著者
駒田 亜衣 谷口 水穂 中井 晴美 梅澤 眞樹子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.62, pp.253, 2010

<B>【目的】</B>三重県西部の伊賀地域で営まれている秋まつりの調査から、この地域の発酵の文化について特徴を明らかにすることを目的とした。<BR><BR><B>【結果】</B>伊賀地域には3つの街道が通っており、その街道沿いには現在、140を超える神社が登録されている。本研究で調査を行った中に、春日神社の「なすびまつり」、佐々神社の「このしろまつり」、菅原神社の「上野天神祭」、大村神社の「秋の例祭」などの特徴的なまつりが存在することが分かり、この中でも「このしろまつり」「上野天神祭」からこの地域の発酵の文化を見出すことができた。「このしろまつり」はこのしろ(コハダ)と飯を樽に漬けこんで発酵させてなれ寿司にし、神饌として供える文化がある。さらに、このしろと一緒に漬けこんだ飯も「アイサノメシ」という名称で神饌とする特徴があることが分かった。「上野天神祭」は別名「甘酒まつり」とも言われ、甘酒を見物客や招待客にふるまうほか、神饌としても供える特徴がある。甘酒は「だんご鉢」と呼ばれる底に擂鉢状の溝が施された陶器製の鉢を用いて作られ、まつりに招待する「呼び使い」のためには欠かせないものであり、以前は各家庭で作られていたことが調査で明らかになった。<BR><BR><B>【考察】</B>伊賀地域のまつりにおいて神饌として供える酒はすべて地酒であり、さらになれ寿司や甘酒といった米を発酵させてつくる神饌も加わり、これらはまつりに欠かせないものとして現在まで受け継がれていることが分かった。伊賀地域は古来より米どころとして知られており、良質な米が収穫されること、また紀伊山脈と伊賀盆地に位置することとで山麓からの清水が豊富であったこと、また奈良や京都と隣接していることから、こうした発酵の文化が発達したと考えられた。
著者
高橋 智子 川野 亜紀 大越 ひろ 中川 令恵 道脇 幸博 飛田 昌男 長門石 亮 別府 茂
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.223, 2005

<b>目的</b> ユニバーサルデザインフード区分の「容易にかめる(かたいものや大きいものはやや食べづらい人を対象)」に分類されるレトルト市販介護食品について、咀嚼運動の特徴をあらわすことができる物性を検討した。<br><b>方法</b> レトルト市販介護食品17品目に含まれる肉、魚、豆腐、芋、根菜類等の調理品32種類のテクスチャー特性、および破断特性を測定した。ことに硬さについては、圧縮速度を変えて測定を行い、圧縮速度依存性を検討した。併せて、同程度の硬さではあるが硬さの圧縮速度依存性が異なる4種類の材料(太刀魚、揚げ豆腐、里芋、ごぼう)について、2次元6自由度顎運動測定器により下顎運動の測定を行った。21_から_25歳までの健常な女性5名の被験者が、同一試料について4回の咀嚼を行った。咀嚼時における下顎運動の垂直成分を示すパターンより、第一咀嚼の波形から最大開口量、最大閉口速度、閉口相時間、最大閉口速度が出現した閉口相開始よりの時間、平均閉口速度、および嚥下開始迄の咀嚼回数、咀嚼時間を求めた。<br><b>結果</b> 線維の多いごぼうの硬さは圧縮速度が遅い方が硬いことが認められ、他の3種類の試料とは異なる圧縮速度依存性を示した。他の3種類の試料よりも、一口量が大きい揚げ豆腐の最大開口量、嚥下開始迄の咀嚼回数および咀嚼時間は有意に長いものとなった。また、圧縮速度依存性の異なるごぼうは他の3種類の試料に比べ、最大閉口速度に有意差は認められなかったが、最大閉口速度が出現した閉口相開始よりの時間は有意に遅くなり、また平均閉口速度も有意に遅いことが認められた。
著者
岡本 和花
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

<b>目的</b> 近年, 我が国の防災に対する関心は高まってきている. 教育あるいは保育の現場も同様であると考えられる.そこで本研究では, 保育者が防災についてどの程度, 正しい知識を備えているかを調査することによって, 保育者の防災に対する関心を知る手がかりとすることを目的とした.<br><b>方法</b> 調査時期は, 2016年10月上旬~12月末, 調査対象者は, 新潟県, 栃木県, 静岡県の3県における就学前施設に勤務する保育者670人と教員養成系大学生48人を対象とし, 防災に関する知識を問う設問を含めた質問紙調査を行った.なお, 知識に関する設問は東京都が出版している『東京防災』を参考に6題作成した.<br><b>結果</b> 知識項目6題の平均正答率は, 保育者が68.3%, 大学生が64.6%であった. 設問ごとに保育者と大学生との正答率を比較したところ, 避難生活での子どもへの接し方に関する質問1では, 保育者, 大学生ともに正答率は高かった. 避難口の確保に関する質問3と避難する際の車の使用に関する質問2では, 保育者と大学生で差がみられた. 質問3の正答率は, 大学生より保育者の方が高かった(保育者正答率=86.0%, 大学生正答率=66.7%). 一方, 質問2の正答率は, 保育者より大学生の方が高かった(保育者正答率=52.2%, 大学生正答率=77.1%). 以上より, 保育者の防災知識には偏りが見られた.
著者
桂 重樹
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<b><u>目的</u></b> 若者を中心として浴槽に浸からずシャワーのみ、という入浴形態が増えている。しかし、主として単身者が居住する1K等の住居には、浴槽付きの浴室が完備されていることが多い。このようなシャワー浴ならば、シャワーブースのような空間の方が快適に目的を達することができる。そこで、賃貸住宅とその浴室や若者の入浴習慣をアンケート調査等により調べた。<br> <u>方法</u> 全国管理戸数が上位3社に位置づけられている大東建託、レオパレスおよび積和不動産が管理している東京、大阪、および宮城県にある賃貸住宅各50戸の合計450戸について、その延面積と浴室面積、構成について分析した。また、10代から30代の男女計100名に対して入浴習慣に関するアンケートを実施した。<br> <u>結果</u> 賃貸住宅の延面積の平均値は、宮城県、東京、大阪でそれぞれ22.52、22.50、20.77㎡、浴室面積の平均値は1.50、1.55、1.53㎡であった。浴室の構成として、浴槽、シャワー、洗面台というタイプが205件、浴槽とシャワーだけのものが166件であった。また、入浴習慣についてのアンケートから一人暮らしの場合、年に数回浴槽に浸かるものが最も多く、ほぼ毎日浴槽に浸かっているものは5%しかいないことが明らかになった。このことから、賃貸住宅の浴室をシャワーブースのみにし居室面積を増やして、狭いながらもゆとりのある空間を備えた賃貸住宅を提案できる可能性があることを示した。
著者
小出 あつみ 間宮 貴代子 阪野 朋子 松本 貴志子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<br><br><b>目的</b> 食用サボテン(以後,ノパル)は,酸味,粘りおよび鮮やかな緑色を有する春日井市認定の特産品である.栄養的にはビタミン類やミネラル類などを多く含んでいる.本研究ではノパルの特徴を活かす食品開発を行い,その嗜好性について検討した.<br><b>方法</b> ノパルは後藤サボテンから購入した.ノパルを使ってグラタン,お好み焼き,シュウマイ,ミートパイ,ベーグル,スムージー,パンケーキ,アップルパイ,クッキー,ドーナツの10食品を調製し,栄養価を求めた.官能評価はパネル15名(平均40歳)を対象に6項目ついて「ノパルの特性を生かしているか」を5点尺度の採点法で評価した.嗜好評価は好きな順番に1位~3位までを選んだ.得られたデータはTukey法による多重比較検定を行い,統計的有意水準を5%で示した. <br><b>結果</b> 調製した食品の栄養価では,副材料の影響が大きかった.官能評価から最も好まれたアップルパイは,粘り,味,総合で高い評価を得た.グラタン・お好み焼き・シュウマイでは,ノパルの色と粘りは活かせたが,香りと酸味が調味料などに消された.スムージーは,低カロリー・高カルシウムであり,ノパルの酸味・粘り・色を活かした食品であった.以上の結果より,採点法,嗜好順位ともに5位までに入ったアップルパイ,スムージー,クッキー,ミートパイは,ノパスの特徴を良く活かし,かつ好まれる食品であることを認め,さらに改良することで商品化の可能性が示された.
著者
濱口 郁枝 山本 存 森 由紀
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

<b>目的</b> 近年,若年女子の不必要な減量行動による健康上のリスクが問題視されており,前報では,その背景要因として,メディアによって助長されるおしゃれ意識がかかわることを明らかにした.本研究では,女子大生の購読率の高いファッション雑誌を取り上げ,そこにみられる食事や運動に関するダイエット情報の特徴について検討した.<br><b>方法</b> ファッション雑誌Aにおける2010年8月号から2011年7月号までの1年間に刊行された12冊について,ダイエットに関する特集記事の見出しをデータとし,テキストマイニングの手法を用いて頻出語や特徴ある語句について分析した.<br><b>結果</b> 12冊の中で,ダイエットに関連する記事が掲載されていたものは10冊であった.品詞別の頻出上位3語は,動詞では,食べる,鍛える,太る,サ変名詞では,ダイエット,運動,食事,名詞では,ヤセ,筋肉,脂肪であった.また,複合語では,老廃物,美脚,ムダ肉,前もも,小顔の出現数が上位に入っていた.さらに,対応分析の結果から,やせ,筋肉,脂肪,ダイエットは,多くの発行月号の記事内容を特徴づける語句であったことが示された.記事の全体的な特徴としては,効果,簡単など,手軽に無理なく痩せることを強調する語句を用いることや,芸能人のシェイプアップ方法や海外の有名なモデルが実践しているダイエット方法を示すなど,読者の興味をひくような工夫がなされていた.しかし,遺伝子や血液型によるヤセ効果の高い食べものを掲載するなど,エビデンスが得られていない情報が多いこと,さらにプチ整形を勧めるなど問題点が提起された.女子大学生に対する健康教育として,情報を的確に取捨選択し活用できる能力を身につけさせる必要性が示唆された.
著者
松梨 久仁子 島崎 恒藏
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.187-187, 2003

<b>目的</b> 既製服における背広のラペル部の芯地付けにすくい縫いミシンを使用する理由の1つに、接着芯では得られない立体形状を作ることが挙げられる。本研究では、前報<sup>1)</sup>で検討した表布に芯地を縫い付けた場合のすくい量についてさらに検討を加えた上で、すくい量やステッチ線間隔が芯地効果すなわち芯地付けされた布地の保形性や形状の変化に与える影響について検討する。<b>実験</b> 用いたミシンは八刺し専用のすくい縫いミシン(トレジャー・BS-808)で、試料は毛、綿など様々な素材の布地の他に4種類の毛芯を加え、計13種類とした。縫製条件は、布上げ高さはダイヤル設定値1から9までの間で変化させ、ステッチ線間隔は5mmと10mmとした。縫製方向はたて、よこに加え、地糸に対し様々な角度を持った右上がりと右下がり方向とした。縫製されたサンプルについて、上側の布のすくい量l<sub>1</sub>、下側の布のすくい量l<sub>2</sub>を測定した。芯地付けによる布地の形状の変化については曲げ特性で評価することとし、KES-FB計測システムの純曲げ試験、45°カンチレバー法及びスライド法による剛軟性試験を行った。<b>結果</b> 布を積層させたり縫製方向を変化させたりすると、その条件に伴ってすくい量は変化する。地糸に沿った場合のl<sub>1</sub>、l<sub>2</sub>は、布上げ高さ、上布、下布の厚さ、たてよこ方向の織り糸のクリンプ率、曲げ剛性などから、推定可能であることが定量的に明らかになった。すくい量に対する布の方向性については、地糸方向のすくい量を1として、縫製方向の角度を変化させた時のすくい量の増加割合を把握することにより、布の方向性の影響を表すマスターカーブを得ることができた。縫製により芯地付けされた試料は、すくい量が大きくなるとそりが大きくなることが確かめられた。布のそりについてすくい量と曲げ剛性の関係から検討した結果、すくい量が大きくなるに従って芯地付けされた試料は芯地側へは曲げ剛くなり、逆に表地側へは曲げ柔らかくなる傾向が認められた。(参考文献)1)松梨久仁子、島崎恒蔵:繊維連合研究発表会要旨集、p.133(2002)
著者
森 俊夫
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.82-82, 2003

目的 パターンや形態の視覚的特徴は複雑で、正確にその情報を伝えることは難しい。しかしながら、パターンなどの多種多様な視覚的情報が感覚的、心理的に働いて、われわれに美しいとか快いという感情を与える。このような視覚パターンの最も具体的なものが画像である。画像は空間上の各画素がどのような情報をもち、どのように分布しているかによって規定される視覚情報である。本研究では画像を構成する基本的なパターン要素の種類や個数、位置などを変化させて、パターンの視覚的特徴と美しさについて検討する。方法 試料画像は正方形や円などの基本的パターン要素の個数や位置などを変化させて作成した白黒濃淡画像を用いた。画像解析により、これらのパターン画像の角二次モーメント(ASM)、コントラスト(CON)、相関(COR)、エントロピー(ENT)、グレイレベル平均(MIU)およびフラクタル次元(D)を算出した。また、パターンの美しさに関する官能検査を3段階評価で行なった。結果 正方形などのパターン要素の個数が増大すると、パターン全体の一様性や均一性が失われ、局所的変化や情報量、複雑性は増大した。正方形などのパターン要素の個数を一定にして、それらの位置をランダムに変化させた場合には、視覚的特徴に変化はみられなかった。しかしながら、正方形(一辺20ピクセル)と円(直径20ピクセル)の組み合わせでは、正方形の個数を増大(円の個数は減少)させると、パターン全体の不均一性や局所的変化が増大した。ENTを秩序の、Dを複雑さの尺度と考え、バーコフの美的測度を算出した。これと美しさに対する官能評価値との間には比較的よい一致が見られた。
著者
長谷 博子 野浪 亨 中村 利治
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.118, 2012 (Released:2013-09-18)

<目的> 花粉症の原因である花粉を除去するために,アパタイトと二酸化チタンの粉末を用いてマツ花粉の吸着・分解能の評価を行った. <方法> マツ花粉0.1gとアパタイト粉末0.1g,マツ花粉0.1gと二酸化チタン粉末0.1gをそれぞれ乳鉢で混合した後,走査型電子顕微鏡で観察した.さらに,マツ花粉と二酸化チタン粉末を混合した試料には,ブラックライトを照射した後にも顕微鏡観察を行った. 応用例の実験として,アパタイト被覆二酸化チタンを塗布した網目約1mmのポリエステル製ネットと不織布についても評価を行った.試験片1×1cmとマツ花粉0.1gをバイアルに入れて振とうした後に試験片を取り出し,未処理の試験片と比較して観察した. <結果および考察> マツ花粉の大きさは,球形で直径が30~50μmであり,スギ花粉と同程度の大きさであることが分かった.アパタイト粉末と二酸化チタン粉末は,いずれもマツ花粉の表面に吸着している様子が観察できたが,アパタイト粉末の方が明らかに多く吸着していた.アパタイト被覆二酸化チタンを塗布したポリエステル製のネットは,未処理のネットと比べて明らかに多くのマツ花粉を吸着していた.このことから,ポリエステル製のネットにアパタイト被覆二酸化チタンを塗布することでマツ花粉の侵入を低減できる可能性があることが分かった.なお,ポリエステルネットは蚊帳用として,不織布はマスク用として利用されているものである.
著者
山﨑 薫 奈良 一寛 石神 優紀子 杉村 愛
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<b>目的</b> 市販グミには様々な色があり,華やかだが,花の色素を活用しているものは大変少ない.よって,食用花の活用を検討している中,食用花に含まれる色素をグミに活用した場合,どの程度,色付けにいかせるのか検討した.<br><b>方法</b> 食用花として本学で栽培しているマリーゴールド(オレンジ・イエロー),カーネーション(レッド),八重桜(ピンク),キンギョソウ(レッド・ホワイト・イエロー),ペチュニア(レッド・ホワイト),ベゴニア(レッド),ジニア(オレンジ),ガザニア(イエロー),バラ(レッド)の9品種,花弁色違い含め13品目を試料とした.花弁色素と甘酸っぱさを生かせる条件を検討し,シロップを作成後,グミ作りに用いた.食用花試料本体,作成シロップ及びグミ,各々の色差とpH測定を行った.<br><b>結果</b> 電子レンジ使用により,花弁色が抜けることが抑えられ,鮮やかな色合いを出すことができた.作成グミの色差測定結果の特徴として,ゼラチンが黄色を有していたため,その影響を受けたものもあった.pH測定の結果,レモン果汁添加前のシロップは中性でレモン果汁添加後,酸性になったが最終的に作成したグミはゼラチン等の素材の影響を受け,中性となった.官能評価の結果,一番好しかったものは八重桜のシロップを用いたグミであった.グミにおける色素の安定性も認められ,果汁を用いたグミと同様,活用できると判断した.食用花シロップは他の料理にも活用できると考えている.
著者
川村 昭子 新澤 祥恵 中村 喜代美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

<b>目的</b> 石川県独自の行事で、奥能登地区に伝わる農耕儀礼「あえのこと」は、だんだんとこの行事を行う地区・農家が減少しつつある。時代と社会の変化に合わせて現代どのように意識され、伝承されているかを調査した。<br><b>方法 </b>1)日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学-行事食-」に「あえのこと」を加えて、2010年4月に石川県内19市町村の食生活改善推進員461名を対象とし、認知・実施状況、この行事で食する食べ物・料理について調査した。2)2011~2012年に石川県能登町(旧柳田村)で行われた行事について調査した。<br><b>結果</b>&nbsp; 「あえのこと」は、田の神様をもてなし、感謝をささげる奥能登の伝承行事で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録され、国の重要無形民族文化財にも指定されている。毎年12月5日に田の神様を迎え、翌年の2月9日に田の神様を送り出す行事で、現在は輪島市、能登町、珠洲市などで行われている。1)この行事の認知率は40.6%であったが、実施(経験)率は6.1%と低く、奥能登の輪島市、能登町、珠洲市などで行われていた。2)12月5日の「田の神様お迎えの儀」、2月9日「田の神様送り出しの儀」両儀式後、必ず「直会の儀」として、甘酒、小豆飯、汁物、刺し身、煮しめ、焼き物、酢の物、漬け物、ぼた餅などの「ご馳走」でもてなし、神様のおさがりとして家族全員で食事をする。調査では喫食経験のある料理として、煮しめ(13)、尾頭付き焼き魚(10)、小豆飯(7)、酢の物(6)、ぼた餅(4)、甘酒(3)などが出現していた。だんだんと簡略化され、家庭で「ご馳走」を作らないのか、行事は行ってもあまり食されていない傾向であった。
著者
花田 美和子 芦澤 昌子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.250-250, 2004 (Released:2005-04-02)

目的装うこと、おしゃれをすることの心理的効果が注目されている。実際に、高齢施設において積極的に化粧を行う試みがなされ、その効果が報告されている。そこで、おしゃれが人の心に与えるよい効果について検討することを目的として、アンケート調査を行い、装いに関する意識とおしゃれが人の心理に及ぼす影響について検討した。さらに結果を年代別に見ることによって高齢者にとってのおしゃれの意味についても考察した。方法都内の大学の通信教育部に在籍する10歳代から60歳代までの女性106名を対象とし、「装い」・「おしゃれ」・「化粧」に関するアンケート調査をおこなった。結果『おしゃれが好きか』との問に対して、全体の8割が「まあまあ好き」または「とても好き」と回答した。また、「いつでもおしゃれにしていることは良いことである」の回答が全体の8割以上を占め、日常のおしゃれに関して肯定的であった。その理由については、「気持ちにハリがでる」、「心が豊かになり、気持ちが良い」、「見ていても楽しくなるので、周囲の人のため」などが挙がった。これらの結果を年齢別に見ると、『装いの目的』についてはすべての年代において「マナーとして」が最も多く、特に50歳代以上において最も割合が高かった。また、「自己満足」という回答は20歳代が最も多く、「自己表現」、「美しく見せるため」は50歳代以上が最も多かった。どの年代においても「いつでもおしゃれにしていることはよいことである」の割合が最も高く、日常のおしゃれについては年代を問わず肯定的であることが明らかになった。これらのことから、おしゃれ感には年代を超えた共通の感覚と、年代によって異なる感覚があることがわかった。
著者
中澤 弥子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>【目的】</b>本研究の目的は、戦後、導入された学校給食の牛乳について、文化的・社会的な影響等を検証し、今後の学校給食における牛乳利用について検討することである。<br><b>【方法】</b>学校給食と牛乳導入の歴史については、乳業関係会社の社史、学校給食に関する史誌や統計資料、調査資料等を広く収集して調べた。学校給食と牛乳摂取に関する意識、実態については、学校給食と牛乳摂取に関するアンケート調査を、学校給食の経験者である長野市内のN短期大学学生と3小学校の保護者を対象に実施した。 <br><b>【結果】</b>危機的な食料不足と学童の深刻な栄養失調を背景に、旧日本軍の保管食料やララからの救援食料をもとに再開した学校給食では、脱脂粉乳のミルクが導入された。「学校給食法」にも、脱脂粉乳のミルクは、学校給食の基本的メニューとして奨励され、小児の栄養改善のため最も費用効果的な方法の1つと考えられ継続されてきた。昭和32年度より、国策として国産牛乳が学校給食で使用されるようになった。アンケート調査の回収率は、小学校85.4%、短期大学100%であった。米飯給食のとき、牛乳を「全く抵抗なく飲んでいる」という設問に小学生78.9%、短期大学生64.5%、「少し抵抗はあるが飲んでいる」に小学生15.8%、短期大学学生25.6%の回答が得られた。その他、牛乳飲用の時期等、今後の学校給食での牛乳利用に関する資料が得られた。
著者
中澤 弥子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.231, 2014 (Released:2014-07-10)

【目的】本研究の目的は、戦後、導入された学校給食の牛乳について、文化的・社会的な影響等を検証し、今後の学校給食における牛乳利用について検討することである。【方法】学校給食と牛乳導入の歴史については、乳業関係会社の社史、学校給食に関する史誌や統計資料、調査資料等を広く収集して調べた。学校給食と牛乳摂取に関する意識、実態については、学校給食と牛乳摂取に関するアンケート調査を、学校給食の経験者である長野市内のN短期大学学生と3小学校の保護者を対象に実施した。 【結果】危機的な食料不足と学童の深刻な栄養失調を背景に、旧日本軍の保管食料やララからの救援食料をもとに再開した学校給食では、脱脂粉乳のミルクが導入された。「学校給食法」にも、脱脂粉乳のミルクは、学校給食の基本的メニューとして奨励され、小児の栄養改善のため最も費用効果的な方法の1つと考えられ継続されてきた。昭和32年度より、国策として国産牛乳が学校給食で使用されるようになった。アンケート調査の回収率は、小学校85.4%、短期大学100%であった。米飯給食のとき、牛乳を「全く抵抗なく飲んでいる」という設問に小学生78.9%、短期大学生64.5%、「少し抵抗はあるが飲んでいる」に小学生15.8%、短期大学学生25.6%の回答が得られた。その他、牛乳飲用の時期等、今後の学校給食での牛乳利用に関する資料が得られた。
著者
鈴木 佐代 福永 美紗 豊増 美喜 秋武 由子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的</b> 福岡県春日市は12の小学校すべてにログハウス造の放課後児童クラブを設置している。ログハウス舎は利用児童数が増加した1992年から2006年の間に、ほぼ1年1棟のペースで新築された。設計に関して、初期の頃は指導員や保護者が要望を出し、変更が加えられていった。本研究では、ログハウス舎の建築図面および指導員対象のヒアリング調査から空間構成の変化を分析し、放課後児童クラブに求められる空間・設備の要件を明らかにする。<br><b>方法</b> 春日市から収集したログハウス舎12棟の建築図面の分析と、勤務年数の長い指導員2名を対象としたヒアリング調査(2013年11月)を行った。<br><b>結果</b> 1)1992年~1996年建築の初期5棟は、1階建て延べ床面積118.8㎡であったが、1997年の6棟目以降は2階建てとなり、建設時期が後になるほど2階の延床面積は拡大した(46.6~62.6㎡)。2)1階は、1室29.7㎡の 4室からなる田の字型プランである。初期の設計では、室間の丸太の壁が大きく、各室の独立性が高かったため、死角をなくし空間を広く使えるよう壁を小さくしていった。3)トイレ空間は、男女共用から男女別へ、和式便器から洋式便器へ、身障者用トイレの導入など変化が大きい。4)台所空間では、流し台の向きが屋外向き&rarr;児童の活動室が見える向き&rarr;出入口が見える向きへと変化した。また、台所と活動室との間に、おやつを配る際に使用する配膳台が設けられるようになり、後のクラブ舎ほどそのサイズは大きくなった。5)2階からの転落防止網や避難用の2つ目の階段の設置などの安全対策が市によって行われた。<br>本研究は、H25~27年度科研費(基盤研究(C):25350048)の助成を受けた。
著者
後藤 昌弘 山根 千弘 橋本 和弘 岩田 惠美子 畑 欣宏 吉川 政敏 浅見 孝志
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的 </b>新たに開発されたセルロース複合麺を用いて,麺の性状や調理法が食味評価におよぼす影響と既存の低カロリー麺類とのちがいを官能検査や物性測定によって比較し,セルロース複合麺の特性や改善点を明らかにすることを目的とした。<br><b>方法 </b>配合割合が異なるセルロース複合麺(軟性麺,標準麺,硬性麺)を用い,かたさ,歯切れ,麺の食感,のどごし,総合評価の項目について官能検査(順位法,評点法)を行った。同時に破断強度をレオロメーター(山電RE2-3305B)により測定した。また,市販の糸こんにゃくやコンニャク粉,グルコマンナン,アルギン酸等を原料とする低カロリー麺類と同様の比較をした。<br><b>結果</b> 調理前の破断荷重は硬性麺が標準麺や軟性麺よりも大きかった。糸こんにゃくは標準麺と有意差がなかった。複合麺をゆでて調味したものを用いた官能検査では,総合評価やのどごしの項目で硬性麺よりも軟性麺,標準麺が好まれた。官能検査の評価の高かった標準麺と市販のコンニャク粉やアルギン酸を原料とする麺,糸コンニャクと比較すると硬さ,歯切れ,食感,のどごしの項目で市販品が好まれた。アルギン酸を原料とする麺との比較では,かたさ,麺の食感,のどごし,総合評価でセルロース麺が好まれた。しかし,いずれも総合評価では有意差は見られなかったことから,セルロース複合麺は,比較に用いた市販の低カロリー麺類と同様に受け入れられる可能性が高いと考えられた。
著者
徳山 孝子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 明治天皇は嘉永5(1852)年9月22日、孝明天皇の第二王子として誕生し、明治元(1868)年1月15日、天皇元服される.その時代は、幕末・明治維新を経て、徳川幕府が崩壊し天皇中心とした中央集権体制、藩閥政治へと世の中が変わった.本研究では、国民の新時代を印象づけた明治天皇の御正服(軍服)を取り上げ、その歴史的経緯と意匠を調査収集とその分析により明らかにした. <br><b>方法</b> 皇室では束帯装着は朝儀のみを除いて廃止され、西洋からの礼服導入が始まった.明治天皇の肖像画でその足跡をたどることができる.パリAICP校(Acad&eacute;mie Internationale de Coupe de Paris)には、&ldquo;empereur&rdquo;と記された軍服のデザイン画が残されていた.<br><b>結果</b> 明治天皇の軍服は、AICP校に所蔵されている軍服の絵型と酷似していた.その絵型には「DOLAMN DE L&rsquo;EMPEREUR DE JAPON」と記され、日本の明治天皇の軍服であると推測される.絵型は、首から後ろ肩にかけて菊と唐草文様、前身頃から腰回りも全部菊と唐草文様で縁取り、両脇にスリット、助骨五段(モール二条)に菊花文様の5つボタンであった.
著者
野田 奈津実 小川 宣子 久慈 るみ子 山崎 泰央 坂田 隆 大竹 美登利 佐々井 啓 中島 明子 宮野 道雄 浜島 京子 加藤 浩文 萬羽 郁子 吉井 美奈子 生田 英輔 奥山 みどり
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<b>目的</b> JSHE生活研究では、石巻市にて「郷土料理の伝承」「特産物を生かした料理の提案」を目的とした料理教室と料理コンテストを行ってきた。これらの活動による参加者の意識・意欲の変化を明らかにする。<b></b><br><b>方法 </b>郷土料理教室は3回(2012年3月~2013年12月)、わかめ料理コンテストは1回(2014年10月)実施し、それぞれ参加者へアンケート、聞き取りを行った。<br><b>結果 </b>郷土料理教室の1、2回目は仮設住宅入居者を対象として行ったが、以前から郷土料理を作り、食べている参加者が多かったため、3回目は仮設住宅入居者を講師とし、大学生を対象に行った。終了後、大学生からは「石巻の食文化を知ることができた」「家族や友人に教えたい」、仮設住宅入居者からは「若い人たちと話せて楽しかった」「やりがいを感じた」という感想が多く、「郷土料理の伝承」の新たな形としての可能性が感じられた。わかめ料理コンテストは地域住民34組から応募があり、最終審査は10組で行われた。参加者からは「わかめだけでなく、他の石巻の食材も調べた」「参加者同士で意見交換できた」との声も聞かれ、両活動とも郷土料理や特産物に対する関心や愛着、誰かに伝えたいという意欲を生み、さらに地域関係者も含めたコミュニケーションの場となった。<br>本研究は科学研究費補助金(課題番号:24300243、25350040)、平成25年度(公財)浦上食品・食文化振興財団の助成を受けた。
著者
山村 明子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<b>目的</b> 従来の主婦論は社会学を基盤として、主婦の存在意義や役割などについての研究なされてきた。しかし、その服飾を研究対象とすることで、主婦・母親に求めた理想的な姿を検証する。近代に日本の家族観、家庭観に強く影響を及ぼしたイギリス社会の家庭生活、主婦像についてその服飾行動から明らかにする。本発表では家事行為と主婦の装いについて、検討する。<br><b>方法</b> 主な資料にイギリスで発行された<i>The Lady&rsquo;s Realm</i>などを利用する。同誌は1896年に創刊された女性向け月刊誌で、連載小説、家庭生活一般、職業、ファッションといった、当時の女性の関心事を幅広く網羅している。<i></i><br><b>結果</b> もてなしを司る女主人の役割はその家庭の文化度を測る指標であり、主婦の装いは外部に向けて教養や社交術を表明した。20世紀初頭には主婦の役割が家庭内において変化した。主婦の生活スタイルの変容は服飾行動にも関わり、ファッション記事には家庭内での装いとして、Housefrockなどが繰り返し登場する。また、20世紀初頭は家事奉公人の減少や家庭生活技術の発展に伴い、主婦が家事労働に携わる機会が増加、または家事労働の内容が変化した。資料には衣食住の技術や知識の紹介、またはそれらを学ぶスクールを取材した記事が登場し、家事労働の位置づけの変化を認めることができる。ヴィクトリア朝の女性家事奉公人の表象となっていたエプロン姿は主婦=女主人のものへと変化をとげた。
著者
築舘 香澄 大森 正司
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

<b>目的</b> &gamma;-アミノ酪酸(GABA)は抑制性の神経伝達物質として脊椎動物の脳内に存在することが知られている.また,現在では様々な末梢組織にGABAが存在することも認められている.近年,GABAは血圧上昇抑制作用や抗ストレス作用,成長ホルモン分泌促進作用,腎機能障害抑制作用,中性脂肪増加抑制作用を有することが知られ,機能性食品素材として注目されているが,食餌性GABAの体内における挙動について検討した研究はほとんどない.そこで本研究では,ラットにGABAを経口投与し,各臓器におけるGABAの分布について検討した.<br><b>方法 </b>6週齢のWistar系雄性ラットを用いた.ラットに10%GABA溶液を1mL強制経口投与し,1,3,5時間後に二酸化炭素による安楽死の後開腹し,心臓採血を行った.その後,生理食塩水を灌流して脱血し,胃,肝臓,腎臓,脾臓,十二指腸,盲腸,大腸,睾丸,脳を摘出した.採取した血液および臓器についてTCA溶液で除タンパク後,L-8800形日立高速アミノ酸分析計を用いてGABA含量を測定した.<br><b>結果 </b>血液,肝臓,十二指腸および睾丸中のGABA含量は,投与後1時間で最大値を示し,時間とともに緩やかに減少した.胃では投与後1時間で最大値を示し,その後,急激な減少が認められた.腎臓では,投与後1時間から3時間で最高値を示し,その後減少した.脾臓では投与後3時間で最大値を示した.盲腸および大腸では,投与後,時間とともに増加した.GABA投与後,脳中GABA含量の大きな変化は認められなかった.