著者
庄山 茂子 川口 順子 栃原 裕
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, pp.200, 2008

<B>目的</B> 色彩嗜好は、年齢、性、民族、地域、時代などにより差がみられ、色彩の感情には、個人の生活体験に由来する色彩感情、文化的色彩感情、普遍的色彩感情の3タイプがあるといわれている。今日、国際化、情報化が進む中、日本に住むアメリカ人女性と日本人女性の色彩嗜好にどのような違いがみられるか明らかにすることを目的とした。<BR><B>方法</B> (1)調査概要 1)試料:75色カラーチャート(10色相+7ト-ン、有彩色70、無彩色5、日本色研) 2)場所:長崎県、高知県 3)対象者:日本人女子学生25名(平均年齢22.0歳 SD±0.58歳)、日本在住のアメリカ人女性25名(平均年齢23.2歳 SD±1.63歳) 4)調査方法:面接法による質問紙調査 5)調査時期:2005年、2007年8月~9月、(2)調査内容:嗜好色、嫌悪色上位3位、1位の色についてSD法による5段階尺度でイメージ評価 (3)分析方法:単純集計、χ<sup>2</sup>検定、t検定、因子分析、一元配置分散分析。<BR><B>結果</B> 嗜好色では色相、トーンに、嫌悪色では色相に2グループの人数の偏りに有意傾向がみられた。嗜好色の色相では、Red Purpleに差がみられ、日本人は Red Purpleを最も好んだ。この背景には、流行色の影響が推察された。Blueは、2グループに好まれた。嗜好色のトーンでは、日本人はlightをアメリカ人はvividトーンを最も好んだ。嫌悪色の色相では、日本人は、Red Purple、Orange、Redをアメリカ人は Yellow, Yellow Greenを嫌った。嫌悪色のトーンでは、両グループともlight grayishトーンを嫌った。日本人はやわらかく、理知的、あっさりしたイメージの色を好んだのに対し、アメリカ人は強く、動的なイメージの色を好んだ。嗜好色では色相よりトーンにグループ間の違いがみられた。
著者
川嶋 比野 数野 千恵子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的</b><br> 演者らは前報(本学会第67回大会)で、青色の色相及び彩度を変化させた絵柄皿を焼成し、料理に与える影響を調査した。その結果、基準色とした青色(マンセル近似値4.9PB3.1/9.1)が最も食欲を増進させることがわかり報告した。今回、青色以外の単色絵柄皿と比較し、食欲増進の効果及び料理との相性を検証したのでその結果を報告する。<br><b>方法</b><br> 基準色の青色絵柄皿をデジタルカメラで撮影し、画像編集ソフトを用いて、色相を赤色方向に変化させた画像、緑色方向に移動させた画像を作成した。また、絵柄のない白色の皿も含め、計4色の皿の画像を用意した。料理は前報と同じ、給食で喫食頻度の高い料理を20品用意し、撮影して木目の背景、皿と共に合成画像を作成した。女子大生および中高年男女を対象に、各料理を盛り付けた4色の皿の写真を見比べ、それぞれどの程度食欲を増したか、7点評点法及び順位法によりアンケート調査を行った。<br><b>結果</b><br>全体の傾向としては、青色と赤色の評点が高かった。赤色は特に酢豚や焼売などの中国料理と相性が良く、青色よりも評点が高い場合もあったが、キウイフルーツやトマトのくし切りなど、相性の悪い料理もあった。青色は、どの料理とも相性が良く、相性の悪い料理は特になかった。緑色は白色に次いで評点が低いことが多く、あまり食欲を増進させる色とは言えなかった。また、全体的に白色の評点は低く、特に淡い色の料理や単色の料理と相性が悪かった。
著者
小池 恵 船木 絵美子 津田 淑江
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.62, pp.74, 2010

[目的]地球温暖化が進行する今日、世界規模での温室効果ガス排出量削減に対する活動が行われている。このような取り組みが行われている中で、家庭内でのCO<SUB>2</SUB>排出量削減に対する行動を起こすことも重要となってきている。そこで本研究では、湯を沸かす際のCO<SUB>2</SUB>排出量について検討した。様々な加熱方法、加熱条件、加熱器具によるCO<SUB>2</SUB>排出量の比較を行い、環境に配慮したカップ麺の食べ方について考察した。<BR>[方法]N社製カップ麺を試料とし、カップ麺調理時に必要な湯を沸かす際のCO<SUB>2</SUB>排出量を求めた。加熱方法はガス加熱およびIH加熱とした。やかんに17℃の水を入れ、水量・火加減の違いなど加熱時の条件を変え、沸騰(98℃)までのガス消費量および電気使用量を測定した。さらに沸騰ジャーポット、電気ケトルなどを使用して、沸騰までおよび保温時の電気使用量の測定も行い、CO<SUB>2</SUB>排出量を算出し比較した。<BR>[結果]学生26名を対象に、カップ麺1人前を作る際の水量および火加減を自由に設定させ、やかんでの湯沸し実験を行った。その結果、使用水量の平均値は850ml、火加減は強火で行った者が70%、中火では30%であった。またやかんの鍋底水滴の有無も確認し、水滴有りは19%であった。カップ麺に表示された1食分の使用湯量は300mlであり、蒸発量を考慮し1食分を作るには350mlの水量が必要であると考えた。以上の結果を経て、使用水量を湯沸し実験の平均値である850mlおよびカップ麺1食分作成時に必要な350mlの2種類に設定し、火加減とやかんの鍋底水滴の有無など加熱条件を変えた場合のCO<SUB>2</SUB>排出量を比較した。最もCO<SUB>2</SUB>排出量が少なかったものは、水量350mlの電気ケトルである事が明らかとなった。
著者
福井 典代 武本 歩未 大塚 美智子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.59, 2018

<b>目的 </b>服装評価についてはSD尺度やリッカート尺度を用いて一般的に測定されているが,官能量と布の物性値との関係を明らかにした研究は見られない。本研究では,一対比較法を用いて上衣のゆるみの見え方を測定して,布の力学特性との比較を行い,それらの関係性を明らかにすることを目的とした。<br><b>方法 </b>(1)ジョーゼット,デシン,トロピカル2種類,タフタの計5種類のポリエステル平織白布を使用した。ドレープ法による剛軟度の測定を行うとともに,KESを用いて引張り剛性,せん断剛性を測定した。(2)実験衣はハイウエスト切り替えのギャザーチュニックとし,5種類の布を用いて同一デザイン・サイズのチュニックを製作して人台に着用させた。衣服の大きさ,美しさ,好みの評価について,5段階尺度により女子大生20名を対象として調査した。分析はシェッフェの一対比較法中屋変法を用いて算出した。(3)剛軟度に着目し,衣服の見え方と布の剛軟度との関係性を求めた。<br><b>結果</b> (1)衣服の大きさについて一対比較により分析した結果,タフタ,トロピカル,デシン,ジョーゼットの順に小さく見えた。美しさと好みは大きさと反対の結果になった。(2)衣服の大きさに関する官能評価と布の剛軟度との間に正の相関関係が得られた。美しさと好みに関しては,負の相関関係となった。以上の結果から,ギャザーのある本実験衣では布が柔らかいほど体型が小さく,美しく見えるということが実証された。
著者
西本 由紀子 荒川 真衣 上野 勝代 梶木 典子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.256, 2009

【目的】バリアフリー新法が平成18年12月より施行され、公共交通機関におけるバリアフリー対策が進んでいる。その対象は高齢者・障害者等でありベビーカーでの子連れ(以下、ベビーカー利用者)は対象とされていない。しかしながら、実際にはベビーカー利用者は同様に行動制限を受けており、日常的な外出に支障をきたしている。事前のヒアリング調査でもベビーカー利用者の公共交通機関利用に対する消極的な意見が多く聞かれた。そこで本研究の目的はその理由を探り、今後の対策の基礎資料を作成することを目標とする。このことは同時に子育て支援対策にも意義があると考えられる。【方法】➀神戸市内の区役所で実施される4か月、1歳半健診で乳幼児保護者に対し、公共交通機関でのベビーカー利用実態についてのアンケート調査を行った。➁神戸市内の公共交通機関内において、ベビーカー利用者の観察調査、ベビーカー利用被験者による行動調査を行った。いずれも実施期間は、2008年10月~2009年2月である。【結果】ベビーカー利用者は、比較的混雑の少ない10時~16時に集中して公共交通機関を利用しており、常に周囲の視線を気にしている。電車車両内では、乗降扉付近に立ったままベビーカーを支えていることが多い。神戸市バスのノンステップバスなどでは、車イスと同様、ベビーカー設置スペースが設けられているが、そのことはあまり周知されておらず、利用したことがある例はわずかであった。
著者
藤本 純子 諸岡 晴美 渡邊 敬子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的 </b>過去の時代を代表する衣服は価値ある資料であり、その複製を制作することは非常に意義がある。本研究では、最もパターンの予測が困難な衣服の一部分を効率的に復元することを目的として、シルエット形成に及ぼすいせ分量の影響、およびシルエットと布の力学特性との関係性を明らかにした。さらに意図するシルエット形成のためのいせ分量の予測について検討した。 <b>方法</b> 厚さの異なる3種のシーチングおよびシルクタフタの計4種の布地を用いて、胸元に16.5cm丈の垂布状のケープカラーがついた身頃を制作し、ケープカラーの付け部分に10%のいせを入れた。また、薄地シーチングとシルクタフタについてはいせ分量を0%,5%,15%と展開し、計10点の試料を実験に供した。試料をボディに着せつけた状態で三次元計測装置によりスキャンし、その形状を採取した。得られたシルエットデータから形状計測ソフト(Body-Rugle)を用いて体積、断面積を特徴量として解析した。一方、布の力学特性をKESシステムにより計測した。 <b>結果</b> いせによって形成される衣服のシルエットを捉える手段として、三次元計測装置を用いることの有用性が確認できた。また、シルエットといせ分量、布の力学特性との関係について明らかにした。これらの研究成果は、歴史的に重要な衣服形状を復元するための基礎的データとなるとともに、意図した衣服のボリューム感を創出するための基礎データとなり得る。
著者
高橋 和雄 菅野 優子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.114, 2005

<b>[目的]</b> インターネットの検索サイトをクリックし、[布]と1文字入力するだけで布地の種類・繊維・加工名などを調べることができるサイトがあれば便利である。本研究では、布をデジカメで撮影したものをExcelで表にし、Webサイトへの展開を試みた。<br><b>[方法] </b><u>1) 布検索システムの調査</u> 文化学園の布を実物で検索するシステムでは、複合検索により実物のサンプル地を直接見て触ることができる。しかし、そこまで出向かなくてはならなく、また、Webサイト上で概要は表示されるがアクセスできない欠点がある。<br> 一方、Webサイト上で同様な検索をすると主にインターネットショッピングにつながり、ここで繊維や加工名などを調べることはできるが、布の詳細までは調べられない。たとえば、検索サイトのYahoo! Japan、infoseekやmsnで検索した場合、思わず目を引く布が表示されるが、雑貨などと一緒に掲載されている。しかし、布の質感についての記載は少なく、また、布の特性がほとんど示されていない。<br> <u>2) 布情報のWebサイトへの展開</u> 桐生市にある(株)小林当織物で提供された約50枚をデジカメで撮影し、Excelでデータベース化した。ついで、Yahoo! Japan内のジオシティーズを利用し、Webサイトを作成した。<br><b>[結果と考察]</b> 得られた布画像のデータファイル(not shown)を元に、http://geocities.yahoo.co.jp/を使用してhtmlファイル(not shown)を作成した。得られたWebサイトでは、布地名称・繊維・織り・染色などを1つのサイト内から調べることができるようにできた。今後は、topページをはじめ使いやすく、布情報を増やすなどの改良を予定している。また、被服材料学全般についてもWebサイトで学べるシステム構築を考えている。<br>
著者
棚橋 亜矢子 デュアー 貴子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.215, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 コーヒーが初めて日本に入ってきた安政2年から159年後の今、コーヒーは世界中で市民権を得た飲物となってきている。しかし、コーヒー飲用には年齢によって差が見られ、コーヒーを苦手とする若者も多い。そこで、本調査においては、女子学生のコーヒー嗜好を官能評価によって調査すると共に、コーヒーの飲用実態についても調査することを目的とした。方法 女子学生400名を対象にコーヒー飲用に関するアンケート調査を行った。また女子学生20名を対象にクローズドパネル法にて官能評価を実施した。インスタントコーヒーと、これと同様の味わいに調整した豆からドリップ抽出したコーヒーの比較は3点識別嗜好試験、豆を浅煎、中煎、深煎してドリップ抽出したコーヒーの嗜好性は順位法によって判定した。データ処理にはSPSSを用い、コーヒー嗜好の比較及び3点識別嗜好試験はχ2検定、順位法はノンパラメトリック検定を行った。結果 女子学生の多くは日常、緑茶を好んで飲用し、コーヒーの嗜好性は低い現状であった。コーヒーが嫌いと回答する割合も24.1%であった。よく飲用するコーヒーは、インスタントコーヒー、外出時食後、缶コーヒーの順であり、54.3%がミルクと砂糖を入れたコーヒーを好む傾向であった。また、女子学生の90.5%がコーヒー摂取によって何らかの効能があると考えており、眠気解消やリラックスしたい時に意識的にコーヒーを飲用していた。嗜好としては深煎ドリップコーヒーを好む傾向がみられた。
著者
上野 勝代 張 潤欣
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.81, 2003

<b>目的</b> 2001年10月、「配偶者からの暴力の防止および被害者の保護に関する法律」(いわゆるDV防止法)が施行されて以来、保護命令の申し立て件数は増加し、シェルター(緊急一時保護施設)における一時保護件数も増加している。ところが、わが国においては、シェルターはその数は公・民ともに不足し、同時に公的シェルターの空間基準は売春防止法に基づくものであるため質的にも多くの問題を抱えている。シェルターはDV被害女性の安全を確保し、心の傷を癒し、自立のための出発点ともなる場であるから、その空間的環境が与える影響は大きい。そこで、本研究では、DV被害者のためのシェルターとして先進しているアメリカ・マサチューセッツ州における事例を取り上げ、空間的要件とその特徴を検討することによって、今後のわが国におけるDV被害者のためのシェルター計画に生かしていくことを目的としている。<b>方法</b> 調査法は訪問ヒアリングならびに観察調査。調査対象は、アメリカ、マサチューセッツ州の5施設である。調査時期は2002年8月~9月である。<b>結果</b> (1)シェルターはソフト・ハードともに安全面での配慮がされている。(2)個人のプライバシーには配慮されており、日本の公的シェルターの多くのところでみられるような相部屋はよほどでない限りはみられない。(3)子どもへのケアが整っている。
著者
横山 友貴 名倉 秀子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.283, 2009

【目的】行事食は,毎年同じ時期に同じように繰り返される行事に準備され,稲作・農作物などの収穫と深く関わる料理,供物が多い.近年は核家族世帯が6割を占め,先祖を祭る行事(彼岸・盆)は希薄化する傾向がある.彼岸行事の実施率は,1979年から約30年間で80%から25%と減少し,都市部と地方の地域差もあるといわれている.そこで,会津地方の彼岸の行事を3世代家族の家庭から聞き書き調査し,その行事食の実態を把握することを目的とした.【方法】調査地は福島県会津地方の喜多方市(旧耶麻郡熱塩加納村),調査時期は2008年秋彼岸,翌年春彼岸の各1週間とした.調査家庭は,農業(兼業)を営み,3世代6人家族である.主に80代女性(1948年に嫁ぐ)に聞き書き,行事食の写真撮影も行った.【結果】彼岸の行事は仏壇へ仏膳を供え,家族が共食し,墓参りを行っていた.彼岸期間の仏膳は,朝・夕の2回を原則とし,中日(秋分の日)では朝・昼・夕の3回,お帰り(彼岸明け)は夕の時刻を早め朝・昼の2回であった.仏膳は精進料理を中心とし,おはぎ・団子が供えられていた.団子は,中日とお帰りの日のみ供えられ,異なる大きさであった.彼岸期間の家族の食事は,普段と同様に3回喫食され,食事内容では,日常食と同様で精進料理ではなかった.このように家族の食卓と仏膳は異なっていたが,1950年頃は家族の料理内容と仏膳が同じであったことが聞き書き調査によって分かった.団子・おはぎは喫食されていた.お帰りの日は墓参りをし,菓子を供えていた.同様に春彼岸についても検討を行った.
著者
武井 玲子 芦澤 昌子 伊藤 陽子 蒲池 香津代 斎藤 祥子 田岡 洋子 橘 喬子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, pp.47, 2008

<B>【目的】</B>公共トイレに対する意識と行動実態に関するアンケート調査結果及び全国各地の公共トイレ写真を分析・評価し、一般用公共トイレに対するユニバーサルデザイン(UD)要件を抽出し、今後の検討に資する。<BR><B>【方法】</B>アンケート調査時期・手法は第3報と同様である。クラスター分析、主成分分析等による解析結果や公共トイレに対する要望(自由記述)及び全国各地165箇所の公共トイレを視認性、使用性の視点から撮影した写真とともに分析、評価を行った。<BR><B>【結果】</B>従来4Kと言われていた公共トイレは、快適性、衛生・安全面等全体的にレベルアップされてきていることが今回の調査で示唆された。但し、UD視点の評価からみると、公園と新しい多目的ビル等公共トイレの設置場所や設置時期(新旧)の違いによるUDレベルには大きな差が認められた。(1)トイレ表示やピクトグラムは、形、色、サイズなど種々様々であったが、視認性、可読性、誘目性等の視点から改善の余地があるトイレも認められた。(2)「トイレに入るまで」~「トイレ内」の環境・設備についてみると、階段や段差の存在、荷物置場・フック不足、設備の使用方法のわかりにくさ、等の問題点や課題が抽出された。(3)トイレ個室様式は、衛生的、慣れ等の理由で「洋式」53.6%、「和式」18.1%、「どちらともいえない」28.3%の割合で選択されていたが、入口ドアへの様式表示の要望が多く認められた。(4)トイレの使用目的は排泄以外に「手洗い」59.8%、「化粧」25.0%、「着替え・着装チェック」22.0%、その他歯磨きや乳幼児の世話等多様であり、排泄だけを目的とした空間から脱却し、化粧ブース、休憩ブースなどを併設することが示唆された。(5)UD視点においてレベルの高い多機能・多目的トイレに、一般用公共トイレのレベルがより近づくことが今後の課題と考える。
著者
栗山 恵都子 田中 辰明
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.250, 2005

<b>目的:</b>本研究は、素材や表面性状が異なる内装材の汚れ付着の特性について検討を行うことを目的とした。まず、コルクシート、たたみ(イグサ)、カーペット、布クロス(凹凸あり)(平滑)、紙クロス(凹凸あり)(平滑)、塩ビクロス(凹凸あり)(平滑)、じゅらく、珪藻土の11種の壁床材に対し、居室内部の湿度の変化による吸湿性の違いを調べた。次いで、空気中に浮遊する粉塵等の汚れが内装材へ付着することを想定して、タバコ煙による汚れの付着実験を行った。これは、内装材の素材や表面の性状の違い、また素材が持つ吸湿性の違いにみられる汚れ付着の特徴を確認することが目的である。<br><b>方法:</b>内装材の吸湿性能比較の実験は、低湿度内に長時間置いた試験片を高湿度に移し、その際の質量変化から吸湿性の違いを計測した。汚れ付着実験は、ビーカー内に試験片を置き、一定条件に従ってタバコの副流煙によって気体曝露させ、汚れの付着の仕方、付着量は顕微鏡による観察を行うと同時に、表面付着汚れ簡易評価法によって比較した。本評価法は、視覚的な色差の濃淡と量をヒストグラムで示し、色差の変化によって汚れ付着や汚れの除去の評価を容易に行うことができるものである。<br><b>結果:</b>本実験で使用した内装材がもつ吸湿性は、一般的に言われているとおり、布素材、紙素材、たたみ(イグサ)が高く、塩ビ素材は低い結果であった。本内装材を使用した気体曝露汚れの付着は、素材別にみると珪藻土、たたみ(イグサ)は他の素材と比較して汚れが多く付着し、続いて、紙素材、布素材の内装材は曝露汚れが付着しやすい傾向がみられ、素材が持つ吸湿性能との関係があることが示唆された。また、表面性状の細粗の違いによる特徴的な差は見られなかった。
著者
片山 佳子 若尾 弥美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

<br><br><b>目的</b> マキベリー(<i>Aristoteliachilensis</i>)は、チリのパタゴニアと呼ばれる寒冷地帯が原産地であり、ポルトノキ科の植物でブルーベリーによく似ている。果実は、直径約6mmの球形でつやのある黒紫色、収穫時期は1~3月である。マキベリーが最も注目されているのは、ポリフェノールと抗酸化力で、その他にもビタミンC、鉄、カリウムなどの含有量も高いと言われている。そこで本研究では、ビタミンC、鉄分およびポリフェノールの定量を行うとともに抗酸化活性について測定することを目的とした。<br><br><b>方法</b> ビタミンCの測定は、インドフェノール・キシレン法により、鉄分の測定は、1,10-フェナントロリン法により行った。ポリフェノール含有量測定は、Folin-Ciocalteu法を用いて測定し、没食子酸相当量として算出した。抗酸化活性測定は、ラジカル消去能をDPPH法により行い、またDPPHラジカル消去活性はTrolox相当量として算出した。<br><br><b>結果</b> ビタミンCそして鉄分量はブルーベリーより高く、ポリフェノール量はアサイーやアセロラよりも高い結果となった。抗酸化活性は、アサイーやココアパウダーと比較すると高い抗酸化活性を示した。また、ポリフェノール量と抗酸化活性がともに高い値を示したことからマキベリーの抗酸化活性の主体はポリフェノールであることが考えられた。このことから、マキベリーはビタミンCと鉄分はブルーベリーより高く、ポリフェノールを多く含有し、高い抗酸化活性が期待できる食品であることが明らかとなった。
著者
御船 美智子 竹沢 純子 李 秀真
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.95, 2004

本研究は、お茶の水女子大学21世紀COE「ジェンダー研究のフロンティア」が2003年度から5年次にわたり実施予定の「家族・仕事・家計に関する国際比較研究-韓国パネル調査-」の初年度データから、家計と家計管理に関する実態と意識のジェンダー差を明らかにすると同時に日本のデータ(家計経済研究所「消費生活に関するパネル調査」等)との比較を行う。なお、日本のデータは女性のみであるのに対し、韓国では男女双方に調査している点が特徴である。結果の概要としては、第一に、夫婦資産総額に占める自分名義資産の割合は夫「9割以上」(45.4%)、妻「なし」(46.1%)であり、韓国では妻の半数が資産を持っていないことが明らかとなった。第二に、収入の所有意識については、両国ともに「夫婦共通のもの」と思う割合が一番高いが、「夫の収入を自分のもの」だと思う妻の比率は、韓国よりも日本のほうが高い傾向がみられた。第三に、「家庭生活への貢献分」は、両国の女性はほぼ同じくらい(5割強)であったが、韓国の男女比較の結果では、男性が女性より自分の貢献分を多いと思う傾向が見られた。第四に、家計管理タイプをみると、専業主婦世帯においては、韓国では男女ともに「手当型(夫が収入の一部のみを妻に渡す)」が2割程度であったのに対し、日本では1割程度であり、韓国のほうが夫によるコントロールが強力であることがうかがわれた。共働き世帯の場合、韓国では「夫の収入も妻の収入もいったん共通の財布にいれ、そこから小遣いを配分する」という一体タイプが男女ともに60%以上であるのに対し、日本では約25%であり、両国で大幅な違いを見せている。
著者
山下 エリ子 重久 麻衣 本岡 聖子 安達 町子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.76, 2003

<b>[目的]</b> だしは料理の味の基本となるものであり、わが国では昔から昆布、かつお節、煮干しなどを使ってだしをとり、そのだしで料理のおいしさを引き出してきた。だしをとるということは少々手間のかかることであり最近では、便利な旨味調味料、風味調味料の流通や、女性の社会進出も伴って、家庭でだしをとることが少なくなっているように思われる。そこで、長崎県の主婦を対象に、現在、料理によってどのようなだしのとり方をしているのかを調べ、現代の食文化の推移の一端を考察した。<b>[調査方法]</b> 長崎県の主婦783名に自記式質問紙調査法によりアンケートに答えてもらった。(1)味噌汁、吸い物、煮物、麺類、雑煮、スープのだしのとり方と、各料理に使用する具体的な天然だし素材について(2)旨味調味料・風味調味料の使用理由について(3)天然だし素材の使用理由について質問し、結果を年代別、仕事の有無別、地域別に比較した。<b>[結果]</b> 料理によって天然のだしの使用率は異なり、味噌汁や吸い物のように、だしが主役となる料理では、煮物や麺類よりも高い比率で天然のだしが使用されており、行事食の雑煮ではさらに使用率が高く、抽出に時間のかかるス-プではあまり天然のだしが使用されていない事がわかった。年代別だしのとり方を比較したところ、年代が高いほど天然のだしを多く使用しており、若い年代ほど旨味調味料や風味調味料を多く使用していることが明らかになった。地域別にだしのとり方を比較すると、市街地で天然のだしの使用率が低く、旨味調味料や風味調味料の使用率が高いことがわかった。また仕事の有無とだしのとり方に関連性は見られなかった。
著者
島村 綾 徳田 愛華 小関 陽子 小泉 昌子 峯木 眞知子 佐藤 吉朗
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

(目的)コーヒーの焙煎法の違いには、直火型、半熱風型、熱風型の焙煎機があり、この風味の違いは明らかではない。そこで、直火焙煎、熱風焙煎による短時間加熱、長時間加熱で調製したコーヒー液を用い、そのにおいを時系列評価によるTDS法を用いて検討した。<br>(方法)同じコーヒー豆による焙煎方法の異なるコーヒー液を株式会社ドトールに依頼した。試料の濃度はbrix&times;1.5を用い、温度による違いを避けるために室温で用いた。メディア・アイ製J-SEMS TI・TDSシステムを用い、パネルは本学女子学生10-11名で、試料15mLを用い、60秒間測定した。においの感覚属性は5属性を用いた。採点法による嗜好型官能評価も行った。コーヒーのにおいは、GC-MSを用いて計測した。<br>(結果) 直火焙煎試料のにおいでは、短時間加熱試料は飲む前よりアーモンド・ナッツの香りを有意に感じ、その後酸っぱい香り、焦げた匂い、カラメル、甘い香りの順に感じた。長時間試料では、始めに甘い香りを有意に感じ、その後にアーモンド・ナッツの香り、焦げた匂いを感じている。熱風長時間加熱試料では、始めに酸っぱい香りが有意に感じられ、後味に焦げたにおいを感じている。どの焙煎においても、酸っぱいにおいは有意に感じられていた。GC-MS分析の結果、熱風焙煎・短時間加熱試料は熱風焙煎・長時間加熱試料に比べチョコレート様の香りである2-メチルフランが多く検出された。<br>
著者
小林 酉子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.96, 2005

<目的> 英国ルネサンス期の演劇で、俳優はどのような姿で舞台に登場していたのか、その復元、視覚化を目的とする。発掘後、当時のままに再建されたロンドンのグローブ座からも明らかなように、劇場は、劇が演じられる舞台の上のみに屋根がかかり、一般観客席は屋根がない青天井であった。それは、俳優着用の高価な衣裳を雨から守るためであったとも言われているが、実際の衣裳の素材、デザインはどのようなものであったかを検証する。<方法> 1600年前後、ロンドンでは二大劇団が覇を競っていたが、その一方の海軍大臣一座の劇場主、フィリップ・ヘンズロウと、女婿にして名優でもあったエドワード・アレンは、劇団所有の衣装類をリストにして書き残した。『ヘンズロウの日記』として知られる劇場運営に関する財務簿の中に、これらのリストも含まれている。衣裳リストは主役級用と道化役用に大別され、その一点一点について、色やデザイン、生地の材質が細かに記されている。このリストを基に、主役級用衣裳を色別、素材別、デザイン別に分類した。<結果> 上記の分析によると、主役級用に用いられた生地はベルベットが最も多く、全体の約40_%_を占め、それに次ぐ素材がサテン、金糸入り、銀糸入り、絹(特定されず)で、各々約10_%_を占める。その他、刺繍、ビューグル(黒の筒型ビーズ)、スパングルの装飾が施された上衣、ズボンの例も見られ、高価、高級な素材が用いられていたことが分かる。色は赤、黒が各々30_%_で最も多く、他に青、紫の使用例が目立つ。ここで、道化役には使用されない色が紫であること、道化役に多い黄色、オレンジ色は主役級には用いられていないことも判明した。
著者
安田 みどり 久壽米木 綾子 斎木 まど香 児島 百合子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<br><br>【目的】キクイモ(学名:<i>Helianthus tuberosus</i>)は、他のイモ類と異なり、デンプンをほとんど含まず、水溶性の多糖類であるイヌリンを多量に含有している。イヌリンは、難消化性でカロリーが低く、腸内細菌叢の改善、血糖値の上昇抑制等の機能性が明らかにされている。しかし、イヌリンは多糖類であるために分析が難しく、報告例も少ない。そこで、本研究では、佐賀県内で栽培されたキクイモに含まれるイヌリンの含有量を調べることを目的として、イヌリンの分析を試みた。<br><br>【方法】試料として、佐賀県で栽培されたキクイモ(10、12月採取)を凍結乾燥したものを用いた。イヌリンは、フルクタン測定キット(日本バイオコン株式会社)を用いて測定した。すなわち、フルクタン以外の糖質を酵素にて単糖に分解して糖アルコールとして除去し、残ったフルクタンをフルクタナーゼにて分解し、フルクトース量として測定した。<br><br>【結果】キクイモ中のイヌリンは、35~50 g/100g乾燥物(8~17 g/100g生)で、実と皮にあまり違いはみられなかった。赤色と白色の品種の違いについても有意差はみられなかった。しかし、同じ場所で10月と12月のキクイモと比較すると12月に採取した方が少なかった。土の中で貯蔵中にイヌリンから単糖や少糖へ分解が起こっていることも考えられることから、それらの分析結果についても合わせて報告する。
著者
倉元 綾子 正保 正惠 山下 いづみ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

【目的】 2011年の東日本大震災と福島原発事故を契機に,日本社会においては家族やコミュニティに対する関心が高まっている。一方,女性に対する暴力,子ども虐待,無縁死など,多様で複雑な個人・家族・コミュニティをめぐる問題が山積している。本報告では,日本における家政学を基礎とする家族生活支援の仕組みづくりへの示唆を得るために,台湾・新北市の家庭教育センターにおける家族生活教育教材『幸福家庭』を分析する。<br>【方法】 2009年9月,台湾・新北市家庭教育センター等を訪問し,実地調査を行い,関連する資料などを収集,分析をおこなった。<br>【結果】 (1)台湾においては,家族生活教育の「幸福家庭123」のもとに,「1.親が毎日,2.20分間,3.子どもと一緒に3つの活動 ①読書,②共同活動,③スポーツ・遊び」の活動をすることが提唱されている。(2)『幸福家庭123 親子ハンドブック』は趣旨,意義,子どもの学習の特徴,幼稚園段階における方法,小学校低学年における方法,小学校中学年における方法,小学校高学年における方法,留意点から成っている。(3)『幸福家庭Easy Go』は,結婚前教育編,結婚生活経営編,親としての教育編,医療保健編,家庭資源編,家庭法律編から成っている。(4)「幸福家庭123」を通じて,親密な家族関係・親子関係を育成することが重視されている。また,読書活動は,学習型家庭を建設する基礎と考えられている。
著者
澤島 智明 ゴ ティ トゥ フェン
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的 </b>近年、ベトナムでは経済成長による生活水準の向上に合わせてエアコンの所有率・所有台数が大幅に増加している。本研究はベトナムの住宅居住者の冷房実態を把握し、冷房エネルギー増加を抑制するための知見を得ることを目的とする。<br><b>方法 </b>ベトナム・ハイフォン市に建つ一戸建て住宅4件を対象に居住者へのインタビューと室温測定を行った。対象住戸4件中3件はペンシル住宅と呼ばれる住宅型式で、間口が狭く奥行きの深い3・4階建ての住宅である。他の1件は平屋建ての農家住宅が拡大する都市に取り込まれたものと思われる。インタビューは2014年8月に行い、①エアコン・扇風機の使用状況、②住戸内各空間の使用・滞在状況、③室内の暑さ・涼しさなどについて質問した。インタビュー結果から室温測定の対象空間を定め、2015年7月に10分間隔で測定を行った。<br> <b>結果 </b>インタビュー調査時のエアコン所有は4件中2件であったが、翌年の室温測定時には3件に増えており、ペンシル住宅全邸でエアコンが使用されていた。いずれも昼寝に短時間と夜間就寝時に長時間使用されていた。ベトナムでは伝統的に家族が同室で寝る習慣があり、冷房室である2階主寝室などに家族が集まって就寝していた。そのため自然室温が高い4階や3階の個室はあまり使われておらず、見方によっては効率的な冷房が行われていた。また、農家住宅は植物による遮へい効果により日中の最高気温が低く抑えられていた。