著者
大澤 香奈子 内藤 章江 小町谷 寿子 石原 久代 橋本 令子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 行動と色には結びつきが見られ,色を利用し生活行動を助けることはユニバーサルデザインを考えるうえで有用であると考える.既に捉えた,人が暗黙裡に抱く色の象徴性の共通認識の傾向の中で,左右を象徴する色については20%以上の一致が見られた.本研究では,実際の生活アイテムにあってもそれが認識されるかどうか,行動と色の結びつきを実験的に検証し,色の有効な利用方法を検討する.<br><b>方法</b> 左右の判断を躊躇することがあるアイテムに色を入れた試料を用いて,左右を判断・評価する調査実験を行った.試料には6アイテム,8色(v2,v12,v18,p2,p12,p18,W,Bk)を用いて,計48試料を用意した.被験者は18~21歳の女子学生150名,印刷した試料を1つずつ提示し,7段階で評価してもらった.被験者には併せて試料に用いたアイテムの使用経験を回答させた.<br><b>結果</b> 全てのアイテムにおいて,右との回答がv2の色のついた試料で最も多く,既に行った色票での調査結果と合致する結果であった.トーンについてはビビットトーンに比べ無彩色やペールトーンでは判断があいまい或いは判断に至らない傾向が見られ,色相やトーンが左右の判断に影響していることがうかがわれた.この検証結果から,他の生活行動を助ける色を判断・評価を行う実験へと展開するに要する知見が得られた.
著者
都甲 由紀子 朝比奈 はるか 王 立松 王 東 張 穎君
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

目的:中国雲南省山岳地域において少数民族の彝族が纏う民族衣装の装飾方法に関する伝統知識や技術、その伝承について調査する。<br>方法:2011~2013年にわたり雲南省各地で3回のフィールド調査を行った。 街中で手刺繍をしたり手刺繍の民族衣装を身につけていたりした人々や、手刺繍商品販売会社の社長、山間部の村人らに手作りの衣装に関してインタビューを行い、現状を把握し記録をとった。村人の踊りや衣装の様子、そして演者が現地で刺繍職人から技術指導を受けている様子などの動画や画像を撮影し、技術につき分析した。<br>結果:中国雲南省の少数民族の中で最も人口が多いのが彝族である。雲南省の中だけでも彝族はいくつものグループに分かれ、それぞれが形、色などにおいて特徴をもった民族衣装を身に着けていた。彝族の民族衣装には多くの刺繍が施されているのが特徴であり、彝族の宗教観がはっきりした色使いと輪郭をもった刺繍、すなわち題材のモチーフ化という形に表れており、自然写実を好む漢民族との大きな違いであることが今回の調査の結果確認された。また刺繍の技術は母から娘に伝承されてきたが、現在は市場において手刺繍が施されたパーツが販売され、ミシン刺繍が施された民族衣装もあり、技術の伝承も行われなくなりつつある。しかし道端や公園で刺繍をする少数民族女性の姿はよく見かけ、刺繍などの針仕事が今なお日常の中に存在していることが確認された。
著者
甲斐 彩香 川田 菜穂子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 住宅金融における市場化や規制緩和,ライフコースの多様化や雇用の不安定化といった社会経済状況のもと,家計における住居費負担や住宅ローンの利用がどのように変化しているのかを明らかにすることを目的とする. <br><b>方法</b> 家計における住居費負担について,総務省が実施する全国消費実態調査や家計調査等の公刊統計を用いて,その動向を明らかにする.また,著者らが福岡県と大分県を対象に実施した住宅ローン利用世帯へのヒアリング調査をもとに,住宅ローン利用の実態とそのリスクについて検討する.<br><b>結果</b> 近年,住宅ローンを利用した住宅取得が拡大している.また1990年代以降,可処分所得に占める住居費の割合は徐々に増加しており,家計における住居費負担が高まっている.住宅ローン利用世帯の事例分析からは,多くの世帯が,低金利であることを理由に変動金利型の住宅ローンを選択していること,頭金なしの住宅取得を経験していること,住宅取得後に所得の低下を経験していることなどが明らかになった.また,完済年齢が高齢期におよぶが,繰り上げ返済が計画的に実施されていない事例が多いことも明らかになった.住宅ローン利用のリスクは拡大している。
著者
和田 佳苗 佐藤 祐子 松井 友美 谷口(山田) 亜樹子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.72, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 塩辛は魚介類の肉や内臓などに調味料を加え熟成させることで、自己消化作用により独特の旨味をもつ食品である。本研究では塩辛の中でも馴染みのあるイカの塩辛について、製造工程で加える副材料が内臓の消化酵素であるアミラーゼ、プロテアーゼ活性に及ぼす影響を検討した。方法 生食用スルメイカから取り出した肝臓に2倍量の生理食塩水を加えて3分間ホモジナイズした後、遠心分離(10000rpm,20分間)して得られた上澄みを試料液とした。この試料液についてpH、タンパク質量(Protein Assay Papid Kit,和光純薬)、α-アミラーゼおよびβ-アミラーゼ(α-,β-Amylase Assay Kit,Megazyme) 、プロテアーゼ活性(ヘモグロビン基質)を測定し、比活性を求めた。さらに試料液に塩辛製造に用いられる調味料(食塩・みりん・醤油・酒)を添加し同様に測定を行った。結果 スルメイカの肝臓から抽出した試料液中のpHは6.5、タンパク質量は約130mg/mLであった。またα-アミラーゼおよびβ-アミラーゼの比活性はそれぞれ約4.7×103units/mg、5.6×103units/mg、プロテアーゼの比活性は約3.6×10units/mgであった。プロテアーゼの比活性は調味料無添加を100としたとき、食塩、みりん、醤油添加で各々87、酒添加で92であった。α-アミラーゼおよびβ-アミラーゼについても同様に測定を行い比較検討した。
著者
菊地 篤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.64, 2003 (Released:2004-05-25)

【目的】本研究では、子どもと関わる大人の中で頻繁に話題にあがる「第一反抗期」が、子どものいつ頃のどのような状態を指しているのかを確認し、第一反抗期の子育てにおける親の対応について、事例を通して検討する。【方法】認可外保育所の保育士と対象児の母親による、第一子R(男)の記録について、第一反抗期の子どもの姿や大人(特に親)の対応を分析する。なお今回用いる資料は、Rの反抗的態度が頻出し始めた1歳10カ月~認可外保育所保育終了時の3歳8カ月の1年10カ月間の記録である。【結果】第一反抗期とは、子どもの自己表現手段のひとつであり、その態度はきょうだいの有無などの外的因子と個々の気質などの内的因子の双方が影響し、多様であることが解った。その出現時期は、0歳児から既にみられる拒否や抵抗という態度から、2歳過ぎの不満や不安の表現まで、幅が広い。子どもの表現・態度を自己主張とするか、反抗的態度ととらえるかは、子の発達への理解度、子と離れる時間の有無、精神的ゆとりの有無などによって変容する親の主観に左右されると考えられ、また、子どもの反抗的態度の激しさと、親の子育てに関する悩みやストレスの多さとは、必ずしも一致しないことがいえた。次に、Rの記録を発達段階を追って(1)反抗の始まり、(2)弟の誕生と反抗の多様化、(3)自立の進行と反抗、の三段階に分けて検討した結果、次の実態が捉えられた。・弟の誕生の前後で、反抗の表れ方が顕著に異なる。・日本語の文章力がつくとともに反抗の仕方が複雑化する。・反抗する相手は、「甘え」が許されると自己判断した特定の大人である。今後の課題は、今回の対象児Rとともに弟の反抗的態度も合わせて追跡し、きょうだい関係と第一反抗期についての探求である。
著者
松尾 量子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b>&nbsp; 現在、日本各地で観光や地域の活性化を目的としてマスコット・キャラクターが活用されている。今回、山口県のマスコット・キャラクターである「ちょるる」のためのボーイスカウト衣装を制作する機会を得たことから、「スカウトちょるる」の衣装制作を通して、マスコット・キャラクターが着用する服飾の意味や役割をさぐることを目的とする。 <br> <b>方法</b>&nbsp; 本研究は、2013年の日本ジャンボリー開催に伴って、山口県の世界ジャンボリー開催支援室から山口県のマスコット・キャラクター「ちょるる」のための衣装制作の依頼を受けて実施したものである。「スカウトちょるる」のヴィジュアル・イメージをもとに着脱が容易で動きやすいことを重視して制服は上下一体型のつなぎとし、ワッペンには、県花である夏みかんの花をモティーフとしたデザインを考えた。帽子は「ちょるる」の頭部の形状と全体のバランスを考慮したデザインである。<br> <b>結果 </b>最初に制服のみを制作して、日本ジャンボリー開催の100日前イベント(2013年4月21日)において「スカウトちょるる」をお披露目した。その後7月までの間に装飾品や帽子の制作を行い、7月12日に「スカウトちょるる」としての完成形を披露した。今回の衣装制作を通して、マスコット・キャラクターにおける服飾の意味とキャラクターらしさの関わりについての検証を行うことができた。<br>
著者
吉岡 慶子 福地 乃理子 横山 次郎 戸渡 資英
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.157, 2005 (Released:2005-12-08)

【目的】スポンジケーキの膨化は生地の中に混ぜ込まれた卵泡が包含する空気の熱膨張や水蒸気の蒸気圧によってスポンジ状の骨格が形成され、固定されるもので、ケーキの性状を左右する。本研究では、2種類の鶏卵を用い、スポンジケーキを調製(共立て法、別立て法)し、スポンジの膨化や物性測定、気孔構造の観察および官能評価を行い、食味に及ぼす影響について検討した。【実験材料および方法】使用卵はヨード強化鶏卵(A)と白色レグホーン鶏卵(B)で、産卵後2、3日経過、卵黄係数:0.49-0.50、濃厚卵白率:74.16-62.71%、卵白のpH8.8-8.9、卵黄のpH5.9の新鮮卵であった。ケーキの材料配合は小麦粉:砂糖:卵=100:100:100の同割合とし、共立て法(A1、B1)は全卵に砂糖を加え、ハンドミキサー(MK-H3)で泡立て、小麦粉を加えて混ぜて生地を調製した。別立て法(A2、B2)は卵白を泡立て、別に、卵黄に砂糖を混ぜて合わせ、小麦粉を加えて混ぜ生地を調製した。170℃、27分間焼成した。ケーキの表皮、内相の測色、膨化率、物性値測定およびSEMによる気孔構造を観察した。ケーキの食味は外観、風味・味、口ざわり、きめ、硬さ、弾力、口溶けのよさおよび総合評価の項目について5段階評点尺度法で官能検査を行った。【結果および考察】スポンジケーキの膨化率は共立て法(A1、B1)325、310%であり、別立て法(A2、B2)では300、311%であった。テクスチャー測定による硬さは共立てではA1、別立てではB2が若干高値を示した。ケーキの気孔構造の形成は、共立てでは、球状の気孔が連続し、気泡が合一して破泡せずに膨張したスポンジ状構造が観察され、気孔壁には小孔が認められた。別立てでは全体的に気孔が小球化し、一部には気孔層の崩壊もみられた。官能検査では、表皮の焼き色、内相の色でA1とB1がよいとされ(p<0.05)、また、A1、B1間では卵のよい風味・味があるとA1が評価された(p<0.05)。総合評価ではA1、A2、B1、B2の順に評価された(p<0.05)。よって、Aの鶏卵が比較的良好な食味評価を得たことはケーキの物性値や気孔構造の所見を反映するものであった。
著者
足立 里美 阿久澤 さゆり 玉木 有子 松森 慎悟 中村 雅英 澤山 茂
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.136, 2004 (Released:2005-04-02)

【目的】 わらび澱粉はわらびの地下茎から抽出され「わらび粉」として流通しており、わらび餅などに珍重されている。しかし、生産量が少なく高価なため、さつまいも澱粉が代替品として使用されている。演者らは、数種類の澱粉の理化学的性質およびレオロジー的性質について報告してきたが、わらび澱粉に関する報告はあまり見られない。そこで本研究では、わらび澱粉の糊化特性と糊液のレオロジー的性質を検討した結果を報告する。【方法】 わらび澱粉は、広八堂(鹿児島県)で製造された粗澱粉を、常法に従って精製して試料澱粉として用いた。対照としてさつまいも澱粉およびくず澱粉を用いた。アミロペクチンの鎖長分布はHPAEC-PAD法 (Dionex社製DX-500) で測定し、DSCにより糊化特性を測定した。また、SEC-MALLS (昭和電工社製:Wyatt Tecnology社製) により重量平均分子量および慣性半径を測定した。糊液の動的粘弾性測定はRheoStress1 (Haake社製) を用いた。【結果】 DSCによる糊化終了温度は、わらび澱粉が70.8℃と最も低く、次いでくず澱粉78.5℃、さつまいも澱粉83.8℃であり、アミロペクチンのDP6-12の短鎖長の割合が多いほど糊化ピーク温度が低い傾向であった。また、糊液を遠心分離後、上澄み中に溶解した糖量を比較すると、わらび>さつまいも>くずの順で糖量が多く、さらに溶液中の重量平均分子量および慣性半径を測定したところ、わらび澱粉糊液は著しく大きかった。動的粘弾性からみたゲル化濃度はわらび澱粉が最も低く、貯蔵弾性率の濃度依存性より3種のゲル構造の違いが示唆された。
著者
小野寺 美和 谷 明日香
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<br><br><b>目的</b>&nbsp; 夜間の交通安全用品として反射板が多く市販されているが,デザイン性に欠け利用する人が少ない.県警の報告によると,歩行中の交通死亡事故の夜間割合は昼間の約2倍の発生状況であり,特に高齢者に多く見受けられる.宮城県警では委託された業者が,一件ずつ反射板(靴のかかと用)を配って歩いているのが現状である.そこで,本研究では太陽光や蛍光灯の光を蓄え暗闇で光を放つ蓄光糸に着目し,障害の有無や年齢,体型に関わらず,どんな人も安心,安全に楽しめる衣類の設計指針の提案をするための基礎的研究として,蓄光糸の力学的特性および表面特性を明らかにした.<br><br><br><b>方法 </b>蓄光糸(A-Muse(製))の特性を電子顕微鏡による観察および力学特性の測定により明らかした.さらに蓄光糸を用いて織物(平織,綾織,朱子織)を試作し,力学特性および表面特性測定を行うとともに輝度の測定を行った.また,試作品として,キーホルダーのホルダー部分に三つ編みした蓄光糸を用いることで,蓄光糸の衣服への活用への足がかりとした.<br><br>&nbsp;<b>結果 </b>蓄光糸はポリエステルとポリプロピレンの芯鞘構造であることが明らかとなった.蓄光糸の強度はポリエステル糸と同程度であり,蓄光糸を用いた布は優れた平滑性があることが明らかとなった.また,蓄光糸の織り方により輝度は異なることが明らかになった.<br>
著者
長野 隆男
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.219, 2005 (Released:2005-12-08)

目的)豆腐の製造において,異なる種類の凝固剤が使用される。本研究では,豆腐の凝固機構が異なる,塩化マグネシュウム(MgCl2)とグルコノデルタラクトン(GDL)を凝固剤に用いて豆腐を作製し,力学物性,保水性,ゲル構造について調べた。方法)一晩浸漬した大豆に蒸留水を加えて(豆に対して5倍量)ミキサーにかけ,生呉を絞り生豆乳を得た。生豆乳を,96℃,5分間加熱してすぐに室温まで冷却し,豆乳を得た。得られた豆乳に蒸留水を加えて,様々な濃度の豆乳を調製した。濃度を調製した豆乳に0.3%の凝固剤を加え,GDLを添加した豆乳は85℃,MgCl2を添加した豆乳は70℃で,それぞれ30分間加熱をおこない豆腐試料を得た。力学物性は破壊試験,保水性は遠心法,豆腐のゲル構造は共焦点レーザー走査顕微鏡による観察をおこなった。結果)豆乳固形分が,MgCl2塩添加豆腐では3.7%,GDL添加豆腐では10%以上の濃度で豆腐を形成するようになり,GDL添加豆腐の方が低い豆乳濃度で作製できた。MgCl2とGDL塩添加豆腐の両方とも,豆乳固形分の増加に伴い,力学物性値(破断応力,破断歪,ヤング率)と保水性は高くなり,タンパク質のネットワーク構造は密な構造となった。豆乳濃度が同一の条件でMgCl2とGDL添加豆腐を比べると,GDL添加豆腐の方が,力学物性値,保水性は高い結果となり,タンパク質の凝集物は小さくより均一なゲル構造であった。ゲル構造は,豆乳の濃度を低下させて豆腐を作製すると,より明らかになった。現在,豆腐の力学物性とゲル構造の関係を,詳しく解析しているところである。
著者
大曲 希実 安田 みどり 日野 まど香 大渡 瞳
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.68, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 一年草の水草であるヒシは、アジア地域に広く自生している。ヒシの実は、食用として食されるだけでなく、昔から婦人病などの民間薬や漢方薬としても用いられてきた。我々はヒシの実の外皮の有効利用を目的として、外皮に含まれるポリフェノール成分に注目し、その化学的特性や生理機能性について調べた。方法 乾燥、粉砕した佐賀県神埼市産のワビシ(Trapa japonica)の外皮を60%アセトンにて抽出し、カラムクロマトグラフィーにて分取し、ポリフェノール画分をさらにHPLCにより分取・精製を行った。得られたポリフェノールをLC/MSおよびNMRにて測定し、ポリフェノールを同定した。これらのポリフェノールについて、温度、pHに対する安定性を調べた。さらに、生理機能性として、抗酸化作用、糖質分解酵素の阻害作用について調べた。結果 ヒシ外皮のポリフェノールを分取・精製し、主要な3つのポリフェノールを得た。これらは、加水分解型のポリフェノールで、eugeniin、1,2,3,6-tetra-O-galloyl-β-D-glucopyranose、trapainと同定した。温度に対しては、trapainが熱に弱いことが明らかになったが、その他については熱に強いことが明らかになった。また、pHについては、pH8以上では、酸化されるため、不安定になることがわかった。さらに、3つのポリフェノールは、高い抗酸化性を有し、糖質分解酵素の阻害作用を示した。
著者
野崎 有以
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.117, 2015 (Released:2015-07-15)

目的 生活学は、考現学の創始者として知られ評論家的な立場から家政についても論じた今和次郎によって提唱されたとされている。生活学は今和次郎の家政論における大きな特徴のひとつとも言える。多くの先行研究では、今和次郎は1951年に生活学を提唱したとされているが、それ以前より生活学の構想について言及しており、生活学の提唱時期については先行研究によって大きな開きがある。生活学の成立時期のずれを探ることによって、生活の捉え方の変化について検討していくが本発表の目的である。方法 主に今和次郎の生活学や家政に関する著作や工学院大学図書館今和次郎コレクション所蔵資料などをもとに考察した。結果 生活学の成立時期のずれについてはいくつかの理由が考えられた。ひとつには今和次郎の生活学などを含む家政思想が、生活科学などの戦時期の思想と結びつくおそれがあったということが挙げられる。しかし、そうした否定的なものだけではないとも考えられた。祐成保志や山森芳郎らの先行研究やその他の資料から、今和次郎は娯楽や休養などの側面から生活を把握する独自の立場をとっていたため、生産優先の戦時的な生活研究と余暇と消費を重視する戦後的な生活研究が対比されるなかで、彼の生活学が「戦後的」なものであるとの判断が定着したことが要因のひとつであることや、戦後の家政学における政策的な面についての疑問から再度生活学を提唱する必要が生じた可能性が指摘された。
著者
久保 加織 玉記 加奈子 堀越 昌子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.21, 2006 (Released:2008-02-28)

【目的】ふなずしは塩漬けの後、飯とともに長期間熟成させ、製造されるが、食されるのは魚体であり、漬け床である飯はほとんど利用されない。しかし、この飯には魚から溶け出した成分の存在が考えられる。本研究では、飯の食品材料としての価値を検証し、洋菓子への添加について検討した。【方法】ふなずし飯は大津市内のふなずし専門店から漬け込み期間の異なる2種類を供与されて用いた。ふなずし飯およびそれから調製した菓子の成分として、水分、灰分、およびカルシウム、鉄を常法通りに、塩分をモール法により測定した。脂質をBright and Dyer法により抽出し、メチル化後にガスクロマトグラフィーに導入することにより脂肪酸組成を調べた。菓子の嗜好性については官能検査により判定した。官能検査は、外観、香り、食感、味、総合評価の5項目について5段階評価法で行った。【結果】 ふなずし飯には、魚由来と考えられるカルシウム、鉄、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペンタエン酸(IPA)が豊富に含まれていた。飯を水中で撹拌、ろ過することによって塩分は4.5%から0.7%にまで減少し、これを脱塩飯として用いた。なお、pHは脱塩前後でほとんど変化せず3.8であった。飯を添加した菓子として、クッキー、チーズクッキー、バターケーキ、チーズケーキを調製して官能検査を行った結果、最も評価が高かったのはクッキーであリ、飯の含有率では20%が最も好まれた。飯の漬け期間の長さは官能評価にほとんど影響しなかった。脱塩飯を添加したクッキーは、カルシウム含量を98mg%と通常のクッキーの約5倍量含み、DHAやIPAも微量ではあるが含んでいた。
著者
大村 知子 山内 幸恵
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.96, 2006 (Released:2008-02-28)

【目的】ローライズパンツは、最近若者を中心に利用されているが、その股上の浅さゆえに座位への動作により後ベルトが下方にずれ、下着が見えてしまうという問題がある。本研究では、パンツの股上丈、身体寸法、姿勢の違いによる適合性や動作適応性への影響などを着用実験により明らかにする目的で考察を試みた。【方法】実験時期は2005年10月から11月、被験者は女子大学生20名。実験衣はサイズが9ARで股上丈が25cm・23cm・21cm・19cm・17cmの5種をシーチングで試作。官能評価は立位・椅座・蹲踞・床座姿勢時における適合性と立位から座位への動作適応性について、外観の評価は立位姿勢時におけるシルエットの評価について。動作による後ベルトの「ずれ」は三次元動作解析より算出。【結果】 (1)各部位の適合性において股上丈の浅いパンツほど「ゆるい」と評価した。適合性と動作適応性において股上丈21cmのパンツを「合っている」「動きやすい」と評価した。 (2)腰囲・胴囲寸法が小さい者は股上丈が浅いほどシルエットが「わるい」と評価された。 (3)椅座姿勢と比較して床座・蹲踞姿勢で有意な「ずれ」が認められた。官能評価で「きつい」と評価される場合に「ずれ」が多く生じた。
著者
篠原 久枝
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.161, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 月経は生理的な現象であるが,武谷雄二氏らの調査によると,調査対象者の3割の女性が鎮痛剤服用にも関わらず日常生活に支障をきたすほどの月経随伴症状に悩まされていると報告されている。そこで本研究においては,女子学生の月経随伴症状の実態と問題点,課題を明らかにし,今後の適切なセルフケアのあり方について考察することを目的とした。方法 M大学に在籍する女子学生を対象に,平成24年10月~11月無記名自記式質問紙を実施した。調査項目は月経随伴症状の実態や対処法,食生活・生活習慣などである。配布数252部,有効回答数195部,有効回答率は77.4%であった。倫理的配慮ならびに個人情報の保護については十分に留意した。結果 調査対象者の約半数が重度の月経痛を抱えていた。月経随伴症状16項目について因子分析を行なったところ,「痛み以外の身体症状」,「情緒的な症状」,「吐き気や痛み」の3因子が抽出された。これらの症状には,先行研究と同様に不規則な食生活が影響しているという結果が得られた。「布ナプキン」についての関心は,約2割しかみられなかった。月経随伴症状を抱えていても「がまんしている」という回答も多く見られ,望ましい食生活の指導や,マンスリービクスや布ナプキンなどのセルフケアの周知が課題であろう。
著者
野﨑 久美 柳田 紗矢佳 田中 響子 佐藤 由衣 清家 正博
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.8, 2015 (Released:2015-07-15)

【目的】 近年、ストレスを抱えている人口が増加しており心身の健康問題に直結している。この問題は様々な年齢層で確認されており、大学生もその一角に当てはまると考えられる。ストレスを受けると酸化ストレス状態となり、癌や生活習慣病を引き起こしやすくなる。抗酸化作用を持つ栄養素としてポリフェノールが挙げられ、お茶類に多く含まれる栄養素であることから学生でも手に取りやすく市場も安定している。本研究では、女子短大生が抱えるストレスについて調べると共に、ウーロン茶を摂取することによる酸化還元活動比率の変化について検討することを目的とした。 【方法】 対象者は、女子短大生57名とし無作為に分類し、酸化還元確認計を用いて試料の摂取前後に測定を実施した。使用した酸化還元確認計は、唾液の酸化体と還元体の活量比率に基づき測定をしているものであった。試料については、水及びウーロン茶をそれぞれ100ml又は200ml摂取させた。摂取後の測定は、試料を飲み終えてから1時間とし、その間は机上で出来る作業を行わせた。 【結果】 摂取前の結果では、ストレスを感じている群において唾液の酸化度は有意に高値を示したが、ウーロン茶の摂取習慣や痩せの有無は酸化度に影響を与えなかった。また、摂取1時間後の結果では、ウーロン茶の摂取により酸化度は改善傾向を示し、特に200ml摂取では対照群に比べて有意に減少した。
著者
藤田 沙南 村上 陽子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.58, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 米は、我が国において唯一自給可能な穀物である。しかし、食の多様化や米から小麦粉食品への移行拡大等により、米の生産量・消費量はともに減少している。農林水産省では米の利用拡大を目指し、小麦粉の代替として、パンや麺類などへの米粉の利用を推進している。米粉パンについては様々な研究が行われているが、製パン性の低さが課題として挙げられる。そこで本研究では、添加する米の形状として米飯に着目し、米の種類が製パン性に及ぼす影響について検討した。 方法 米飯パン用の米は、中アミロース米5品種(キヌヒカリ,コシヒカリ,ヒノヒカリ,ハツシモ,ササニシキ)、低アミロース米2品種(ミルキークイーン,おぼろづき)とし、いずれも精白米を用いた。食パンは中種法にて調整した。小麦粉を米飯で置換したものを米飯パンとし、小麦粉パンの乾物重量として、10~50%を置換した。加水量は、炊飯米の吸水量と合わせて180gとした。製パン性(比容積、物理特性、色彩構成)に関して得られたデータは、分散分析法(Tukey法)により有意差を検討した。 結果 米飯を10~50%まで添加した場合の比容積は、米飯パンにおいていずれの品種も、米の添加量の増加に伴い比容積が低下することが示唆された。また、低アミロース米は同置換の場合、中アミロース米よりも高い比容積であった。