著者
土手 貴裕 近堂 徹 前田 香織 高野 知佐
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.650-658, 2023-03-15

ITシステムの新たなアーキテクチャとしてマイクロサービスが注目されている.マイクロサービスではシステムが持つ各機能を独立したコンポーネントとして分割し,それらをAPIで疎結合させることで,機能単位での頻繁な改修が容易となり,顧客の要望への迅速な対応が可能となる.しかし,マイクロサービスの導入によりシステム構成が複雑化し,システム状態を把握するための時系列データであるメトリック数も増大するため,障害原因であるコンポーネント(障害原因箇所)の特定が困難となる.本論文では,マイクロサービスにはコンポーネント間でAPI呼び出しによる依存関係があることに着目し,メトリックの定常時からの変化量にコンポーネント間の依存関係を組み合わせることで障害原因箇所を特定する手法を提案する.また,提案手法による障害原因箇所特定システムを開発し,ECサイトを模したマイクロサービスのベンチマークを用いた実験を行った.特定精度および特定に要する時間について評価を行い,これらの結果から提案手法の有効性を示す.
著者
大日方 太一 河本 浩明 山海 嘉之
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.926-940, 2023-04-15

人間の作業に起因するミスはときに重大な事故につながるため,作業のモニタリングシステムは有用であると考えられる.作業には全身の動作で行われるものと手元の動作で行われるものがあり,全身と手元の情報を取得可能な状況下で手元の細かな動作を含めた動作認識ができれば,システムは様々な作業のモニタリングが可能になると考えられる.そこで本研究では,作業のモニタリングシステムの実現に向け,非接触に全身と手元の情報を取得可能な状況下で全身と手元の動作を認識可能な手法の提案・研究開発を行い,実際の手洗い作業での試験を通して提案システムによる作業の実施判断の実現可能性を明らかにすることを目的とする.モニタリングが必要な作業として,手指の複雑な動きがある手洗い作業を対象に提案システムを構築した.RGB-Dカメラを用いて非接触に全身と手指の骨格三次元座標を取得し,その骨格情報から一連の作業を認識するモニタリングシステムを開発した.動作の認識に使用したモデルは,手指と全身の骨格情報のそれぞれから特徴量を抽出・統合することで,手元と全身の動作を同時に認識可能にしている.手洗い作業の試験より,提案システムは手洗い動作をF値のマクロ平均87.1%で認識でき,一連の手洗い作業を高い精度で推定し,不足した動作を正しく判定できることを確認した.以上より,提案システムによる作業の実施判断の実現可能性を確認した.
著者
矢田 哲士 石川 幹人 田中 秀俊 浅井 潔
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.1117-1129, 1996-06-15

我々は DNA配列群からシグナルパターンを自動的に抽出する手法を開発した.本手法では シグナルパターンを確率論的モデルである隠れマルコフモデル(HMM)によって表現している.HMMは 状態を表すノードとそれらを結合する有向パスで構成されるネットワークとして記述される.HMMをシグナルパターンの表現方法として用いる場合 以下の2点が重要な課題となる.(1)最も好ましいネットワークトポロジーの決定 (2)HMMに関連するパラメータの最適化.本手法は 遺伝的アルゴリズム(GA)とBaum-Welchアルゴリズム(BWA)で構成される.手法のプロシジャは以下のとおりである.(1)GAによるネットワークトポロジーと初期パラメータ値の生成 (2)BWAによるパラメータ値の最適化 (3)GAによるネットワークトポロジーと最適化されたパラメータ値の評価.評価には モデルの適合度と複雑性の釣合基準を与える赤池情報量基準(AIC)を適用した.以上のプロシジャを繰り返すことによって DNA配列群に含まれるシグナルパターンを最も良好に表現するHMMネットワークのトポロジーとパラメータ値が得られる.我々は 本手法を霊長類プロモータ領域に関するシグナルパターンの抽出に適用した.本手法により生成されたHMMは 生物学的に知られている複数のシグナル配列を含んでいた.さらに このHMMを用いてプロモータ領域の予測を行った結果 84.3%の精度でプロモータ領域を認識することが確かめられた.この値は 本手法で生成されたHMMがプロモータ領域のシグナルパターンを良好に表現していることを示している.
著者
大島 千佳 西本 一志 鈴木 雅実
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.157-171, 2005-01-15

本論文では,演奏初心者の親が,初級者の子どもと容易にピアノ連弾できるようにするシステム“Family Ensemble” を提案する.近年,ピアノ・レッスンに連弾が取り入れられ,連弾を通じて生徒の練習意欲が高まったという報告がある.さらに連弾には,パートナーと呼吸を合わせることで,音楽性を育てるという効果がある.しかし子どもが,家庭内で演奏経験の乏しい家族と連弾を行うことは難しい.そこで,本研究で提案するFamily Ensemble では,子どもの親が担当する連弾のパートを,正確な音高列を出力する機能と,子供の演奏位置を追従する機能により支援することで,まったくの初心者の親が,演奏誤りの多い初級者の子どもとでも連弾できるようにした.Family Ensemble を使用する場合としない場合の両方について,合同練習を5 組の被験者ペアに行ってもらったところ,使用した合同練習では,連弾の回数とFamily Ensemble に支援されていない子供の独奏による練習回数が大幅に増加した.この結果から,Family Ensemble によりまったくの初心者と初級者によるピアノ連弾が可能になることだけでなく,支援されていない子どもの練習意欲が増すことが示された.さらに,初心者と初級者のペアでありながら,お互いに音楽的なアイデアや演奏技術について意見をかわしている様子が見られた.
著者
栗林 健太郎 三宅 悠介 力武 健次 篠田 陽一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.635-649, 2023-03-15

物理空間上のセンサやアクチュエータ等のデバイスとサイバー空間上の計算処理とを架橋するIoTシステムにおいては,双方向のデータフローの構成が重要な課題となる.本研究は,階層的なアーキテクチャからなるIoTシステム全体を,単一のプログラミング言語で統合的に構築することを可能とするデータフロー基盤を提案する.その実現のために解決すべき課題として,(1)IoTシステム全体を構築可能なプログラミング言語としてどの言語を選択するか,(2)選択したプログラミング言語によって多様かつ双方向性を持つデータ取得方式に対応できるか,(3)IoTシステムの階層的なアーキテクチャにおけるデータフローを見通し良く扱えるか,の3点を示した.各課題に対して,(1)各層の実装に用いるプログラミング言語としてElixirを選択する,(2)Elixirを用いて多様かつ双方向性を持つデータ取得方式に対応できる基盤としてPratipadを提案する,(3)Pratipadにおいて階層的なアーキテクチャにおけるデータフローを一望のもとに把握できる記法を提供する,という3点の提案手法により解決を図った.提案手法について,有効性および適用可能性について評価した.その結果,提案手法が本研究の目的を実現するとともに,実用的な機能および規模を持つIoTシステムの構築に適用可能であることを示した.
著者
森茂 智彦 山口 穂高 藤巻 吾朗 生駒 晃大
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.289-300, 2023-02-15

棚卸作業において,画像認識によって部材の数量を求めることは有用である.しかし,その精度が100%となることは保証されないため,正確な数量の把握には目視による認識結果の修正も必要である.当然この修正は速く正確に行えることが望まれる.そこで本論文では,画像を格子線で区切ることによって修正作業が効率的に行えるとの仮説を立て,検証する.木製の丸棒部材を用いて検証した結果,未検出の部材のみが含まれる画像の修正では格子線の影響が限定的であり,誤検出の印を消す修正および未検出と誤検出の同時修正が必要な画像において格子線を用いた条件で未修正数が減少した.一方で,修正に要した作業時間は格子線の有無によって変わるとはいえなかった.よって,丸棒部材において格子線は,画像認識後の修正作業を阻害する可能性は少なく,誤検出した印の修正に有効であると結論づけられる.
著者
岡藤 勇希 牧田 昌大 松村 耕平 馬場 惇 中西 惇也
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.366-376, 2023-02-15

近年では,人間の労働力のサポート手段の1つとして,コミュニケーションロボットが積極的に活用され始めている.一方で,公共空間でロボットと対話をする際には恥ずかしさが発生することが知られており,これによりロボットの利用が妨げられる可能性がある.そこで本研究では,公共空間においてロボットの利用を促進させるために,ロボット利用時の恥ずかしさの発生要因と,恥ずかしさがロボット利用に対して与える影響を明らかにすることを目的として,ロボットを利用するサクラを用いた実験を実施した.実験結果より,ロボット利用中に感じる恥ずかしさは,周辺からの注目と周辺からの理解による要因に影響を受けることが示された.また,利用中の恥ずかしさを減少させることにより,ロボットとのインタラクション時間が延びることが示された.
著者
鈴木 聡 齋藤 涼 岡部 哲也 小方 博之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1151-1161, 2016-04-15

学習・労働などの現場における作業意欲の維持・向上は今日重要な課題となっている.本研究では,計算機環境において,ユーザの無意識下に働きかける形でユーザの作業意欲の維持・向上を図るため,ユーザの周辺視野に身体化エージェント(以下エージェントと略)を呈示し,エージェントからの被視感による作業遂行への影響を検討した.ただし,作業遂行への影響は作業の難易度に依存する点や,呈示されるエージェントの外観の違いは作業遂行へ影響する可能性を考慮する必要がある.そこで,ヒト型のシルエットと身体パーツで表現されたエージェントが,難易度の異なる課題に取り組む際のユーザの作業遂行に与える影響を,外観の異なるエージェントの比較も加えて実験により検討した.その結果,ユーザがエージェントの呈示への気づきの有無の影響もあったが,ヒト型シルエットと身体パーツのエージェントを呈示する条件で作業遂行は悪化した.さらに,その条件の中でも呈示時と非呈示時を比較すると呈示時の方が作業遂行が改善した.加えて,比較対象とした他の外観のエージェントと同様に,エージェントの呈示に気づいたユーザは,呈示中困難な課題に取り組む際に作業遂行が悪化した.以上の結果,特にエージェントの身体パーツの影響の大きさを考慮し,エージェントの周辺視野への呈示を通じたユーザの無意識下の認知過程への介入による作業意欲の制御の可能性について議論する.
著者
須藤 克仁 角所 考 美濃導彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.3632-3642, 2002-12-15

仮想物体操作におけるユーザへのリアルな視覚フィードバックの実現を目的として,仮想柔軟物体のモデルパラメータを,現実物体の観測結果から獲得する手法について議論する.従来から,mass-springモデル等を用いて,布をはじめとする様々な柔軟物体がモデル化されているが,このようなモデル化では,モデルパラメータの値は,人間がモデルの形状を確認しながら手動で設定する必要があり,労力が大きい.また,モデルパラメータの値は通常,物体全体にわたって同一であると仮定されるため,実現された形状が均質すぎてリアリティに欠ける場合も多い.本研究では,仮想物体に対する操作を現実世界において実行し,その観測結果に基づいて,現実物体と同一の見え方を再現できるようなモデルパラメータの値を求めることにより,ユーザによる物体操作に対してリアルな視覚フィードバックを実現できる仮想物体モデルを獲得することを目指す.このための第1歩として,本稿では,線状の柔軟物体の2次元平面上での操作に対する静止形状を再現する処理について述べる.具体的には,線状の柔軟物体の伸びや曲げに対する特性を1次元mass-springモデルを用いて表現し,モデルが観測形状を静止・安定状態として持つようにモデルパラメータの値を定める.本手法を用いて実際のひもの形状を再現する実験を行い,適切なパラメータが獲得できることを確認した.
著者
安彦 智史 加藤 諒 北川 悦司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.535-543, 2020-03-15

近年のインターネット社会では,SNS(Social Networking Service)の利用による薬物売買や児童ポルノ,自殺幇助といった様々なサイバー犯罪が問題視されている.特に薬物売買は,インターネットの匿名性を利用した売買手法について潜在化や巧妙化が進行しており,平成29年では薬物利用による検挙人員の約半数は青少年であった.そのため,厚生労働省では,警察庁と連携し,有害情報をフィルタリングするシステムの導入を促進しているが,検挙人員の低下にはつながっていない.さらに公開型のSNSを中心に,薬物売買を示唆するアカウントが頻繁に作成されているため,個別に対応するだけでは根本的な解決につなげることは難しいという課題がある.そこで,本研究では,特に重要度が高いとされるマイクロブログを対象に,機械学習を用いて薬物売買を行うユーザの自動抽出を試みる.さらに,ユーザ間の関係から,薬物売買に興味があるコミュニティを包括的に把握可能なシステムを開発する.実証実験の結果,薬物売買に関連するユーザを高精度に抽出し,ユーザの有害判定やネットワークの可視化を実現できることを証明した.
著者
阪井 誠 中道 上 島 和之 中村 匡秀 松本 健一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.2575-2586, 2003-11-15

WebTracerはWebサイトをブラウズするユーザの視線と操作の記録,再生,分析を支援するユーザビリティ評価環境である.WebTracerは,ユーザがどこを注視しつつ操作を行ったかをコンパクトに記録することが可能である.評価実験の結果,WebTracerは既存のビデオ圧縮方式であるMPEG-2やMPEG-4に比べ1/10から1/20のデータサイズで,Web操作画面を記録し再生することができた.また,Webページのメニューが2カ所に分かれている場合は注視点の移動速度が速かったなど,視線とユーザビリティが関連している可能性が示された.WebTracerを用いれば,ユーザビリティの共同研究や,ユーザビリティ評価者と開発者の間でデータ交換することが可能になる.また,視線データを利用して問題のあるページを容易に探せるなど,ユーザビリティ評価を効率的に支援できる可能性がある.
著者
大鐘 勇輝 榎堀 優 梶 克彦
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.145-157, 2023-01-15

医療技術の発達による寿命の延伸と,これにともなう高齢化によって介護業界の人手不足が社会問題となっている.高齢者介護施設では日常生活の介助のほかに,健康維持を目的とした活動量の把握・管理が求められる.そこで本研究では,車椅子使用者を対象とした低コストなモニタリング手法を目指し,BLEビーコンを用いた自走・介助の判別および,活動量の推定手法を提案する.BLEビーコンから発信される電波は,距離の二乗に反比例して減衰するため,受信機との距離によって受信電波強度は変化しやすい.そこで,介助者に取り付けたBLEビーコンの受信電波強度が,各シチュエーション(介助者がいない,介助者が車椅子を押す,介助者が近くを通る)によって異なる特徴を,自走・介助の推定に,車椅子の車輪に取り付けたBLEビーコンの受信電波強度が,車輪の回転によって変化する特徴を,活動量の推定に用いた.評価の結果,自走・介助の推定は93.0%の精度で,活動量推定の指標となる車輪回転数の推定は100.0%の精度で推定できた.
著者
佐藤 正幸 中村 次男 畠中 浩行 冬爪成人 笠原 宏 田中 照夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.868-879, 2007-02-15

次世代集積回路の規模は数十から数百のIP コアからなると予測されており,IP コアの流通が不可欠となる.しかし,製造元の異なる多種多様なIP コアの仕様を理解して集積化および各IP コアを使用することは非常に困難である.また,ますます高精度化する処理データに対し,柔軟に対応しようとして,単にスケーラブルなアーキテクチャを用意しても,回路やソフトウェアの変更をともなうのでそのIP コアの詳細な仕様を理解することが不可欠となる.そのため,次世代の高集積回路においては多種多様なIP コア間インタフェースの標準化,再利用性,使用容易性および拡張性などが求められる.そこで,処理に必要なデータをIP コアに与えるとデータの長さに合った処理をIP コア内で判断し,結果を返すという,処理精度に対してスケーラブルなアーキテクチャを持ったIP コアの設計法を提案する.設計過程におけるスケーラビリティではなく,設計成果物としてのIP コアそのものがスケーラブルであり,外部からの制御をまったく必要とせず,かつ処理データの長さに制限されない,まさに完全自立形IP コアの実現である.これにより,以上に述べた諸問題がいかに解決できるかを,多くの多項式からなりモジュール化が困難であった楕円曲線暗号アクセラレータに,可変長鍵に対応可能なIP コアとして適用できることを示し,提案する設計法の有効性を検証している.
著者
吉高 淳夫 松井 亮治 平嶋 宗
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1696-1707, 2006-06-15

映画やテレビドラマといったコンテンツにおいて,アクセスの柔軟性・多様性を実現するためには,特定の雰囲気や印象を強調する演出,すなわちコンテンツに埋め込まれた感性情報を検出し,それを反映させることが重要である.様々な演出技法を述べた「映画の文法」では,ズームやドリーなどのカメラワークは,ある場面の雰囲気や印象を強調するための重要な演出手法として位置づけられている.カメラワーク検出に関する先行研究では,映像主体の視覚上の変化という観点ではほぼ同様であるが演出意図が大きく異なる,ズームイン?キャラクタドリー,ズームアウト?プルバック間の弁別ならびにそれらの検出を,動物体の存在を前提として十分な精度で検出することは未解決であるため,カメラワークによる演出を検出できない.本論文では,上記カメラワークを区別して検出することにより,カメラワークによる演出効果により映像に込められた感性情報を抽出する手法を提案する.さらに,動物体存在下で上記カメラワークを検出,弁別し,カメラワークに基づく演出,すなわち感性情報を検出するという目的に対する提案手法の有効性を評価した.
著者
三好 克彦 山本 強 永山 隆繁
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.1829-1843, 1993-08-15

北海道大学は、1989年より3か年計画でキャンパスLAN HINES(ハイネス)の構築を行った。ハイネスは、北海道大学における情報のインフラストラクチャとして位置付けて、教育研究のみならず、大学事務のOA化にも利用できるものとして計画された。大学に存在しているあらゆる種類の計算機を接続できるよう、マルチプロトコルを採用し計算機相互の接続とともに、電子メール等のサービス機能と、イメージ系の相互交信を可能とする基本的概念を具現した。基幹ネットワークとしてFDDI規格の双対モードの光ファイバを4リング張り巡らし、各部局はイーサネットで接続している。キャンパスで多数使われているパソコン等も、RS232Cで接続できるようにして、誰でもが使いやすい環境を実現した。函館にある水産学部との間は、高速ディジタル回纏で接続し、全学の一体化に大きく貢献している。さらにネットワーク管理の省力化を図るため、ハイネス全体の管理を1か所で行えるよう、新たに開発した集合分散管理方式を使用している。アドレス管理は、1992年4月から学術情報 ネットワークの一つとしてインタネット・バックボーンが動き出したので、世界と共通の墓盤なので重要である。このため、独特な簡単で確実なアドレス管理方式を考え出し、効果を上げている。
著者
後藤 真孝 吉井 和佳 藤原弘将 Matthias Mauch 中野 倫靖
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1363-1372, 2013-04-15

本論文では,音楽音響信号理解技術によって音楽の聴き方をより豊かにするための能動的音楽鑑賞サービスSongleについて述べる.従来,研究開発段階の音楽インタフェースや技術を,日常生活で人々に使ってもらうのは容易でなかった.Songleでは,Web上で人々に能動的音楽鑑賞インタフェースを体験してもらうことで,音楽鑑賞がより能動的で豊かになる質的な変化を日常生活で起こすことを目指す.そして,Web上の任意の楽曲に対して楽曲構造,階層的なビート構造,メロディライン,コードの4種類の音楽情景記述を自動推定して可視化することで,それを見て再生したユーザの音楽理解が深まることを可能にする.しかし,自動推定では誤りが不可避である.そこで効率的な誤り訂正インタフェースをWeb上で提供し,誤りを人手で自発的に訂正する貢献を促す.そうした不特定多数による訂正がユーザ体験の改善に結び付くことで,Songleのさらなる利用を促していく.
著者
Naoki Umeda Naoto Yanai Tatsuya Takemura Masayuki Okada Jason Paul Cruz Shingo Okamura
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, 2022-12-15

Border gateway protocol (BGP), which is known as a backbone protocol of the Internet, is constantly the target of many hijack attacks. To combat such attacks, many extensions of BGP have been developed to make BGP more secure. However, to perform experiments to evaluate their performance, most BGP extensions require the utilization of platforms, such as testbeds, with high operating costs. In this paper, we propose Scalable QUagga-based Automated Configuration on Bgp (SQUAB), a lightweight evaluation tool for protocols under development and for protocols that will be developed by a user with actual devices locally. SQUAB can configure BGP networks automatically, and thus it can significantly reduce the overhead of experiments on BGP and its extensions. Unlike conventional testbeds, SQUAB can set up BGP networks locally and its execution requires only a computational resource of a typical laptop computer. We used SQUAB in experiments to check the validity of functions based on network topologies in the real world. Our results show that SQUAB can configure a network composed of 50 routers within 52.9 seconds and consumes only 354.7MB of memory. Furthermore, as a SQUAB application, we evaluate route convergence in networks mixing BGP and BGPsec and then show that route selection differs due to BGPsec while the convergence time is stable.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.30(2022) (online)DOI http://dx.doi.org/10.2197/ipsjjip.30.829------------------------------
著者
Xuping Huang Shunsuke Mochizuki Katsunari Yoshioka
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, 2022-12-15

IoT malware Mirai and its variants continue to evolve and their activities consume network resources, particularly radio resources. This paper proposes a method to identify connection types and estimate the wireless uplink speed of malware-infected hosts observed by IoT honeypot by using the Connection Type Database of Maxmind's GeoIP2, a well-known industrial resource for IP address related information, and Network Diagnosis Tool (NDT) database, a measurement data set of the uplink speed of various networks. The proposed Mobile Network Identification method divides IP addresses into IP ranges assigned to each Autonomous System (AS), and then employs the NDT database based on the IP ranges. We analyzed the infected hosts observed by IoT honeypot to assess and validate the precision of the proposed technique. Our method estimates the maximum average uplink speed of the infected cellular host to be 40.6Mbps, which is between two reference measurement results of cellar networks, indicating the adequacy of the proposed method.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.30(2022) (online)DOI http://dx.doi.org/10.2197/ipsjjip.30.859------------------------------
著者
吉高 淳夫 西田 謙太郎 平嶋 宗
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.1467-1476, 2009-05-15

人の視線には,興味や関心などの心的な状態が現れることが知られている.このため,視線からこれらの情報を抽出し,人とコンピュータとのインタラクションを円滑にする視線インタフェースや,インタラクティブシステムの操作性に対するユーザビリティ評価で利用する試みが行われている.しかしながら,傾注状態(何かを見ている状態)の検出に関しては,傾注の有無を視線の停留時間により判別するにとどまっているのが現状である.傾注には,対象が単に視界に入っている状態,視界中から興味の対象となる物体を探す状態,特定物に傾注して詳細な情報を得る状態など複数の状態があると考えられ,傾注の状態をより細かく識別することは視線に基づくインタラクションの高度化に貢献すると考えられる.本論文では,傾注状態をさらに分類して認識することを目標とし,複数の注視状態があることが知られている絵画鑑賞活動に着目する.絵画鑑賞における眼球運動には,視界中から興味の対象となる物体を探す「拡散的探索」と特定物に傾注して詳細な情報を得る「特定的探索」がある.本論文では注目時の状態のうち,「特定的探索」時の視点を検出する手法について検討し,停留時間に加えて停留の発生頻度を用いる検出法について考察した.さらに,この検出手法を実装し,小規模ではあるが実験的に本手法の有効性を確認し,本手法が傾注状態を複数の状態に分類できる可能性を示した.
著者
小久保 卓 小山 聡 山田 晃弘 北村 泰彦 石田 亨
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.1804-1813, 2002-06-15

いまやインターネットは現代社会の中に急速に浸透しており,そのサービスの中でも特にWWW(World Wide Web)は新しいメディアとしてその情報量を増大させている.しかしながら最も一般的なWWW情報検索手法である検索エンジンは,必要な情報を得るためにある程度の知識や経験が必要とされ,多くの初心者にとって使いこなすのは容易ではない.こうしたWWW情報検索における問題の解決法の1つとして,ドメインを限定した専門検索エンジンの提供があげられている.そこで本論文では専門検索エンジンを構築するための新しい手法として``検索隠し味''を用いた手法を提案する.これはユーザの入力クエリに対しある特定のキーワードを追加すると,汎用検索エンジンの出力のほとんどがドメインに関係するWebページとなるという経験則を利用したものである.そして機械学習の一種である決定木学習アルゴリズムを元にWebページ集合からキーワードのブール式の選言標準形として検索隠し味を抽出するアルゴリズムを開発した.さらに本手法を料理レシピ検索に適用し評価実験を行うことで,その有効性の確認を行った.