した.組織学的には粘液癌SE N0 Stage IIであった.2002年8月,腹部CTにて右腎下部およびS状結腸近傍に再発を指摘され,小腸部分切除,S状結腸切除,横行結腸切除および右卵巣切除を行った.さらに2003年1月,臍右側に腹壁に浸潤する腫瘤および胃幽門輪近傍に胃壁に浸潤する腫瘤を認め,腫瘤摘出および幽門側胃切除,Billroth I法再建を行った.その際腹腔内に小結節散見し,2カ所術中迅速病理検査に提出したところ播種と診断されたため,肉眼的に確認できる小結節を可及的に切除した.組織学的には,同様に粘液癌で播種病変と考えられたが,小結節に関しては,術中迅速検査に提出した検体以外は炎症性の結節であった.術後化学療法はいずれも副作用出現し中断した.その後,最終手術より7年経過した現在でも無再発生存中である.
著者
泉 俊昌 藤岡 雅子 佐藤 嘉紀 恩地 英年 長谷川 保弘 岩佐 和典 北村 秀夫 山口 明夫
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.1225-1229, 2002-05-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
8

症例は1999年6月に左卵巣嚢腫に対し自動縫合器を用いた腹腔鏡下左付属器切除術の既往のある41歳の女性. 2000年9月28日,突然の下腹部痛・嘔吐にて入院となった.絶食・輸液にて経過観察するも腹膜刺激症状が出現したため, 9月30日緊急手術を施行した.開腹すると血性腹水を認め,腸間膜同士の癒着により形成された間隙に回腸が迷入・嵌頓し,絞扼性イレウスとなっていた.癒着を剥離するとイレウスは解除され,剥離部より自動縫合器の落下ステイプルが1個発見された.腹腔内にはこの部位以外に癒着を認めなかった.絞扼腸管は可逆的であり腸切除は行わず閉腹した.術後12病日に退院し,以後イレウスの再発は認めていない. 自動縫合器のステイプルが目的部位以外に落下・残存した場合は癒着が生じイレウスの原因となる可能性があり,余分なステイプルを落下させない工夫と落下ステイプルの丹念な回収の必要性が示唆された.
著者
内村 正史 多羅尾 信 宮本 康二 大久保 雄一郎 原 明
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.1685-1689, 2009 (Released:2009-12-04)
参考文献数
13

症例は19歳,男性.2007年9月18日午前1時ごろ心窩部痛出現,徐々に症状増強し近医救急車搬入.腹膜刺激症状及び腹部単純CTにて腹水貯留を認め,急性腹症の診断にて当院救急車搬入.収縮期血圧80,脈拍93,搬入時顔面蒼白.腹部造影CTにて短胃動脈破裂による腹腔内出血が疑われ,かつ出血性ショックと判断し緊急手術施行.腹腔内は大量の血液が貯留し,胃体部後壁,脾上極の短胃動脈に出血部を認め,同部を含めた胃部分切除をおこなった.術後1日目に人工呼吸器より離脱し徐々に回復.病理組織検査ではElastica van Gieson染色で小動脈中膜の異常断裂像を認めFibromuscular dysplasia(以下FMD)の所見と考えられた.まとめ:若年者に発症した短胃動脈瘤破裂は腹部内臓動脈瘤の中でも非常に稀であり若干の文献的考察を加え報告する.
著者
松田 恭典 大杉 治司 竹村 雅至 李 栄柱 岸田 哲 西澤 聡
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.3304-3308, 2008 (Released:2009-06-11)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

症例は82歳,男性.2005年7月頃より右腰背部の膨隆を自覚していた.腹部CT施行されたところ広背筋の腹側にて腰方形筋と内腹斜筋の間より脱出する後腹膜脂肪織を認め上腰ヘルニアと診断され手術目的にて当科紹介受診となった.右第12肋骨下縁三横指尾側,脊柱の右側に鶏卵大の柔らかな腹圧により膨隆する腫瘤を触知した.2006年3月に硬膜外麻酔下に左側臥位にて手術を施行した.ヘルニア門周囲を構成している筋群が比較的健常であったため直接縫合・閉鎖が可能であった.術後合併症なく13病日に退院した.以後の再発は認めていない.腰ヘルニアは稀な疾患であり,直接縫合閉鎖により修復可能であった上腰ヘルニア1例を経験したので報告する.
著者
渡邉 卓哉 石榑 清 藤岡 憲 堀場 隆雄 平井 敦 伊藤 洋一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.175-178, 2008 (Released:2008-05-15)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2 1

症例は70歳,男性.幼少時より軽い臍炎を繰り返していた.平成4年4月,臍から下腹部腹壁に膿瘍を形成したため,尿膜管遺残膿瘍と診断され臍,尿膜管全摘術を施行された.病理組織学的検索で腺癌を認めたため,再手術により膀胱周囲の尿膜管遺残組織と思われる部分および膀胱頂部を追加切除されたが,癌組織は認められなかった.その後平成10年4月に臍摘出部の硬結,平成11年1月に右鼠径リンパ節の腫大,平成18年4月に右下腹部腹壁の硬結,両鼠径リンパ節の腫大をきたし,局所再発が疑われ腫瘍摘出術を施行された.いずれも病理組織学的検索で,再発と診断された.平成18年8月に両側多発肺陰影と縦隔リンパ節の腫大を認めたため,多発肺転移が疑われた.テガフール・ギメラシル・オテラシル配合剤による化学療法を8クール施行されたが,多発肺陰影の大きさは変化しておらず,現在も継続治療中である.
著者
大谷 真二 清水 康廣 杉山 悟 宮出 喜生
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.1960-1963, 2005
被引用文献数
9 7

症例は82歳,男性.腹部膨満,腹痛を主訴に外来受診した.頻回の開腹歴と問診から食餌性イレウスを疑い,入院後に保存的治療を開始した.腹部CT所見および腫瘍マーカーから肝転移を伴う進行大腸癌による腫瘍性イレウスと診断して手術を行った.手術所見では回盲弁付近の盲腸と肝彎曲のやや口側の上行結腸にそれぞれ4cm大の腫瘤を触れ, D2郭清を伴う結腸右半切除術を施行した.切除標本では上行結腸に全周性の腫瘍と盲腸に柿の種子5個を認めた.経過は良好で,術後26日目に退院となった.柿の種子はCTでは三日月状から楕円状の高吸収域として認めるが,本症例は柿の種子が誘因となって発症した大腸癌イレウスであった.本邦で食餌が原因となった腫瘍性イレウスの報告はほとんどされていないが,柿の種子もイレウスの原因となることがあり,詳細な問診とCTによる診断が有用であると考えられた.
著者
中山 裕子 國友 和善 磯野 忠大 熊本 浩志 木村 貴彦 橘 充弘
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.1695-1699, 2011 (Released:2012-01-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1

症例は37歳,女性.2009年3月末より右乳房CD領域に圧痛・熱感を伴う径7cm大の硬結を自覚し,4月,自潰し排膿を認めたことから当科外来初診となった.38℃の発熱を認め,血液検査でも炎症反応が高値であった.乳房超音波検査で右乳房全体に低エコー領域を認めた.針生検では,乳管周囲に類上皮細胞・組織球・リンパ球・形質細胞の浸潤と多核巨細胞を認め,悪性所見は認めなかった.外来で切開排膿した.5月より全身関節痛が出現した.血液検査上,自己免疫性関連抗体は陰性であり,肉芽腫性乳腺炎に伴う全身関節痛と診断し,7月よりステロイドの内服を開始した.関節症状・乳房所見ともに軽快し,2010年1月に投与を中止した.投与中止から1年経過し,症状の再燃なく当科外来通院中である.